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オランダで広がる英EU離脱への不安

2019-02-28 07:00:00 | 報道/ニュース

2月6日 キャッチ!世界のトップニュース



イギリス議会による離脱協定案の否決を受けて
EU側は即座に反発する姿勢を見せた。
(EU バルニエ主席交渉官)
「イギリスのメイ首相は自ら交渉した合意に背を向けた。」
(EU ユンケル委員長)
「“無秩序な離脱”へのリスクが高まったと言える。」
EUは再交渉には一切応じない考えを改めて強調したのである。
世界第5位の輸出額を誇るオランダ。
“合意なき離脱”へのリスクを警戒している国の1つである。
オランダの一昨年のイギリスへの輸出額は約4兆9,000億円。
輸出全体の8%余を占め
オランダにとってイギリスは重要な市場なのである。
“合意なき離脱”となった場合
直後から関税がかかることになり
オランダの輸出品の多くが値上がりしてしまう。
相対的な競争力が低下し
約3,800億円の減益につながるとの試算もある。
オランダ政府は離脱による混乱への備えとして
貿易をはじめ各セクターごとに相談窓口を設けているが
問題の現状や考えられるシナリオなどの情報提供にとどまり
“合意なき離脱”などへの対応策は提供していない。
EUの経済状況に詳しい専門家は
貿易関係者が自助努力によって“合意なき離脱”に備えることが必要だと指摘する。
(経済シンクタンク 上級研究員 ファンベルクムさん)
「生産者や貿易関係者は代わりの市場を探す必要があります。
 それは簡単なことではありませんが
 企業や輸出業者は日頃から別の市場を探しているので可能でしょう。」
そうしたなかオランダの貿易に携わる関係者は
混とんとする離脱問題に頭を悩ませている。
アムステルダムの花市場。
全世界の生花の4分の1がここで取引されると言われ
生花はオランダの輸出品の主力の1つとなっている。
このうちイギリス向けは輸出総額の6分の1近くを占める。
運営会社にとって
イギリスと同じ規模を持つ市場を近くで見つけることは容易ではない。
そのうえ移行期間が設けられた協定による離脱の可能性も残されているため
対策を講じるタイミングさえ計りかねているという。
(花市場 運営会社)
「“合意なき離脱”への備えもできますが
 その場合はすぐ始める必要があります。
 ただ猶予期間がある合意となったら
 そうした備えは無駄に終わってしまいます。」
生花の生産者の間でも
“合意なき離脱”のリスクの高まりを受け
先行きに対する懸念が強まっている。
オランダ西部で主に菊を栽培している企業。
創業時は国内市場のみに出荷する従業員3人の小さい会社だったが
菊の人気が高いイギリスとの取引が増加。
今では年商が約8億円まで拡大し
このうち約30%がイギリス向けである。
経営者は
“合意なき離脱”となった場合には税関が復活し流通が混乱して
これまで築いてきたイギリスとの取引に悪影響が及ぶのではないかと
大きな不安を抱いている。
(生花栽培の会社 経営者)
「関税が始まると
 運送の準備が整っても申請書類に不備があれば
 その影響ですべての道がふさがれ出荷さえできなくなるのではと心配です。」

国内市場が小さいオランダにとって貿易な生命線なので
“合意なき離脱”になった場合かなりの痛手になる。
貿易に携わる人の危機感は相当なものがある。
シンクタンクの経済専門家は
オランダはイギリスと接するアイルランドに次いで大きな影響を受けるとしている。
“合意なき離脱”となると花などの生鮮品は特に影響を受けるが
それ以外にもオランダからイギリスへの輸出は
医薬品・食品・機械類など多岐にわたる。
これが滞ることになると大きな損失は免れない。
ほかのEU各国でも事態は同様で
貿易に携わる人たちは“合意なき離脱”は何としても避けたいところである。
“合意なき離脱”を避ける手立てはあるのか。
まず1つはEUが再交渉で応じるかどうかである。
EUはこれまで何度も
“離脱協定は最善にして唯一可能な案”だと繰り返している。
加盟国の外交筋は
“EUとイギリスは合意した。
 英議会は離脱協定案を受け入れることもできるし
 離脱の是非を問う国民投票を再実施もできる。
  あくまでもイギリス国内の問題だ”
と突き放し歩み寄る雰囲気は感じられない。
EUのユンケル委員長は再交渉に応じるか以前に
まずは
イギリス側がアイルランド問題の条項について
どのような変更を望むかを知りたいというスタンスである。
EU側にももはや延期以外に手立てはないという声はある。
延期についてはEUが受け入れる可能性はある。
仮にイギリスが延期をEUに求めてきたとしても
いつまで延期するかが問題である。
5月にはヨーロッパ議会選挙が控えているが
イギリスが離脱することを受けて定数削減がすでに決まっている。
現状を変えずに延期できるとしても5月までである。
またヨーロッパ議会選挙の後7月まで延期ということも取りざたされている。
しかし5月のヨーロッパ議会選挙でイギリスが加盟国であれば
イギリスは選挙を行って議員を選ぶ必要がある。
これを避けるとなれば特別な法整備が必要になると考えられる。
ハードルは低くない。
事態の打開ははかられるのか世界の目が注がれる。




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モスクワ ボリショイ劇場 劇場の魅力伝えて

2019-02-27 07:00:00 | 報道/ニュース

2月5日 国際報道2019


モスクワにあるボリショイ劇場。
世界トップレベルのバレエやオペラが上演され
“ロシア舞台芸術の最高峰”とも言われている。
このボリショイ劇場の魅力を紹介するツアーのガイドをしている女性がいる。

モスクワのボリショイ劇場は
250年近くの歴史があるバレエとオペラの殿堂である。
世界トップクラスの舞台を見ようと大勢の観客が訪れる。
劇場では建物や舞台の仕組みを案内するバックステージ・ツアーを行っている。
日本語のガイドを務めている山本萌生さん。
「ボックス席に金色の小食がありますが
 装飾の部分 実は全部紙でできています。
 この内装はずべて紙と木でできていて
 すごく音が響くように作られています。」
(山本萌生さん)
「いろんな人の支えがあって舞台は作られているので
 そういう多面的な劇場の要素
 舞台芸術の多面性を知ってもらえればいい。」
プロのバレエダンサーを目指していた山本さん。
中学卒業後 ボリショイ・バレエ学校に留学した。
しかし17歳のとき左足のじん帯を切る大けがでリハビリのため帰国。
その後もバレエダンサーを続けたが
限界を感じ
23歳で引退した。
山本さんに転機が訪れたのはそのあとのことだった。
ボリショイ劇場の関係者から「ガイドをやってみないか」と声をかけられたのである。
(山本萌生さん)
「チャンスだなとしか思わなかったというか
 今度はバレエを踊るという立場ではなく
 離れた立場でロシアバレエに出会えた。」
山本さんのガイドの魅力は元ダンサーとしての知識や経験を交えた解説である。
「オペラを助演するときは全くフラット(平ら)な中で上演されます。
 ただバレエを上演するときは実は舞台に3%の傾斜をつけます。
 フォーメーションを美しく見せたり
 舞台の奥行きをより広く見せて
 まず外国人の子どもたちが初めに戸惑うのが傾斜なんですね。」
山本さんのガイドぶりは
劇場の学芸員や現地で活躍する日本人のバレエダンサーにも評価されている。
(ボリショイ劇場 学芸員)
「山本さんのツアーはとても素晴らしい。
 彼女はバレエや劇場のことを聞きかじりではなく熟知しています。」
(バレエダンサー 吉田むつきさん)
「バレエは単なるダンスじゃないっていうことを山本さんは大事にして
 伝えようとしてくれているので
 頑張れって 感じですね。」
山本さんはバレエを学ぶため短期間モスクワを訪れている日本の子どもたちを案内した。
「今日はこの劇場の歴史はもちろん
 私なりにバレエ学校の話やダンサーの話など織り交ぜながら
 案内したいと思います。」
山本さんは子どもたちを普段はなかなか入ることのできない場所に案内した。
衣装の制作部屋。
ボリショイ劇場では
ダンサーひとりひとりの体形に合わせてデザイナーや職人が衣装を作っている。
「皆さんもご存知のバジルですね。
 ドン・キホーテの衣装です。
 この刺繍の部分もすごく凝っているのがわかると思います。
 よく見るとこれ全部手縫いです。
 手で作業しています。」
舞台を支える人たちの仕事を間近で見てもらえることで
何かを感じ取ってほしいと考えたのである。
(山本萌生さん)
「自分がやっているバレエっていうのがほんとにいろんな側面がある。
 音楽があって
 舞台美術があって
 衣装があって
 デザインがあって
 それを知ったうえで踊るのと知らずに踊るのとでは
 踊りのふくらみが違うと思う。」
(参加者)
「ダンサーだけじゃなくて裏方の人がいて成り立っているってことを
 改めて実感したし
 自分が舞台に立つときには
 色んな人への感謝の気持ちを大切にして踊りたいです。」
山本さんはバレエダンサーを目指す人たちにも
ロシアバレエの一流の世界を伝え続けていきたいと考えている。
(山本萌生さん)
「いつかこの舞台に立ってみたいと思った子は何人かいると思うので
 目標高く頑張ってもらうモチベーションになったらいいなと思っています。」
  


 

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人生を見守る “ごうかく駅”

2019-02-26 07:00:00 | 報道/ニュース

2月5日 おはよう日本


愛媛県久万高原町郷角(ごうかく)地区にあるバス停
ごうかく駅。
受験シーズン 縁起の良い駅名にあやかって多くの人が訪れる。
昭和25年
当時の国鉄がパスの路線を開設。
郷角駅は地区の名前にちなんで漢字で表記していた。
しだいに試験の合格を連想させるひびきから人気が高まり
ひらがな表記に変更。
訪れる人それぞれが合格への思いをはせるようになった。
さらにおよそ15年前には待合所も作られ
地域に住むお年寄りに欠かせない存在となっている。
待合所のベンチには訪れた人が願いを書くことができるようにノートが置いてある。
いつしか試験だけではなく人それぞれの合格への思いがつづられるようになった。
「恋に合格できますように
「健康祈願!」
このなかに自分の人生への思いをつづったメッセージがあった。
「ひさしぶりにごうかく駅に来ました。
 まだまだ人生の途中です。
 人生で合格と認められるように
 これからも生きていきたいと願っている毎日です。」
松山市に住む男性(68)。
ノートに思いを記してきた。
学校卒業後すぐに働き始めて仕事一筋45年。
男性は何度も合格駅を訪れ
そのたびに人生のさまざまな局面を乗り越えてきた。
「今まで68歳まで生きてこられまして
 振り返ってみて納得できた人生であったのかと。
 合格の意味をそのときは考えたと思います。」
60歳出て定年を迎え再就職し
新たな職場で働き続ける松田さん。
これからは仕事以外のことも挑戦し
納得できる人生になるように歩み続けたいと決意した。
「まだまだ多少のことにはチャレンジできるのではないかと。
 人生これからまだ続きますから
 合格点に達するような人生を歩ませていただきたい。」
「ごうかく」という言葉にさまざまな思いを託す人々。
それぞれの人生を見守るごうかく駅である。



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“価格変動型”チケット 広がる

2019-02-25 07:00:00 | 報道/ニュース

2月4日 おはよう日本


テーマパークやスポーツ観戦のチケット。
いまその定価をなくそうという動きが出ている。
需要を予測して価格を柔軟に変動させる仕組みが広がっている。

ユニバーサルスタジオジャパンで導入したのが
混み具合を予測してチケットの価格を変動させる仕組み。
これまで1日券の価格は12歳以上は7,900円だった。
それが冬場で比較的すいている1月は7,400円に。
春休みが近づくにつれて高くなり8,200円から
春休み中は8,700円になる。
(来場者)
「不定期の休みなのでありがたい。
 安くすいているときに行ける。」
「混む時期にしか来られない人には困る。」
このように需要に応じて価格を変える手法
ダイナミック プライシングと呼ばれ
いま広がっている。
プロ野球の楽天やソフトバンクがすでに導入していて
スパーラグビーのサンウルブズも今シーズンから新たに始める。
こうした動きの追い風になっているのがAI人工知能の活用である。
去年 大手商社の三井物産などが出資して設立した会社では
プロスポーツのチームなどに
AIを使ってチケット価格を決めるシステムを提供している。
AIは過去数年分の試合のデータをもとに
当日の対戦相手や天気予報など
あらゆる角度から分析し
売り上げと入場者数いずれも最大になるような価格設定を提案する。
さらに試合当日まで実際の売れ行きを見ながら毎日価格を見直す。
(「ダイナミックプラス社 社長)
「今まで固定化されていた価格が
 選択の幅が広がる。
 買いたいと思う席を自分で選び購入できるようになる。」
サッカーJ1の横浜F・マリノスの昨シーズン1部の試合で
この会社のシステムを使った。
たとえば去年10月の試合
ハーフタイムに歌手がライブを行う特別イベントを行うことになり
当初 価格を上げた。
しかし試合が近づくと雨の可能性が高まったため
価格を下げる判断をした。
このように悪天候などで集客が見込めない場合
新たな仕組みならよりお得に買える可能性がある。
一方チケット価格が高騰した試合もあった。
Jリーグカップ決勝進出をかけた注目の試合では
自由席の価格が当初の3倍の7,500円に跳ね上がり
ファンから不満の声が出た。
今シーズンからすべての種類のチケットで
ダイナミックプライシングを導入するF・マリノス。
どのような価格設定ならファンの理解が得られるか検討している。
(横浜F・マリノス担当者)
「全席種で導入することで
 チケットの選択肢が価格帯でいうと増える。
 近い将来1席ごとに価格が変わるようになってほしい。
 ニーズによって買い方が変わる。
 最終的にはそうしたところまで持っていきたい。」



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中国 コーヒー市場争奪戦

2019-02-24 07:00:00 | 報道/ニュース

2月2日 おはよう日本

コーヒーのチェーン店が立ち並ぶ中国 上海。
目覚ましい経済成長を遂げ
この10年でコーヒーは高級品から一般的な飲み物に変わった。
“お茶好き”で知られた中国だが
コーヒーをおしゃれなカフェでゆっくり楽しむ習慣もすっかり定着している。
(客)
「コーヒーで眠気を覚ますのが習慣になっている。」
「カフェの雰囲気が好き。
 友だちと話をするときは必ずカフェを選ぶ。」
民間の調査会社によると
コーヒー消費量の伸びは年間約15%。
市場の拡大が見込まれるなか
客のニーズに合わせたサービスが続々と登場している。
コーヒーの宅配。
(利用者)
「専門のコーヒー店が作った口当たりのいいコーヒーが宅配で飲める。
 時間的にも便利。
 店に行かなくていいし
 時間的にも便利。
 毎日頼みたい。」
このサービスを売りに急成長している中国生まれのコーヒーチェーン。
オフィス屋自宅で飲む客をターゲットに
宅配と持ち帰り専門の店舗を展開している。
注文も支払いもアプリで完了。
20分ほどで届けてくれる。
店で受け取る場合でも指定された時間に来店すれば並ぶことなく煎れ立てのコーヒーが受け取れる。
小規模な店舗やアプリの導入で賃料や人件費などを抑えた。
コーヒーの価格は大手チェーンより2割ほど安くなっている。
去年オープンしたばかりだが
1年で2,000店舗まで急拡大した。
(Iuckin Coffee 副総裁)
「この中国市場で1位になることが目標であり
 私たちにはその能力がある。」
新興勢力の台頭に
市場シェアで半分を占めるといわれる大手コーヒーチェーン スターバックスも動き出した。
これまで右肩上がりの成長を続けてきたが
売り上げが一時的にダウン。
その直後 宅配サービスに乗り出し
迎え撃つ構えである。
ますます激化するコーヒー戦争。
ユニークな方法で客をつかもうとする店も出てきた。
コーヒーを作るのはロボット。
バリスタの技術をデータ化し忠実に再現。
さらに自分好みの味に調整することも。
コーヒーの濃さやミルクの量
甘さも指定できる。
カフェラテ・シロップ3杯を選ぶと
ロボットが氷を入れたカップをセット。
次にシロップを1回・・2回・・そして3回
注文どうり入れた。
最後にコーヒーとミルクを注ぎ完成である。
(客)
「サービスもよく
 とても珍しい。
 ロボットが作るのを初めて見た。
 飲むのが楽しみ。」
店員の仕事は仕込みの作業や初めて来た客に注文の方法を説明するだけ。
人件費も抑えられ価格も割安である。
さらにこの店ではコーヒーよりも利益率が高い酒の販売も開始。
ロボットが5万種類ものカクテルを作ってくれる。
シンガポール人の男性が創業し
海外進出も視野に入れている。
(Ratio創業者)
「ロボットは小さなスペースで正確にコーヒーを作れ
 バリスタ育成など人件費を削れる。
 ビジネスの大きなチャンスがあると考えている。」
新規参入企業は勢力図を塗り替えるのか。
競争は激しさを増している。



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“チョコブリ” 全国へ 海外へ

2019-02-23 07:00:00 | 報道/ニュース

2月2日 おはよう日本


全国で販売が始まったチョコブリ
見た目はふつうのブリだが
実はチョコレートを食べて育ったブリである。
「全然チョコの感じはない。
 おいしい。」
「絶対ブリとチョコ合わないと話してた。
 甘みがあるかと想像してたけど
 おいしい。」
なぜチョコレートをブリに与えようと思ったのか。
ブリは切り身にすると早く色が悪くなるのが課題だった。
そこで愛媛県はチョコレートに含まれるポリフェノールの効果に目を付けたのである。
チョコレートは通常のえさに混ぜて養殖ブリに与えられている。
(養殖業者)
「おいしそうに食べている。」
えさに混ぜるのは業務用のチョコレートである。
通常のブリとチョコブリを比較すると・・・
チョコブリは5日間たっても色が鮮やかである。
ポリフェノールの抗酸化作用で身の変色が抑えられている。
一方 通常のブリは色がくすみ商品価値が下がっている。
水揚げから5日間鮮やかな色を保つことができるチョコブリ。
日本食の人気が高い海外への出荷が期待されている。
(共同開発した水産会社 社長)
「鮮度が長持ちするので
 持っていけない遠い国に持っていくことが可能になる。
 日本
 愛媛の技術力として世界に売っていきたい。」

 

 

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人々が思いを託す「ブラック・ナザレ祭」

2019-02-22 07:00:00 | 報道/ニュース

2月1日 世界のトップニュース


フィリピンの首都マニラの大通りを埋める人の波。
触れると願いが叶う黒いキリスト像をさわりたいという人たちである。
黒いキリスト像のある山車にのぼり振り落とされる人や
暑さと人混みで熱中症になり倒れる人も。
近くの救護所にはけがをした人や意識を失った人が次々と運び込まれてくる。
年に1度の“願いが叶う日”として
毎年100万人もも人たちがこの像に殺到する「ブラック・ナザレ祭」。
年によっては死者が出ることもある。
黒いキリスト像は17世紀にメキシコから運ばれる際
途中の船で火事があり黒く焦げたと言われている。
その後4世紀の間にマニラを襲った数々の火災・地震
さらには第2次世界大戦の戦災でも
像だけは無事に残ったため
人々は像に奇跡が宿っていると信じるようになった。
祭りの前日
お年寄りや子ども
病気を患った人など
数万人がマニラ市中心部の公園に集まっていた。
激しい祭りに参加できない人たちのために像が公開されていた。
像の左足と十字架に触れる人たち。
奇跡を持ち帰ろうとタオルで像をふく人もいる。
みな切実な悩みを抱えている。
(参加者)
「下半身の関節が変形してしまったの。
 普通に歩けるようになるのが私の願いです。」
「静脈に異常があるので治るように祈りました。」
健康な人たちは激しい祭りの中で像にふれ信仰の強さを示そうとしている。
少しでも早くキリスト像にふれようと
大勢の徹夜組が像の出発を待っていた。
テントを張って家族とともに像の出発を待つ男性(49)。
男性はこの黒いキリスト像に救われたと信じている。
「両親がいなかった私は若いころギャングに加わり道を見失いました。
 神に許しを請うことで目覚めました。
 神を信じています。」
息子たちには自分とは違う人生を歩んでほしいと一緒に参加した。
「子どもには良い人生を歩んでほしい。
 だから神に従うように話しています。」
人々の切なる願いをキリスト像は一身に引き受ける。
練り歩きだしたキリスト像。
願いをかなえてほしいという人たちが殺到する。
祭りは最も人が集まるマニラ市役所前を通過し
盛り上がりは最高潮に達していた。
その中に1人の少女(17)がいた。
「父が働かなくなり
 母が働き始めました。
 両親のけんかが絶えず
 父はいなくなりました。」
少女が暮らしているのはマニラ北部のスラム街である。
年6%を超える経済成長が続くフィリピン。
しかしスラムの貧困は変わらず
むしろ浮き彫りになった経済格差が貧しい人々の心に暗い影を落としている。
そうしたなかスラムの中には
いつか自分たちにも奇跡が起こるよう願う人たちによって黒いキリスト像があちこちに置かれ
祈りの対象となっている。
少女もその1人。
家には黒いキリスト像のレプリカも飾っている。
ベニヤ板とトタンでつくられた家でささやかに暮らす家族。
しかし壁に掛けられた写真に父親の姿はない。
一昨年 突然に父親が失踪。
理由は聞かされていない。
貧しいスラムでは家族を支えられなくなった父親が突然いなくなることは珍しくないという。
(スラムで暮らす女性)
「家族を養えないのなら夫婦ではいられない。
 だからシングルマザーが多いの。」
少女はいつか父親が戻ることを信じてブラック・ナザレ祭に参加する。
(少女)
「父にいい人に戻ってほしい。
 また家族で一緒に暮らしたい。」
小柄な少女は興奮した群衆の中に飛び入る。
そしてついに
「怖かったけど家族のためにと思ってのぼりました。」
父親が帰ってくるその日までこの祭りに参加し続けるという少女。
多くの人たちの願いを受けながら
黒いキリスト像は練り歩く。





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“出産後も舞台に” バレリーナ 復帰への道のり

2019-02-21 07:00:00 | 報道/ニュース

2月1日 おはよう日本



いま日本のバレエ界は著名な国際コンクールで毎年のように受賞者を輩出している。
日本のバレエ人口は今や35万人。
プロになり長く続けたいという若手が増えるなか
課題となっているのが出産である。
海外では出産後 現役に戻る人が増えているが
日本ではほとんどいない。
こうしたなかイギリスの名門ロイヤルバレエ団で日本人で初めて出産後の復帰を果たした人がいる。

世界3大バレエ団の1つ
英国ロイヤル・バレエ団。
小林ひかるさん(42)。
出産後わずか4か月で第一線に復帰。
多くの舞台で主役を踊り続けてきた。
小林さんはいま同じバレエ団のダンサーの夫と4歳になる娘とロンドンに暮らしている。
(小林ひかるさん)
「子どもを産んでも絶対にダンサーに復帰できるというのを
 みんなに理解してもらいたかった。」
小林さんが出産を決意した背景には日本の若手バレリーナの存在があった。
たびたび帰国し若手の指導にあたっている小林さん。
才能があってもほとんどが妊娠を機にやめていく現状を目のあたりにしてきた。
体の美しさと高い身体能力を維持しなければならず
休んで少しでもスキルが落ちれば
すぐにポジションを奪われてしまう厳しい世界だからである。
小林さんは
自分が出産後に復帰を果たすことで日本の若手たちに希望をつなぎたいと
考えるようになった。
(小林ひかるさん)
「これからのママたちにも本当に頑張ってほしいから
 本当に誰かがやり始めないと始まらないから。」
小林さんは結婚から5年後
37歳の時に妊娠。
可能な限り早く体とスキルを取り戻したい
トレーナーの指導を受けながら出産の前日までトレーニングを続けた。
そして38歳で無事に出産する。
小林さんは出産のわずか3日後から体を動かし始めた。
そして2週間後には本格的なトレーニングを再開。
しかし妊娠を経た体の変化は想像以上だった。
(小林ひかるさん)
「自分の重心が変わっているから
 今までたっていたところに立っても全然違う感覚がある。」
体のバランスと
失われた筋力を取り戻す挑戦が始まった。
体幹を鍛える片足のスクワット
腹筋を取り戻すためのボールを使ったエクササイズなど
1日5時間
合間に授乳をしながら
毎日毎日トレーニングを続けた。
(小林ひかるさん)
「確かに大変だったとは思うけど
 その当時はもう必死で
 とにかくやるしかない。」
Q.舞台に立つという思いは変わらなかった?
「変わりません。
 変わらなかった。
 ここまできて
 これがやりたかったという意志はすごく強かったので。」
夫のフェデリコさんは妻のキャリアを支えたいと
自らの仕事を減らし家事や育児のほとんどを担ってくれた。
(夫 バレエダンサー フェデリコ・ボネッリさん)
「妻は復帰を望んでいた。
 それに向けとても努力していた。
 夫婦は“チーム”。
 お互い助け合うのは当然のことだ。」
復帰が実現したのは出産から4か月後。
小林さんは異例の速さで見事に妊娠前の体とスキルを取り戻した。
バレリーナでも努力すれば出産前と変わらず舞台で輝くことができる。
小林さんは今後
日本の若手たちに自分の経験を伝えていこうと考ている。
(小林ひかるさん)
「やっぱり最後は自分だから
 本当に自分が何をしたいか
 思い切って自分で決断して
 復帰していく方が増えていくことを願います。」




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タイ 渋滞に商機!

2019-02-20 07:00:00 | 報道/ニュース

1月31日 おはよう日本



タイの首都バンコク。
通勤ラッシュの時間帯は大渋滞。
(ドライバー)
「いつものこと。
 どうしようもないです。」
「ほぼ半日 車の中にいることもあります。
 本当にストレスです。」
渋滞が日常茶飯事のバンコクでは
車中のドライバー相手の商売も盛んである。
定番の揚げたイモやバナナに
携帯用のトイレは消臭機能を高めた新製品が人気である。
特に注目を集めているのが
一般の車に広告を貼って走ってもらおうというビジネス。
このビジネスを起ち上げたのは日本人起業家 神谷さん、
2年前にタイで起業した。
(ラッピング広告スタートアップ 神谷和輝CEO )
「渋滞のときにイライラしている
 このストラスがお金に変わったらハッピーじゃないかということで
 このサービスを思いついた。」
広告を貼ってある車がどこを走っているかはリアルタイムで分かる。
街の中心部など渋滞が激しいところほど広告効果は高くなる。
車にラッピングしてくれるドライバーを募集。
広告効果は交通量などから数値化し
それに応じて報酬を支払う。
ドライバーに応募したタワチャイさん。
不動産や車を売るフリーランスの営業マンである。
さっそくバンコク中心部で渋滞に遭遇。
車に貼ってあるトラックの広告は周りのドライバーや歩行者によく見える。
去年からサービスに登録し
稼ぎは日本円で月1万円以上。
本業のかたわら手軽に小遣い稼ぎができると人気を呼び
登録ドライバーの数は約1万人に上るということである。
(ドライバー タワチャイさん)
「副収入になります。
 ガソリン代の足しにもなるし車のローンの支払いにも充てられます。」
ラッピングの広告を出したトラックメーカー。
サービスでは車が走った距離やルートを確認でき
広告がどのくらい見られたかが推計されるため
効果を実感できると好評である。
(ラッピング広告を出した会社)
「自分たちが投資した広告の効果があったか
 よりはっきりわかり
 すぐに評価できる。」
(ラッピング広告スタートアップ 神谷和輝CEO)
「東南アジアはまだまだ課題が非常に転がっている。
 サービスに変えて
 プラスアルファに変えられたらいい。」




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“ここにしかないワインを” 豪州で挑む日本人女性

2019-02-19 07:00:00 | 報道/ニュース

1月30日 国際報道2019



オーストラリア東部
なだらかな丘が広がるハンターバレー。
約200年前からブドウの栽培がおこなわれ
オーストラリアワインの発祥の地として知られている。
最近ここでつくられるワインを求め国内外から大勢の観光客が訪れるようになった。
そのなかでいま注目されているワインが
「スモール・フォレスト・バイ・アツコ」。
「とてもさわやかで美しく
 香りや色も素晴らしいです。」
このワインを作っているのは小林敦子さん。
オーストラリアでワイナリーを経営する唯一の日本人である。
小林さんは大学で醸造を学び
卒業後は日本やフランスのワイナリーでワインづくりを経験。
20年ほど前にハンターバレーにやって来た。
ブドウの栽培に適した温暖な気候と豊かな自然に魅せられた小林さん。
6年前 たった1人でワイナリーを起ち上げた。
しかし自然は恵だけを与えてくれるわけではなかった。
最初の年には大切に育ててきたブドウが
山火事の煙にいぶされ全滅してしまったのである。
「いきなり出だしからずっこけてしまった。
 予定がすべて丸つぶれ。
 非常に孤独です。
 頼る人がいない。
 すべては私の判断でそれが製品に影響してくるので
 どの部分の判断に関しても責任重大。」
分業化が進む大手ワイナリーなどとは違い
ブドウの栽培から醸造まですべての工程を自分で行うことにこだわる小林さん。
大切にしてきた信念がある。
与えられたものを生かす
その年その年で自然が与えてくれる素材の力を最大限に引き出し
“この土地でしか生み出せないワイン”を目指してえきたのである。
「ここでよく育っているということは
 やはり向いているブドウの品種だと思うので
 与えられたものを上手に生かす。
 それも私たちに課せられた責任。
 どんなふうに造ったらより良いワインになるのか。
 飲みやすい
 いいワインになるのか
 考えながら造っています。」
収穫と仕込みが重なり
1年で最も忙しい1月。
小林さんは今年のブドウの状態を慎重に見極めていく。
「今年はちょっと干ばつが影響しているのか
 皮も比較的いつもより厚い気がするし
 絞りすぎない。」
大手なら絞り方を児童に調整してくれる機械に任せるところだが
小林さんは付きっきりで古いプレス機を操作し絞る力を変えていく。
さらに発酵の工程でも
その日の気温に合わせて1日に何度も微妙な調整を繰り返す。
「ちょっと気温が上がっちゃった。
 バルブを開けて温度をもうちょっと下げます。
 白ワインは温度を低く発酵させると香りがよいと言われるが
 いきなり最初からそうすると酵母が元気に増殖できないので。」
幾多の困難を乗り越え
ハンターバレーでしか生み出せないワインを追い求めてきた小林さん。
スタートから4年目の2017年
ロンドンで開かれた世界最大級のワイン品評会では
素材を生かしたフレッシュな味わいが評価され
銀メダルを受賞した。
(ワイナリー経営 小林敦子さん)
「小さいところだから
 できることを探して前に進んでいかなければいけない。」
その土地で与えられたものを生かす。
その信念からいま小林さんが力を入れているものがある。
ハンターバレーで古くから栽培されている「ヴァデーロ」という白ブドウを使ったワインの開発である。
「比較的アロマティックな香りがあって
 甘いワインも造れるし
 ドライなワインも造れるし
 ポテンシャルがすごくたくさんある品種だなと思います。」
挑戦を続ける小林さんにとって“最高のワイン”とは何か。
「友だちとか家族と一緒に飲んで食べて笑って。
 生活に何かちょっとっプラスアルファになるようなものになったらいい。」




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注目の漢方の原料はミミズ

2019-02-18 07:00:00 | 報道/ニュース

1月30日 おはよう日本



古くから漢方が根付き薬草の産地としても知られる奈良。
しかし漢方の原料は薬草だけではない。
平安時代の創業という奈良市の漢方薬局。
いま注目されつつある生き物は
20センチほどの細長い漢方の原料
ミミズである。
ミミズは漢方で「地竜」と呼ばれ
解熱剤として使われてきた。
(漢方薬局 店主)
「かぜをひいて熱が出たり
 インフルエンザのような高熱ではなくじわっとっした熱が出る。
 そういう方で昔から地竜を飲む方は結構いる。」
中国で薬として2千年近い歴史を持つというミミズ。
新たな働きが科学の力で分かってきた。
注目されているのはミミズに含まれている「プロテアーゼ」という酵素である。
ミミズの体内から取り出した血栓にミミズのプロテアーゼを混ぜると血栓を溶かす。
近年の実験で確認された。
将来的には
脳梗塞など血栓が原因で起こる様々な病気の予防に
ミミズの酵素が役立つかもしれないと考えられている。
この酵素に着目した企業がある。
明治時代から続く奈良県内の製薬会社。
かつてミミズを使った解熱剤が主力商品だった。
いまではミミズの成分を使った栄養補助食品サプリメントが取って代わっている。
販路は中国やベトナムなど海外にも広がっている。
増え続ける注文に対応しようと
今では宮崎県の養殖場を当初の6倍にし
30トンのミミズを育ている。
サプリメントの売り上げは現在年間45億円。
10年後 100億円を目指している。
(ワキ製薬 社長)
「大きな可能性を持つ生物だと思っている。
 ミミズにこだわった
 ミミズの世界一のメーカーになっていきたい。」
ミミズの酵素には他にも可能性が秘められている。
大阪府立大学大学院 上田光宏准教授。
20年にわたってミミズを研究してきた。
ミミズの体内には数百種類の酵素があるという。
上田さんがそこから探し当てたのが「アルファアミラーゼ」という酵素である。
アルファアミラーゼにはデンプンを分解する力がある。
実験で確かめた。
酵素を入れたおかゆと何も入れていないおかゆ。
そこにヨウ素液をたらす。
何も入れていないおかゆは濃い紫色に変わった。
デンプンに反応したのである。
酵素を入れたおかゆはヨウ素液の色が混じるだけで紫色にはならない。
酵素の働きでデンプンが糖に分解されたためである。
デンプンを糖にまで分解することでより消化吸収しやすくなる。
上田さんは
消化機能が衰えたお年寄りや闘病中の人向けに
この酵素を生かした商品を開発したいと考えている。
(大阪府立大学大学院 上田光宏准教授)
「流動食として病院食として
 今後 利用することも可能ではないか。
 今後いろいろとこれからの人間社会を支えるような生物として
 有用なものがたくさん見つかってくる可能性は十分ある。」
身近な生き物のミミズ。
実は私たちの健康の源につながるのかもしれない。






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各地を“侵略” カモメから街を守れ!

2019-02-17 07:00:00 | 報道/ニュース

1月29日 国際報道2019



世界各地でカモメが街を侵略している。
海でサカナを獲る代わりにゴミや観光客の食べ残しをあさっているのである。
イタリアのローマで歴史的な建造物や像を見上げるとあちらにもこちらにもカモメが。
自分が街の主だとでも言わんばかりである。
(市民)
「前からいたけれど
 どんどん増えています。」
「攻撃的だよ、」
バチカンで
フランシスコ法王と子どもが平和の象徴ハトを放つと
あっという間にカモメの餌食になってしまった。
道に捨てられたゴミを拾いゴミ箱をあさる。
エサを与える観光客もいる。
これではたまらないと
ローマ市がカモメと戦うために抜擢したのがタカやハヤブサなどの猛禽類である。
(鷹匠)
「ハヤブサは狩りに向うように飛ぶので
 カモメは怖がって遠ざかります。」
一方オーストラリアのシドニー。
レストランの客の皿から料理を奪っていく。
(客)
「料理の皿から目を離せば
 5分後にはカモメが群がっています。」
そこで試験的に導入されたのが犬。
カモメを追い払うのが任務である。
(レストラン マネージャー)
「料理を交換する回数が8割も減りました。
 よくやってくれています。」
この対策は大きな成果を出していて
犬の本格導入が検討されているということである。



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EU離脱の焦点 アイルランドはいま

2019-02-16 07:00:00 | 報道/ニュース

1月29日 キャッチ!世界のトップニュース



アイルランド島は
北部はグレイト・ブリテン島から入植したプロテスタント系の住民が多く
1921年にカトリック教徒が多い南部と分割され
「北アイルランド」としてイギリスの構成国の1つとなった。
1960年代からは
南のアイルランドに帰属を求めるカトリック系住民と
それに反対するプロテスタント系住民の対立が激化したが
1998年に和平合意がなされ
互いにEU加盟国として安定した関係を築いてきた。
しかしEUとの離脱交渉で
アイルランド島に限り国境の現状維持を目指した特別な枠組みを模索した政府案が
議会で否決された。
もし自由な人と物の行き来ができなくなれば
アイルランとの隔たりによって経済ばかりか
住民同士の関係にも悪影響が及ぶのではないかと住民の間では不安が広がっている。

緑の丘陵が続くイギリスの北アイルランドとアイルランドの国境地域。
ふたつの国を隔てるものは何もない。
この“解放された国境”をいかに守るかが
いまEU離脱交渉の最大の焦点となっている。
北アイルランド側の国境の町ニューリーの駅。
早朝 アイルランドの首都ダブリンに向かう列車には多くの通勤客が乗っている。
物価の安い北アイルランドで暮らし
給与の高いアイルランドに毎日通っている人は少なくない。
(通勤者)
「パスポートのチェックもありません。
 ここの人々に国境は存在しないのです。」
2つの国を自由に行きかうのは人だけではない。
ニューリー近郊の港で扱う積み荷の量は年間365万トン。
多くは税関検査を受けず
そのまま隣国アイルランドに向かう。
ニューリーでカーペットの輸出入を営む男性。
ベルギーやトルコ インドなど
6か国から買い付けた製品をインターネット上で販売している。
物の行き来が自由なことを生かし
EU加盟国からの注文には48時間以内に商品を届けることをセールスポイントにして
売り上げを拡大してきた。
イギリスがEUから離脱し
EUとの間で関税や税関検査が導入されたら
今のビジネスモデルが成り立たなくなると表情を曇らせている。
(カーペット販売店経営者)
「アイルランド側へ移転したくないですが
 事業のことを考えると全てが選択肢になります。」
ニューリーの住民の不安は経済面だけではない。
2人の子どもを持つヘンリーさん。
幼いころ北アイルランド紛争を経験したヘンリーさんは
住民の間で宗教をめぐる対立感情が再び表面化するのではと不安を隠せない。
国境からおよそ7kmのニューリーには
紛争当時 いたるところに検問所が設けられた。
そこに駐在する兵士や警察官を狙って独立派の武装組織が攻撃を繰り返し
住民にも犠牲者が出たという。
(ヘンリーさん)
「この子たちが
 私たちが経験したような暴力と混乱の中で生活することは考えられません。」
一方カトリック系の政党「シン・フェイン」は
国家要管理が復活すれば
北アイルランドとアイルランドの統一の是非を問う住民投票の実施を求めると主張している。
(シン・フェイン党 ミッキー・ブレイディ議員)
「わが党が住民投票で負けると他党が思うなら
 実施すればと思います。
 それでこそ民主主義と言えるでしょう。」
ニューリーの町でもこの住民投票に賛同する声が聞かれる。
(住民)
「25年たてばアイルランド島は統一します。
 離脱のおかげです。」
「統一が実現すればいいですが
 まず景気を良くしてほしい。
 離脱は災難です。」
ヘンリーさんは
離脱をめぐる議論によって知らず知らずのうちに寛容さが失われていっていると感じている。
いる。
(ヘンリーさん)
「2つの宗派の対立が再び姿を現し緊張を生み出しています。
 離脱の混乱で対立感が吹き出し
 どちらかを選ぶように強要するのです。」

メイ首相の協定案の細かい内容もさることながら
離脱そのものへの不安が強い。
北アイルランドの人々は総じて人懐こくて話好きだが
「離脱」といった瞬間に「話したくない」と拒絶される。
市民からすると
EU離脱で社会も経済も和平が揺さぶられるのは“自明の理”のはずなのに
政府はそれをわかろうとせずに離脱の議論を始めたのかという不信感が再び浮上している。
こうした不安につけ込むかのように
和平を揺さぶろうとする勢力によるとみられる暴力も起きるようになっていて
地元の警察は
国境管理が導入されれば事件はさらに増えるだろうと警告している。
メイ首相は歴史的な敗北を喫したにもかかわらず
大枠では自らのまとめた離脱協定案を捨てきれていない。
「北アイルランド問題についてEUと再協議」を盛り込んだ代替案を議会で採決にかけ
膠着状態の打破を試みる。
メイ首相としては
もし議会の支持を取り付けられれば“英議会の意思”を盾にEU側に修正を求める構えである。
EU側も協定案にこれ以上の譲歩には応じない構えを崩してはおらず
筋書き通りに事が進む見通しは全く立っていない。
メイ首相の戦略は“合意なき離脱”という最悪のカードを前に
どちらが先に折れるのか
度胸試しをするゲーム・オブ・チキンだといわれているが
離脱まであと60日を切っている。
一方で第2の国民投票を求める動きも出ている。
またあくまでもEUとの再交渉を求める離脱派もいて
時間切れによる“合意なき離脱”に落ちいってしまう状況になりかねない。
イギリスは自らが選んだ離脱によって極めて追い詰められた状況になっている。





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“庶民の味”タコ激減 養殖技術を開発

2019-02-15 07:00:00 | 報道/ニュース

1月29日 おはよう日本


タコはかつてピーク時には国内で年間10万トン水揚げされていたが
ここ数年はその3分の1ほどに落ち込んでいる。
さらに世界的な需要の高まりで
価格は15年前の1,6倍と高級魚並みに値上がりしている。
こうしたなか広島県尾道市の国の研究機関が
タコの養殖につながる新たな技術を開発した。

タコ料理を専門にする広島県三原市の料亭。
生けすから取り出されたのは新鮮なマダコ。
刺身やタコ飯など
庶民の味として古くから親しまれてきたが
価格の高騰で最近は仕入れにくくなったという。
(料理長)
「5年前ぐらいから徐々に値が上がっていて
 最近はすごく高くなっている状況ですね。
 お客さんに間に合わせる量を確保するのが大変になってきています。」
瀬戸内海有数のタコの産地 三原市。
タコの漁獲量が年々落ち込み漁業者からは不安の声が上がっている。
(漁業者)
「もうだめ。
 例年の3分の1以下。
 やっぱりさみしい。」
こうしたなかタコを増やそうと養殖に取り組んでいるのが国の研究機関
瀬戸内海区水産研究所である。
プロジェクトの中心メンバー 山崎秀樹さん。
タコの養殖は昭和30年代からさまざまな研究機関が挑戦してきた。
しかしふ化直後のタコのほとんどが原因不明で死んでしまうため
養殖は不可能とされてきた。
山崎さんもエサの種類や水温を変えたりと試行錯誤を繰り返してきたが
毎回ふ化したタコの9割近くが死んでしまった。
O.研究をあきらめようと思ったことは?
「もうありましたね。
 正直言って何をやっても解決ができないということで。」
大量に死んでいくタコの水槽を眺めていたある日
水の流れにその原因があることを突き止める。
従来の水槽はエアポンプの泡の流れによって水が下に向かって流れていく。
この水槽でタコを飼育するとエサを食べるときに問題が起きる。
エサを捕まえたまま水槽の底に流されると
天敵の多い海底を嫌がる本能が働いてエサを離してしまう。
再び浮上してまたエサを捕まえるが同じことを繰り返し
エサを食べられないため衰弱して死んでいたことが分かった。
そこで改良したの水槽は
エアポンプを使わず酸素を十分含んだ海水を底の方から流すと上向きの流れが起きる。
その結果タコが底に流されることがなくなりエサを食べられるようになった。
この水槽でタコを飼育した結果
ふ化後20日まで生き残る割合は
当初の14%から77%にまで劇的に改善。
さらに山崎さんが注目したのがエサである。
タコの鉱物であるワタリガニの赤ちゃんにプランクトンをしっかりと与えて
エサ自体の栄養価を高めたのである。
その結果生まれてから20日後の体重を比べると
従来はおよそ2mgだったのが改良後は10mgと
一気に5倍に増えた。
水槽の改良にかかる費用は数万円程度。
エサの改良で成長速度も格段に上がったことで
岡山県や香川県それに民間企業もこの研究に加わり
養殖の実現に大きな期待が寄せられている。
(瀬戸内海区水産研究所 山崎英樹さん)
「50年間どうしても超えられなかった壁を今回超えられたと自負しております。
 5,6年
 少なくとも10年先にはみなさんの食卓に
 養殖したタコを安定的に供給できるようなシステムを作っていきたいと考えています。」
これまで難しいとされてきたタコの養殖。
半世紀にわたる研究者の努力が実を結ぼうとしている。

タコは養殖をするうえで共食いをするのが課題となっているということで
研究グループでは飼育装置を改良するなどして
数年から10年以内に商業ベースでのタコの養殖を実現したいとしている。



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夢にローストされた人生

2019-02-14 07:00:00 | 編集手帳

1月29日 編集手帳

 

 詩人の吉野弘さんに、
誤植から生まれた作品がある。
表題は「夕焼け」のはずが、
受け取った刷りが「夢焼け」になっていたという。

その字体がことのほかまぶしく見えて、
詩人は「夢焼け」という題のまま新たな詩を着想する。
<人が…夢に焼かれている、と
 明かしてくれたネ
 人が…夢にローストされながら生きている、と
 明かしてくれたネ
 ああ、
 「夢焼け」!>

先週末、
テニスの全豪オープン決勝を観戦しながらこの一節を思い出した。
大坂なおみ選手の試合中の涙に、
ペトラ・クビトバ選手の激情の叫びに。

クビトバ選手は2年前、
強盗に襲われ利き手の左手に重傷を負った。
一時は日常生活にも難があった。
それを克服し四大大会決勝にまでカムバックした人は表彰式では試合中とは別人のような穏やかさだった。
「なおみ、
 おめでとう」。
人生を深く刻む笑みに打たれた方は多かろう。

思えば全米オープン決勝も命がけの出産を乗り越えたセリーナ・ウィリアムズ選手が相手だった。
若い大坂選手の宝となろう。
2度も続けて、
夢にじっくりローストされた熱い人生がネットの向こう側に現れた。


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