10月7日 経済フロントライン
きょうこばぁばさん(61)。
フルタイムで介護の仕事をしながら
“彩りのある夕食”を毎日工夫しながら作っている。
新しいことが大好きで
4年前からインスタグラムを開始。
日々の記録として料理の写真を投稿してきた。
この日作っていたのは“海鮮ちらしずし”。
(きょうこばぁばさん)
「ショウガなんかクルクルッと巻いただけでできるので。
どーんと出した時の迫力は他の人に負けたくないといつも思っている。」
フルタイムで働く女性が手をかけずに作れるインスタ映えする料理。
働く女性たちの間で夕食の参考にしたいと人気を集め
フォロワー数は2万7,000人にもなっている。
(きょうこばぁばさん)
「私みたいにプロじゃないのに“いいね”“すてきね”と言われるのは励み。
インスタに出して良かったと前向きになれる。」
きょうこばあばさんのインスタグラムには企業も注目。
出版社の目にとまり
今年の夏には本になった。
さらに“インスタグラムの載せてもらえれば”と商品を送ってくる企業もあると言う。
(きょうこばあばさん)
「商品モニターというかテストというか
“これを使ってみてください”とか送ってくる企業の方もいる。」
実際にシニアのインフルエンサーにアプローチを始めている企業もある。
有機野菜などの宅配サービスを手掛ける会社である。
現在利用者の多くが40代以上。
将来シニアの市場が伸びるのではないかと考え
この日はインフルエンサーに話を聞くことにした。
奈良県に住む梅澤薫さん(68)である。
もともとはパソコンやタブレットが好きでインスタグラムを始めた。
インスタグラムで風景やペット
料理など5つのアカウントを持っていて
フォロワーは全部合わせると約8,000人。
自分のようにインスタグラムで活躍するシニアは増えていると言う。
(マイクロインフルエンサー 梅澤薫さん)
「フォロワーに同年代は多い。
素晴らしい写真を撮る方もいる。
インスタグラムはそんなに難しいものではない。
自分の趣味を生かす場所だと思う。」
この会社の担当者はシニアのインフルエンサーを活用することに大きな可能性があると感じている。
(オイシックスドット大地 広報 西田尚子さん)
「どうしても私たちも担当するものがそこまでシニアの年齢ではないので
弊社の定年が60歳だったりする。
リーチするのが60~70代であればそのの方と同年代の目線で
弊社のサービスをいいと思ってもらって
その情報を広めてもらえるのは利点。」
10月7日 経済フロントライン
インフルエンサー=世間に影響を与える人
インフルエンサーたちが活躍する場が写真共有のSNSサービス インスタグラム。
自身のアカウントを使ってネット上に無料で簡単に画像を投稿することができる。
内容を常に見ている人
いわゆるファンの人たちをフォロワーと呼ぶ。
フォロワー数が多い人ほど影響力が高いということになる。
フォロワーの人数が100万人以上というのは「トップインフルエンサー」と呼ばれ
これはひとにぎりの芸能人や著名人だが
「マイクロインフルエンサー」はフォロワー数が数千~数万人くらいという一般の人たちで
このマイクロインフルエンサーこそがこれまでの広告を変えると注目されている。
都内で開かれた化粧品メーカーのPRイベント。
新作リップを見に来たのは大学生やOLなど20代が中心。
ほとんどがフォロワー1万人前後のマイクロインフルエンサーである。
(フォロワー 7,800人)
「いろいろな人に楽しいのを伝えられればいいかな。」
(フォロワー 8,200人)
「フォロワーのみんなにも伝えられる。」
(フォロワー 1万5,000人)
「友だちに言ってる感覚。
友達に“これいいよ”みたいな感じで言ってる。」
彼女たちをイベントに呼んだ化粧品メーカーは
インフルエンサーにはテレビCM以上の効果が見込めると言う。
インフルエンサーが撮った写真を見るフォロワーは
ふだんからインフルエンサーのセンスに共感している人たちである。
テレビの視聴者などと比べると人数は少ないが
インフルエンサーからの発信は届きやすいという。
(ELGC ポピイ ブラウン事業部 コミュニケーションマネージャー 小山真紀さん)
「マイクロインフルエンサーたちをフォローしている人たちは
その人のライフスタイルや
インスタグラムの中の世界観にすごく共感してフォローしている。
共感されている
そこの中に私たちが入っていれば
そのユーザーとブランドとの共感もすごく生まれやすい。
それはやはりテレビCMではできない。」
どんな人がインフルエンサーをしているのか。
その1人
IT企業に勤める石田一帆さん(26)。
友人から勧められてインスタグラムを始めたのは4年前。
できるだけ多くの人に見てもらいたいと
おしゃれに写る撮り方を日々研究してきた。
自分のメイクを動画にしてアップ。
実用性が高くてセンスがいいと人気を集めるようになった。
今ではフォロワー数が6万4,000人を超えている。
自分の気に入った商品をインスタグラムに載せることで
企業から報酬をもらうこともあるという。
(マイクロインフルエンサー 石田一帆さん)
「私のフォロワー層ってけっこう女の子がほとんど。
中学 高校の方とか
お小遣いで頑張ってコスメを買う。
そういう方とかもファン層で多い。
実際に自分が本当に使ってみて
いいと思ったことを書くようにしている。」
企業の側ではインフルエンサーを確保しようという動きが強まっている。
東京渋谷にあるインフルエンサーを企業に紹介する事業を去年の2月にスタートした会社。
まずサイトを通じてフォロワー数1,000人以上のマイクロインフルエンサーを募集
登録してもらう。
企業は宣伝したいイベントや商品を示し
参加希望者を募る。
その中から最適だと思う人を選択。
この会社に利用料を支払う。
インフルエンサーは商品に関連する情報を投稿し
この会社から報酬がもらえる仕組みである。
報酬は1フォロワーにつき1~2円がベースで
1万人のフォロワーがいる場合1~2万円もらえる計算である。
これまでに2万人のマイクロインフルエンサーが登録していて
950を超える企業が利用。
9月の売り上げは去年に比べて12倍に伸びているという。
(リデルCEO 福田晃一さん)
「結果が出ている企業がたくさん今出てきていて
自社もやらなければという状態にある。
今いちばん盛り上がってきている。」
インフルエンサーへの関心が急速に高まるなかで
企業とインスタグラムをプロデュースする人も出てきている。
全国のホテルでスパなどの施設を運営している企業。
認知度を上げたいと企業のインスタグラムを強化することになり
マイクロインフルエンサーの春日咲さん(24)に任せることになった。
これまでスタイリッシュな写真で自分のインスタグラムのフォロワーを集めてきた春日さん。
企業の依頼であっても使うのはスマホ1つである。
(マイクロインフルエンサー 春日咲さん)
「一眼レフもいいと思うんですけど
スマホで見る率も高いので インスタって。
画面に出てくるのもスマホで撮ったサイズ感の方がイメージが出やすい。
それで私はiPhoneオンリーで撮っています。」
春日さんのプロデュースによってこの企業のインスタグラムの閲覧数は大幅に増えたと言う。
(ザ・デイ・スパ PRマネージャー 伊藤真咲さん)
「かなりフォロワーが増えたし
私たちのファンにンってくれそうなコメントもあったのですごく良い。
実際見たところ仕上がりも違うし
レイアウトも取り込んでやってくれているので
おまかせして正解だった。」
10月26日 編集手帳
米国のプリンストンという町に、
数学の苦手な少女がいた。
母親は少女がときどき、
宿題を持って外出することに気づいた。
娘は隠すそぶりもなく言った。
「数学の宿題が解けなくて困っていたとき、
近所に偉い先生がいて、
とても良い人だって聞いたの。
それで家を訪ねて宿題を手伝ってもらえないかと頼んだら、
とっても喜んでくれて」。
アインシュタインだったという。
当地の学術研究機関に学んだ数学者の故・矢野健太郎さんが随筆で紹介していた。
歴史上、
最も偉大とされる物理学者は触れ合う人に幸せをふりまく特技があったらしい。
1922年、
東京の帝国ホテルに滞在中に従業員に渡したメモである。
「静かで質素な生活は不安に襲われながら成功を追求するより多くの喜びをもたらす」。
エルサレムの競売でホテルの便箋2枚が2億円で落札されたという。
宇宙の壮大な成り立ちに数式の橋をかける頭脳のどこにそんな場所があったのか、
ふしぎなほど身近な空間に温かな思慮を配っている。
科学の域を超えたその人のハートフルな語録は今なお世界中で人気がある。
日本発の言葉もそこに加わる。
10月7日 おはよう日本
東京自由が丘にあるアルパカ専門店。
冬を前にアルパカのセーターやマフラーを求めて全国から客が訪れている。
(客)
「ウールと違って手触りが良かった。
その感触の良さにひかれた。」
アルパカの毛は羊毛に比べ軽くて保温性に優れていると言われ
高級繊維として人気が高まっている。
(アルパカ専門店店長)
「軽くて暖かい。
毛足が長いので毛玉になりにくい。
アルパカ人気はどんどん上がっていると思う。」
こうした需要の高まりに目をつけたのが畜産大国オーストラリアである。
オーストラリアで行われたアルパカのオークション。
この日の最高値は約480万円だった。
(バイヤー)
「競り落としたアルパカは毛並みが良く柔らかくて
チクチクしない。」
生産者団体によるとアルパカの生産は年々増えていて
今年はすでに去年の1,5倍にあたる3,000頭が輸出されたということである。
もともと南米が原産のアルパカ。
標高が高く
寒さの厳しい場所で放牧されている。
オーストラリアに輸入されたのは約30年前。
オーストラリアの中でも比較的気温が低い内陸部を中心に飼育されるようになった。
圧倒的なシェアを誇る南米産に対抗しようと
売りにしているのは徹底した品質管理である。
アルパカ農家のイアン・フリスさん。
9年前にアルパカの飼育をはじめ
今では3つの牧場で合わせて5,000頭を育てている。
フリスさんが重視しているのは栄養状態の確認である。
毛の品質は栄養状態に左右される。
栄養が多すぎると毛が太くなり柔らかさが損なわれる一方
不足すると毛は細くなり劣化する。
そこで些細な変化も見逃さないよう利用しているのは
アルパカを1頭ごとに管理するソフトである。
体重はもちろんいつえさを与えたのか
そしてどんなワクチンを接種したのか
耳に埋め込んだICチップを利用して情報を個別に記録している。
(アルパカ農家 イアン・フリスさん)
「この子は12キロ 14キロと増え
今は61キロ。
ほかにも必要なデータはすべてここにそろっています。」
毛の状態が思わしくなければたんぱく質が多く含まれるシロツメクサをえさに混ぜる。
改善しない場合は獣医に相談するなど迅速に対応できるようになった。
さらに血統の良いアルパカを掛け合わせて効率よく繁殖させている。
品質を安定させて量産し
市場を拡大するのが狙いである。
(アルパカ農家 イアン・フリスさん)
「1頭1頭の状態を理解できるかが大きな違いを生む。」
こうした徹底した品質管理でオーストラリア産のアルパカの評価は世界的に高まっている。
今年初めて開かれた大規模な品評会。
世界各地から多くのバイヤーが集まった。
フリスさんも自慢の19頭を連れて参加。
毛の質や密度の高さが評価され2つの部門で優勝した。
ドイツのバイヤーがさっそく商談を持ち掛けてきた。
(ドイツのバイヤー)
「毛がしっかりしていていいですね。
すばらしい。」
取引を前提に牧場を視察することになった。
(ドイツのバイヤー)
「オーストラリア産の品質向上には驚かされる。
ここ数年多くがヨーロッパに入ってきているし
これからも買う。」
フリスさんが今年海外に輸出したアルパカは350頭で
去年1年間をすでに超える勢いである。
(アルパカ農家 イアン・フリスさん)
「海外との取引が増えると思う。
これまで順調に進んできたし
オーストラリアのアルパカ産業はさらに成長していくだろう。」
新しい成長産業としてアルパカに期待を寄せるオーストラリア。
徹底した品質管理で市場を切り開き
ビジネスチャンスを広げようとしている。
10月4日 おはよう日本
広島カープの本拠地マツダスタジアム。
そのなかで“カープ女子”の存在感は年々増している。
(カープ女子)
「明日の力 愛 元気 すべて。」
(関東から来たカープ女子)
「できることなら広島に住みたい。」
地元広島で応援することでチームとの一体感がさらに強くなると言う。
その仲間入りをしたのが東京渋谷区出身 板倉真弓さん(37)。
カープのファン歴は20年を超える。
去年9月カープ好きが高じて移住した。
いまは広島市内で一人暮らしをしている。
(板倉真弓さん)
「どっぷりカープを見るための生活ができているので
かなり満足しています。」
板倉さんがカープのファンになるきっかけは正田耕三選手。
80~90年代にかけて活躍した走攻守そろった名選手である。
いぶし銀のプレーでチームに貢献する姿に一目ぼれしたと言う。
(板倉真弓さん)
「正田さんがバントで出塁して走ってみたいな。
正田さんなら何かやってくれそうみたいな。」
板倉さんは社会人になると
関東以外の試合にも足を運ぶほどカープへの愛が深まった。
それに伴い遠征にかかる費用が家計を圧迫するようになったと言う。
そして一昨年10月
板倉さんの移住を後押しする出来事があった。
カープがシーズン最終戦で敗れクライマックスシリーズ進出を逃した試合である。
(板倉真弓さん)
「私も大の字になって泣いて。
こんなに好きだったらカープが近づいてくれないなら私が行こうと思って
移住しようと思いました。」
板倉さんの決心を広島県の相談窓口も後押しした。
相談にきめ細かに応じたほか
下見の交通費の助成制度などを紹介し
移住の話が進んでいった。
カープが好きという理由で相談に訪れたケースは3年間で33件。
このうち4世帯が実際に移住し
他の理由と比べ実現した割合は高いと言う。
一方で板倉さんが移住を実現させるのにもっとも困ったのは就職先を見つけることだった。
行政から仕事の斡旋まではなく自力で探したが
“カープが好き”という理由が企業から信用されず10社近くで不採用となった。
(板倉真弓さん)
「担当の方に直接ことばで伝えても
『うそでしょ どうせすぐやめるんでしょ』とか言われたりしたんで
そういうことばはショックでした。」
その中で対応されたのが人材派遣などを手がける会社だった。
立地はマツダスタジアムから2駅。
IT関連企業で培ったスキルを活かし求人広告のデザインを担当している。
板倉さんの面接を担当した田所さん。
広島へ移住する理由にびっくりしたと言う
(会社の常務 田所一郎さん)
「正直な話ちょっとうさんくさいなとは思いました。
会う前は。」
試合がある日は定時に退社。
すぐに球場に駆け付ける。
生活の一部にカープがあることを実感できていると言う。
(板倉真弓さん)
「ホームで見るっていうちょっと優越感とか。」
優勝に大手をかけた試合はチケットが取れず自宅での観戦となった。
そして歓喜の瞬間が。
家を飛び出した板倉さんが向かったのはマツダスタジアムだった。
広島に移住したからにはせめて本拠地で優勝の喜びをかみしめたいと
足を運んだのである。
板倉さんは広島に移り住んで1年が過ぎ
チームの応援はもちろん
それ以外でも生活は充実していると言う。
9月30日 経済フロントライン
9月
フランクフルトモーターショーを訪れた日本のビジネスマン。
大手自動車部品メーカー ケーヒン執行役員 島田育宜さんである。
食い入るような視線の先には充電器や電池。
電気自動車の部品を丹念に見て回っていた。
(ケーヒン執行役員 島田育宜さん)
「EVシフトは加速度的に感じています。
何かやらないと生きていけない。
2030年の時点で我々の会社
製品カタログがどうなっているのか
イメージしながら危機感を持ってやっています。」
この会社はホンダとの取引で業績を拡大。
生産拠点が海外を含め38か所。
従業員は2万2,000人にのぼる。
手掛けているのは主にエンジン部品。
精密な技術を売りに燃料の噴射装置などを生産してきた。
今年4月
島田さんはあるプロジェクトを任された。
電気自動車に搭載する新製品の開発と販路の開拓を始めたのである。
去年公表された金融機関のリポートによって
EV化が進むと受注が減るメーカーの1つと指摘されたことで
開発に拍車をかけたのである。
(ケーヒン社長 横田千年さん)
「やはり今までの100年間の仕事のやり方と全く変わる。
エンジン系の部品メーカーは早めに舵を切らないと間に合わない。」
長年培ってきた技術力を生かして開発してきた製品は
モーターに送る電力をち密に制御する装置である。
はたして自分たちの製品は通用するのか。
向かったのは中国上海
自動車部品メーカーの展示会である。
中国メーカーの担当者に島田さんは直接売り込めると考え
始めて出展した。
(ケーヒン担当者)
「この製品はいまは日本で生産していますが
いずれ中国で作ることも可能です。」
製品に強い関心を示したのは
新興自動車メーカーとのパイプを持つ中国企業の開発担当者。
製品をつぶさに見つめ説明を求めてきた。
ブースに招き入れ2時間にわたって技術力をアピール。
後日詳しい商談をしたいと持ちかけられた。
(中国部品メーカー担当者)
「今日は技術の面でより深く理解できました。
有力な取引先として検討しています。」
いま日本の部品メーカーの間では
EVシフトへの足がかりを築こうという動きが強まっている。
9月に東京で開かれた自動車部品の展示会。
ある経営者の講演にひときわ多くの人がつめかけた。
現れたのは中国の電気自動車メーカーBYDの幹部。
日本のメーカーに電気自動車の部品を作るよう促したのである。
(ビーワイディージャパン 劉学亮社長)
「自動車がすべて電気自動車に
ハイブリッドではありません。
電気自動車
これが1つの国が発展していく方向でもあるわけです。」
講演が終わると取引のきっかけを作ろうと名刺交換に長い列ができた。
(充電設備会社)
「ある程度は予想してましたが
これほど急に盛り上がるとは想定してませんでした。」
(変速機関連メーカー)
「本格的に動かないともう波に乗れない。
危機感しかないです。」
(ビーワイディージャパン 劉学亮社長)
「技術者 能力を持っている日本企業が
BYDの電気自動車だけじゃなくて
電気自動車の世界に多く参加していくことが
日本の産業を活性化させていく欠かせない一歩。
うちは日本のみならずすべてウェルカム。」
9月30日 経済フロントライン
世界最大の自動車市場 中国。
大気汚染対策としてEVシフトを加速させている。
いま最も人気を集めているメーカー。
(EV購入者)
「BYDの車はすばらしい。
迷うことなくこれを買いました。」
中国深圳市にある自動車メーカー BYDである。
従業員は22万人を超えている。
乗用車からバスまで豊富な車種をそろえ
電気自動車の販売台数は国内トップである。
敷地内で目を引く建物の“充電タワー”は
400台の電気自動車が1度に充電できる。
自治体などから要請があれば
BYDはどこにでも出向いてこのタワーを建てることが可能だという。
BYDは1995年に創業。
もともとは携帯電話の電池を作る社員20人のベンチャー企業だった。
わずか20年の間に中国最大のEVメーカーに躍進した背景には
中国政府による強力な後押しがあった。
その1つが公共交通機関に電気自動車を投入し
国内メーカーに生産を担わせることだった。
BYDは地元深圳市でバスの生産のほとんどを請け負い実績を積んだ。
タクシーの生産も担うようになり
知名度は大きく向上した。
さらに中国政府は電気自動車を作るメーカーに補助金を支給。
BYDは設備投資を進め電池の性能を高めた。
去年発売した電気自動車は1回の充電で走れる距離を400キロにまで伸ばしている。
(BYD 李雲飛 副総経理)
「すでに電池の技術だけでなく
電子制御を含む電気自動車を作る主要な技術を全て持っていて
全面的に設計しています。」
中国政府はこうした産業育成政策を進めることで
2025年までに国内メーカーの販売台数を大幅に増やし
いずれ日本やドイツをも超える自動車強国になることを目指している。
国の目標を定めた責任者の1人
清華大学自動車産業技術戦略研究員 趙福全院長。
構造がシンプルな電気自動車なら競争に勝つことは十分可能だと考えている。
(BYD 趙福全さん)
「従来の車では中国は日本やアメリカ ドイツなどとはまだ差があります。
しかし新エネルギー車の分野では他の国と並んでいます。
自動車産業を強くしたい。
政府と企業の決心はとても大きいのです。」
いまや乗用車市場で世界3位のEVメーカーに成長したBYD。
中国市場だけでなく世界にも目を向け始めた。
いま取り組んでいるのはブランド力の強化である。
ドイツのアウディやベンツからデザイナーや技術者を引き抜いている。
(ブランドデザイナー)
「この会社は成功すると思います。
非常に革新的なビジネスをしているからです。」
(BYD 趙福全さん)
「10年で10倍に成長した前途洋々たる中国の自動車市場柄の参入に
私たちは間に合いました。
さらに積極的に海外へ
これからも努力をしみません。」
9月30日 経済フロントライン
9月にドイツで開かれた世界最大級のモーターショー。
展示の主役は電気自動車。
各メーカーは鮮明に“EVシフト”を打ち出した。
ダイムラーは5年後までにメルセデスベンツで10車種
フォルクスワーゲンは2025年までに50車種の投入を目指すと宣言した。
(フォルクスワーゲン ディースCEO)
「我々は電気自動車を大きなマーケットととらえ
新たなスタンダードにします。」
メーカーが電気自動車に力を入れる理由は
ヨーロッパ各国が進める環境重視の政策にある。
EVシフトがいち早く進むノルウェー。
電気自動車であることを示す“E”から始まる特別なナンバーの車が並んでいる。
(EV所有者)
「とても気に入っています。
音も静かだし走りもいいです。」
ノルウェーは温暖化による海面上昇の危機感があり
2025年までにすべての自動車を電気自動車にする目標を掲げ
さまざまな優遇策を進めている。
まず購入する際には
通常100万円以上かかる税金と25%の消費税が免除される。
さらに高速道路は無料。
渋滞している時にはバスとトタクシーの専用レーンを走ることが許されている。
3年前にBMWが作る電気自動車に買い換えた女性。
当初は1回の充電で走れる距離に不安があったというが
充電スタンドが全国に1万か所以上整備されているため
遠くに出かけるときに心配はないと言う。
(購入した女性)
「電気自動車は未来の環境にもつながる車だと思っています。」
国主導の普及策の結果
今年は新車販売の2割近くを電気自動車が占めるまでになっている。
(BMW イアン・ロバートソン上級副社長)
「ノルウェーを見てください。
今後 各国政府が追従するでしょう。
EVシフトはますます加速するとみています。」
ヨーロッパの自動車メーカーがEVシフトを進めるのには1つ大きな理由がある。
(2015年9月 フォルクスワーゲン ウインターコルン前会長)
「今回の不正について心よりお詫び申し上げます。」
一昨年フォルクスワーゲンが排ガス規制を逃れるために不正を行っていたことが発覚。
主力のディーゼル車は売り上げを落とし
新たな戦略が必要となったのである。
(フォルクスワーゲングループ ウルリッヒ・アイヒホルン最高技術責任者)
「ディーゼル車のスキャンダルは当然ながら悪影響を及ぼしました。
EVシフトの計画を早めざるを得なくなったのです。」
すでに電気自動車の量産体制を整えたメーカーもある。
BMWである。
敷地内で目立つのは巨大な風車。
環境対策への取り組みをアピールするために作られた工場が量産の拠点になった。
BMWはこの工場の生産効率を大幅に改善。
電気で走る車の生産を強化し
今年は10万台を市場に送り出す計画である。
(BMW 広報担当者)
「我々は他社と比べて経験も豊富で大きく前に進んでいます。
他の工場でもEVの生産に取り組めるようにさらに投資をしていきます。」
EVシフトの加速で懸念されているのは
自動車産業を支えてきた部品メーカーへの影響である。
創業140年のドイツの部品メーカー。
エンジンの部品が主力製品だったが
去年その売り上げが落ちた。
ガソリン車やディーゼル車で必要とされていたエンジンまわりの部品の多くは下請けのメーカーが作っている。
それがモーターで動く電気自動車では不要になるため影響が避けられない。
このメーカーでは60億円をかけてバッテリーを接続する部品を開発。
新たな取引先を開拓できたが
生き残りにはさらなる開発が必要だと考えている。
(部品メーカー エルリングクリンカー シュテファン・ヴォルフCEO)
「50年後も会社が成功しているように
どういう戦略をとるか。
部品メーカーの多くはまだこの変化に備えられていないでしょう。」
環境対策
さらにディーゼルでの不正問題を背景に進むヨーロッパのEVシフト。
産業構造そのものを大きく変えようとしている。
9月30日 キャッチ!
セントラルパークに6万人以上の観客が集まったコンサート。
数々の有名なアーティストが出演した。
このコンサートは観客のほとんどは無料で観ている。
コンサートはスマホのアプリを使って社会運動に参加した人たちに与えられる特典として用意されたものだからである。
アプリを起ち上げると
貧困や飢餓など世界が抱える様々な課題が表示される。
その課題に取り組むため
アプリから政治家にメッセージを送るなどアクションを起こすとポイントが獲得できる。
貯めたポイント数に応じて様々なイベントに参加できるというシステムである。
今回は10万人以上の応募があり
その中から約3万人にペアのチケットが送られた。
(観客)
「より良い国際社会を信じて大勢が集まるのは素晴らしい。」
「1年間さまざまな国際問題について声を上げてきたご褒美。
こうしたイベントが活動の励みになっているのよ。」
ミュージシャンだけでなく多くの政治家もイベントに協力している。
(ニューヨーク デブラシオ市長)
「世界を変えていけると信じていますか?
変革に立ち向かっていけますか?」
アプリで社会運動を推進しているのは
5年前にニューヨークで発足したNGO グローバル・シチズン。
音楽業界などで働いていた人たちと協力し
国際社会に貢献したいと起ち上げた。
成果も上がっている。
今年はポリオの根絶を後押し。
カナダのトルドー政権にアプリから3万件のメールを送り
トルドー首相は8,000億円の資金拠出を決めた。
(グローバル・シチズン マイケル・シェルドリックさん)
「ガンジー氏やマンデラ氏
キング牧師などから学びました。
具体的な課題について市民の声を集めれば
政治家を動かし
社会を変革できるのです。」
会場では
この団体が掲げる最大の目標“貧困の撲滅”について
フランスのマカロン大統領がビデオで結束を呼びかけた。
(フランス マクロン大統領)
「貧しい国にこそ教育が必要です。
教育がテロをなくすことにつながります。」
より良い世界の実現に貢献したい。
その社会運動にスマホで取り組む若者たちが増えている。
9月30日 おはよう日本
西條澪乃ちゃん(1歳10か月)。
仕事をしている母親の美穂さんは
澪乃ちゃんを早く寝かせるため
毎日夕食やお風呂などを早めに済ませることを心がけてきた。
(西條美穂さん)
「ぴょんぴょん跳んで遊んで
なかなか眠たくならない。」
寝る準備が整うのは午後8時過ぎ。
布団の上で飛び跳ねたりゴロゴロと転がったり。
ようやく眠りについたのは午後10時ごろだった。
ところがこの日は朝になるまで3回目を覚ました。
美穂さんはそのたびに起きて寝かしつけた。
(西條美穂さん)
「寝た気がしない。
夜中に何回も起きるのでそのたびに自分も起きると
朝もへとへと。
すっと寝てくれたらうれしいと思うが。」
子どもの寝つきが悪かったりすぐに起きたりするのはなぜなのか。
子どもの睡眠を研究している大阪大学大学院連合小児発達学研究科
谷池雅子研究科長。
谷池さんたちが注目しているのは寝る前の生活習慣である。
ある子どもが寝る直前までテレビを見ていたときと
1時間前にテレビを見るのをやめたときの睡眠を比較したグラフ。
目が覚めて体が動くと点で表示される。
テレビを見るのをやめると動く回数が減り
ぐっすりと眠る時間が長くなっていることがわかる。
(大阪大学大学院 連合小児発達学研究家 谷池雅子研究課長)
「夜 寝ないというのは夜だけの問題ではなく
1日の生活習慣で決められるということが大きい。」
研究室のメンバーの1人で生活習慣の改善に取り組んでいる辰巳愛香さんと娘の美月ちゃん。
美月ちゃんは1歳半を過ぎたころから寝るのを嫌がるようになり
なかなか寝付かないのが悩みのたねだった。
辰巳さんは谷池さんのアドバイスをもとに
眠る1時間前からはテレビを消すようにした。
さらに取り組んだのが寝る前の習慣づくり。
毎日寝る前に読む絵本を美月ちゃんが自分で選ぶ決まりを作った。
“絵本を選んだら次は布団へ入る”と習慣がつくことで
子どもの意識が睡眠へ向かいやすくなるのである。
午後8時半ごろ
美月ちゃんはぐずることなく眠りについた。
途中で起きることはほとんどなくなったという。
(辰巳愛香さん)
「私も怒らずに寝かしつけられるようになった。
少し変えるだけで自分の時間もできて
子どもも笑顔で寝られるので全然違う。」
谷池さんたちは現在こうした情報を子どもの眠りに悩む人に届けるため
スマートフォンのアプリの開発を進めている。
子どもの眠る前の過ごし方などを入力すると改善点を教えてもらえるアプリである。
(大阪大学大学院 連合小児発達学研究科 谷池雅研究科長)
「ちょっとした工夫だが
お母さんお父さんが取り組みやすいことからアドバイスしていく。
子どもの睡眠は養育者の手にゆだねられているので
そこは十分に啓発していきたいと思っている。」
10月19日 編集手帳
祖国の秋の景色が恋しかったか、
夏目漱石はロンドン滞在中、
菊の展覧会に出かけたことがある。
<白菊と黄菊と咲いて日本かな>という俳句も詠んでいる。
この句で先に白がくるのは五七五の関係だろう。
序列をつけたわけではあるまい。
ただ、
同じく菊をめでる土地柄である中国では、
黄色の菊が特別に尊ばれるらしい。
中日辞典(小学館)でも「黄花」の第一の意味は菊になっている。
その人の心の中にも、
恐らくは序列がある。
習近平総書記(国家主席)である。
白は経済、
黄は軍事力だろうか。
きのう開幕した中国共産党大会で「豊かさから強さへの飛躍を実現した」と述べたという。
<白菊と黄菊と咲いて中国かな>。
そんなご心境だろう。
今世紀半ばまでに「世界一流の軍隊」を建設するとも語った。
一流ときましたか。
これからのどんな行動でそう呼ばせるのか、
周辺国が気にするところだろう。
近所付き合いで考えると、
観光客に買い物をしてもらったり、
世界の工場であったり、
かつ大市場でもある。
白い花をたくさん頂戴しているように思う。
それだけで十分、
感謝されることに気づかないか。
9月30日 おはよう日本
タイ東北部にあるパノム・ルン遺跡。
一帯を支配していたクメール王朝が10~12世紀にかけて築いた寺院である。
彫刻が途切れて新しい石に置き換えられている場所が目立つ。
ここにはヒンドゥー教の物語に登場する王妃の彫刻があった。
何者かに盗まれ
いまは別の石がはめ込まれている。
こうした個所はこの遺跡だけで30以上あるという。
遺跡での盗難の実態について調査しているタノンサック・ハンウォンさん(58)。
(タノンサックさん)
「この門では表と裏の装飾がなくなっている。」
大学で歴史学を教える傍ら
6年前から盗まれた彫刻の行方を探してきた。
調査を進める中わかってきたのは
地元の村人たちが彫刻を持ち出していたということだった。
持ちかけたのは村の外からやって来た見ず知らずの人たちだったと言う。
報酬として提示されたのは月収の10倍にもなる額だった。
(村人)
「外から来た人たちが
手伝えば4,000バーツくれると言った。
私にとっては大金だった。」
彫刻などが多く持ち出されたのは1960年代。
(村の長老)
「当時ここは完全に放置されてジャングルのような状態だった。」
当時
遺跡は荒れ放題で村人は価値があるものとは考えもしなかったという。
(村の長老)
「当時は国中どこも貧しくて
売れる物があれば何でも売っていた。
価値があるなんて思いもしなかった。」
彫刻はどこへ消えたのか。
タノンサックさんは外国に持ち出された可能性があるとみて
世界各地の博物館などの貯蔵品を1つ1つ調べた。
当時
欧米を中心にアジアの文化財が高値で取引される実態があったからである。
調査を始めて4年。
タノンサックさんは盗まれた彫刻がサンフランシスコの博物館にあることを突き止めた。
(タノンサックさん)
「これだ!と言葉にならないほど驚いた。
見つけてうれしかった。
この彫刻は8,000万バーツ(2億7,000万円)かそれ以上で取引されている。」
さらに世界中の美術書や美術館のホームページを詳しく調べた結果
少なくとも133点の文化財がアメリカにわたっていたことも判明した。
タノンサックさんの調査を受けたタイ政府は
今年6月
文化財の返還を求めるための委員会を設置。
貴重な文化財の返還を求める動きがようやく始まった。
10月からはアメリカ政府と交渉を始めることも決まった。
まずは密売されたと証明できた2つの文化財について返還を求めていくことにしている。
(タノンサックさん)
「保存されているだけでは文化財は意味を持ちません。
本来あるべき場所に戻って 初めて大きな価値と知恵を生む。」
タノンサックさんは多くの地元の人に文化財の本当の価値を知ってもらい
返還への機運を高めていく必要があると考えている。
(観光客)
「国の宝として守っていくべきだと思いました。」
「実物を自分の目で見てみたい。」
(タノンサックさん)
「人々に考えてもらい
遺跡の重要性を認識してもらうことだ。
なにが失われたのか理解してもらう努力をこれからも続けていきます。」
こうした文化財の返還をめぐる動きは
数多くの遺跡があるエジプトやカンボジアなどで活発になっていて
いま国際的にも機運が高まっている。
タイも文化財の取引を禁ずる国際条約に批准する準備をすすめるなど
文化財の返還を呼びかける取り組みを広げていくということである。
9月27日 国際報道2017
太平洋に浮かぶ国 マーシャル諸島。
サンゴ礁でできた美しい島々から「太平洋に浮かぶ真珠の首飾り」とも呼ばれるマーシャル諸島。
かつてアメリカが核実験を繰り返した場所でもある。
マーシャル諸島共和国マジュロにある公立高校。
ここで数学の教師をしている進藤純子さん(33)。
今年4月にマーシャル諸島に移住。
9月から教壇に立ち
マーシャル語を使って授業を行っている。
中学生のころから
教育の場に恵まれない世界の子どもたちを助けたいと考えてきた新藤さん。
マーシャル諸島に初めてやって来たのは4年前。
JICA青年海外協力隊の一員として教育現場に携わった。
(教師 進藤純子さん)
「子どもたちがちゃんと学べていない環境がある。
彼らの可能性が最大限伸ばされていないことに気付いて
ここで頑張ろうと決めました。」
いま授業で高校生に教えているのは分度器の使い方など初歩的な内容ばかり。
ここに来て新藤さんは教育水準が想像以上に低いことに驚いたという。
ミクロネシアの国々の中でも若者の学力が最も低いとされるマーシャル諸島。
高校生の半数近くが授業について行けず学校を中退している。
進藤さんはその大きな原因は授業で使う言葉にあると気がついた。
マーシャル諸島の公用語は母国語のマーシャル語と英語である。
日常会話はマーシャル語が使われているのに対し
授業の多くは英語で行われている。
教科書のほぼすべてが海外からの支援品で
英語で表記されているからである。
母国語でなければ理解は深まらないのではないか。
進藤さんは毎日仕事が終わったあと独学でマーシャル語を勉強。
授業で使うように心掛けている。
(生徒)
「ほかの先生はマーシャル語で授業をしないです。
みんな英語です。
マーシャル語を使う進藤先生の授業は説明がわかりやすい。」
教育で英語が大きな比重を占めている背景には
アメリカとの深い関係がある。
第二次世界大戦後
アメリカの統治下に置かれたマーシャル諸島では
67回に及ぶ核実験が行われた。
実験の見返りに
アメリカからは国家予算の6割にあたる財政援助が今も続いている。
こうした中で日常会話では使わない英語での教育制度が導入されていった。
なんとか教育の現状を変えることはできないかと考えた新藤さん。
公立の小学校で図書館をつくったのである。
(教師 進藤純子さん)
「スタートラインとして
知識とか楽しく勉強できる
集まれる場所を作りたくて図書館をつくるのを考えました。」
資金はインターネットで募るクラウドファンディングを利用。
100万円余を集め完成させた。
図書館の蔵書は約600冊。
ほとんどが英語で書かれているが
マーシャル語で書かれたものも10冊ほどそろえた。
書店が1つもないマーシャル諸島の子どもたちにとっては
本に接する貴重な機会ができたのである。
絵本や図鑑など思い思いの本を選び夢中で読んでいる。
(生徒)
「図書館にいるとワクワクする。」
「本を読むのは楽しい!」
マーシャル諸島政府も新藤さんが図書館をつくったことで
マーシャル諸島の教育が変わると期待している。
(マーシャル諸島 カラニ・カネコ保健相)
「限られた予算しかなく寄付もあまりない中
進藤さんは第一歩を踏み出してくれた。
子どもたちは図書館で学んだことを将来に生かしてくれるだろう。」
新藤さんの次の目標は
図書館にある英語の本を翻訳してハーシャル語の本を増やしていくことだという。
(教師 進藤純子さん)
「マーシャル語でちゃんと本を読んで知識を得て
いろいろなことを勉強してもらうのが一番の目標なので
子どもたちがどんなことも
いいことも悪いことも
本や資料から学んでいける環境をつくっていきたい。
マーシャル諸島の子どもたちの未来のために。
進藤さんの挑戦は続く。
10月13日 編集手帳
議論の中身とは何ら関係なく勝敗が決した例に、
1960年、
米大統領選のテレビ討論がある。
ケネディ対ニクソン。
濃紺のスーツに身を包むケネディは腰掛けると、
ダンディーに足を組んだ。
かたやニクソンはくすんだ灰色のスーツで、
ひざを開き気味に座った。
当時はモノクロ放送のため、
ニクソンは白くぼやけ、
足の姿勢も相まって、
さえない人物に映った。
本当はどちらがいいことを言ったのやら。
本稿は突如、
米国から太平洋を飛び越え、
神奈川にある海辺の町の話題に移るとする。
大磯町の「まずい給食」問題が決着するという。
町は業者との契約を解除する。
毛髪混入など異次元の問題の浮上でかき消えたが、
そもそもの議論はどうなったろう。
味が薄い、
冷たい、
その程度で大量の残飯を出すとは何事か。
否、
舌の肥える今の子供たちに平気で味の落ちる食事を出すとは怠慢だ。
どちらかといえば、
小欄は前者である。
知ったふうに貧しい外国の食糧難に触れたりはしない。
ただ大人を信じ、
嫌いなものまで無心に口に運んだ教室のひとときを思う。
給食の時間、
毎日だれかさんの泣き笑いがあった。
9月27日 おはよう日本
30~40代女性向けの漫画雑誌に連載されている
「傘寿まり子」。
主人公は文字どうり傘寿。
つまり80歳のおばあちゃん。
この家 建て替えするの?
相談もなしに子どもたちが家の建て替えを計画しているのを知り
まり子・80歳
今日
家を出ます
そして人生初のインターネットカフェを体験したり
初恋の人と同棲を始めたり。
超高齢化した現代社会の荒波をたくましく乗り切っていく女性の波乱万丈の物語である。
9月中旬に4巻目が発売。
幅広い年代に支持されている。
(書店員)
「男性で読まれる方とか
今まであまり漫画を読んでこなかったような年配の方にも読まれている。
お問い合わせが結構あります。」
連載をしている出版社にも60代の女性から
“私もエネルギーをもらってます。
負けていられませんね。”
“まり子さんのような生き方をしたいですね。”
といった声がたくさん寄せられている。
作者は戦争を描いた漫画で数々の賞を受賞してきた
おざわゆきさん。
高齢者が主人公という新たな作品に挑んでいる。
きっかけは50代のおざわさん自身の母親が80代になったこと。
若々しくて知的好奇心が旺盛で
今まで抱いてきた80歳のイメージが覆されたという。
(漫画家 おざわゆきさん)
「“おばあちゃん”というよりは
母のイメージのまま80代になったという感じ。
80代はそんなに遠くない。
私からしたら遠い存在ではない。
高齢者の人がどんどん元気になっている印象があって。」
おしゃれな高齢者を描きたいとファッションチェック。
この日巣鴨では
足もとから帽子までモノトーンでばっちり決めた女性や
大きな花柄のワンピースを着た女性が。
ネイルにもこだわりがある。
「知り合いの方にしてもらって。
せいっぱいのおしゃれを
年甲斐もなくもう73なんですけど。」
年をとっても“自分”は“自分”。
超高齢化社会を迎えるなかで
新たな女性像を提示したいという。
(漫画家 おざわゆきさん)
「華やかなおばあちゃんが増えている。
最初のコンセプトとしてはアイドルになれるようなおばあちゃんを描きたい。」
一方では現実では高齢者を取り巻く様々な問題もある。
こうした出来事も織り込まれている。
ボーイフレンドの運転する車が高速道路を逆走。
認知症の問題に直面する。
私たち 逆走してる!?
田舎から都会に暮らす娘に呼び寄せられ
高層マンションで孤独に暮らす女性も描かれている。
一日中空を見ていた
世間で起きているこうした現実。
おざわさんは常に“自分がその立場に立ったら”と意識して描いている。
(漫画家 おざわゆきさん)
「身体能力の衰え
見た眼の衰え
家族が変化していくこととか
自分が80歳になった時にそういう問題に直面したときにどう思うか。
自分自身の答えとして導き出して描いています。」
老いと直面しながらも常に好奇心旺盛で
インターネットを使って仕事をするなど
新たな世界を広げていくまり子さん。
私 自分の小説をネットで発表しようかと思って
80歳のおばあちゃんではなく
“まり子さん”という1人の女性として描き続けたいという。
(漫画家 おざわゆきさん)
「高齢者が夢を持つっていう部分をどこまで描けるのか。
自分へのチャレンジでもありますね。
年とって嫌なことばかりではなく
案外ちょっと楽しく生きることもできるんじゃないかなって思ってもらえるとうれしい。」