7月13日 キャッチ!ワールドEYES
ロシア料理と言えばボルシチやピロシキが有名だが
ロシアの人々の食への関心は冷戦後 西ヨーロッパの料理に向いてきた。
しかし近年
農産物の輸入制限の事情もあり
自国の食材を生かした食べ物を見直そうという動きが広がっている。
ワールドカップが決勝ラウンドに入ったこの日
人口約120万の中部の都市カザニでは
ベルギー対ブラジルの試合を観戦しようと多くのサポーターが集まった。
(観客)
「最高の試合になるでしょう。」
「観戦のためにロシアまで来ました。」
盛り上がっているのはワールドカップのスタジアムだけではない。
カザニではロシアの食の魅力を紹介するイベントが行われていて多くの人が訪れている。
ずらりと並んだトラックは
ワールドカップの試合が行われた11都市にまつわる料理が提供されている。
世界各地から来た人たちにロシアの食について知ってもらおうと
ロシア政府の支援を受けてレストランのオーナーなどが開催した。
トラックには
バルト海でとれた魚の酢漬けを乗せたパンに
中央アジアやロシアで広く食べられる
“ブロフ”と呼ばれるニンジンや牛肉の炊き込みご飯などが用意されている。
そして“ペリメニ”と呼ばれるロシアの水餃子。
(イベント主催者)
「このイベントで“ロシアと言えばボルシチ”といった固定観念を打ち破りたいです。」
ロシアが誇る食の素晴らしさを見直すべきだと強く訴えているのは他でもないプーチン大統領である。
(プーチン大統領)
「2000年代初めは食を輸入に深く依存してきた。
これからは自国で製造したものを世界の市場に供給したいと考えている。」
ロシアの食を見直す動きはさまざまなところで広がりを見せている。
モスクワにオープンしたレストラン。
ロシア産の食材だけを使ったメニューが評判を呼んでいる。
メニューには食材のとれた地域や提供した農家の名前が書かれている。
ワインリストにも生産地が一目でわかるロシアとその周辺の地図。
当初は観光客が多かったものの
今では地元のロシア人も多く訪れるようになったと言う。
(来店客)
「ロシアでもレストランでおいしい食事ができるのを誇りに思いますね。」
(レストランのオーナー)
「ロシア各地でとれた商材がこのお皿の上に集まっています。
料理は地元の人にも好評です。」
さらに食材の生産地を見て回るツアーも人気である。
モスクワ近郊にある農業や畜産の生産現場を体験できる観光施設。
500ヘクタールの広大な敷地では
トマトやキュウリなどの栽培のほか牛やヤギなどが飼われている。
施設を運営しているドミートリ―さんは
設計士の仕事の傍ら2年前にこの施設をオープンした。
ロシアの自然とそこから生まれる食材の魅力をロシア人に思い出してもらうために始めたと言う。
(観光施設運営 ドミートリ―さん)
「実際に農業を体感してもらい
本物の食材を味わってもらいたいと思ったのです。」
ドミートリ―さんがいま力を入れているのはチーズである。
実はロシアではこれまでほとんど生産されず
多くがヨーロッパから輸入されていた。
しかしEUの生産の影響でチーズの輸入が減少。
こうしたこともドミートリ―さんの意欲を駆り立て
イタリアの農家などの指導を受けチーズの生産を始めた。
ドミートリ―さんが生産しているのは
カマンベールチーズやヤギのミルクから作ったチーズなど。
地元の畜産農家から仕入れた原材料の風味を生かして
今では20種類以上を製造販売するにまで至った。
(ツアー参加者)
「ロシアのチーズはおいしいのでよく買いますよ。」
ツアーの参加者たちは出来たてのモッツアレラチーズとトマトなどでイタリアのサラダ カプレーゼを作り
味わった。
(観光施設運営 ドミートリ―さん)
「ロシアの人々はより高品質の商品を待ち望んでいます。
チーズの生産技術をさらに向上させたいです。」
広大な自然が生み出す食材。
そして食文化の見直しを進めるロシア。
それは自国の豊かさと魅力を再認識するきっかけにもなっている。