2.脚本を解剖してみよう
2.1タイトルがなけりゃ
脚本を書くときに、タイトルから考える人がいます。
私もどちらかというとそのタイプです。
逆にすべて書き終わってから、タイトルを決める人もいます。
これは好みの問題です。
タイトルが決まれば、話がすべて決まってしまう作品もあります。
つかこうへいの「蒲田行進曲」などは、そのいい例ではないでしょうか。
つかこうへいは、このタイトルを思いついた瞬間に物語がすべて見えたと、
どこかに書いていたような記憶があります。
お客さんは、最初にこの「タイトル」に惹かれて、劇場に来るわけですから、
タイトルを決めることは重要です。
でも、考えすぎてもうまくいきません。
そんなもんなんです。
タイトルを決めるときには、次のやり方があります。
・主人公の名前をタイトルにする。
「ロミオとジュリエット」のように魅力的な主人公を印象づけようとするときに効果があります。
歴史上の人物のときにも使えます。
・物語の主題や事件・事実をタイトルにする。
「帝銀事件」「関ヶ原の戦い」「池田屋騒動」のような歴史上の事件だけでなく、
「生徒大会」といった身近なものでもいいです。
この場合は「ある日の生徒大会」というように
その生徒大会が特別なものであったことを表す説明に当たるものをつける手もあります。
・キーワードをタイトルにする。
感情や事件の中の小道具など、その物語を特徴づけるものをタイトルにします。
「ペーパースノウ」は小道具、「ガッデム!」だったら感情です。
・状態や行動をタイトルとする。
「空騒ぎ」「じゃじゃ馬馴らし」「お気に召すまま」なんかでしょうか。
・風景や情景
「夏色の詩」なんかです。
・地名
「石狩平野」とかです。
「東京慕情」のように、情景を示すものと組み合わせると効果的ですが、
小説の題名みたいになりやすいです。
・意表を突く造語をタイトルとする。
唐十朗の「吸血姫」というのはどうでしょう。「吸血鬼」ではなく「吸血姫」タイトルだけでわくわくしました。
では、タイトルでやってはいけないことは、なんでしょう。
・長いタイトルは基本的につけない
長くてもいいんですけど、覚えられません。
「マルキド・サドの演出のもとに シャラントン精神病院患者によって演じられた
ジャン=ポール・マラーの迫害と暗殺」って、お芝居がありますが、
覚えきれませんので、通常「マラー/サド」と略します。
私の作品でも「どぶ板を踏み抜いた天使」という作品は、
劇団員のあいだでは「どぶてん」と略されています。
・声に出していえないタイトルはつけない
「ウゴッ!」とかでもいいのですが、あとで「「ウゴッ!」観たか」って、
会話になりにくいですよね。
・横文字はあまり多用しない。
簡単なのならいいんですけど、長いと覚えてもらえません。
ましてや、違う意味だったりしたら悲惨です。
・基本的には盗作しない。
実は私はこれは結構好きです。
「黒いドレスの女」とか「グッバイガール」とか、映画の題名と同じものをつけた作品を書いてます。
パロディってやつですね。意図して、同じ題名をつけています。
でも、あとでいろいろ言われることは覚悟しておいて下さい。
どう工夫するのか
まあ、本人が気に入っていればなんだっていいんですが、
なんかしっくりこないときには、こんなことを試してみましょう。
・助詞を変えてみよう
どうしても多く使ってしまうのが、「の」です。
「真夏の夜の夢」なんかそうですね。これは前の部分が状況の説明になっています。
「美人の日本語」、たまたま目の前に本がありました。
これをサンプルに変化させてみます。
「美人な日本語」にすると、ちょっと感情が入ってきます。
「美人と日本語」並列して対比してみました。
「美人が日本語」意味が変わってきます。
「美人さ日本語」「美人だ日本語」「美人に日本語」
だから、なんなのさ、と言われそうですが、「の」でないタイトルはちょっと違って印象づけられます。
「無邪気な遊撃隊」ちょっと観てみたくなりませんか?