2月17日 おはよう日本
子どもの健やかな成長を願って飾るお雛様。
お雛様のあでやかな衣装は成人式で着た着物や帯で作られた。
愛知県碧南市にある創業57年の人形工房。
2代目の足達孝篤さん。
誰にも着てもらえなくなってしまった着物たちにもう一度晴れの場をと
古くなった着物でひな人形の衣装を作っている。
(足達孝篤さん)
「実際どういう形で着てみえたとか使ってみえたとかお聞きしますので
もう本当に真心込めて
命を吹き込むような感じで作っています。」
今年 特別な思いでひな人形を注文する女性がいる。
碧南市に住む神ノ川三枝子さん。
亡くなった母親が残した着物をひな人形にしようと考えている。
三枝子さんの母の志げ子さんは去年82歳で亡くなった。
志げ子さんが着ていた着物は
紫の地に枯れ葉をあしらったしぶい柄の訪問着。
三枝子さんにとっては母の思い出につながる懐かしい着物である。
いつも家にいて自分の帰りを待っていてくれた母。
めったにない晴れの日には必ずこの着物を着た母の姿があった。
(神ノ川三枝子さん)
「思い出がある帯と着物ですので
いつでも飾ってすぐ見られるような状態にしたいなと。」
三枝子さんはこれまで自分のひな人形を持ったことはない。
(神ノ川三枝子さん)
「そんなに裕福じゃなかったので
欲しかったんですけどあまり欲しいとか親に言いにくい状態で。」
三枝子さんのお母さんの着物が工房に託された。
着物の柄が一番生きる部分を職人が選びかたどりをする。
思い出の着物にハサミが入った。
古い布地が新しい素材へと生まれ変わっていく。
それぞれの工程で職人たちが着物に新たな命を吹き込んでいく。
注文から2週間後 三枝子さんのもとにひな人形が届いた。
(神ノ川三枝子さん)
「こんなに予想よりも素敵な状態になるんだなと思って。
すごいですね。」
枯れ葉模様の紫の着物は打ち掛けの部分に
帯はお雛様とお内裏様の衣装に
それぞれ生まれ変わった。
三枝子さんはうれしさのあまり父の勇さんを部屋に呼ぶ。
走って持ってきたのは母の志げ子さんの写真である。
ひな人形の隣に飾った。
(神ノ川三枝子さん)
「まさか自分が着ていた着物で
ひな人形に変わるなんて本人も思っていなかったでしょうし
すごく喜んでいると思います。」
すごい喜んでいると思う。
古い着物や帯が思い出させてくれる懐かしい家族の時間。
あでやかな姿に形を変えて受け継がれていく。