かつてNHKの名番組に、プロジェクトXという番組があったことはご存知でしょう。
「巨大台風から日本を救え 富士山頂レーダー建設」など、戦後日本を支えた技術者達の記録ドキュメンタリーとして優れた映像を残してくれた番組であった。「国産HⅡロケット開発 度重なる失敗を克服」、「新幹線にかけた鉄道マンの夢」、「国産初の航空機YS-11が日本の空を飛ぶ」戦後日本の復興を科学技術の面から優れた切り口で説明してくれた番組だった。「たった一人で始めたTRONプロジェクト。TRON OS を採用してくれたのは皮肉にもNECの技術者だった。(携帯用OSとして)」、「ビデオの規格争い、VHS対ベータ」
大半の技術関連イノベーションを扱った同番組であったが、なぜか取り扱いから外れた技術、製品があった。
それは、Sonyのウォークマン開発関連を一度も扱わなかった。なぜだろうと、あなたも思われるだろう。
答えは単純で、開発に関わった技術者の内、主力メンバーがみな物故者であり、取材が出来ない事情がある。ウォークマンというカセットとほぼ同サイズで、駆動系+再生機構を実現するという、当時の常識では考えられないハードな要求レベルであった。そのため、若手技術者を精神的に追い詰め、相次いで自殺者を出すという事態を生じた事実が明らかにされる以上、ウォークマン開発秘話をプロジェクトXで扱うことができなかった。これが真相であろう。
プロジェクトXのプロデューサーも、当初番組で取り扱い予定であったろうが、そんな事情で、番組制作を諦めたのではないか。
その敏腕プロデューサーが既にNHKを去ったあと、真相は藪の中である。
唯一ついえることは、ウォークマン発売以後、多くの理工系学部は、数年にわたりSonyには卒業生を送り出さなかった。
もう、30年以上も前の話です。