8月13日 NHK「おはよう日本」
アメリカでは人気のあまり購入されたものの未使用のまま転売されるスニーカーが多くなっている。
そうしたいわば“お宝スニーカー”を転売する市場
“リセールマーケット”が急速に成長。
ビジネスにもなっている。
アメリカ西海岸サンノゼ。
ここで開かれているスニーカーの展示販売。
驚くのはほぼすべての商品が正規ルートで販売を終えた後の2次商品。
“リセールマーケット”である。
数か月に1度 全米の各都市で開かれるこのイベント。
会場の外には行列。
目当てのスニーカーを求め会場では100ドル札が乱れ飛ぶ。
「ニューヨークから来たんだ。
350ドル(約3万7,100円)で買ったよ。」
「もう6,7年間 転売をしているよ。
お金になるからね。」
スニーカーのリセールマーケットはここ数年アメリカで急拡大してきた。
取引されるのは限定品や有名デザイナーとのコラボなど“レアもの”と呼ばれる商品である。
限定発売されると聞きつけると
バイヤーたちは激戦をかいくぐって定価で買い付け
未使用のまま持ち込んで高値で売って利益を得る仕組みである。
たとえば
アメリカの独立記念日に合わせて販売される予定だったスニーカーは
かかとに施した独立当時の国旗が”奴隷制度を思い起こさせる”と販売中止になった。
店頭には並ばなかったはずなのに
定価は約1万円だったはずなのに
なんと1足37万円。
箱付きなら約74万円という“お宝スニーカー”である。
会場を賑わせていたのが個人間の売買や“トレード”と呼ばれる物々交換。
好みと損得が一致すれば交渉成立である。
個人取引で気になる偽物対策も万全。
会場の一角には主催者が専門の鑑定士を配置している。
タグや縫い目のチェック。
そして時には匂いをかぐこともある。
イベントを主催している2人はまだ30代である。
始めてから10年。
市場の成長を実感しているという。
(イベント主催者 コーンさん)
「スニーカーも人も数がすごくてわくわくするね。
この熱気は会場に来てみないと分からないよ。」
(イベント主催者 ヴィノグラドフさん)
「はっきりした数字は難しいけれど
ここだけでたぶん200万~300万ドル(約2~3億円)で取り引きされているよ。
無類のスニーカー好きばかりだからね。」
スニーカーのリセールマーケットはアメリカで急成長している。
現在日本円で2,000億円規模だが
ここ数年は毎年2桁成長を記録。
専門家は成長のスピードが加速していると指摘する。
(リサーチ・アナリスト ケーナンさん)
「リセールマーケットはすごい勢いで成長している。
おそらく2015年には市場は今の3倍の60億ドル(約6,360億円)規模になるだろう。」
スニーカーのリセールビジネスで自分の店まで持つようになった若者もいる。
イベントに店を出していたサピアさんである。
リセールビジネスを始めたのは高校生の頃。
すでに10年のキャリアである。
ニューヨークマンハッタン。
その南に位置するソーホー地区はストリートファッションの中心地である。
その一角に4年前 自前の店を持った。
このビジネスを始めたきっかけは姉の友人たち
いわゆる“クールな兄貴分たち”の影響だったという。
(サピアさん)
「姉の周りにいる年上の人たちに憧れたんだ。
彼らが身に付けているもの
好きなものに影響を受けて
もっと知りたいと調べるようになった。
でもそれがお金を稼ぐことにつながるとはそのとき全然思っていなかったよ。」
今では年商1億円。
有名ブランドとも独自のコネクションを作り
事業は順調である。
このマーケットに大手高級ブランドも参入した。
同じソーホー地区にある店は売り上げを伸ばすなか
去年フランスのルイ・ヴィトングループの出資を受けた。
業界を驚かせたあと今度は
高級ブランドのネット販売を行う「ファーフェッチ」に約270億円で買収されたのである。
急拡大するスニーカーのリセールマーケットが高級ブランドとの垣根をこわし
双方にとってより大きな市場に変化しつつある。
(買収された店の創業者 マクフィータースCEO)
「ルイヴィトン、ファーフェッチもスニーカーの世界で情報を得て
新たな購買層を発見できたと思う。」
貪欲ともいえる若者たちのスニーカー熱。
その熱から生まれたスニーカーのリセールマーケットの成長は
高級ブランドや大手メーカーも巻き込んで
ますます目が離せなくなりそうである。