11月2日 国際報道2018
NATO(北大西洋条約機構)は12か国が1949年に結成。
冷戦終結後は旧共産圏の国々も取り込み
2018年現在は加盟29カ国にまで拡大した。
そのNATOに強い衝撃を与えたのが
4年前のロシアによるクリミア併合だった。
ロシア軍部隊の迅速な展開はNATOの想像を上回っていた。
さらにロシアは今年2月
NATO加盟国に隣接する飛び地に核弾頭を搭載できるミサイルを配備した。
危機感を募らせたNATOは7月
ロシアによる加盟国への進行に備え
陸海空30ずつの大規模な部隊を30日以内に迅速に展開する戦略を決めた。
高まり続けるロシアの脅威を背景に
各国はいま同盟の結束を固めている。
(ドイツ陸軍 フォマール中将)
「クリミアが併合された2014年に安全保障の状況は変わり
東欧の加盟国は危機にさらされている。
それを守るのが同盟の義務だ。」
NATOとロシアの新たな対立が生まれているのが
ヨーロッパの東側ルーマニアとウクライナに挟まれたモルドバである。
面積は役3万4,000㎢と日本の九州よりやや小さく
人口は350万余。
1991年に旧ソビエトから独立したが
今も公用語であるモルドバ語だけでなくロシア語も広く使われている。
モルドバは独立以来 欧米寄りの外交政策を重視しており
目指してきたのがEUとNATOへの加盟である。
ところが2年前の大統領選挙で当選したのが
ロシア寄りの姿勢を貫いてきた野党の党首だったドドン氏。
ドドン氏はロシアとの関係強化を掲げ
欧米寄りの政権による汚職や腐敗などへの批判が追い風になり
国民からの支持を得たと見られている。
この結果モルドバでは
大統領が親ロシア派なのに対し
首相や議会の多数を占めている政党が親欧米派というねじれた状態になっている。
こうした中つけ入る隙を狙っているとみられるのがロシアである。
旧ソビエトからの独立以降もヨーロッパとロシアの間で揺れてきたモルドバ。
ロシアのプーチン大統領もこの国の動向を注視している。
ドドン大統領の就任以降
軍事パレードに招くなどして頻繁に会って関係を強めている。
ドドン大統領と会談し経済協力を推し進める姿勢を強調した。
(ロシア プーチン大統領)
「貿易や経済の分野で状況がよくなり
ロシアへの輸入も農業分野を中心に増えている。」
実際にロシアは親欧米だとして禁止していたワインの輸入を去年解禁。
ワインはモルドバの重要産業。
ドドン大統領を支える政策をとり始めている。
一方のドドン大統領もロシアとの関係を重視していく姿勢を示した。
(モルドバ ドドン大統領)
「私たちはガスなどのエネルギー資源をロシアから得ている。
とても重要な国だ。
プーチン大統領とは良き対話を続けていく。」
親ロシア派のドドン大統領に対して
首相や議会は親欧米路線をとっている。
街なかでもヨーロッパとの統合を求める意見がきかれた。
(モルドバ市民)
「欧州の方が子どもたちの将来がある。
生活レベルも高いし仕事もある。」
「モルドバはロシアとは長年の関係だがいいことはなかった。
今後もないだろう。」
さらに安全保障でも欧米との一体化を進めようとしている。
NATOへの加盟を目指して首都では連絡事務所まで設置。
セミナーでNATOの意義を説明するなど
加盟に向けた機運を高めている。
(NATO情報センター)
「モルドバは多くの安全保障上の問題を抱えている。
ここは“NATOとは何か”を理解してもらう重要な場所となっている。」
こうした中モルドバでは来年2月に行われる議会選挙を控え
早くも選挙戦ムードが。
政府や与党は
ロシアが選挙でドドン大統領を支援し議会構成を逆転させ
欧米寄りの動きを阻止するのではないかと危機感を強めている。
議会はロシアの介入がないかなどを調べる委員会を設置。
議長は
NATOやEUへの加盟を目指す上でも負けられない戦いになると強調した。
(モルドバ議会 カンドゥ議長)
「大統領側が多数はとなればヨーロッパへの統合は失速するか止まってしまう。
選挙に何としても勝つべく頑張りたい。」
一方でドドン大統領はロシアとの経済協力の効果を有権者にアピールして
大統領側が多数派となることに意欲を示した。
(モルドバ ドドン大統領)
「今回の選挙で相手側は負けるはず。
私を支持する政党の方に過半数を獲得するチャンスがある。
これで今ある政治の対立は消えるだろう。」
欧米かロシアか
揺れるモルドバ。
ロシアにとってこの小さな国の存在が大きくなり始めている。
11月4日 編集手帳
編み物を完成させるのはどれほど大変か。
作家の長野まゆみさんが説いた一文がある。
図面の通り丁寧に編み目をひろってゆく根気、
手順に従う正確さが欠かせない。
電気回路のようにどこかで断絶していたら失敗だ。
<一ヵ所断線しただけで、
ぜんぶ点(つ)かなくなった昔のクリスマスツリーの豆電灯を思い出す>と。
子育ての合間に。
介護をしながら。
わずかな時間を見つけつつ、
今日も一心に針を進めていることだろう。
宮城県気仙沼市からセーターやカーディガンを届ける「気仙沼ニッティング」はこれから繁忙期を迎える。
被災地支援として始まった取り組みが5年前、
会社創設へとつながった。
訓練を経て腕前を上げた地元の女性ら70人ほどが編み手を担う。
規格からほんの少しでもはみ出せば編み直しだ。
厳しい検品の後、
手書きのメッセージを添えて発送すると、
購入者からも度々便りが届く。
「友達とは違うし親戚未満?
不思議な間柄ですね」。
返信の文面に新たな回路の開通を実感し、
励みにする人も多いそうだ。
<毛糸編み来世も夫(つま)にかく編まん>(山口波津女)。
ぬくもりの恋しい季節が来た。
11月3日 編集手帳
松鶴家千とせさんの記事が今春、
本紙都民版に載った。
若い方はご存じないだろうが、
昭和半ば、
「わかるかなぁ、わかんねぇだろうな」で一世を風靡(ふうび)した漫談家である。
すでに80歳となる今も舞台に立ち続ける。
♪夕焼け小焼けで日が暮れて~と歌ったあと、
こう続く。
<おれがむかし夕焼けだったころ、
弟は小焼けだった。
父さんは胸焼けで、
母さんは霜焼けだった。
わかるかなぁ>
長く同じ芸を続けて気づいたことがある。
「母さんは霜焼けだった」と言ったところで笑うのではなく、
目を潤ませる客がいるという。
一昔前までは冷たい水で炊事や洗濯をするしかなかった。
懐かしい母の背中を思いだし、
涙するのかもしれない。
千とせさん自身、
福島県南相馬市の農家に育ち、
母と畑仕事をした。
「母さんは霜焼けだった」は実話だという。
きのうの「四季」欄に福島の俳人、
永瀬十悟さんの句が紹介された。
<棄郷にはあらず於母影原は霧>。
霧がたちこめど、
面影さまよう懐かしい故郷にいつか帰ろう…原発事故で避難した人々のやるせない思いだろう。
千とせさんの「わかるかなぁ」が響いてきた。
11月2日 おはよう日本
日本人の国民食 ラーメン。
世界中からやって来る観光客にも大人気である。
そんなラーメンブームのなか
本場の味を学びたいと外国人がこぞって集まるラーメン道場が大阪にある。
講師を務めるのはこの道20年のラーメン職人
宮島力彩さん(53)である。
ラーメン好きが高じて30歳のときにラーメン店を開業。
9年前には学校まで開いてしまった。
現在 生徒の9割が外国人である。
宮島さんはスープの出汁から麺に至るまで
ノウハウのすべてをマンツーマンでたたき込む。
下処理などの地味な作業も多く
指導は細かく厳しいものである。
しかし徹底したプロのこだわりが評判を呼び
今では3か月待ちの大人気教室となっている。
(アルゼンチンからの生徒)
「ラーメン作りは大変だと覚悟していたが
ここまで細かい工程があるとは思っていなかった。」
(宮島力彩さん)
「海外の人に教えて
その国でまた進化して
日本に逆輸入になって戻ってくる。
ワクワクしながら教えています。」
これまで500人以上の外国人に指導してきた宮島さん。
ここ数年は受講生のお国柄が見えるラーメンのリクエストが増えている。
「今度の人はインドネシアの方で
ハラル(イスラム教の戒律に対応したもの)ラーメン。
ヴィ―ガン(完全菜食主義)のラーメンもやりたい。」
イスラム教徒の多い地域では豚肉などは戒律の制約上使用できない。
そこで宮島さんは野菜をベースにコクと味わいがしっかり出せるスープを考え出した。
「インドネシアはニンニクの消費量が多いと聞いたんで
ニンニクをベースにやってみます。」
今回のリクエストをしたのがインドネシア人のビマンドウ―・ハルタルトさん(25)である。
アメリカ留学中に出会ったラーメンにほれ込み
ことしジャカルタに店を開いた。
多くの民族や文化が交錯する国で
より多様な好みに応えられるようにと
新たなラーメンを学びにやって来た。
(ハルタルトさん)
「本当においしいハラルやヴィ―ガンのラーメンを作るために来ました。
ジャカルタの誰もがラーメンを食べられるようにしたい。」
今回つくる出汁のベースはほぼニンニクのみ。
これを皮ごと煮込む。
「こんなやり方これまで見たこと無い。」
初めて目にする発想から
ハルタルトさんは理想のスープ作りを学ぶ。
「ニンニクの白湯。」
宮島流ヴィ―ガンラーメンが完成。
「すばらしい。」
運命の試食タイム。
「it's crazy good!(めちゃめちゃうまい!)」
(宮島力彩さん)
「野菜だけでもコクがあるでしょ。」
(ハルタルトさん)
「スープが本当に素晴らしい。
こんなにおいしいの今まで食べたことがない。
これだったらあと3杯はいけます。」
(宮島力彩さん)
「このすばらしいラーメンという食べもの
日本人の食文化が凝縮されていると思う。
それを東大阪から世界に広めていけたらいいと思っている。」
小さな教室で生まれた大きな夢の1杯。
日本と世界をつなぐ。
11月2日 おはよう日本
(ファッションの専門家 しぎはらひろ子さん)
「男性でスーツ着る人の8割は
ゆるめのサイズのスーツを着ている。」
男性はもちろん女性も体にフィットしたスーツを求める動きが広がっている。
スーツ業界大手のAOKIが発表した女性向けスーツ。
40~50代を意識し
肩や袖
背中などが動きやすく
さまざまな体形にぴったり合うようにデザインした。
このスーツを開発できた秘訣はアメリカ製の機械。
赤外線センサーで全身を立体的に採寸。
わずか4秒で首回りや肩幅など400以上のデータを計測することができる。
AOKIは主力の紳士服でも体にフィットすることを重視。
10月から全国の店舗でオーダースーツの販売を始めた。
タブレット端末で生地の色味やネクタイの色を変えて
“自分に合う1着”というのをイメージできる。
ていねいな採寸。
既成スーツに負けじと
2着で4万8千円というセット商品も用意して
顧客層の拡大を狙っている。
(AOKI銀座本店 総店長)
「オーダースーツ市場は非常に拡大している。
既製品だと上下セットになるので
“上はいいけど下は会わない”という方もいた。
オーダーは“上は上 下は下”で選べるメリットもある。」
東京銀座にあるオーダースーツの専門店。
店内にはレジがない。
採寸を済ませたあと
壁一面に展示された生地のサンプルから気に入ったものを自由に探す。
色やデザインはもちろん
ストレッチ素材や防寒使用のものなど
約300種類を取り揃えている。
注文は後日スマホから。
店頭で購入をせかされることなく自分のペースでオーダースーツを選ぶことができる。
(FABRIC TOKYO 社長)
「ファストファッションが増え
モノがあふれている世の中になってきているが
その中でも新しいショッピング体験としてオーダーメードを選択する客が増えてきている。
画一的な既成の“作られたスーツ”ではなく
自分のオリジナルなものを求める
そういった世代が隆盛してきているのかなと。」
既成スーツ市場はクールビズ・ウォームビスなどによって4年で14%減少している。
一方でオーダースーツ市場はまだ小さいが4年で4,1%増とじわじわと伸びている。
納品までの時間も昔より短くなり
価格帯もこなれてきたことで
自分らしい体に合ったスーツを着たいという流れが生まれてきている。
10月31日
常夏の島グァムで人気が高まっているのが
日本の武道 合気道。
立役者の一人が
20年ほど前にグァムに移り住んだ一人の日本人女性。
これまでにおよそ1,500人を指導してきた。
しかしいま後継者問題に悩んでいる。
合気道歴40年を超える峰岸睦子さん(78)。
グァムで唯一の道場を開いている。
(峰岸睦子さん)
「私自身が助けられているので
続けられています。」
7段という女性の最高峰まで上り詰めた峰岸さん。
現在100人を超える門下生を指導しているが
80歳を前に徐々に体力の衰えを感じるようになった。
グァムで高まってきた合気道の人気をなんとか維持したいと
後継者育成を考えている。
期待を寄せているのが大学生の ターニャ・マリー・レジェスさん(21)である。
ターニャさんは8歳から道場に通い
峰岸さんに次ぐ3段の実力者である。
やさしい性格で子どもたちからも慕われているターニャさん。
しかし峰岸さんは
リーダーになるにはターニャさんの控えめな性格が課題だと感じている。
(峰岸睦子さん)
「目立ちたくない性格で
自己主張するということも
大きな声を出すということもない。」
(ターニャさん)
「自分の教え方が正しいか不安。
もっと自信を持ってやりたい。」
そんなターニャさんに峰岸さんは初めて稽古を仕切る役割を与えた。
「あなたがやらなければいけないの。
ためらってはダメ。
大きな声で指導しなさい。」
最初だ黙って見守っていた峰岸さんだが
黙々と稽古を進めるターニャさんに技の説明をするように声をかけた。
「大事なポイントはどこ?」
(ターニャさん)
「抵抗しないでただ腕を伸ばして
左手が上がって右手が下がります。」
さらに峰岸さんの厳しい声が響く。
「説明しながらもう一度。」
「もっと大きな声で!」
稽古の後半
ターニャさんは少しずつリーダーとしての自覚が芽生えてきたようである。
子どもたちに積極的に声をかける。
(ターニャさん)
「動かないで
向きを変えるだけ。」
(ターニャさん)
「先生に言われたとおり
もっと元気にやらないとダメだと思います。」
(峰岸睦子さん)
「女性のリーダーが出ることを願って
一生懸命がんばっています。
後を継いで
ガンガンやってほしい。」
グァムでの合気道人気を支えてきた峰岸さん。
その思いを継いだターニャさんの指導者への道はまだ始まったばかりである。
10月31日 国際報道2018
中国からヨーロッパまでをつなぐ巨大経済圏構想 “一帯一路”をめぐって
各国で中国の融資を受けた事業見直しの動きが相次いでいる。
マレーシアでは鉄道とパイプラインの事案の中止を表明。
パキスタンでも北西部と東部を結ぶ鉄道の改良事業の総工費を大幅に削減することになった。
背景にあるのが中国への増大する債務である。
新たに懸念が広がっているミャンマーでは
対外債務全体のうち中国に対するものが4割を超えているのに加え
開発そのものが地元の利益につながるのか疑問の声が高まっている。
ミャンマー西部ラカイン州のチャウピュー。
ここでいま中国主導の大規模な開発プロジェクトが推し進められている。
海沿いに建てられた天然ガスや石油を扱う施設。
全長1,000kmを超えるパイプラインが中国内陸部までつながっている。
建設費用のほとんどを中国企業が負担した。
これにより中国はマラッカ海峡を経由せず
インド洋から直接 石油や天然ガスを内陸部へ送ることが可能になった。
さらにベンガル湾につながる川の河口。
計画中の港湾施設は大型タンカーが10隻以上接岸することができ
周辺に工業団地や居住エリアなども整備する。
将来的には中国内陸部と高速道路で結ばれる構想もあり
ミャンマー政府は「国の発展につながる」と説明している。
このうち港の建設費は約8,000億円。
7割を中国が
残りの3割をミャンマーが負担することになっている。
資金調達の前提は中国からの借り入れだった。
しかしこうした壮大な計画は早くもほころびを見せ始めている。
港の建設に合わせて総工費約2,500億円をかけて整備される工業団地の予定地。
ミャンマーは建設費の調達先を検討しているものの
いっこうに工事が始まっていない。
工業団地にほど近い場所にホテルを建設している不動産業者。
工業団地が整備されれば滞在する人も増え収益が望めると期待していたが
かんじんの工業団地の建設が進まず
当てが外れたと考えている。
(不動産業者)
「ご覧のとおり平日でも人はいない。
仕事がないので
皆ラカイン州から離れていく。」
中国主導の開発によってむしろ生活が悪くなったと訴える声が地元では相次いでいる。
漁業を営む男性は
中国が建設したパイプラインが稼働し
海に石油タンカーが行き来するようになってから漁獲量が大幅に減ったという。
(漁師)
「このままでは子どもたちの将来がどうなるかわからない。」
このまま大規模な開発を続け
中国からの借り入れに頼っていては
将来 債務を返せなくなるうえ
国民の間で不満がさらに高まるのではないか。
懸念を強めたミャンマー政府はこれまでの方針を転換。
今年8月
当面の港の建設費を当初の5分の1と大幅に縮小するとともに
中国からの借り入れも取りやめることにしたのである。
今後は自国の利益を見極めながら
必要な投資を慎重に判断していく方針である。
(ミャンマー貿易振興機構 事務局長)
「ミャンマー政府は開発のために借金はしない。
開発はミャンマー政府の規則や法律にのっとって行う。」
(食べログより)
JR「東京駅」八重洲北口から徒歩5分
東京メトロ 銀座線・東西線「日本橋駅」B4出口
都営地下鉄 浅草線「日本橋駅」から徒歩4分
日本橋高島屋S.C.新館 6F
https://www.kogentey.jp/
10月31日 おはよう日本
都内で開かれたイベント。
中小企業の経営者などが集まり
後継者不足の現状や課題を話し合った。
後継者がいない中小企業は全国約120万社ともいわれ事業承継の重要なテーマである。
こうしたなか
後継者を探す会社と起業したい若者を結び付けて事業承継を
という新サービスが注目されている。
今年8月に個人が買取って
いま事業を引きついている京都市の会社。
従業員6人の産業用ロボットの部品メーカー。
去年の売り上げは約3,000万円。
黒字経営を続けてきたが
高齢になった社長に後継者がおらず廃業の危機に直面していた。
そこでこの会社をかったのがMさん(25)。
いつか自分で会社を経営したいと考えていたMさん。
勤めていた大手電機メーカーを辞め
この会社の経営者となった。
(美山精機 社長 Mさん)
「自分で起業したいという思いがあったが
事業承継という形であれば
従業員の方もすでにいる
取引先もすでにある
比較的ハードルが低いかなと。」
Mさんが利用したのが仲介サイト TRANBI。
会社を譲りたい売り手と
それを受け継ぎたい買い手をネットでマッチングする。
売り手として登録しているのは約700社。
事業内容や売上高などを公開する。
それを買い手側は自由に閲覧でき
直接連絡をとって交渉することができる。
さらにサイトと提携している税理士などの専門家のアドバイスも受けられる。
Mさんにとって最大の課題となったのが1,800万円という買収資金の確保だった。
そこでこの会社と取引していた信用金庫にかけあい
全額融資を得られることになった。
(京都中央信用金庫)
「後継者がいないというだけで企業がなくなってしまうのはもったいない。
地域金融機関として
企業をひとつでも存続に向け手伝い
何か提案できないかと。」
Mさんがいま力を入れているのが販路拡大である。
ロボット用だけではなく新たに家電用の部品製造も引きうけ
取引先を増やしつつある。
(美山精機 社長 Mさん)
「買って終わりじゃない。
買ってからどうしていくかが大切。
これからしっかり会社を成長させていきたい。」
事業承継の仲介サイトを運営する会社では
Mさんのように若い世代の個人が買い手となるケースが増えているという。
(トランビ 社長)
「企業を引きついて挑戦できる環境ができている。
買い手として個人が手をあげることも出来るので
新しいチャンスが生まれている。」
10月25日 キャッチ!世界のトップニュース
“ヨーロッパ最北のカトリックの国”と言われるリトアニアでは
十字架や聖人の祭壇を木彫りで作る伝統があり
こうした一連の文化はユネスコの無形文化遺産に登録されている。
9月下旬
ローマカトリック教会のフランシスコ法王が
リトアニアなどバルト3国を訪問した。
法王の訪問は25年前のヨハネ・パウロ2世以来で
大勢の市民から大歓迎を受けた。
リトアニアはもともと独自の多神教信仰があり
「ヨーロッパ最後の異教国」とも呼ばれた。
その後 16世紀ごろには広くカトリックが浸透し
現在は国民の約8割がカトリック教徒である。
そのリトアニアのカトリック信仰の象徴とも言われる巡礼地が北部にある。
その名も“十字架の丘”。
10万本以上の十字架や祭壇がたてられている。
その数は今も増え続けているという。
十字架や祭壇には花模様や太陽 ヘビをかたどった独特のデザインが施されている。
キリスト教が伝わる前の多神教の時代から受け継がれたモチーフである。
この丘に最初に十字架がたてられたのは19世紀とみられている。
第二次世界大戦後 リトアニアがソビエトの一共和国だった時代には
宗教を禁止したソビエト当局によって何度も十字架が撤去されたが
そのたびに市民が再び十字架をたてたという。
“十字架の丘”はソビエトの圧力に抵抗するリトアニア人のアイデンティティーそのものだったのである。
いまもここには自由十字架をたてることができ
人々はさまざまな希望や願いを胸に訪れる。
(訪問者)
「ここは神聖な場所です。
ほかにはありません。
人々を引きつける魅力があります。」
ある夫婦の息子はリトアニア軍の兵士としてアフガニスタンに派遣された。
無事に帰ってこられたらここに十字架を立てると約束したところ息子が無事に帰ってきた。
この日は新たに十字架をたてて家族の幸せと健康を祈った。
(訪問者)
「人々はここに希望を託します。
十字架をたてれば願いが届くのです。」
リトアニアは十字架だけでなく
集落の入り口や通りのあちこちに木彫りの祭壇がある。
こうした祭壇を作る彫刻家のひとり アンタナス・バスキスさん。
注文を受けてキリスト教の聖人の像や十字架などを作っている。
子どものころから周囲に彫刻に携わる人が多かったことがこの仕事に就くきっかけになったという。
(彫刻家 アンタナス・バスキスさん)
「小さいころから周りには多くの祭壇や彫刻がありましたので
彫刻家になるのはごく自然なことでした。」
アンタナスさんに彫刻を注文したホテル経営者のアリア・ストリアウキエネさん。
「これは聖アグネスの像です。
娘と孫のために注文しました。」
2年前 孫のガビアちゃんの健やかな成長を願って
不屈の精神を象徴するという聖人の像を庭にたてた。
マリアさんにとってアンタナスさんの作る彫刻は
家族の歴史を刻むとともに絆を深めるものだという。
(マリア・ストリアウキエネさん)
「彼が木材を選び私たちと話をすると彫刻に思いがこもるのです。」
この日はマリアさんは待ちわびた彫刻をアンタナスさんが届ける日。
「1年まったわ。
やっと来たのね。」
「景色にあいますよ。」
「本当に素敵。
うれしいわ。」
マリアさんが手にしたのは旅をする聖人の像。
ホテルに宿泊する旅行者の安全の願って注文した。
どこにこの像を飾るのか
あれこれ考えるのがマリアさんの楽しみである。
いまアンタナスさんはこれまでで最も大きい十字架づくりに取り組んでいる。
高さ8m60cm。
太いところで直径は約1mある。
「教会の70周年の記念に」と村の人たちから注文を受けた。
掘られているのはキリストとマリア
そしてリトアニアの守護聖人である。
保存状態が良ければ200年もつという十字架。
アンタナスさんは最後の仕上げに取りかかっている。
(彫刻家 アンタナス・バスキスさん)
「作るのはとても楽しいですが
毎回責任も感じています。
満足してもらえるものを作ろうと日々努力しています。」
10月26日 編集手帳
中年の身に無理とは分かっても、
つかのま夢を見るのは自由だろう。
とぼけた味のエッセーが人気の歌人、
穂村弘さん(56)が書いている。
<今からジャニーズの一員になることがあるだろうか…
記者会見のフラッシュを浴びながら、
挨拶をするところを想像する。
「最年長です」と私は恥ずかしそうに云(い)った。
「アニキ」とキムタクが云った。
「いや、芸能界では君が先輩だから」と私は云った>
(『にょっ記』文春文庫)
不肖、
野球中年。
もし指名されたら何と言おう?
穂村氏に感化され、
空想もよぎらせつつプロ野球のドラフト会議中継を眺めさせてもらった。
例年にない傾向だろう。
1巡目、
大阪桐蔭の根尾昂選手ら高校生3人に11球団の指名が集中した。
多くの方が感動を呼んだ夏の甲子園の残像をダブらせながら、
10代の笑顔をのぞき込んだことだろう。
むろん秋田の農業高校を準優勝に導いた吉田くんも1位の列に名を連ねた。
数年前、
塁上わずか1メートルのリードで牽制タッチアウトになった小欄はやはり指名されなかった。
こう言いたい。
ぼくの分まで輝いてくれ。
空想にしても過ぎる、
と周囲の声。
10月 おはよう日本
中国では日本を訪れる観光客が増えているほか
SNSを数字て日本を知ろうとする動きが広がっている。
北京で開かれた日本のファッション雑誌の創刊イベント。
会場で目立ったのがスマートフォンでイベントを中継する人たち。
SNSで多くのフォロワーを抱えるインフルエンサーである。
のべ5,000万人のフォロワーに情報が拡散されたという。
(インフルエンサーの女性)
「ウェイボーやネット中継は若者の間でとてもはやっている。
みんな日本の文化やファッション
それにグルメなどが好き。」
40歳未満のネットユーザーが5億人を超える中国。
SNSから情報を得る人が増えている。
そのひとり 楊さん。
情報を得るのはもっぱらSNSだという。
(楊さん)
「伝統的なマスメディアの情報は政府の宣伝課と思ってしまう。
SNSの情報は感情移入できて
より真実味があると感じる。」
日本にそれほど関心は無かったが
日本に旅行した友人のSNSなどを見て
訪れたいと考えるようになった。
(楊さん)
「歴史などの要因で両国関係は少し緊張しているが
実際に訪れると日本人は友好的と言っていた。」
中国では楊さんのように好意的な印象を持つ人が増えている。
調査では
日本の印象について
“良い”などと回答した中国人が初めて4割を超えた。
調査開始以来 最も高い水準である。
こうした現象に一役買っているインフルエンサーのひとり 陳さん。
7年前からSNSを始め
日本製品や観光地の情報を発信している。
フォロワーは250万人にのぼる。
その影響力に日本企業からPRの依頼も舞い込む。
この日訪れたのは中国で果物から天然甘味料を作る日本企業の工場。
「新鮮な羅漢果の実を初めて食べます。
乾燥させたのとどう違うのでしょうか。
甘い。」
今ではこうした活動で収入を得るようになった。
(陳さん)
「中国人は口コミを信用している。
日本の情報を発信しつつ
日本のイメージをリアルに伝えたい。」
SNSの発信力に日本大使館も注目している。
インフルエンサーをイベントに招待するなど
SNSを使って積極的に情報発信をしている。
歴史問題などをめぐり批判的なコメントが殺到することも少なくないが
専門の職員が毎日 日本の情報を投稿している。
(在中国 日本大使館 堤尚広公使)
「生の日本を知った人の体験が共有され
日本を好きになる人が増えることを期待。
役立つ情報は心をしていきたい。」
SNSで広がる等身大の日本を知る動き。
若い世代を中心に徐々に浸透し始めている。
10月24日 国際報道2018
平均年齢は33歳。
ベンチャーが盛んなイノベーション都市 深圳。
ドローンなどの分野で世界有数の企業が相次いで誕生している。
その深圳にはここ1年
毎週のように日本からの視察が相次いでいる。
訪れているのは主に政府や企業の関係者で
ハイテク製品が生み出される環境に関心を寄せている。
(企業関係者)
「お金も建物も人の数も全然規模が違うというのを非常に感じた。」
技術革新の動きを取り込もうと現地で事業に乗り出す若者も出てきた。
IT系の会社を経営している山本さん。
山本さんは新事業を起ち上げようと
今年7月 深圳に拠点を設けた。
深圳にはアイデアをすぐ形にできる環境があるからだという。
(山本さん)
「深圳はめちゃくちゃ面白い。
特に華強北(電気街)を歩いていると
毎週新しいテクノロジーがでてくるので
この中に入ってなにか作り上げたい。」
新事業の立ち上げにあたり
顔の表情などから感情を読み取る技術をビジネスにできないかと考えていた。
あるとき知人から
「赤ちゃんの気持ちが読み取れないか?」と言われ
製品の開発を思いついた。
(山本さん)
「困っているお母さんや保育士さんがたくさんいる。
赤ちゃんに使うことができたら
世の中のためになるのではと言われた。」
山本さんが考えているのは
AI人工知能を使って氷上を読み取る技術と
体温・心拍数・血中酸素濃度などを測定する腕時計型の端末を組み合わせるサービスである。
突然の体調変化の発見を助ける端末として
市場に売り込みたい考えである。
深圳で開発を始めた理由はスピードと安さである。
電子関係の工場が集積しているため
あらゆる部品がすぐ手に入る。
試作品の開発のため日本だと半年かかるものが
深圳なら数週間でできるうえコストも5分の1程度に抑えられるという。
(電子機器メーカー担当者)
「私たちはどんなアイデアでも形にする。
生産まで一連のサービスを提供できる。」
(山本さん)
「日本の向上と深圳の工場を比べたときに
圧倒的にスピード感
あと柔軟性
技術・経験も含めて深圳がいま一番一緒にやるのにベストな場所だなと思って。」
深圳のもう1つの強みが香港と接していることである。
香港の大学ではAIなどの分野で政界最先端の技術研究が盛んに行われている。
YさんはAIによる画像認識を専門とする教授と共同研究をしている。
研究室で開発しているのは幼稚園の子どもたちの表情を分析し感情を読み取る技術である。
Yさんはこの技術を端末に応用したいと考えている。
(香港科技大学 屈華民教授)
「彼らのアイデアはすばらしい。
端末ができれば子どもたちの行動をビッグデータにしてAIなどで分析できる。」
Yさんは深圳の電子機器メーカーに端末の試作品を発注していた。
この日 3台目の試作品が出来上がった。
シリコン製で体温や心拍数などを測定。
スマートフォンにデータを送信するものである。
Yさんはさっそく同僚の赤ちゃんで試してみた。
(試作品を使用した母親)
「子どもの様子をデータで見ることができると安心感 心の支えになる可能性がある。」
(山本さん)
「泣きそうになった。
よくここまで来たなと。」
Yさんは年明けには実用化し商品の種類も増やして
2020年までに世界で100万台の販売を目指している。
(山本さん)
「日本の会社も深圳にならってスピードを速くしていかないと
どんどん取り残される。
深圳がとてつもないスピードで発展しているので
そのスピードに乗って
世界中で使われる製品やサービスを作りたい。」
深圳の強みを生かして
世界に通じるイノベーションを生み出さるのか。
中国を舞台にした日本の若者の挑戦が始まっている。
10月23日 国際報道2018
北極圏には豊富な天然資源があるとされ
世界でまだ開発されていない石油や天然ガスの22%が眠っているとされている。
これまで北極圏の開発は
沿岸国のアメリカ、カナダ、ロシア、ノルウェー、デンマークが中心となってきた。
そこへここ数年 新たに参入してきたのが中国である。
今年1月には初めて北極政策白書「氷上のシルクロード」を発表。
中国が掲げる「一帯一路」を北極圏にもあてはめ
資源開発などに積極的に関わっていく方針を打ち出した。
その中国が狙いをつけているのが
国土の大部分が北極圏に属するグリーンランドである。
グリーンランドはデンマーク領だが自治政府がある。
面積は217万㎢
日本の約6倍の面積がある世界最大の島だが
人口はわずか5万6,000ほど。
国土の80%以上が氷におおわれている。
その氷の下には希少資源のレアアースなど豊富な天然資源が眠っていることが確認されていて
中国はグリーンランドへの投資を加速している。
しかしこうした中国の急激な投資の拡大に
北極圏の国々からは懸念の声が上がっている。
10月
北極圏の活用策や課題を議論する国際会議「北極サークル」が
アイスランドのレイキャビクで開かれた。
6回目を迎える今回は
約60か国から各国政府や企業の関係者ら2,000人が参加。
温暖化の影響や経済開発などについて意見を交わした。
そのなかで開かれた中国主催の交流イベント “チャイナ・ナイト”。
中国の伝統舞踊や豪華な中国料理で参加者をもてなした。
ことし「氷上のシルクロード」構想を打ち出したばかりの中国は
参加者を前に
「一帯一路」の成果を強調。
北極圏にも広げたいと意欲を示した。
(中国外務省 高風特別代表)
「『一帯一路』に参加した国との貿易額は5兆ドルを超えました。
『氷上のシルクロード』構想はこれを北極圏にあてはめ
この地域に経済成長と社会的な発展をもたらそうというものです。」
22日には中国がアイスランドに資金を提供して建設した「オーロラ観測所」がオープンした。
中国はこうしたさまざまな分野での投資を北極圏の国々に対して行い
地域での存在感を高めている。
その中国がいま活発な動きを見せているのがデンマーク自治領グリーンランドである。
狙いはグリーンランドに眠る大量の天然資源とみられている。
すでに中国はグリーンランドの3か所でレアアースやウランなどの開発に投資している。
グリーンランド側も中国からの投資に前向きである。
デンマークからの独立を悲願とするグリーンランド。
しかし目立った産業がなく
行政予算の半分をデンマーク政府からの補助金に頼っている。
中国からの投資によって経済的に自立できれば
独立への道が開かれるとの思いが広がっている。
(グリーンランド アン・ロン・バガー外相)
「いま外国投資がたくさん入っています。
投資はグリーンランドがデンマークから経済的に独立する上で助けになります。」
しかしデンマーク側では中国からの投資拡大を懸念する動きが。
今年3月グリーンランド自治政府は島にある3つの空港の建設工事の入札で
最終候補の1つに中国の企業を選んだ。
この決定にデンマーク政府は
グリーンランドの中国への債務が膨らむとして懸念を表明。
自治政府への資金的強を約束して
事実上 中国企業の参入を阻止したのである。
「北極サークル」の会議でも中国の北極圏開発の行方を議論する討論会が開かれ
中国に対する懸念の声が聞かれた。
「中国は現地の学校に中国語や中国文化の授業を設けている。
世界中で目にする野心的な戦略があり
グリーンランドにも影響を与えるかもしれない。」
これに対し討論会に参加した中国の研究者は
中国政府の動きを擁護した。
(中国の研究者)
「中国の影響についての指摘ですが
進め方や役割が異なるだけで影響力はどの国にもあります。
中国は北極圏を含むすべての国をインフラで便利にさせ利益を提供しているのです。」
また「北極サークル」で登壇した中国外務省の高特別代表は
「氷上のシルクロード」では地域の国々と協議し判断を尊重すると強調し
警戒感を和らげようとしている。
(中国外務省 高風特別代表)
「グリーンランドでの問題について話を聞いたことはあるでしょう。
グリーンランドに投資できないなら
中国はほかの投資先をいくらでも見つけられます。
ここの未来を共有したいという中国の活動は止められません。
わかりますか?」
10月22日 国際報道2018
去年 世界で海外旅行をした人が過去最高の13億人を突破するなか
各地でさまざまな弊害が起きている。
観光客が増え過ぎたことによりさまざまな問題が発生する状態
オーバーツーリズムである。
かつて“アジア一美しい砂浜”と称されたフィリピンのボラカイ島ではホテルなどが乱立。
汚水が原因で大量の藻が発生。
ビーチが閉鎖される異常事態に。
いま日本にもオーバーツーリズムが押し寄せている。
オーバーツーリズムが世界中で問題となっている背景にはいくつかの要因が指摘されている。
まず旅行者数の増加である。
去年 世界で海外旅行に出かけた人の数は過去最高の13億2,600万人。
2000年の6億8,000万人と比べると約2倍に増加。
途上国の経済成長で中間層が増え
より多くの人たちが海外旅行に行けるようになったためだと考えられている。
また国連世界観光機関は
格安航空会社が増えたことで大陸間を移動しやすくなったことの要因の1つだと指摘している。
こうして海外旅行に行く人が有名な観光地に集中することで発生する
オーバーツーリズムが問題になっている。
水の都イタリアのベネチア。
建物よりも高い大型観光船が連日のように入港する。
人口5万余の街に多い時には1日6万人が訪れ大混雑が生じる。
地元住民が怒りの抗議デモを行なう事態に。
(地元住民)
「地元の人は“こんなところもう住めない”と言っています。
悲しいです。」
オーバーツーリズムは日本を代表する観光地でも問題となっている。
年間5,000万人以上が訪れる京都。
バス待ちの長い列はすっかり日常の風景である。
清水寺近くの大通りではバスが観光客でいっぱいなため
市民が乗れないという事態がたびたび起きている。
春・秋のシーズンは慢性的に交通渋滞も発生し市民生活に支障が出ている。
(地元住民)
「バスがすごいです。
乗れないことはしょっちゅうあります。」
また観光客の増加で民泊が増え
騒音が問題となっている。
京都市の中心部は隣の住宅とのすき間がほとんどない町屋が今も多く残っている。
こうした地区の民泊で外国人が夜間に騒ぐことが住民から問題視されている。
(地元住民)
「夜12時過ぎてわーわーわーわー言われてごらん。
ここらへん家がみんなひついてるでしょ。」
こうした混乱をどう解消するのか。
京都市は観光客の分散を進めている。
(京都市 門川大作市長)
「混んでるときに混んでる時間に混んでる場所に行って混んでるというのを
いかに分散化していくか。
これが大きなテーマだということで
頑張っていきたいと思います。」
京都市がまず行ったのが時間の分散。
京都を代表する世界遺産 二条城。
夏の混雑を緩和するため開場時間を通常より45分早い午前8時に設定。
さらに料亭が監修した朝食の提供を行なったところ
早朝からの集客に成功した。
(観光客)
「京都ってやっぱり ざわざわしたイメージがあったんですけど
きょうはすごく落ち着いた感じで
気持ちのいい朝ごはんをいただけています。」
もうひとつの対策が場所の分散である。
外国人観光客が比較的少ない市の南部に誘導しようというのである。
誘導する先は伏見稲荷大社のある伏見区。
地元の商店街や旅行業者などがアイデアを出し合い
外国人が興味を持ちそうな場所を考えた。
(商店街理事長)
「観光のお客さんの分散化は
伏見区としては至上命令を受けているみたいで
京都駅から南にいかにインバウンド(外国人)の方が入ってくれるか。」
(旅行業者)
「酒どころとしての伏見は
外国人旅行者の中であまり大きく認知されていない。」
伏見区は京都の中でも有名な酒蔵が立ち並び
酒どころとして知られている。
酒蔵を英語で案内するガイドツアーを企画した。
利き酒も行ない
日本酒に合う楽しみ方も教えてもらう。
混雑した観光地と違う魅力を体験してもらった。
(イスラエルからの観光客)
「酒蔵に行けたことはとても良い経験でした。
市の中心部とはひと味違った体験でした。」
「すいていて観光客も少なくて良いです。
また来ます。」
しかし京都市を訪れる外国人の宿泊観光客は2011年以降 急激に増加を続けている。
市民は市の分散化の取り組みに効果を感じていない人もいるようである。
(地元住民)
「目立った効果はあんまりないですけど
改善はしてほしいけどね
どうしたら改善できるのか。」
再来年の東京オリンピック・パラリンピックを控え
混雑が予想される日本の観光地。
観光と市民生活の両立を目指すなかでジレンマを抱えている。