9月4日 NHKBS1「国際報道2019」
ベネズエラでは
独裁を続けるマドゥーロ大統領と
暫定大統領への就任を宣言してアメリカの支援を受ける反政府側のグアイド国会議長の対立が続いている。
国内では食料や医薬品などが極端に不足していて
難民として周辺国に流れている人は約400万人にのぼっている。
これはベネズエラ国民の1割以上で
世界的に見ても中東シリアからの難民に次いで多くなっている。
逃れた行先の内訳は
コロンビア 約130万人
ペルー 約80万人
チリ 約29万人
エクアドル 約26万人
ブラジル 約17万人など
今後もさらに増えるとみられ
来年末までには約800万人に達する可能性があるとも指摘されている。
難民が急増するにしたがって受け入れ国での支援は難しくなっていて
難民たちを取り巻く状況は悪化の一途をたどっている。
マドゥーロ政権側と反政府側の対立は難民を受け入れている国々へも広がっていて
中には双方が大使館を置いて正当性を争うというケースまで出てきた。
ペルーの首都リマにあるビル。
今年6月 反政府側はここに臨時大使館を設けた。
暫定大使のカルロス・スク―さん(33)を始め5人が働いている。
インターネットを使って難民ビザの申請の手伝いや困っている難民を支援している。
(在ペルー 暫定ベネズエラ大使 カルロス・スク―さん)
「同胞のベネズエラ人がここで自活できるように
最善を尽くそうと思っている。」
スク―さんはベネズエラ難民の生活を改善しようと直接難民を訪ねて回っている。
1日に数か所 難民の暮らす教会などを訪問。
難民から要望を聞き
アメリカ大使館やペルー政府とも話し合い対策を講じている。
(ベネズエラ難民)
「子どもが病気だが医薬品や食料を買うこともままならない。
国を出て仕事もなく生活資金を稼がなくては。」
自活できず厳しい生活を強いられている難民たち。
スク―さんはあらためてその現実を受け止めた。
(在ペルー 前提ベネズエラ大使 カルロス・スク―さん)
「難民に必要な援助をしたいのですが国が難しい状況にあります。
ベネズエラの家に戻れるのが最善でそのために活動しているのですが・・・。」
難民への支援を行う暫定大使のスク―さんだが
実際に多くのベネズエラ難民が利用しているのはマドゥーロ政権側の大使館である。
ペルー政府は2年前
マドゥーロ大統領が指名した大使を“好ましくない人物”として国外に追放。
他の職員についても外交官の資格を認めていない。
しかし今のところパスポートの更新などベネズエラ難民がペルーで暮らすための手続きができるのは
マドゥーロ政権側の大使館だけなのである。
(ベネズエラ難民)
「外国人登録証をとりに来ました。」
こうしたなか反政府側は存在感を高めようと
アメリカとともに新たな取り組みを始めた。
ベネズエラ難民への食糧の提供である。
毎日100人ほどに無料で昼食を配っている。
暫定大使のスク―さん自らコックの姿で食事を配る。
スク―さんの横にいるのは反政府側を支援する
アメリカのクリシナ・ウース ペルー駐在大使である。
2人が着るエプロンには
アメリカ政府参加の援助機関USAIDの文字が描かれている。
現在ベネズエラ国内にアメリカの支援物資を持ち込むことは難しいため
周辺国の難民に向けて活用しているのである。
こうした施設はアメリカ大使館の主導でペルー国内だけで21か所作られた。
この日 難民に食事をふるまう様子はペルーのメディアが報道。
スク―さんにとってベネズエラの正式な大使であるとアピールする絶好の機会にもなった。
一方 日ごとに増え続ける難民に対し受け入れ国の対応は限界に近付いている。
ペルーに3か月前に来たディアスさん。
妻と
6歳の娘ビクトリアちゃん
その弟の4人暮らしである。
母国ではディアスさんが石油の技術者
妻は教師をしていたが
今はレストランでアルバイトをして生活費を稼ぎ
ビクトリアちゃんは地元の学校に通わせている。
ペルー政府は正式なビザがない難民のために特別なクラスを開き対応している。
クラスメート20人のうち19人がベネズエラからの難民である。
しかしこの学校では
4年前には10人しかいなかったベネズエラ人の児童が200人以上に急増。
費用や人繰りが厳しく
これ以上の対応は難しいという。
(校長)
「ここ3年でベネズエラ人の子どもが増え
4,5,6年生の空きはもうありません。」
母国での混乱に収集の見通しが立たないなか
難民たちは避難先でも厳しい生活を強いられ続けている。