ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

高瀬川ダム

2022-06-13 20:00:00 | 大分県
2022年5月24日 高瀬川ダム
 
高瀬川ダムは大分県日田市高瀬の一級河川筑後川水系高瀬川にある九州電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
筑後川上流部への松原ダム下筌ダム建設に発電事業者として参加した九州電力は、松原・下筌両発電所を建設します。
同時に両発電所の放流水を有効利用するため、1973年(昭和48年)に柳又発電所(最大出力6万3800キロワット)および松原発電所放流口直下を取水口とした約13キロの導水路が完成しました。
この導水路と筑後川左支流高瀬川の交差地点に建設されたのが高瀬川ダムです。
ここでは高瀬川から新たに最大68立米/秒の水が取水されるほか柳又発電所の出力調整に伴う取水量の増減を平準化する調整池となっています。

下流から遠望
川が狭くゲート部分だけが見えます。
手前は古い灌漑用取水堰の遺構。


クレストラジアルゲート2門と、向って右手(左岸)に排砂ゲート1門
ダム下は灌漑用の水路橋、向って左手(右岸)から河川維持放流が行われています。


フェンスがあるので、下流はこれが精いっぱい。


ゲートをズームアップ。


ダムサイトの草に覆われた竣工碑。


天端は開放されていますが幅が狭いので通れるのは自転車とバイクくらい。


天端から
水路橋やバルブ類は既得水利権となる灌漑用水用です。
ダム左岸の取水口から必要水量を分水し、左右両岸の灌漑用水路に流します。
水路橋やコンクリートが新しいので近年刷新されたんでしょう。


ダム湖は総貯水容量27万3000立米
高瀬川では発電は行わず、導水路で柳又発電所に送られます。


これは右岸側の農業用バルブ。


右岸から
堤体直上に取水口スクリーンがあります。
管理事務所横の民家も九州電力の所有でかつては職員が常駐、生活していたのかも?


(追記)
高瀬川ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2777 高瀬川ダム(1851)
大分県日田市高瀬
筑後川水系高瀬川
25.6メートル
97メートル
273千㎥/240千㎥
九州電力(株)
1973年
◎治水協定が締結されたダム

女子畑第二調整池

2022-06-13 16:00:00 | 大分県
2022年5月24日 女子畑第二調整池
 
女子畑(おなごはた)第二調整池は大分県日田市天瀬町女子畑にある九州電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1911年(明治44年)に設立された九州水力電気(株)によって同社初の発電所として1913年(大正2年)に女子畑発電所が完成します。
同発電所は出力1万2000キロワットで稼働を始め、八幡製鉄所をはじめ北九州や福岡向けの送電が開始されましたが、電力需要の拡大を受け2度の出力強化により発電能力は2万9500キロワットまで増強されました。
女子畑第二調整池は発電所の出力増強に合わせ、出力調整に対するバッファとして1931年(昭和6年)に建設されました。
女子畑発電所関連施設は日本発送電及び九州配電の接収ののち、1951年(昭和26年)の電気事業再編政令で新たに誕生した九州電力(株)が事業を継承しています。
また女子畑第二調整池は戦前の貴重な土木遺産としてCランクの近代土木遺産に選ばれています。

残念ながら女子畑第二調整池がある一帯は九州電力の社有地として普段は一般開放されておらず、その姿は上流側からわずかに垣間見るのみです。
グーグルの空撮写真


調整池のある女子畑いこいの森の入口
徒歩での立ち入りは可能ですが、仮に先に進んでもダムの手前に厳重なフェンスがありダムの姿を目にすることはできません。




樹間からわずかに堤体を垣間見るのみ。



2020年(令和2年)に九州在住のダム友さんが、九州電力に申し込み見学会を実現させました。
前回はスケジュールが合いませんでしたが、次回その手のイベントが行われる際はぜひとも参加してみたいと思います。

2774 女子畑第二調整池
大分県日田市天瀬町女子畑
筑後川水系筑後川
34.3メートル
133メートル
392千㎥/113千㎥
九州電力(株)
1931年

大山ダム

2022-06-13 12:00:00 | 大分県
2022年5月24日 大山ダム
 
大山ダムは大分県日田市大山町西大山の一級河川筑後川水系赤石川にある資源機構が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
1964年(昭和39年)の『筑後川水系水資源開発基本計画』(フルプラン)採択により、筑後川水系では水資源開発公団(現水資源機構)により河川総合開発が進められることになりました。
同公団は1972年(昭和47年)に筑後川水系小石原川に江川ダム、1978年(昭和53年)に佐田川に寺内ダムを建設しますが、同年発生したいわゆる『福岡大渇水』により福岡市では時間指定断水が287日間に及ぶ異常事態となり、新たな水源確保が緊急課題に浮上しました。
これを受け公団は1983年(昭和589年)に筑後川上流部の右支流赤石川への多目的ダム建設に着手、2007年(平成19年)に本体工事が着工され2012年(平成24年)に竣工したのが大山ダムです。
大山ダムは水資源機構法による多目的ダムで、筑後川流域の各ダムと連携した赤石川および筑後川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、福岡地区水道企業団および福岡県南広域水道企業団への上水道用水の供給を目的としています。

大山ダム独自の特色として放流水の水質保全及び、流入水と放流水の温度差解消のためダム湖上流に取水堰を設けダム湖をバイパスしてダム下流に直接放流する流入水バイパスが設けられています。
流入水バイパスは同じ水資源機構が2021年(令和3年)に建設した三重県の川上ダムでも採用されています。
また、利水放流を活用した大山ダム発電所で最大520キロワットの小水力発電が行われています。

一方大山町が人気アニメ『進撃の巨人』原作者の諌山創氏の出身地であることから、2020年(令和2年)にダム下公園にエレン、ミカサ、アルミンの等身大銅像が設置され、人気観光スポットなっています。

ダム下へ通じる道路を跨ぐ九州電力の水圧鉄管。
松原ダム下流の筑後川から柳又発電所への水圧鉄管で、大山ダムとは水利関係はありません。


ダム下から
堤高94メートル、堤頂長370メートルでクレスト自由越流頂4門、自然調節式オリフィス1門のゲートレス。
造形としてはたいして面白みのないダムです。



こちらが流入水バイパスからの河川維持放流水。


放流設備兼小水力発電所
各種放流ゲート3条を装備し、最大520キロワットの発電を行います。


これが流入水バイパスの鉄管。


エレン、ミカサ、アルミンの実物大銅像
アプリをダウンロードしてダムにかざすとARでダムに巨人が現れます。


左岸から下流面。


繋留設備へのインクライン。


左右非対称の減勢工。

ダム湖は『鳥宿湖』で総貯水容量1960万立米
曝気装置が稼働しています。


天端は徒歩のみ開放
左岸の三角屋根が管理事務所。


左岸高台の大規模農道からダムを俯瞰できます。


(追記)
大山ダムにはには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2802 大山ダム(1850)
大分県日田市大山町西大山
筑後川水系赤石川
FNW
94メートル
370メートル
19600千㎥/18000千㎥
水資源機構
2012年
◎治水協定が締結されたダム

松原ダム(再)

2022-06-13 06:00:00 | 大分県
2022年5月24日 松原ダム(再)
 
松原ダム(再)は左岸が大分県日田市大山町西大山、右岸が同市天瀬町出口の一級河川筑後川本流にある国交省九州地方整備局が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
1953年(昭和28年)の西日本水害を契機に『筑後川水系治水基本計画』が採択され、筑後川上流部への松原ダム・下筌ダム建設事業が着手されます。
しかし『蜂の巣城紛争』と呼ばれる13年に渡る激しい反対運動によりダムの完成は大きくずれ込み、1972年(昭和47年)にようやく竣工しました。
松原ダムは国交省が直轄管理する特定多目的ダムで、当ダムの上流3.9キロ地点に同時に建設された下筌ダムと一体運用されています。 
当初は筑後川の洪水調節と九州電力松原発電所(最大1万3000キロワット)でのダム水路式発電を目的としていましたが、1984年(昭和59年)にかけての再開発により有明海の海苔養殖業者向けの不特定利水容量および福岡県への上水道用水容量が追加されました。

ダム下から
ダムを正面から見る場所はありません。
クレストにラジアルゲート4門を装備、両端のゲートは径間が短く放流量の細かな変更が可能です。
また写真では写せませんでしたが、コンジット高圧ラジアルゲート3門を備えています。


左岸から。


堤体左岸側直上の繋留設備と巡視艇。


天端は日田と阿蘇を結ぶ国道212号線が通り、結構な交通量です。
大型車も多く車が途切れたタイミングで天端を歩きます。


ダム下には九州電力松原発電所(最大5万600キロワット)
放流水は川の下をくぐり右岸から導水トンネルで2.3キロ下流に放流されます。


ゲート越しに
発電所手前から河川維持放流が行われています。この設備は河川維持放流義務化の際に後付けされたものです。

4門のうち右端のゲートがフルオープンしておりちょっと珍しい絵柄
奥はダム管理事務所。


上流面
対岸は上流の下筌ダム通じる県道647号線。

水面に顔を出すのはコンジットの予備ゲート。
キャタピラゲートです。


上流から
利水放流は基本発電所を通じ行われます。


上流から遠望
右端のゲートが開いていいます。


上流の梅林橋から
二つのトラス橋とダムの絵は珍しいかも?


(追記)
松原ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2775 松原ダム(元) 
左岸 大分県日田市大山町西大山 
右岸     同市天瀬町出口 
筑後川水系筑後川 
FP 
 
83メートル 
192メートル 
54600千㎥/47100千㎥ 
国交省九州地方整備局 
1972年 
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2773 松原ダム(再)(1849) 
左岸 大分県日田市大山町西大山 
右岸     同市天瀬町出口 
筑後川水系筑後川 
FNWP 
 
83メートル 
192メートル 
54600千㎥/47100千㎥ 
国交省九州地方整備局 
1984年 
◎治水協定が締結されたダム