佐高信評論家が「この国の会社」と題して日刊ゲンダイ電子版に、明治乳業争議団の団員kさんが病に倒れ、その奥さんが明治乳業中山会長に宛てた手紙を、当時のサンデー毎日コラムに掲載していただいた。
その内容を、いま改めて下記に当時の写真を貼り付けて報道してくれました。報道内容そのまま転載して紹介
公開日:2021/12/14 06:00 更新日:2021/12/14 06:00
中山悠明治乳業社長(2006年当時)/(C)日刊ゲンダイ
2009年に明治製菓と明治乳業が統合した明治ホールディングスが、健康意識が高まってヨーグルト類の売り上げを伸ばしていると知って、2004年春に明治乳業会長の中山悠への手紙という形でコラムを書いたことを思い出した。私は同年3月10日に、明治乳業争議団、雪印食品一般労働組合、ネッスル日本労働組合の食品3争議団の勝利を呼ぶ集会で講演したのだが、驚いたのは、あの雪印乳業の事件から、雪印の経営者はもちろん、明治乳業の経営者も何も学んでいないことだった。
明治乳業では当時、30年以上も前から、労働者を赤組、白組、そして雑草組と分断して管理し、差別的な支配を続けていた。それが職場の3人に2人までもが「品質管理に疑問や不安をもって働いている」というアンケート結果となって表れた。
ここに、ガンで亡くなった争議団員のKの夫人が中山に宛てて書いた手紙の写しがある。
Kは労働組合活動を理由とした賃金・昇格差別の是正を求めて東京都労働委員会へ申し立てて闘ってきたが急逝した。そのKがいかに明治乳業を愛していたかを、夫人は次のように訴える。
「(夫は)自宅で療養中、少しでも体力をつけたいと、明治乳業の宅配で自ら牛乳とヨーグルトを注文し、固形物は摂取できなくても牛乳とヨーグルトは欠かさず摂っていました。体力をつければつけるだけガンの増殖は著しく、十二指腸や胃を圧迫し狭窄され、牛乳すらも通過不能となって、体力の低下をいやでも知らされる思いだったと思います。自力で起き上がることもままならず、介助にてようやく起き上がることができている状態となりました。
最後の入院2日前です。『ヨーグルトが食べたい』と言って、明治のヨーグルト1個を一口一口味わうように食べ、『おいしかったよ』と、今までに見せたことのなかった静かな優しい笑顔が脳裏に焼きついて離れません。『明治の製品は一番おいしいんだよ』と言っているようでした。
夫が長い間勤めた会社、明治乳業、自分、そして、仲間のみんながつくった製品を、どこの銘柄よりも一番愛したのではないでしょうか」
胸をうつ訴えだろう。
「『会社をよくしたい』『職場をよくしたい』との愛社精神があればこそ立ち上がったこの争議です。どうぞ、日本のトップ企業である明治乳業をさらに持続させる本当に大切なこの時こそ、争議の解決を心より願いたい気持ちでいっぱいです。
夫の死を無駄にしないで下さい」
こうした声は中山を含む経営陣を揺り動かすことはなかったのか。
明治製菓と一緒になって、さらに大きくなって、働く者の哀切な声に耳を傾けることはさらに少なくなったのではないかと、私は憂える。大きいことは決していいことではないのである。(敬称略)
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