11月25日 編集手帳
エスカレーターの乗降板が突然はね上がった。
開いた穴から人が落ちて死んだ。
原因は何か。
科学捜査の天才、
リンカーン・ライムの前に複雑な機械構造が立ちはだかる――。
米国の人気作家ジェフリー・ディーヴァーの新刊『スティール・キス』(文芸春秋、池田真紀子訳)で、
弁護士が事故原因についてあれこれ推量を巡らす場面に次のセリフがある。
「(乗降板を)留めている中国製のねじが、
基準を満たさない金属でできているのかもしれない」
ドキッとする。
作家の印象でその国名が出るのだろうが、
いつ日本に変わらないとも限らない。
神戸製鋼所に続き、
三菱マテリアルでも検査データの不正が発覚した。
系列3社から航空機産業、
自動車産業などへ不適合品が出荷されたという。
日本の素材メーカー全体の信用低下もさることながら、
万が一にも人命にかかわる事故を招くことがないよう祈るばかりである。
ちなみに先のディーヴァー氏は日本製品のよき理解者として知られる。
ライムシリーズの前々作では出刃包丁を原文でわざわざ「Deba」と紹介している。
ニュースは伝わったろうか。