こんな文章も書いてありました。
ネットからはだいぶ前に削除したもの。
脚本の手直し
脚本の手直しは、自分の作品の場合と人の作品の場合とがある。自分の作品の手直しは自分自身との戦いだが、他人の作品を手直しする場合にはかなり気を使う。
本来的には他人の作品には著作権があるから手直ししないのが原則だが、選んでしまったあとで、どうしても表現できない部分が見えてくることがある。
演出上の処理で解決できる場合にはいいが、処理できない場合には書きかえということになる。
これの例としては、2001年春に、ある脚本の手直しを行った。
某高校の演劇部が上演脚本を選定して、パンフレットまで出来ているのにうまく行かないという要望に応えたものだ。
作者に対して失礼にあたるので、作品名や作者名、具体的な作品に即した書きかえ作業の工程を明らかに出来ないのは残念だが、基本的な作業は以下の通りである。
1.登場人物の性格が混乱しているので、セリフの再配分を行った。
2.物理的に無理な設定がされていたので、この設定をやめた。
3.設定の変更に伴ってストーリーを変更した。
4.口に出す言葉として力を持たない部分は、カットした。
5.単一の時間の中にある設定をやや複雑にしてみた、
それぞれについて説明を加える。
1,登場人物の性格が混乱しているので、セリフの再配分を行った。
作品の中盤までで形成されていた登場人物の性格が、後半になって微妙に変化しているようなので、セリフを入れ替えてみた。
AのセリフをBに。BのセリフをCに、CのセリフをAにというようにである。どうやらこれは作者の中で混乱があったらしく、セリフを入れ替えることで性格は観客に受け入れやすくなったようだ。これは数ページにおよぶ大幅な書き換えとなった。なお、講評のために事前に修正前の脚本を読んでいた人たちも、この書きかえには気が付かなかったようなので、きっとうまくいていたのだろう。
2.物理的に無理な設定がされていたので、この設定をやめた。
これを説明すると脚本がどういうものか分かってしまう可能性があるから、(まあ、可能性は低いが)大ざっぱに説明すると、壁に相手をぶつけて殺すのではなく、壁を剥がしてこれを加速をつけて相手にぶつけようとした、というようなことをやろうといていたのだ。こんなことはプロレスラーだって無理だろう。
3.設定の変更に伴ってストーリーを変更した。
心理的に怖くなるようにしたのだ.
それまでの設定は「相手を許さない」というものだったが,新しいストーリーは相手を全て許してしまう」という形にした.
これはとても怖くなった.上演中も観客はシーンと静まりかえっていたし、講評でも怖くなったといわれた.こういう時に、ストーリーを細かく説明できないのがもどかしい.
4.口に出す言葉として力を持たない部分は、カットした。
最後のシーンがコロスだったので,集団で発して響きのいいセリフだけを残した.
5.単一の時間の中にある設定をやや複雑にしてみた、これは、一言で時間を隔ててみようと思ったもの。
「偽りの青春」というセリフがあるとする。
これはこれで、いいのだが,この後に「そう言ってみたかった夏」と入れると1ヶ月後ぐらいだか、「そう言ってみたかった、あの夏」にすると何年か後になる。
観客は気がつかないかもしれないけれど、こうセリフを変えることで高年齢層にも思い当たるよう普遍性と、芝居の中の時間を重層的にした。
書き直した結果は、おおむね好評だった。
ただ、ラストシーンが頭とつながらなくなったという批判が一部にあった。
本当は頭も書き換えたかったのだ。
しかし、これをやると、最初から最後まで書き換えることになってどこが本来の作品なのか分からなくなる。
書きかえるときの要領は、推理小説を読むときとと同じように考えるのもいいかもしれない。動機を明らかにして登場人物の心理を合理的に並べてみるのだ。ただ、はっきりとさせすぎて含みがなくなってもつまらない。
そのときは、一回「にやり」と笑ってみよう。客をうまくだましてやろうといういう悪意ぐらいもって。
追記
この最後に「にやり」と笑って悪意を持ってというところが、もしかしたら私の欠点なのかもしれない。ブラックユーモアを好まない人も結構いるので。そこらへんは自分の資質をよく自問してやってください。私の場合、おうおうにしてやりすぎだといわれることが間々あるのだ。
街中に古本屋が増えていく
作家は次々と休業していき
本屋はシャッターを閉め
物語は死んでしまった
橋の下に落ちていた物語を
子供が拾って 丘に埋めた
やがてそこからは木が育ち
風が強い日には
新しい物語をささやく
作家は次々と休業していき
本屋はシャッターを閉め
物語は死んでしまった
橋の下に落ちていた物語を
子供が拾って 丘に埋めた
やがてそこからは木が育ち
風が強い日には
新しい物語をささやく
不安の形をつかまえようと
少年時代の虫取籠を
買いに出かけた
虫売りの巣籠の中には
様々な感情が封じ込められていたが
「不安」は形もなく暗く
輝いている
少年時代の虫取籠を
買いに出かけた
虫売りの巣籠の中には
様々な感情が封じ込められていたが
「不安」は形もなく暗く
輝いている