2021年7月16日 NHK「おはよう日本」
アメリカのカリフォルニア州ではワクチンの普及もあって
新型コロナ対策の規制が解除され
経済活動が全面的に再開した。
ワイナリーもその恩恵を受けている。
カリフォルニア州のもっとも有名なワインの産地 ナパバレー。
経済が再開し
高級なワインを楽しむ観光客でにぎわっている。
コロナ禍で一時閉鎖を余儀なくされていたワイナリー。
経済活動の再開で人出が一気に戻っている。
日本円で1万~8万円の食事のコースが人気だという。
(ニューヨークからの客)
「コロナ禍で食事にも休暇にもお金を全然使ってきませんでした。
1年半ぶりのぜいたくです。」
(ワイナリー サーダさん)
「ことしは景気がよく需要がとても高い。
ワインが足りるか心配になるほどです。」
しかし世界的なワインの産地はなお大きな課題に向き合っている。
毎年のように起きる山火事である。
去年の山火事でぶどう畑や施設が壊滅的な打撃を受けたユリアーノさん。
(山火事で被災 ユリアーノさん)
「ここにはもともとテイスティングのカウンターがありました。
今もワインボトルの破片が残っています。」
一度は再建を目指したが
必要な設備をそろえるのに1億円を超える資金がかかることがわかり
断念せざるを得なかった。
いまは手元に残ったわずかなワインを家族が経営するレストランで販売している。
(ユリアーノさん)
「今年中には売り切れてしまうかもしれません。
自分のワインを
もう皆さんに楽しんでもらえなくなると思うと悲しい。」
山火事の背景の1つとして指摘されているのが地球温暖化である。
甚大な被害を受けるワインの産地でも
温暖化対策でできることはないのか模索が始まっている。
「カーボンファーミング」と呼ばれる温室効果ガスを少しでも出さないようにする農法に取り組んでいるワイナリー。
畑をたい肥で覆い
地中に含まれる炭素が放出されにくくする。
そしてブドウの木の間にはあえて別の植物を植え
二酸化炭素の吸収や土壌の質の改善をはかっている。
こうした取り組みはこの2年ほどで地域の70のワイナリーに広がっている。
このワイナリーは
地道な取り組みを1つ1つ積み上げることでワインの産地の持続可能性を高めたいと考えている。
(カーボンファーミングを取り入れているワイナリー ベレアーさん)
「カーボンファーミングは気候変動の影響を軽減することができる。
1人では解決できないが
みんな自分にできることがあるはずだ。
小さな1歩も役に立つ。
諦めてはいけない。」
2021年7月9日 NHKBS1「国際報道2021」
インドネシアの感染拡大は経済の再開に向けての動きにも大きな影響が出ている。
世界有数のリゾートを抱える東南アジアの観光業復活に向けた動き。
タイのプーケット島とインドネシアのバリ島。
どちらも日本人に人気の観光地だが
プーケット島は7月から隔離無しで外国人観光客の受け入れを開始。
そしてバリ島は国内の観光客やビジネス客の受け入れに力を注いできた。
タイ政府とインドネシア政府はこの2つの島を足掛かりに
観光業の復活を目指しているが
感染が拡大するなか2つの島の動きはどうなっているのか。
7月1日
世界的リゾート地として知られるタイのプーケット島で
隔離無しの観光客の受け入れが始まった。
義務付けられている2週間の隔離がプーケット島に限って免除され
閑散としていたピーチにはさっそく観光客の姿が見られた。
(観光客)
「ずっとここに来たいと思っていたの。
隔離無しは本当に良いと思う。」
観光客を受け入れつつ感染拡大をどう防ぐか。
タイ政府が進めたのは
“サンドボックス”と名付けた計画である。
サンドボックスは
子どもが自由に遊ぶことができる砂場をイメージする。
自由に観光できるのを砂場に見立てた島に限ることで
感染リスクを封じ込めようというのである。
計画ではまず
島内の住民に重点的にワクチン接種を進めた。
対象の約7割はすでに接種済みである。
その上で観光客の受け入れは
政府が感染リスクが比較的低いと認めた68の国と地域に限り
ワクチン接種などの条件も付けた。
観光客は島から出ていないことが分かるよう
位置情報を提供するアプリの利用が義務付けられる。
船着き場のチェックポイントでは
観光客がもし条件を満たせなかった場合
検知され
外に出ることができない。
自由な旅行とまではいかないが
それでも政府は
3か月で10万人の外国人観光客が訪れると見込んでいる。
地元では受け入れ開始に期待が高まっている。
6連泊する場合さらに1泊無料を追加する特別プランを準備したホテル。
長く滞在する観光客を取り込もうとしている。
(ホテルのオーナー)
「これまでは国内の観光客しかいませんでしたが
外国人観光客をまた迎えることができてとてもうれしいです。」
ただ
島のすべてが元に戻るわけではない。
外国人観光客でにぎわっていた歓楽街は真っ暗なまま。
“バーやクラブは感染リスクが高い”として引き続き営業が禁止されているのである。
受け入れのメリットは島全体には行き渡らないとして不満の声も出ている。
(歓楽街の団体 代表)
「怒りを感じます。
すべてを再開させるべきです。
小さな商店に利益が全く回ってきません。」
一方
バリ島などの観光地を抱えるインドネシアは
水際対策を強化したままの状況が続いている。
観光目的の入国は2020年4月から禁止され
再開は見通せない状況である。
観光業を支えようとインドネシア政府が2021年1月から開始したのが
国内向けのプロジェクト “ワーク・フロム・バリ”である。
観光を担当する閣僚自らがバリでテレワークを実践しPR。
首都ジャカルタなどから公務員やビジネスマンを呼び込み
仕事しながらリゾートも満喫する“ワーケーション”を広げようとしている。
ワーケーション向けに通常よりも宿泊費が大幅に安くサービスも充実したプランを提供しているホテル。
(ホテルの従業員)
「スイート・オーシャンビューの部屋は仕事がはかどると思います。」
485部屋あるホテルの稼働率はコロナ禍になって10~20%だったが
6月は公務員の団体を14グループ受け入れたことで稼働率も上がったという。
(ホテルの従業員)
「ワーク・フロム・バリによって少しずつ回復の兆しが見えております。
私たちのホテルでは政府のワーケーションを受け入れ
稼働率は50%になりました。」
実際にワーク・フロム・バリを始めた人がいる。
スタートアップ企業のコンサルタントをしているハルマトゥサディアさんである。
2020年7月 ジャカルタから拠点を移した。
島内の各地を転々としながら仕事をし
合間にはのどかな自然を楽しんでいる。
(ハルマトゥサディアさん)
「ジャカルタから多くの人がワーケーションに来ています。
交流して
お互いのプロジェクトのことを話したり
何か一緒にやろうという話にもなったりします。」
地元の州政府は外国人観光客の受け入れの再開が始まるまでの間
ワーケーションの需要が頼りになると考えている。
(バリ州政府観光局 アスタワ局長)
「私たちは8月末までにバリ島の全住民のワクチン接種を終わらせようとしています。
外国人観光客の受け入れを再開できるよう努め
少しでも早くその日が来ることを望んでいます。」
しかしいま感染の急拡大で計画は厳しい状況に追い込まれつつある。
ジャカルタなどで感染者が増えたことで
バリ島でもビーチが閉鎖され
飲食店の店内飲食も禁止となった。
これにより予約のキャンセルや延期が相次いでいる。
インドネシア政府は2021年7月から「ワーク・フロム・バリ」のプロジェクトをさらに拡充する予定だったが
それどころではない状況に陥っている。
国内向けの需要を観光業復活の足掛かりにしようとしてきたインドネシア。
感染の急拡大で
計画は見直しを余儀なくされている。
2021年7月8日 NHKBS1「国際報道2021」
中国で起きている新たな食のブーム。
サラダに代表される低脂肪・低糖質などをうたうライトミール(軽食)。
中国では野菜好きの人たちを指す“食卓族”という新たな言葉が生まれている。
このブームを追い風に
世界的に評価の高い日本発の野菜のタネを売り込む取り組みが
いま本格化している。
中華料理として思い浮かぶのは
たっぷりの油で肉や野菜などを豪快に炒めた料理。
ところが今新たなトレンドが生まれている。
北京の中心部にあるレストラン。
この店の売りは生野菜を主体にしたメニュー。
油を使わずカロリーを抑えた「ライトミール」である。
(客)
「いつも油っこい料理をたくさん食べているので
たまにライトミールを食べると健康的に感じます。」
「油も塩もないし消化にいい。
私たち30歳以上にはとってもいいわ。」
日本円で1品600~800円とランチの値段としてはいくぶん高めだが
健康に気を遣う若者などを中心に大人気となっている。
こうした傾向は地方にも広がっている。
内陸部の湖南省長沙。
市民の野菜の質へのこだわりも高まっている。
有機野菜などを売りにしたスーパー。
トウガラシ 1パック 日本円で2,300円余。
それでも売れているという。
この地域の料理に欠かせないトウガラシなど
農薬や化学肥料を使っていない有機野菜が並ぶ。
(客)
「品質が良ければ値段が多少高くても買います。
高いものは舌触りもいいから。」
「添加物を使っていないか
有機栽培かどうかを気にします。
みんなの生活水準が上がり
食べ物への要求が上がっているので。」
2008年 中国製の冷凍ギョーザから殺虫剤の成分が検出される事件が起きるなど
中国ではかつて食に関する事件や事故が相次いだ。
食品の安心・安全を重視する消費者が増えて
中国政府は2009年に「食品安全法」を施行。
野菜についても
値段が高くても高品質なものが人気を集めるようになっていた。
こうした人々の意識の変化を大きなビジネスチャンスととらえて動き出す日本企業も出ている。
大手商社の三井物産は
日本の野菜の種を中国で販売するビジネスに参入。
中国のメーカーとのプロジェクトを正式にスタートさせた。
(三井物産 森安東アジア総代表)
「中国そして世界の皆様の豊かな生活作りに貢献できるよう尽力したい。」
取り扱うのは日本の中小の種子メーカーが品種改良して作り上げた野菜のタネである。
味が良い上に病害にも強く
安定した収穫量が見込めるのが特徴である。
海外展開のため中小のメーカーとともに合弁で企業を起ち上げた。
手を組んだのが中国最大手の種子メーカー。
中国は野菜の生産が世界の半分以上を占める大市場である。
(隆平高科 袁副会長)
「中国は急速に発展している国で
市場は極めて大きい。
みなさんには早く中国に溶け込んでほしい。」
(三井物産 森安東アジア総代表)
「今後 両者で協力してウィンウィンを目指して頑張りましょう。」
日本で開発されたタネをどう中国で育てるのか。
さまざまな野菜の栽培実験も始まっている。
(湖南湘研種業 劉さん)
カボチャは
「日本から持ってきたものは舌触りがいい。
中国のものに比べ品質が高い。」
オクラも日本で開発された。
(湖南湘研種業 劉さん)
「このオクラは形がきれい。
鮮やかな緑色で鮮度が長持ちする。」
日本の種子メーカーはタネからどうやって継続的に利益を得るのか。
実は品種改良でできたタネで品質の高い野菜が安定してできるのは
遺伝の特性上
1代限りなのである。
1代目の野菜から取れたタネをまいても
次の世代は品質にばらつきが出てしまう。
安定した品質の野菜を育てるには農家はタネを買い続けるしかない。
そのため種子メーカーは継続して利益を得ることができるのである。
一方 農家もタネを買うことで大きなメリットがあるという。
(農家 肖さん)
「色・形がそろっているし病害虫にも強い。
収穫量も多いし商品もいいからタネを買います。」
この商社では日本で開発されたタネを売り込むだけでなく
中長期的には
日本と中国のタネをかけ合わせるなど
共同で
世界的にも競争力のある商品を開発する計画である。
(三井物産広東 菅野総経理)
「中国はマーケットそして大きいのと同時に
生産力 開発力も十分持っています。
お互い持っている力やリソースを融合させることで
世界のマーケットで展開することも考えています。」
2021年7月7日 NHKBS1「国際報道2021」
高齢化が進むにつれて増えている認知症。
認知症では記憶が失われるだけでなく
無気力や無表情になったり
あるいは不安や焦燥感に駆られたりする。
そのため抗うつ剤や向精神薬などの薬に頼るケースが多くある。
こうしたなかフランスでは去年オープンした施設が注目されている。
狙いは入居者を取り巻く従来の環境を変えることだった。
より日常生活に近いかたちで日々を楽しんでもらうことで
薬に頼らない施設を目指している。
フランス南西部のランド県に1年前にオープンしたアルツハイマー村。
5ヘクタールの広大な敷地に
認知症と診断された100人余が「村人」として入居している。
入居の条件は寝たきりでないことで
1つの居住棟におよそ7人が共同で生活している。
村の特徴は
スーパーや劇場なども設け
出来るだけ日常的な生活環境を整えていることである。
(店員)
「フェタチーズとモッツァレラチーズ
どちらがいい?」
(村人)
「フェタチーズ。」
店員は実はスタッフやボランティア。
交流や会話を促すことで脳を刺激している。
(“店員役”ボランティア)
「村人は日常的な活動をすることで記憶を維持することができるのです。」
なかでも村人たちに人気なのが美容院。
(村人)
「明るい雰囲気で
楽しいことが多いです。」
(美容師)
「ダンスもしますよね?」
(村人)
「踊れないけれどね。」
村では医師を含むスタッフとボランティアがそれぞれ120人
24時間体制で村人たちを見守っている。
交流と会話を促す仕掛けは居住棟の設計にも。
その大半はダイニングや台所などの共同スペース。
それぞれの寝室はあるが共同スペースで交流しやすいようにしている。
同居者は体の状況や性格などを考慮して組み合わせている。
村人たちはスーパーで入手した食材を自ら調理し
包丁も自由に使える。
リスクよりも
一般の人と出来るだけ変わりない生活をおくれることを優先しているのである。
(アルツハイマー村 ラセールセルジャン所長)
「禁止されていることは何もありません。
私たちと同じ
ごくごく普通の生活です。」
こうした成果をスタッフも肌で実感している。
常駐する医師は
“従来のような薬物治療に依存することが少なくなった”という。
(ドレアノアルツ医師)
「多くの患者への薬の処方が激減しました。
わかっていたつもりですが
人間同士の関係の大切さを再認識しています。」
認知症の患者には無気力や無表情の人が多いのだが
ガーデニングの時間に見知らぬ取材陣に話しかけてくる人も。
(村人)
「こんにちは。
ラエティシアです。
ガーデニングが大好きです。」
さらにこうしたやりとりも。
(村人)
「土をかき出してくれる?」
「下がって下がって。」
村人たちの交流や助け合いが自然に生まれていた。
アルツハイマー村の生みの親
ランド県議会のフランシスコ・ラコストさん。
ラコストさん自身かつてアルツハイマー病と診断された叔父を介護施設に入れるしかなかったことに疑問を抱いていた。
(アルツハイマー村の宇井の親 ラコストさん)
「従来の介護施設は病院の体制と同じです。
叔父のことはつらい思いでしか残っていません。」
参考にしたのはオランダで始まっていた同じような村の取り組み。
視察したラコストさんは
入居者も家族もみな笑顔で過ごしていることに衝撃を受けた。
そこで行政などを巻き込み「村」の建設を目指す。
当初
“患者の収容所を作るのか”
“薬を使わない療養法は確立していない”
といった反対意見があがったが
数年かけて説得していった。
(アルツハイマー村の生みの親 ラコストさん)
「信念を貫いて行政などの提携期間を説得しました。
新たな選択肢を示したかったのです。
最後まで自分らしい人生を貫いて生きることができる選択肢です。」
運営するのは国や県も関わる公益団体。
建設費や運営費に行政の補助を得ることで
月の利用料は約3万円~26万円となっている。
村では国による研究も進められている。
村人の認知機能に加え
家族・スタッフ・周辺住民の精神状態や認知症への意識の変化など
5年かけて調査する。
研究を指揮する国立研究所のアミエヴァ医師は
“この村の効果を実証することで社会の認知症そのものへの対応を変えたい”という。
(国立保健医学研究所 研究チーム アミエヴァ医師)
「社会やさまざまな人々との交流
共同生活の体験などが脳の機能を豊かにします。
アルツハイマー患者を既存の施設に対応させるのではなく
社会が適した環境を提供すべきなのです。」
2021年7月6日 NHKBS1「国際報道2021」
中東の経済ハブとして急成長を遂げてきたドバイ。
世界でもいち早く去年7月からビジネス客や観光客の受け入れを再開した。
2021年5月には万博を見据え
ホテルや飲食店の利用者数の制限を大幅に緩和。
欧米などからコロナ疲れした観光客などが大勢押し寄せている。
(ナイトクラブ運営会社 マーケティング担当)
「多くの観客が戻ってきた。
皆楽しんでいる。」
UAEは「ドバイモデル」とも言われるコロナ対策を推し進めている。
世界に先駆けてワクチンを確保し
人口1,000万のうち半数以上が少なくとも1回のワクチン接種を受けた。
一方
海外から来る人たちには
陰性証明があれば隔離を免除するなど
人の往来を極力制限しないようにしてきた。
国内での感染拡大を食い止めながら経済活動を重視する
強気の国家戦略である。
万博もこの「ドバイモデル」に乗っ取って準備が進められている。
UAE政府は各国のパビリオンのスタッフ全員がワクチンの接種を受けられるようにする計画である。
万博会場まで延伸された鉄道の従業員も
外国からの客に接触する可能性があるとして全員がワクチンを接種した。
(鉄道当局幹部 ムタッワー氏)
「いま鉄道を利用する人が増えている。
感染対策がしっかりしていると信頼されている。」
一方で来場者にはワクチンの接種や陰性の証明は求めない。
入国時の空港などでのチェックを通過すれば感染リスクは低いと判断しているのである。
(ドバイ万博政務部長 ガルガウィ氏)
「2,500万人の来場目標は変えない。
入場にあたってワクチンや陰性証明は求めない。
ドバイはいろんな国や地域の人たちを歓迎する。」
UAEはこれまで交通の利便性や充実した宿泊施設などを武器に
国際会議やスポーツ大会の誘致に力を入れてきた。
その取り組みはコロナ禍でも「ドバイモデル」のもと続けている。
2021年5月に行われたサッカーワールドカップのアジア2次予選。
UAEは
感染対策を理由に中国で開催できなくなった試合を受け入れた。
さらにクリケットなどほかのスポーツでも代替開催に名乗りを上げ実績を重ねてきた。
(UAEサッカー協会 ザヒリ事務局長)
「感染対策によって私たちは成功している。
今後の自弁とも同様に対策をして成功を継続したい。」
しかし自信を持って進めてきた「ドバイモデル」にこのところ暗雲が立ち込めている。
一時終息するとみられていた新規感染者数が5月半ばから増加に転じ
今は連日2,000人ほどと高止まりしているのである。
変異ウィルスが国内で広がっているものとみられている。
これを受けアメリカ国務省は6月28日
UAEで感染が蔓延しているとして
渡航情報を4段階で最も厳しい「渡航中止の勧告」に引き上げた。
湾岸諸国で最大の人口を抱える隣国サウジアラビアも
UAEとの往来を当分の間 原則禁止すると発表した。
それでもUAEはいまのところ
万博に関連した外国人の入国や来場に新たな制限を設ける計画はない。
専門家は
あくまでも世界が注目するビッグイベントの通常開催にこだわるだろうとみている。
(日本エネルギー経済研究所 主任研究員)
「観光や運輸 物流
そういう人・モノ・カネを集めて成長してきた国 土地なので
そういった人たちが来なくなってしまうとUAE経済が止まってしまう。
コロナ禍でも大規模なイベントを成功させるという事が国家の威信をかけたものになる。」
2021年7月6日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」
水素を使った発電で代表的なのは燃料電池である。
水素と酸素を化学反応させることによって発電し
排出されるのは水という脱炭素化に最適な発電方法である。
このような水素技術の開発は世界中で行われているが
韓国でも近年 国を挙げて力を注いでいる。
韓国南東部のウルサン市。
世界を代表する造船の町として知られているが
近年 水素技術の開発でも注目されている。
町の中で見られるのは水素の燃料電池で走るバス。
2020年12月にオープンした
自動車に水素を充電する水素ステーション。
(水素ステーション会社 理事)
「このステーションは水素製造工場とパイプラインでつながっています。」
従来の水素ステーションは水素をトラックなどで運んでくる必要があった。
このステーションでは工場から迅速かつ安全に水素の供給をすることができ
将来のインフラとして拡大が期待されている。
(水素ステーション 理事)
「韓国では初めての試みです。
利用は1日30~50台ですが
今後さらに増えると思いまう。」
ウルサン市が水素の技術開発に本格的に力を入れ始めたのは3年前。
水素燃料電池実証化センターを開設した。
国からの支援を受け
約40億円の費用をかけて建設。
現在 現代自動車など10の企業が全国から集まり
効率の良い燃料電池の開発に向け実験を進めている。
一方 韓国政府も2年前「水素ロードマップ」を作成。
2040年までに水素を使って走る燃料電池車を620万台生産すると発表した。
(韓国 ムン大統領)
「水素の生産・貯蔵・運送・活用の分野で
新しい産業と雇用を創出するだろう。」
この計画を加速するため
2021年1月 ウルサン市に経済自由区域庁も設置された。
水素に関心のある企業の相談に乗るだけでなく
海外企業からの投資を呼び込むなど
積極的にPR活動を行なっている。
(ウルサン経済自由区域庁長 チョ氏)
「水素産業のために
より良い環境を作り
企業が積極的に投資できるようにします。」
こうしたなか
ある造船会社が新たな試みを行なっている。
水素燃料電池を動力とした小型船の開発である。
造船会社のイ社長。
4年前 大手造船会社を退職し
この会社を起ち上げた。
「独自の船を造ろうと開発を始めました。
将来性がある事業なので投資を決めたのです。」
水素タンク8本が搭載されているこの船。
自動車用に開発された燃料電池をどのようにして船用に改良していくかが大きな課題だった。
イさんたちは何度もウルサン市に機器を持ち込み技術の検証を重ねてきた。
そして2021年5月 ようやく試作品が完成。
ウルサン市を視察に訪れたムン大統領に直接成果を報告した。
今後は小型船の実用化に向けた実験を続けていく予定である。
(造船会社 社長 イさん)
「がんばって開発の成果を出して
商用化できる船を早く造りたいです。」
2021年7月5日 NHKBS1「国際報道2021」
エジプトのカイロを流れるナイル川周辺は
高層ビルなど建物が密集して交通量も多い。
生活のすぐそばにナイル川が流れている。
その長さは世界最長の約6,700km。
数千年にわたって領域の暮らしを支えてきた。
「エジプトはナイルのたまもの」
これは歴史家ヘルドトスの言葉である。
エジプトにとってナイル川は国内の水需要の95%をまかなう生命線である。
ただ近年エジプトでは人口が急増して
去年1億人を突破したことで水不足に陥りつつある。
さらにいま大きな懸念となっているのが
ナイル川の上流にあるエチオピアの動きである。
青ナイル川にアフリカ最大級のダム
大エチオピア・ルネサンスダムを建設し
水力発電を行う予定で
すでに水を溜め始めている。
これによってエジプトではさらなる水不足に陥りかねないとして
エチオピアとの対立が深まっている。
人口の急増で
1人あたりの水消費量が
国連が定める水不足の水準となっているエジプト。
とりわけ大きな課題となっているのが
水需要の75%を占める農業用水の確保である。
古代からナイル川の水を畑に引く灌漑(かんがい)農業が行われてきた。
今でも用水路からポンプで大量の水を汲み上げ畑にそのまま流すのが一般的である。
政府は水不足に直面するなか
ナイル川から用水路に流す水の量を制限せざるを得なくなっている。
(農家 アハマドさん)
「いまは10日間で5日しか用水路に流れない。
水不足が進めば作物も栽培できなくなります。」
エジプト政府は
用水路をコンクリート壁に改修して
地中への浸水を防いだり
大量の水を使うコメなどの栽培を制限したりする政策を導入。
節水に乗り出している。
中でも大々的に推進しているのがいわゆる“天敵灌漑(かんがい)”である。
プラムや豆を栽培している農家は3年前に導入した。
くみ上げた水をホースに流し
その穴から水が効率的に作物の周りに滴り落ちる方法に変更した。
これで水は約75%節約できた。
(農家 ムハンマドさん)
「点滴灌漑によって使う肥料も少なくて済み
収穫できる作物が増えました。」
こうしたなか
ムハンマドさんたち農家の人たちが懸念しているのが
エチオピアで進むダム建設である。
ナイル川の水量に影響が出ないか
気がかりだという。
(農家 ムハンマドさん)
「ダム建設は全ての面で危機といえるので
国同士で解決策を見い出してほしい。
ナイルの水は数千年前から続く
エジプトの人々の命そのものなんです。」
エチオピアで建設が進む大エチオピア・ルネサンスダム。
国民の半数以上に十分な電気が行き届いていないため
2011年から始まった国家プロジェクトである。
総貯水量は740億立方メートル(琵琶湖の2,7倍)。
2020年の夏 第1段階の貯水を行ない
雨季を迎える2021年7月にも第2段階の貯水を始めるとしている。
ダムが建設されているのはスーダンとの国境近くのナイル川の上流。
下流のエジプトやスーダンは貯水方法や放水量などをめぐって
建設当時からエチオピアと交渉を続けてきたが
合意に至っていない。
アメリカも仲介に乗り出したが
2020年 交渉は頓挫し
トランプ元大統領からはこんな発言も飛び出した。
(アメリカ 当時のトランプ元大統領)
「追い詰められればエジプトはダムを爆破するだろう。」
ダム建設は自国の権利だとするエチオピアは
(エチオピア 諜報・治安当局局長)
「どんな邪魔があっても
第2段階の貯水は予定通り進める。」
一方エジプトは
合意がないまま貯水が進めば特に渇水時に放水量が減らされて深刻な水不足につながる恐れがあり
国の命運が握られるとして反発を強めている。
(エジプト シシ大統領)
「エジプトの水を侵害することはレッドラインだ。
誰も水1滴奪うことはできない。
そんなことをしたら想像できない状況になるだろう。」
エジプトとスーダンは2021年5月
「ナイル川の守護者」と根付けた大規模な軍事演習を実施。
エチオピアへの軍事的な対応もちらつかせている。
(ナレーション)
エジプト軍最高司令官は
「この訓練に参加した部隊はエジプトとスーダンからのあらゆる脅威に対する準備はできている」
と述べた。
ナイル川の水資源をめぐる対立は
地域の安全を脅かしかねない火種となっている。
2021年7月1日 NHK「おはよう日本」
7月1日は滋賀県が設けた “びわ湖の日”。
毎年 びわ湖の清掃活動など環境保全の取り組みが行われている。
そのびわ湖から生まれて
注目されているのが革製品。
湖の環境を乱す“やっかいもの”と言われる
外来魚のブラックバスと水草から生まれたものである。
今年4月に販売が始まった財布やキーケースなどの製品。
ブラックバスの皮を水草で染め上げて作られている。
うろこ模様や水草から出る温か味のある色が目を引く。
びわ湖では
固有種の魚を食べて生態系を乱す外来魚のブラックバスや
春から秋にかけて大量発生する水草が問題となっている。
水草は
舟が通る路の邪魔になったり
悪臭がただよったりする害もあるため
年間5,000トン以上が撤去されている。
この水草を染料に加工したのが滋賀県の環境関連企業である。
これまで水質改善ビジネスに力を入れ
海外の企業とも取引をしてきた。
代表はやっかいものの水草を活用することに大きな可能性を感じている。
(環境関連企業 青山代表)
「たくさん常に出ていくる植物資源は世界的にもあまり無い。
そこがおもしろい。」
独自の技術を搭載した機械で効率的に水草を加工できる。
びわ湖で取れた水草を入れかき混ぜる。
長さのあった水草は短時間で粉砕される。
そして15時間ほど加工したものは乾燥も進み
さらに細かい状態に。
こうしてびわ湖の水草は染料に生まれ変わった。
これを使い製品の皮の部分を製造しているのが兵庫県姫路市の工場である。
製品を企画した皮革製造会社の新田さん。
大の釣り好きでびわ湖を訪れる機会も多かったという。
(皮革製造会社 新田さん)
「ブラックバスを釣るのがすごく好き。
何か新しいものができないか考えていたときに思いついた。」
材料はレストランで食材として使われた後のブラックバスの皮。
これまで廃棄されていた部分である。
加工しやすくするためうろこを1つ1つ手作業で取っていく。
そして皮を染めるために使うのが粉砕し乾燥させた水草。
これをネット上の袋に入れ鍋で煮詰めたものが
製品の色合いのきもとなる染料である。
「このままだと熱いので冷ましてからドラム型の機械に入れてなじませる。」
皮につやを出して仕上げ
縫い合わせていけば製品の完成である。
(皮革製造会社 新田さん)
「やっかいものと言われているが
僕はそうとは思っていない。
それに我々はもう1回命を吹き込んでいる。
何か力になれればと思っている。」
びわ湖のブラックバスと水草から誕生した革製品。
“やっかいもの”と呼ばれる存在の新たな活用策として注目されている。
2021年6月26日 NHK「おはよう日本」
新型コロナウィルスの感染拡大が続くなか
密を避けられるレジャーとして
屋外でのキャンプ場が注目されている。
兵庫県丹波市は面積の75%が山。
農業と林業が盛んな地域である。
自然豊かなこの場所に
会員制のキャンプ場が5月に誕生した。
神戸市などの都市部から週末を過ごしにやってくる。
キャンプ場の代表を務める伊藤さん。
伊藤さんはもともとキャンプが趣味だった。
コロナ禍でも安心して楽しめる場所を作りたいと
1年前から整備してきた。
(ダイナソーベースプロジェクト 伊藤代表)
「安心してキャンプを楽しめる
友だちと家族と
他の方に迷惑をかけないよう
私たちも自分たちで楽しめるようなプライベートキャンプ場にしたいなと。」
ふだんは神戸市で整骨院を営んでいるが
週末は丹波市で過ごしキャンプ場の整備をする2拠点生活を続けている。
(伊藤代表)
「向こう行ったら完全に切り替えるしかないので
強制的にオンとオフを分けてくれるというか
私にとってはいい切り替えのスイッチなのかなと思う。」
キャンプ場のコンセプトは“みんなで作る”。
力を合わせて一からキャンプ場を作り上げるプロジェクトである。
ここはもともと使われなくなった鶏舎が建っていた。
はじめは友人と数人で作業を始めたが
通い続けているうちに地元の人たちも加わった。
鶏舎があった場所には駐車場を
トイレのほか倉庫も整備した。
テントサイトの入り口にゲートも設置。
最低限の工事に1年がかかった。
今後は洗い場など設備をより充実させていくつもりである。
(伊藤代表)
「地元の人と一緒に作業することで仲良くなっていったなっていう感覚がありますね。
うちの野菜取れたやつをみんなで食べてねとか
温かく見守ってくだあっている感じ。」
(地域の女性)
「平均年齢下がったというか若くなって
活気が出てうれしいです。」
より多くの人に関わってもらいたい。
整備費用やボランティアをクラウドファンディングで募ると
想定以上の120人余から支援が集まった。
(伊藤代表)
「気づけばいろんな仲間が来てくれて
地域の方も協力してくださって
このキャンプ場を通してここを一緒に盛り上げてもらえたら一番幸いかなと。」
この日伊藤さんを訪ねたのは丹波市への移住を支援する担当者である。
伊藤さんの活動に移住促進へのヒントがあると感じていたからである。
(伊藤代表)
「子どもたちはすっといくじゃないですか。
で 体験しながら大人も交わるようになったらコミュニティーが新たにできたりするし
それをきっかけに移住じゃなくても2拠点でも
つながっていくきっかけにさえなったらね。」
(丹波市移住相談窓口 たんば“移充”テラス「TurnWave」)
「地域の人にとっても遊びに来られてる人にとっても
にぎやかなコミュニティーになってもらったらうれしい。」
(伊藤代表)
「移住につながったらうれしいし
結果的にそれにつながったらいいかな。
本当にまだ丹波にもっと魅力があるスポットがいっぱいあると思うので
そこをちょっとずつ開拓できたらいい。」
丹波を訪れる人と地元丹波の人。
両方が集うコミュニティーとして
キャンプ場に新たな灯がともった。
2021年6月26日 NHK「おはよう日本」
アメリカの“スタンダップコメディー”。
1人で舞台に立ちしゃべりだけで観客を笑わせる
アメリカでは定番の1人漫談である。
政治や社会問題を皮肉を交えながら風刺するのが特徴である。
このスタンダップコメディーに挑戦し活躍しているのが
日本人コメディアンの Saku Yanagawaさん。
新型コロナウィルスの感染拡大以降
アメリカでアジア人差別が広がるなか
Sakuさんは笑いで差別意識を変えようと奮闘している。
Saku Yanagawa(29)(本名 柳川朔)。
4年前からシカゴを拠点に活動している。
日本人ならではの視点で
アメリカ社会を風刺するのがSakuさんの持ち味である。
タトゥー(入れ墨)は日本では伝統的にヤクザの印
こっちに来たらタトゥーしている人が多い!
こんなにヤクザが広まってたなんてビックリ!
劇場が全面再開したいま
Sakuさんは毎日舞台に立っている。
(スタンダップコメディアン Sakuさん)
「日本人として生まれ育った僕だからこそ伝えられる声があると思う。
アメリカ側から日本はこう思われているだろうけれど
実際そうじゃないっていうところとかも笑いにしていく。」
大阪の大学で演劇を専攻していたakuさん。
偶然テレビで見た
アメリカで活躍する日本人コメディアンに感銘を受けたのがきっかけだった。
(スタンダップコメディアン Sakuさん)
「これや!と思って。
マイク1本で身ひとつで
言葉もバックグラウンドも全く異なる人たちを笑かしているところが
なんて豊かな芸能なんだろう。」
それまで一度もアメリカを訪れたことはなかったが
語学留学などで英語を猛勉強し
大学卒業後シカゴに移住。
しかし最初は全く通用しない日々が続いた。
(スタンダップコメディアン Sakuさん)
「アメリカのツボがどこかというのも分からない。
ネタをしてウケなかったときはやっぱりへこむ。
何のために海外に来てやっているんだろうと思ったこともある。」
笑いのツボをつかむため
Sakuさんは毎朝アメリカの新聞8社のネット記事を確認。
アメリカにおけるアジア人の立場や認識を理解するにつれ
徐々に笑いのツボをつかんでいったという。
君たちにとっての第二次世界大戦の偉大なヒーローは
僕の祖父の最大な敵なわけで
ちょっと気まずいんだけど
本当なんだよね
渡米して2年。
努力が実を結び
多くの著名人を輩出したコメディークラブのイベントに日本人として初めて出演を果たす。
コメディーの総合演出家もSakuさんを高く評価している。
(コメディー総合演出家 ケリー・シーハンさん)
「Sakuさんは複雑な社会問題から目を背けず
喜びを感じながら
人々に発見を与え
最後は笑いをとる。
それこそスタンダップコメディーのすべてなのです。」
政治や人種など分断が進むアメリカ。
特に新型コロナの感染拡大以降はアジア人への差別や偏見が深刻化している。
Sakuさん自身も去年客席から「おい!コロナ!」とヤジを飛ばされた。
その時即興で考えついたネタを今でも舞台を披露している。
観客の1人が「おい!コロナ」と叫んできたんだ
でも彼は違う銘柄のビールを飲んでいたんだよ
それでウェイターにあの人種差別主義者に“コロナ”ビール5本持ってってと言ったんだ
新型コロナで分断が加速するなか
Sakuさんは笑いで人々の差別意識に訴えかけたいという。
(スタンダップコメディアン Sakuさん)
「ジョークに会場みんなで笑えた瞬間に
その空間は少なくとも分断がなくなっていると信じている。
人種的・宗教的にも意見が異なる人の前でこそ笑かすことができれば
舞台に立つ意味はある。
続けていかな。」
アジアンヘイトはやめようぜ!
2021年6月25日 NHKBS1「国際報道2021」
絶妙なアクセル操作で車をコントロールする
技術とスピードを競うドリフト。
日本の峠道で始まり
今や世界的なモータースポーツとなっている。
なかでも熱狂的なファンが多いのがロシア。
今年 日本以外で初めての世界選手権が開かれた。
3年前に世界一の座を獲得した
ロシアのゲオルギー・チフチャン選手。
自慢の愛車は
かつて日本の走り屋たちに愛された日産シルビア。
(ドリフトレース 元世界チャンピオン ゲオルギー・チフチャン選手)
「このクルマは前後の重量配分がとてもよく
ボディが丈夫でしかも軽量
スタイルもすばらしい。」
ドリフトで多くの選手が使っているのが
主に1980~90年代にかけて生産された日本車
いわゆる“旧車”である。
今その旧車がロシア全土で若者の心をとらえている。
週末になると各地で旧車のオーナーたちが集まり愛車を披露し合う。
(参加者)
「格納式ライトにミッドシップ
後輪駆動にハイパワー
こんなクルマはもう2度と生まれないでしょう。」
現在のクルマにはない独創的なデザインや
技術者のこだわりが詰まった機能などが魅力だという。
「簡単に修理もできるので
このクルマの設計者に感謝したい。」
構造がシンプルで自分でも修理することができ
維持費が安上がりなこともロシアの若者が支持する理由である。
Q.大きくなったらどんな車を買う?
「日本のクルマ。
一番好きなのは日産スカイライン。」
ロシアには右ハンドルの日本車が1990年代ごろから中古車として輸入され
主に極東で広く普及した。
しかしロシア政府は国産車などを保護するため
関税の引き上げや保安基準の変更など
輸入を規制する措置をたびたび導入。
これに対し
日本の中古車が普及していた極東の市民が激しく反発し
抗議デモも起きるほどだった。
その中古車が今ロシア各地に広がり
旧車としてロシアの人々の心をつかんでいるのである。
旧車の魅力はクルマの機能だけではない。
モスクワで暮らすカリーナさん(22)とドミトリーさん(29)。
政府がローンの補助などで優遇する国産車や
都市部の富裕層が好む欧米の高級車にはまったく興味がわかないという。
それはなぜなのか。
(カリーナさん)
「キャブレターです。
これがエンジンをより面白くし
独特な魅力を与えてくれます。」
もはや単なる機械とは思えず
“家族のような存在”だという。
(カリーナさん)
「このクルマのキャブレターはとても繊細で
燃料の質や気圧によってエンジンの反応が変わります。
どこか人間的で
機械なのに気分があるのです。」
ソビエト崩壊から30年。
消費文化が定着したロシアで
なぜ若者たちはあえて日本の旧車を求めるのか。
右ハンドルの日本の中古車を切り口に社会の変化を見つめてきた作家
ワシリー・アフチェンコさんはこう分析する。
(作家 ワシリー・アフチェンコさん)
「最近の車は冷蔵庫を買ったときのように何も感じませんが
旧車には魂があるように思えるのです。
日本から渡ってきて何年もの間ロシアを走り回り
車がオーナーの感情を受け止めてきたからかもしれません。
残念ながらグローバリゼーションから逃れることはできません。
日本の旧車のようにカルト的で独創性にあふれるクルマは
今や少なくなっています。」
環境性能や経済性が優先され
画一化が進む世界の自動車産業。
その一方で
ロシアの若者たちの間でも
古いものを大切に使い続けるというライフスタイルが確実に広がっているようである。
2021年6月25日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」
5月にニューヨークにオープンした公園
リトルアイランド。
ハドソン川にチューリップのような杭を打ち込んで作った。
その杭の下をくぐり抜けて公園の中に入っていく。
広さはサッカー場の約1,5倍。
起伏に富んだデザインが特徴的で
園内を散歩しながら様々な景色が楽しめる。
小さな丘を登ったところにある見晴らし台からは
マンハッタンの摩天楼
そして自由の女神を見渡すこともできる。
園内のあちこちに作られた花壇で250種類を超える季節の花を楽しむこともできる。
この公園は使われなくなった埠頭を再開発する計画のなかから生まれたものである。
着工から完成まで約5年。
280億円を投じた巨大なプロジェクトだった。
設計を担当したのは世界的に知られるヘザーウィック・スタジオ。
特殊な工法で
水の上にユニークな公園を作り上げていった。
公園の中にはコンサートなどさまざまなパフォーマンスが行われる会場もある。
この日はサルサダンスの無料レッスンが開かれていた。
「この贅沢な空間が大好き。
さまざまな部分が細かく計算され
発見することがたくさんある。」
「設計した人は周りの美しい景色をうまく取り入れている。
もうここに住みたいくらいよ。」
毎日 朝の6時~深夜1時までオープン。
入場料は無料。
ただ正午~夜10時は事前にチケットを予約する必要がある。
美しい夕日
プラス パフォーマンスもあるため
1週間先まで午後は予約で埋まっている。
(公園の景観をデザインしたシグニー・ニールセンさん)
「植栽が気になったので毎日現場に行きました。
日当たりや草木の間隔などが適切かどうか
それぞれを私の意図通りに正確に植えたかったからです。
結局すべての草花を自分の手で植えることになりました。
パンデミックで部屋にこもっているより良かったです。」
「公園というより庭なんです。
私は長い間 日本庭園について学びました。
日本庭園には景色を眺めるために立ち止まる場所があります。
そういう場所を作ることもデザインのjコンセプトでした。
また遠景をデザインに生かす日本庭園の“借景”も採用しました。
リトルアイランドは川や港 摩天楼に囲まれています。
その美しい景色を楽しめるようにデザインしました。
私は若い頃バレエダンサーだったんです。
その経験を生かし
人々の動線を“振り付ける”ように考えました。
丘に登るときもさまざまな動きの選択肢を用意しました。
ベビーカーや車いすのためにゆったりとした上り坂を作り
元気な人は階段
体力があれば岩を上るルートも作ったんです。」
2021年6月24日 NHKBS1「国際報道2021」
オーストリアでは
新型コロナウィルスの感染状況の改善で
5月中旬に制限が緩和された。
音楽の都ウィーンで毎年開かれる夏の野外コンサートにも観客が戻ってきた。
名門ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団。
♪「ウエスト・サイド・ストーリー」~マンボ レナード・バーンスタイン
夏の野外コンサートはウィーンの人たちが楽しみにしているクラシックの一大イベントである。
今年のテーマは“遠くへ行きたい”。
コロナ禍で味わうことが難しい旅行気分を音楽で感じてもらおうと
異国情緒あふれる曲が選ばれた。
コンサートが毎年開かれているのがウィーンの観光名所で世界遺産のシェーンブルン宮殿である。
制限の緩和で再開さた宮殿内の人気のカフェにも賑わいが戻ってきた。
(シェーンブルン宮殿 カフェの支配人)
「再開できてとにかくうれしい。」
(客)
「家族や友人たちと食事が楽しめるのはうれしい。
少しずつ普通の生活に戻ってきました。」
♪「愛のあいさつ」 エドワード・エルガー
例年10万人が集まり行われてきたコンサートだが
今年の観客は3,000人に抑えられた。
感染対策にも万全を期している。
感染対策として
ワクチンを接種するか
ウィルス検査の陰性証明が必要となっている。
コンサートにはクルツ首相らのほか医療関係者などが招待された。
ウィーンで看護師として働くシュロッケンフックスさん。
仕事でコロナと向き合う日々が続くなか
つかの間の休息として今回の演奏を楽しみにしていた。
(看護師 シュロッケンフックスさん)
「久しぶりに音楽とともに過ごす美しい夜のひとときです。」
楽団長でバイオリニストの フロシャウアー氏。
去年は一般の観客を入れずに開催せざるを得なかったコンサートも
今年こそは多くの人に生の演奏を届けたいと願ってきた。
(ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 楽団長 フロシャウアー氏)
「新年のコンサートでは観客なしで演奏しなければならず
個人的に大きなストレスになりました。
音楽の神髄は人間の魂なのです。」
コンサートはいよいよ佳境に。
♪ 組曲「惑星」~木星 グスタフ・ホルスト
アンコールを受け演奏されたのは
♪ 「ウィーン気質」 ヨハン・シュトラウス2世
ウィーンの貴族たちを題材にした優雅なワルツ。
“どんな時も人生を楽しむことを忘れないで”という思いが込められる。
観客は音楽を生で聴く喜びをかみしめていた。
(観客)
「最高だった。
構成も素晴らしかったよ。」
(看護師 シュロッケンフックスさん)
「ワルツに心を揺さぶられました。
あれほど美しい演奏を聴いたのは初めて。
元気が湧いてきた気がします。」
(ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 楽団長 フロシャウアー氏)
「観客の数も増えてくるでしょう。
正常化に向け観客が戻ることを心から願っています。
日本に行ける日が待ち遠しいです。」
2021年6月21日 NHKBS1「国際報道2021」
6月9日 アメリカ ニューヨークで行われた野外コンサート。
ニューヨーク・フィルハーモニーの演奏に2千人を超える聴衆が詰めかけた。
いまニューヨークではワクチン接種が進んだことなどから
こうしたエンターテインメント産業が本格化している。
6月15日
1年3か月ぶりに営業再開したブルーノート・ニューヨーク。
1981年のオープン以来
名だたるアーティストの演奏を間近で楽しめる場として
世界中の音楽ファンを魅了してきた名門ジャズクラブである。
(客)
「再開を1年以上待ち望んできたの。
最高に興奮してるわ。」
「ニューヨークの“伝説のクラブ”が再開してうれしい。」
初日のステージを飾るのはピアニストのロバート・グラスパーさん(43)。
これまでに4度グラミー賞を受賞するなど
今もジャズシーンをけん引するアーティストの1人である。
この1年 観客の前での演奏はほとんど行えず
ファンとの再会を心待ちにしてきた。
(グラスパーさん)
「ライブ配信は観客がいないから部屋で練習しているみたいに感じるんだ。
自分が観客をどれだけ必要としているか分かったよ。」
グラスパーさんに初日のステージを託したのは
「ブルーノート・ニューヨーク」経営者 スティーブン・ベンスーザンさんである。
(ベンスーザンさん)
「グラスパーとは長いこと一緒にやってきたけれど
彼は特に観客との交流を好むタイプなんです。」
ベンスーザンさんが父親とともに経営に携わるようになったのは26年前。
すでに評価の定まった巨匠だけではなく
新たな才能の発掘にも力を注いできた。
しかし去年3月
新型コロナウィルスの感染拡大でニューヨークはロックダウン。
世界中から押し寄せていた観光客も激減した。
ベンスーザンさんも営業制限などにより去年3月以降店を開けられず
売り上げは9割以上減少。
ライブ配信などで何とか経営を維持してきたものの
従業員の解雇を余儀なくされた。
(ベンスーザンさん)
「責任を感じ
やれることはやりましたが
全員は守れませんでした。」
感染状況が徐々に落ち着くなか
6月から客席数を半分ほどにして営業を再開することを決断。
解雇した従業員も呼び戻すことにした。
そして迎えた1年3か月ぶりの公演。
「こんなに客が少ないなんて史上初だ(笑)!」
グラスパーさんが選んだ曲は「RISE AND SHINE」。
“起き上がり 輝くような1日を過ごそう”という意味が込められている。
(グラスパーさん)
「観客の反応を見ると
たちまちエネルギーが湧いてくるんだ。
観客にも希望を与えたい。」
(グラスパーさん)
「気づいたら汗びっしょり。」
(客)
「友だちと最高の時間を過ごせたわ。
間違いなくニューヨークの復活ね!」
(ベンスーザンさん)
「再開できたことがまだ信じられません。
夢を見ているような気分です。」
エンターテインメントの街ニューヨークに
かつての熱気が戻り始めている。
2021年6月21日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」
台湾本島から船で西に30分のところに小琉球という島がある。
ここで近年ひんぱんに見られるようになったのがアオウミガメである。
アオウミガメは絶滅危惧種に指定され
世界中で保護されている。
このウミガメが間近に見えることもあって
この島を訪れる人は年々増えているが
同時にウミガメの暮らす環境を守ろうという活動が活発になっている。
小琉球の漁港の岸壁。
すぐ近くにウミガメが浮かんでいる。
(観光客)
「かわいいですね。」
「海に入らなくても見えました。」
台湾南部の屏東県の沖合に浮かぶ離島 小琉球。
周囲12㎞の小さな島だが
サンゴ礁でできた風光明媚な観光地である。
地元の人によると
8年前に沿岸での刺網漁が禁止されてから島に近づくウミガメが増えた。
大学の調査では
最近3年間は年平均400匹以上確認されている。
“ウミガメの島”として評判となり
台湾本島などからの観光客が年々増えてきた。
人口1万2,000人の島に
外から訪れる人は年間100万人以上と推定される。
観光客の増加によってゴミも増えることを懸念した島の人たちは
ウミガメの生息環境を守るため
“プラスチックごみゼロの島”を目指す活動を始めた。
3年前からは台湾当局が支援している。
そのひとつが宿泊施設の取り組みである。
「使い捨ての歯ブラシなどは置いていません。」
民宿を経営する蔡さんは
宿泊の予約を入れる客に歯ブラシやコップなどを持参するようあらかじめ告げている。
美しい自然が目当ての客も意識が高いと見えて
不満を声を聞いたことがないという。
台湾当局によると
使い捨てプラスチック製洗面用具などを提供しない環境保護の宿は
屏東県内に合わせて132軒あるが
半数近い62軒がこの小さなウミガメの島に集中している。
(民泊 経営者 蔡さん)
「使い捨てを減らせば
海へのゴミも減り
生態系への影響も少なくなるでしょう。」
他にもプラスチックごみをなくそうという活動が行われている。
店で飲み物を買って持ち替える客に
プラスチック製の使い捨てのコップではなく
ステンレス製のコップを借りるよう推奨している。
料金は無料で
スマートフォンで電話番号と借りるコップの数を登録するだけである。
このコップの取り扱いは島の商店や宿泊施設など約60か所で行われていて
客は借りたのと別の店で何度でも飲み物を買うことができ
コップを返す場所も自由に選べる。
(観光客)
「帰りに船の乗り場で返せて とても便利です。」
取り扱い場所に返却されたコップは
当局からこの事業を請け負っている団体が回収し
人の手と機械で2回洗うが
洗剤は環境への負荷が小さいものを選び
排水は処理施設を通してから海に流している。
洗浄を終えたコップは再び取扱所へ配達される。
現在3,500個が使われているが
観光客が増えるシーズンには
回収・洗浄・配達でてんてこ舞いになるという。
(小琉球 自然人文整体観光協会 陳理事長)
「プラスチックの使い捨て容器を年間27万杯分を減らすことになり
私たちの活動の励みになります。」
この島には観光客がよく訪れる場所など10か所にウォーターサーバーが設置されていて
借りたコップや水筒などを持っていれば好きなだけ水を汲んで飲むことができる。
遠くから来た客に対するもてなしの心とともに
ペットボトルなどの持ち込みを予防する仕掛けでもある。
(観光客)
「のどが渇いたときペットボトルの水を買う必要がなく
環境にいいです。」
(小琉球 自然人文整体観光協会 陳理事長)
「この環境を守るために
できるだけマイカップを持参してください。
もし持っていなければ店や民宿で借りてもらいたいです。」
陸の上からでもウミガメが簡単にみられる豊かな自然環境。
観光客を受け入れながら守っていくためのユニークな仕組みが試されている。