5月8日 NHK「おはよう日本」
去年
政府に対して
民主化などを求める大規模なデモが繰り返されてきた香港。
新型コロナウィルスの感染拡大によって
街頭での活動が大きく制限される事態となっている。
厳しい状況のなか
デモの参加者たちは
意外な場所でも抗議活動を始めた。
ゲームをしているのは民主化運動のリーダーの1人である黄さん(23)。
6年前の雨傘運動以降
抗議活動の先頭に立ってきた黄さん。
新型コロナウィルスの影響で街頭での活動が制限されるなか
目をつけたのが“仮想空間”だった。
(民主活動家 黄さん)
「新型コロナウィルスによって街頭でのデモは難しくなりました。
だから“どうぶつの森”の島を舞台に
自由への要求を示すことにしたのです。」
ニンテンドースイッチの「あつまれ どうぶつの森」。
プレイヤーが無人島に移住し思い思いの生活を送るゲームである。
大きな特徴は
島を自由にデザインできることである。
黄さんはさっそく島に民主化運動のスローガンを掲げた。
“香港を盛り戻せ 時代の革命だ”
さらに
中国の習近平国家主席の画像を取り込んで・・・。
(黄さん)
「これは習近平。
中国の“愛国者”が見たら血圧上がるだろうね。」
自分で作った島を動画投稿サイトで紹介したところ
大きな反響を呼んだ。
(民主活動家 黄さん)
「スローガンや画像を検閲を受けずに飾ることができます。
人々の要求や思いを表現でき
すばらしいです。」
「どうぶつの森」を舞台にした抗議活動はネット上で広がりを見せている。
民主化を求める人々が
自分たちの思いを表現する
新たな場になっているのである。
こうした動きに神経をとがらせているとみられるのが中国政府である。
「どうぶつの森」は中国本土では発売されていないが
ネット通販のサイトでは
海外から輸入されたものが出回っていた。
ところが通販サイトのリストから
突如 商品が消えた。
理由は明らかになっていないが
中国当局の指示があったのではないかという憶測が出ている。
これに対し中国国内のSNSでは不満の声も上がっている。
“私たちにゲームで遊ぶ権利はないの?”
“もし紙にスローガンを書いたら
紙の使用を禁止するとでもいうのか?”
黄さんは「どうぶつの森」を使った抗議活動に大きな可能性を感じている。
(民主活動家 黄さん)
「中国政府は
国民が“どうぶつの森”で政治的要求をすることを恐れているのでしょうが
本当にばかげています。
この種の検閲は
表現の自由がないことを自分で認めているようなものです。
街頭に出ることができなくても
私たちは闘い続けます。」
5月9日 NHK「おはよう日本」
九州一の繁華街 中州でも
新型コロナウィルスの感染拡大防止のため
多くの店が休業している。
いつ営業が再開できるのか見通せない中
この休みを転機にしようと
キャリアを見直す講座が開かれた。
福岡市博多区で開かれたキャリアプラン講座。
参加しているのは中州の飲食店で働く女性たち。
主催したのはスナックを経営するマユミさん(53)。
中州で生きて35年である。
中州には
ホステスに誇りを持っている女性ばかりではなく
その日暮らしで働く人も多いことに
問題意識を感じていた。
(口座を主催 マユミさん)
「中州一筋で頑張ってきたスタッフもいるし
そうじゃなくてダブルワークで
お金が足りなくて中州に入ってきてと。
そういうのが今 入り乱れての中州の現状。」
そんななか新型コロナウィルスが流行し
中州は静まり返った。
仕事がなくなった今だからこそ
自分のキャリアを見つめなおしてもらおうと
かねてから考えていた講座を開いた。
講座に参加したマキさん(31)。
中州で6年間働いてきた。
以前は保育士をしていたが
病気をして退職。
学習塾の事務と中洲での仕事を掛け持ちしていたが
新型コロナの影響でどちらもなくなった。
(マキさん)
「仕事もなければ
探そうとしてもないし
だからといって昼間の方でも求人とか見ても何も目星がつかないし
このままだったら生活はできない。」
(講師)
「こういう時をどう乗り越えていくか
その自分で自立していく方向が大事になってくる。」
講座では
接客業にこだわらず
中州での経験を生かせる仕事に目を向けるようアドバイスされた。
(マユミさん)
「人の話をしっかり聞く。
客に寄り添って話を聞いてきたのは
ものすごく強みだと思う。」
マキさんは講座を受けたあと
あらためて人と関わることが好きという自分の気持ちに気づき
もう一度保育士に挑戦しようと考え始めた。
(マキさん)
「だいぶ自分の中の気持ちが軽くなったというか
可能性が逆に飲み屋だけじゃないって
教えてもらったような気がします。
このコロナの間で成長できればいいなと
すごく思いました。」
講座を始めたマユミさん。
中州で働く女性の支援を続けていきたいとしている。
(口座を主催 マユミさん)
「厳しい時代になると思う。
彼女たちが一歩踏み出すきっかけを作ることができれば
それだけで十分かなと。」
5月12日 NHKBS1「国際報道2020」
5月5日に開幕した韓国のプロ野球。
しかし試合の雰囲気はいつもとずいぶん違う。
審判はマスクをして手袋を着用。
ボールボーイもマスク姿である。
ホームランのあと喜びを分かち合う定番のシーンでも選手たちの出迎えはない。
ハイタッチはもちろん禁止である。
そしてなにより球場にファンの姿がない。
当面は無観客試合が続く。
(LGツインズ キム・ヒョンス選手)
「開幕し
野球ができてうれしい。
無意識に出てしまう行動もあるので
しっかりと対処していきたい。」
シーズン開幕にあたりKBO韓国野球委員会は
専門家の指導のもとウィルスの感染を防ぐマニュアルを作った。
44ページに及ぶマニュアルには
球団関係者・スタッフなどがとるべき対応が細かく記されている。
たとえば球場での動線である。
選手たちは休場の入り口からロッカールームへ
そしてベンチまでのルートが細かく決められている。
関係者の動線を分けることで接触を最小限に抑えるのが狙いである。
感染が疑われる人が出た場合の対応も明記されている。
球場近くでPCR検査が受けられる場所のリスト。
感染が確認された場合
濃厚接触者を含め隔離する。
関連施設は少なくとも2日間は封鎖。
シーズンの進行に支障をきたす場合には中断を検討するとしている。
(KBO韓国野球委員会 リュ・デファン事務総長)
「ある程度 安定してきたが
今後どうなるかわからないので準備しなければならない。
もし選手が感染した場合
最低でも3週間程度は試合を中断しなければならない。」
試合の臨場感を少しでも感じたい。
球場の外には熱心なファンの姿も見られる。
(ファン)
「無観客だが
開幕して気分がいい。
家族もファン。
子どもの日に合わせた開幕なので一緒に応援しに来た。」
球場近くの飲食店でも・・・。
(ファン)
「もう我慢できない!
心はすでに球場にいる。
一日も早く球場に行って観戦したい。」
無観客試合は球団の経営面に暗い影を落としている。
昨シーズンの入場料収入はリーグ全体で約75億円。
観客を入れられない期間が長引くほど
経営の打撃は大きくなる。
こうしたなか韓国のプロ野球リーグは
アメリカのスポーツ専門チャンネルと契約。
まだ大リーグが始まっていないアメリカでの放送に活路を見出そうとしている。
オンラインイベントなどを通じて
新たなファンの獲得も目指し
収入の確保につなげようと模索を続けている。
(KBO韓国野球委員会 リュ・デファン事務総長)
「売り上げは30~40%減ることになる。
減収を最小化し
他の収益を創出できるよう球団とともに努力している。」
一方 台湾では5月8日から観客を入れての試合が再開した。
チアリーダーに合わせて観客も一緒に踊る台湾流の応援が戻ってきた。
観客には新たにマスクの着用が義務付けられた。
台湾では4月 まず無観客の形で試合が開幕。
そして5月
“渡航歴がない人の感染ゼロ”が20日以上続き
感染の抑え込みができているとして
次のステップに進んだ。
(感染対策を指揮する 陳衛生福利部長)
「プロ野球は8日から観客を入れるとしているが
1,000人を最初の一歩とする。」
その後 球場では急ピッチで準備が進められた。
(富邦球団 社長)
「チアリーダーと1列目の客の距離をとり
今回は2列空けています。」
観客同士の距離をとるため
シールが貼ってある場所にしか座れないようにした。
左右に2席ずつ
前後は1列ずつ空けてある。
通路にもソーシャルディスタンシングを呼びかけるシールが。
自治体の感染対策を指揮する幹部も球場を細かくチェック。
感染対策の抜け穴を作ってはいけないと
運営側を引き締めた。
(地元自治体幹部)
「やってほしいことは
トイレのペーパータオルと手の消毒用アルコールを増やすこと。
今回見たところだと
この2点について必ず先にやってもらいたい。
万全に準備してほしい。」
観客を迎え入れる初日。
入り口では検温に加え
感染が確認された場合に連絡が取れるよう
渡航歴や健康状態の申告
それに本人確認も求められた。
食べ物の販売は禁止に。
たとえ家族や友人とでも離れて座る。
しかし試合が始まるとスタンドは熱気を帯びて総立ちに。
ファンたちは興奮冷めやらない様子だった。
(ファン)
「家ではめちゃくちゃに叫ぶことができないでしょ?
球場だったらどれだけ大声出しても誰も気にしない。
とてもストレス解消になる。」
「この日を首を長くして待っていた。
感染防止に取り組む人たちに感謝する。」
注目すべきは
感染しないための対策だけではなく
感染者が出た場合を想定した対策にも同じぐらい力を入れて
影響を最小限に抑えるための手順を決めていることである。
韓国プロ野球のマニュアルの一部ではー
選手に発熱などの症状が発生した場合
まずは選手本人のみを隔離する。
そして選手から球団
野球委員会に報告をする。
その間に検査を実施する。
検査の結果
陰性なら隔離を解除する。
陽性の場合
濃厚接触者を特定し14日間自宅などで隔離しなければならない。
濃厚接触者の範囲が広く“リーグ進行に支障あり”と判断された場合
リーグの中断を検討する。
台湾が
観客の座席を全て指定席とし
感染者が出た場合にも追跡できるようにしているというのも同じ考えで
野球を再開した場合
日常生活を送る場合に比べて感染のリスクが高まるという危機感がある。
選手たちは
グラウンド上でのプレーだけではなく
試合前後のミーティングや
食事をともにしたり
報道陣への取材対応
ロッカールームでの体のケアやシャワー
移動も共にする
一種の生活共同体である。
感染者が出ることを見越して
感染拡大を防ぐことの対策を講じておくことが
新型コロナウィルスの中でスポーツをすることと言える。
5月7日 NHKBS1「国際報道2020」
東南アジアで新型コロナウィルスの感染者が最も多くなったシンガポール。
5月7日までに感染者は2万人超。
その数はいま急増している。
シンガポールは3月までは
外国人の入国を禁止するなど水際対策を厳しく行なって
感染拡大を抑え込んでいた。
WHOもその対策を高く評価していたが
しかし4月に入ると感染者の数が一気に増えていく。
1日に1,000人を超える日も相次ぎ
1か月で20倍以上になった。
実はこの感染者の約9割がシンガポール人ではない。
出稼ぎで来ている外国人労働者たちなのである。
シンガポールでは4月7日以降
企業のオフィスや学校が閉鎖され
外出も厳しく制限する措置が取られている。
街なかには監視員を配置。
2人以上で立ち止まっている人に注意する。
違反すると日本円で2万2,000円余の罰金が課せられ
繰り返すと起訴されることもある。
なぜシンガポールはここまで厳しい措置をとるようになったのか。
背景にあるのが4月から急激に進む感染爆発である。
シンガポールで初めて感染が確認されたのが今年の1月23日。
その直後から政府は
感染が拡大している国などからの入国制限や感染ルートの追跡など
水際対策を打ち出し
抑え込みを図った。
一方で経済や社会活動の混乱を避けるため
4月上旬までは
10人以上の集まりを禁止する程度にとどめ
マスクについても“症状がないなら着用しなくて良い“と繰り返していた。
こうした政府の姿勢は裏目に出る。
レストランなど公共の場での集団感染や
海外からの帰国者からの感染などで
感染者が少しずつ増えていったのである。
そして4月
出稼ぎ労働者の間で症状を訴える人が相次ぐ。
同じ居住区に暮らす外国人労働者を調べたところ
感染が爆発的に広がっていたことが分かった。
シンガポールの発展を支えてきたバングラデシュやインドなどからの出稼ぎ労働者。
その人数は約100万人と
シンガポールの人口の2割近くを占めている。
しかしその生活環境は劣悪である。
フェンスに囲まれた居住区や
雇用主が用意した狭い宿舎での集団生活を余儀なくされ
10人ひと部屋で
シャワーとトイレは共同。
距離が保ちにくく
感染が拡大しやすい環境である。
(バングラデシュからの労働者)
「我々は1つの部屋に住み
1つのトイレを使っている。
だから感染拡大が一気に進む。」
こうした外国人労働者は
実に感染者の9割にまでのぼっていたのである。
政府が宿舎内でのPCR検査を始めたのは感染が広がった後だった。
(シンガポール ウォン国家開発相)
「外国人労働者の宿舎で一気に感染拡大すると予想できなかった。
予想できていれば
違う措置を取っていた。」
外国人労働者たちは
いつ自分が感染するかわからないという不安を抱えている。
(バングラデシュからの労働者)
「一緒に生活していた10人のうち3人が感染し
4人が検査の結果を待っている。
数日前に発熱があったから
私も感染しているかもしれない。」
「怖い。
密集状態については以前から会社側に訴えていたが
返事もなく
もう諦めてしまった。」
政府は外国人労働者の居住区のゲートを封鎖。
完全に隔離する措置に乗り出した。
シンガポール人よりも厳しい外出禁止措置で
感染の封じ込めに躍起になっている。
政府が十分に注意を払ってこなかった外国人労働者。
その代償は
“感染拡大”という形で
シンガポールを苦しめている。
国民は
外出制限が始まった当初は
監視員の指摘になかなか納得できず言い合いをする人もいた。
オフィスビルも例外ではない。
メディアは社会に欠かせない業種の1つとしてオフィスでの勤務が最低限認められているが
ちゃんと許可を取っているのか
また室内で人と人との距離をしっかりとっているのかなどを調べて
問題がないことを確認していく。
政府の政策をメディアなどが批判することが少ないシンガポールだが
不自由はあるが政府を信じて収束を待とうというモードになっている。
新たな感染者は1日で1,000人に近い日もある。
こうした事態を受け
今まさに検査を進めている最中である。
国内の約100万人の外国人労働者のうち
5月1日の時点で
検査終了は23万5,000人にとどまっている。
政府は
検査能力を現在の5倍にあたる1日4万人まで引き上げるとしているが
まだ全容の把握には時間がかかりそうである。
シンガポール政府は外国人労働者への依存度を下げるため
出稼ぎ労働者の数そのものを減らそうとしてきた。
しかし経済活動への貢献に重きが置かれた結果
なかなか実現できずにいたのである。
さらに外国人労働者のおかれた環境についても
宿舎内で集団生活をしなくて済むようにするなど
改善の必要性は指摘されていた。
外国人労働者の扱いが社会問題化してい中での感染拡大で
社会不安を避けようと
首相は国民向けのテレビ演説に踏み切った。
(リー・シェンロン首相)
「外国人労働者の皆さんに改めて強調する。
シンガポール人と同じように皆さんに対応する。」
シンガポールの経済発展を支えつつも
劣悪な環境下に置かれてきた外国人労働者の間で広がった爆発的な感染。
政府がこの問題をどう扱うかは
シンガポールがこれまで抱えてきた課題とどう向き合うのかに他ならない。
5月6日 NHKBS1「国際報道2020」
タイでも非常事態宣言は延長されたが
新たな感染者数は減少傾向にあるとして
経済活動の制限が緩和された。
飲食店は仕切りを設けるといった対策を講じながら営業を再開している。
感染拡大に転じた場合には
タイ政府は再び営業を禁止することもあり得るとしている。
今後数か月間で失業者数は1,000万人まで増える恐れがあるという推計も出ている。
タイの人々はこうした厳しい状況下で奮闘している。
バンコクの中華街。
金を扱う店があちらこちらにあるが
どこの店も金を現金に換えようという人たちで混み合っている。
安全資産として金を求める動きが世界的に強まった4月。
タイでは
高値がついた金を換金しようという人たちの長い列ができた。
貯蓄の一部を金に換えておく習慣があるタイ。
店舗の営業禁止などの厳しい措置で収入を絶たれた人たちが
貯めていた金を現金に換えて
生活の糧にしているのである。
(金の取引会社 パサウォンCEO)
「多くの人が収入がないので仕方なく換金に来ています。
勤務先が倒産するかどうなるか
不安な人が多いです。」
金を売りに来たワサワットさん(49)。
(屋台経営 ワサワットさん)
「金を売って生活費にあてます。
現金はほぼありません。」
4人家族のワサワットさんは
自宅近くの市場で地元風にアレンジしたタコ焼きやお寿司を売って生計を立てている。
しかし人出がなくなり赤字が続いたことから店を出せなくなった。
それからおよそ3週間。
新たな感染者数が減少傾向になり
街に人出が戻り始めたことから店を再開した。
食材は金を売って得た現金で調達した。
生活費や子どもの学費には十分ではないが
なんとか打開策を探っていきたいという。
(屋台経営 ワサワットさん)
「生きていかねばならないので闘い続けます。」
新たな事業を始めることで活路を見出そうという人たちもいる。
キティチャイさん(38)は
タイではおなじみの3輪タクシー トゥクトゥクの運転手たちとともに
外国人を対象にした観光ツアーを企画していた。
しかし3月に入り利用客はゼロに。
(ツアー企画会社経営 キティチャイさん)
「収入はゼロになりましたが
従業員を失業させるわけにはいかなかったのです。」
そこで始めたのは荷物の運送である。
トゥクトゥクの特徴を生かし
大きめの小包など
2輪のバイクでは運べない量や大きさの荷物も
トラックより安い価格で請け負っている。
(トゥクトゥク運転手)
「気をつけて運転します。
後ろの荷物に気を配ってスピードは出しません。」
観光ツアーの収入には遠く及ばないが
スタッフを1人も解雇することなしに事業は続けていきたいとしている。
(ツアー企画会社経営 キティチャイさん)
「努力している姿を従業員たちに見せたいです。」
通貨の暴落など
これまでも深刻な危機を乗り越えてきたタイの人たち。
新型コロナウィルスがもたらす未曽有の危機の中でも
生き残る道を
たくましく模索している。
5月6日 NHKBS1「国際報道2020」
ブラジルのアマゾンには300以上の先住民族が暮らしていて
その人口は100万を超える。
先住民族の人たちは現代社会との接触が少ないので
外部からの病原体に弱いとされている。
過去には一部の民族が絶滅の危機に瀕した歴史がある。
そして今回も
都市部からアマゾンへと新型コロナウィルスが迫っている。
(TV Band 4月10日放送)
「北部ロライマ州で
先住民族「ヤノマミ族」の15歳の少年が
新型コロナウィルスに感染し死亡しました。」
アマゾンの奥地で
1万年以上ものあいだ独自の文化・風習を守り続けているヤノマミ族。
欧米では“最後の石器人”とも呼ばれている。
最大規模の部族であるヤノマミ族で起きた一大事に
先住民族の間には不安が広がっている。
(先住民族の団体トップ)
「我々は人口が少ないです。
もし誰か1人でも感染したらみんなに広がるので
心配しています。」
先住民族がおびえる背景のひとつに
ウィルスに関する情報が遮断されていることがある。
それぞれが異なる文化を持ち
異なる言葉で生活しているためである。
先住民族が守ってきた“近代的な医療環境からかけ離れた暮らし”が
感染拡大につながる可能性も。
新型コロナウィルスの恐怖に打ち勝つため
伝統的な治療を行なっているという。
(先住民族 指導者)
「伝統的な療法にも決まりがあります。
薬草を集めてこね
浸した水を浴びます。」
さらにウィルス感染のリスクは
先住民族の内部の問題だけではない。
立ち入りが制限されている先住民族の保護地域に違法に侵入する人が増加。
外部からウィルスが持ち込まれているのである。
アマゾンに侵入しているのは
金鉱脈などを求めてやって来る違法な採掘業者である。
(先住民族支援のNGO カルド―ソさん)
「監督者がいないことを知っているため
いま侵入者が入ってきています。」
一方でアマゾン川の流域にある町では
新型ウィルスによる死者が急増。
都市部に比べると医療体制が整っていないところが多く
治療も追いつかず
感染者は増える一方である。
そうした感染のリスクが高い街に
小麦や生活用品を手に入れるために出かける先住民族も少なくない。
街への移動に拍車をかけているのが
去年発生した大規模な森林火災である。
ボルソナロ大統領の経済優先の姿勢のもと
開発が進むアマゾン。
野焼きが野放しになるなどして農地を失う人々も相次いだ。
このため自給できる食料が減り
新型ウィルスの感染拡大で各自治体が外出制限をする中でも
生活を維持するためにも頻繁に街へ行かざるを得なくなったのである。
(先住民族の団体トップ)
「街に行き歩き回ることを禁じていますが
村の食べ物が枯渇する懸念もあるのである。」
経済第一主義を掲げるボルソナロ大統領は
先住民族の保護にほとんど興味がない。
本来先住民族が暮らすアマゾン周辺の警備にあたるべき警察や軍も
サンパウロのような都市部の対応に回され
先住民族の保護地域は放置されているような状況である。
こうしたなか懸念されているのは
違法な侵入者の増加である。
今がチャンスとばかりに保護地域に不法に侵入し
先住民族が殺される事件も起きている。
一方 先住民族に手を差し伸べようという動きがNGOの呼びかけで広がっている。
北部ロンドニア州で4月
NGOなどが先住民族向けの食料を調達するために買い出しを行なった。
袋に小分けしていたのは米や小麦 パスタなど
先住民族が自給自足できない食糧である。
資金はすべて寄付で賄われている。
食料を先住民族の保護地域の入り口まで届けることで
「ステイホーム」を実行してもらおうというのである。
購入した食料はいったんNGOの事務所に集められる。
その後 袋などを1つ1つ消毒。
先住民族は外部からの病原体に弱いとされ
少しでも感染リスクを減らさなければならない。
NGOを率いるカルド―ソさんは地元政府と二人三脚で支援にあたっている。
先住民族のリーダーの協力を得て集落の場所や人数を把握。
配送リストを作った。
(先住民族支援のNGO カルド―ソさん)
「ここにいる多くの若者たちの助けがなければ
支援活動はできなかった。」
先住民族の村は
北部ロンドニア州の州都から直線距離で300㎞ほど。
道路は舗装されておらず
川には橋もかかっていない。
船などを乗り継ぐこと5時間。
ようやく村の入り口までたどり着いた。
先住民族の村は感染防止のため入り口で封鎖。
中に入ることはできない。
村を代表する祈祷師・シャーマンに
十分に対策を取っていると通訳を介して説明重ね
食料を渡すことができた。
こうして届けられた食料は村の中で分配された。
(先住民族の団体トップ)
「我々はいま食料と支援を必要としています。
大きな助けになるでしょう。」
これまで外部からの病気の侵入で
何度も危機にさらされてきたブラジルの先住民族。
新型コロナの蔓延防止に向けて
試行錯誤が続いている。
アマゾンの先住民族に対する感染対策が拡充される見込みはない。
民間の善意頼みという厳しい状況である。
ブラジルでは4月までに120人の先住民族の感染が確認されているが
実態はよく分かっていない。
広大なアマゾンに分散して暮らしている先住民族の状況を
政府も把握しきれていないのが実情である。
さらに先住民族の閉鎖性も被害拡大の大きな要因になっている。
支援を行なおうにも
先住民族の知り合いがいないと支援自体を拒否されることも多いという。
こうした状況はアマゾンを抱える南米9か国も同じである。
アマゾンには合計300万人の先住民族が暮らしているが
ほとんど有効な対策はとられていない。
気がついたらアマゾン全域で多くの先住民族が亡くなっていたということになりかねない。
5月1日 読売新聞「編集手帳」
いま時分の季節に、
藤棚を通りかかった人がいたのだろう。
江戸川柳に、
<春夏をふらふらまたぐ藤の花>とある。
暦の上では立夏(5日)が来れば夏を迎える。
日差しがにわかに強まり、
春のような夏のような――
そんな体感のなか、
藤は季節をまたぐように咲く。
薄紫の花がふらふらと風にそよぐ景色が、
みなさんのご近所にもおありだろう。
福岡県八女市の神社には樹齢600年に達し、
国の天然記念物に指定される「黒木の大藤」がある。
だがこの地元のシンボルともなる藤棚で、
一輪と残さず花を刈り取る作業が行われたという。
新型ウイルスの感染拡大を受けた措置である。
見頃を迎えた藤棚に連日見物客が押し寄せ、
密集を防ぐために苦渋の決断がされたと、
本紙西部本社版が伝えていた。
目下、
刈られた花以上に痛々しいのが私たちの暮らしだろう。
仕事やアルバイトを失った。
家賃、
学費が払えない。
無情に移ろうばかりの季節のなか、
ウイルスとの消耗戦はまだまだ終わらないとの報を聞く。
がんばりきれるかどうか。
悲嘆を外に押しやってつぶやいてみる。
藤は下がりながらも咲くじゃないか、
と。
4月30日 NHKBS1「国際報道2020」
アフリカで最も感染者の多い南アフリカ。
南アフリカ政府は3月27日にロックダウンを始めた。
それから1か月余
感染者は増え続け
4月29日には感染者は5,350人となっている。
南半球はこれから冬を迎える。
政府は感染のピークが7月から冬の終わりごろの9月の間に来ると予測している。
それにもかかわらず
南アフリカ政府は5月1日から
鉱山や製造業などで経済活動の一部を再開すると発表した。
活動を再開して150万人が仕事に復帰するとしている。
規制を緩和せざるを得ない現状とは。
ケープタウン。
商店へ押し寄せる人々や輸送トラックを襲撃し食料を略奪しているとされる映像。
ロックダウンが始まって1か月余。
略奪や暴動が増え続けている。
その背景には
ロックダウンで人々が窮地に立たされていることがある。
ヨハネスブルグ郊外にある貧しい黒人が暮らす地区。
ポヨさん(67)は
妻と娘
それに孫たち5人を養っている。
収入は日本円で約1万7,000円の年金だけ。
それでは到底足りない生活費は日雇いの仕事で賄ってきたが
ロックダウンでほとんどできなくなった。
(ポヨさん)
「世界共通のロックダウンに理解はできますが
生活のことを考えるとお手上げです。」
国民の半数近くが貧困層という南アフリカ。
失業はそのまま生存の危機に直面している。
家族はロックダウンが始まってから1度だけNGOによる食料の配給を受けた。
数週間前に受け取った食料もわずかしか残っていない。
(ポヨさんの妻)
「昼ご飯を抜いて
夜ご飯まで我慢させることもあります。
孫たちは理由がわからず泣き続け
近所から何かもらってしのぐこともあります。」
政府の調査では
国民の4人に1人が“食べ物を買う金が尽きた”としている。
失業手当の制度もあるが
いつ受け取れるのかははっきり分かっていない。
こうしたなかで事態は悪化。
略奪行為は学校にまで及んでいる。
ある高校では給食室の食糧やパソコンなどの備品まで盗まれ
証拠を消すためか火を放たれた。
子どもたちが勉強のために使う辞書などもすっかり焼けてしまった。
全国各地でこれまでに180以上の学校が被害にあった。
(校長)
「子どもの未来を奪っています。
まさか学校が燃やされるなんて。」
治安を維持するため政府は
全土に2千人余配備した兵士を7万人にまで増員することにしている。
しかし治安部隊による人権侵害が相次ぎ
人々の政府への反発は高まっている。
地元メディアでは治安部隊による高圧的な態度や違反者への嫌がらせのような体罰が連日のように報道されている。
さらに自宅の庭先で住人がパトロール中の警察官たちに銃撃され死亡する事件も起きた。
警察官らは逮捕されたが
銃撃された理由は捜査中とされ未だにわかっていない。
これまでに治安部隊に銃撃されるなどして9人が死亡した。
ロックダウンの長期化で追い込まれる貧しい人たち。
政府は経済活動の一部再開に踏み切らざるを得なかったのである。
(南アフリカ ラマポーザ大統領)
「感染拡大防止のためにはロックダウンは最も効果的だろうが
国民は食べていく必要がある。」
国民の受け止め方は複雑である。
ロックダウンの緩和が始まることを歓迎する声があり
中には経済活度のはもっと緩和を急ぐべきだとの声もある。
その一方で
感染者が増え続けているなか緩和している場合ではないという声もある。
こうした受け止めの違いは
その人の経済的な状況によるところが多いようである。
南アフリカは世界銀行の統計では
世界で最も貧富の格差が激しい不平等な国である。
富裕層は買いだめができ広い家に住んでいてロックダウンを過ごしているが
経済的に貧しい黒人が密集して暮らす地区では
治安が不安定化し緊張が高まっている。
格差と貧困の問題を放置してきたつけが
ロックダウンによってあらわになっている。
感染の広がりは覚悟の上ということのようである。
南アフリカ政府は当初から
ロックダウンしても感染者の数を減少させることはできず
できるのはピークを後ろにずらすことだけだとしている。
実際に今回
1か月余のロックダウンによって感染のピークを数か月ずらすことができ
その時間を利用して
医療や隔離の体制づくりをしているという。
そのうえで政府は緩和に合わせて
新たにマスクの着用を義務化するほか
外出禁止令などを出し
観戦爆発を防ぎたい考えである。
他のアフリカ諸国はおおむね南アフリカを同じような状況である。
ガーナやナイジェリアでも感染者数は増えているが
ロックダウンを緩和する動きが出ている。
南アフリカと同様
貧困層を中心に国民生活があまりにも困窮し
いわばギブアップした形である。
感染症は先進国だけで落ち着いても
途上国で広がれば
第2波 第3波として先進国にも波及する。
アフリカでの感染の広がりは決して対岸の火事ではなく
国際社会は支援を続けていくことが求められている。
4月30日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」
オーストリアで初めて感染者が確認されたのは2月下旬。
その後 3月16日から外出制限が続けられてきた。
1日の感染者数が3月下旬にピークに達した後 徐々に下がり
4月28日時点では2桁になっている。
オーストリアはヨーロッパでいち早く外出制限を段階的に緩和する措置を発表。
4月14日からは一部の店舗の営業が再開されている。
ウィーン中心部の繁華街。
買い物や散歩などを楽しむ家族連れの姿が一時に比べずいぶん目立つようになっている。
4月14日から外出制限の緩和を始めたオーストリア。
第一段階として
400㎡以下の小規模店舗やホームセンター
それに園芸用品店に限って営業の再開が認められた。
(市民)
「小規模な店の倒産が心配です。
客が戻ることを願っています。」
(従業員)
「店がようやく再スタートです。」
創業130年
ハプスブルグ王朝の時代からウィーンで営業を続けてきた服飾店。
店長のシュネップさんは店の再開を待ち望んできた。
「先月は売り上げも半分まで落ち込んだので
ようやく開店できてうれしいです。」
しかし感染対策の徹底が求められている。
従業員はマスクを着用し
入り口のドアやレジの周辺などを念入りに消毒。
政府が定めたルールに従い
一度に入店する客の人数も制限している。
警戒が続くなかシュネップさんが始めたのが手作りマスクの販売である。
老舗にとって初めての試みだという。
しかし営業再開から10日経っても店の経営は苦しいままである。
(店長 シュネップさん)
「客の入りはあまりよくありません。
解雇された人が多く
必要最低限のものしか買わないのでしょう。
いまは厳しいです。」
経済活動の再開が進めば客も増えると信じるシュネップさん。
顔全体を覆うフェイスシールドの販売も計画し
老舗を守り抜きたいと考えている。
一方 5月中旬のさらなる制限緩和に期待する店もある。
ウィーン市内にある伝統料理のレストラン。
約12年前から著名な音楽家や地元の人に愛されてきた。
店長のブルーバさんは休業が長期化し不安を募らせている。
「100人ほどのお客さんでにぎわっていました。
今年はもうないだろうね。」
店での飲食が一切禁止されるなかブルーバさんが思いついたのが
“ウィーン伝統料理を家で食べよう!”。
自慢の料理を弁当のように持ち帰ってもらうサービスである。
名物になっている子牛のカツレツや店自慢のポテトサラダなどを店頭で販売。
伝統の味を自宅で味わってもらおうという初めての試みである。
サービスの評判はまずまずだが
店全体の売り上げが9割も減少する厳しい状態が続いている。
(店長 ブルーバさん)
「とにかく早く店が再開できるようにしてほしいです。
客は店内でマスクをすることになるのか
当局の決定を待つしかないです。」
商工会議所のトップも制限緩和による経済の回復に期待を示している。
(商工会議所 総裁 ハラルド・マーラー氏)
「経済状況は徐々に良くはなっています。
人と人との距離制限が緩和されれば
経済は回復するでしょう。」
オーストリア政府がいち早く外出制限を打ち出し出口戦略を示したことは
国民にも評価されている。
世論調査会社ギャラップ・インターナショナルの
世界30の国と地域で
各国政府のコロナ対策の評価では
オーストリアはこの中で最も高い評価となった。
また制限が緩和されたあと行われた別の世論調査でも
オーストリアのクルツ政権を評価する声は8割に達している。
オーストリアは外出制限の措置を打ち出す一方で
大きな打撃を受ける企業の従業員やフリーランスへ
一時金の支払いや
賃金の80%以上を国が補償したりといった対策が
国民から評価されている。
そして第二波への対応の一環として感染予防の規制強化も図っている。
その1つがマスクの義務化である。
オーストリアはもともとテロ対策の観点から
「覆面禁止法」という法律でマスクはむしろ制限される法律があったが
ヨーロッパの中でも早い時期に義務化へと大胆に転換した。
これをオーストリア国民の意識を変えたことは間違いない。
オーストリア政府は5月から制限緩和の第2段階に入るとしていて
店舗面積に関わらず全ての商店の営業を認めている。
また外出制限の措置をさらに緩和し
これまでは同居する人との接触しか原則認めていなかったが
同居人以外とも距離を保つことを条件に屋外で会うことが認められる。
今後は5月中旬をめどにレストランも店舗での営業を認める予定で
さらには小中学校の再開も進めていくという出口戦略である。
オーストリアはこれを慎重に進め
失業率は一時12%を超えて戦後最悪を記録するなど
深刻な打撃を受けていた経済を少しでも正常化させたい考えである。
一方 周辺諸国に先んじて速いペースで緩和を進めているだけに
感染者の推移がどう変化するかが気になるところである。
市民や医療関係者からは
再び新型コロナウィルスの感染が広がってしまうのではないかと懸念する声も上がっている。
(市民)
「店の再開はよくないと思う。
また人が密集してしまうし
マスクを付けても感染リスクは高まります。」
制限緩和によってさらに人の動きが増えるとみられるだけに
当面は綱渡りの状況が続きそうである。
ヨーロッパではオーストリアに次いで
ドイツも一部緩和に乗り出したほか
フランスやスペインも5月から商店や学校を藍買いする計画を発表していて
オーストリアの出口戦略が成功に向かうか
今後も注目されそうである。
4月29日 読売新聞「編集手帳」
薔薇は春、
芽を吹いてぐんぐん茎を伸ばす。
正岡子規に名歌がある。
<くれなゐの二尺伸びたる薔薇の芽の針やはらかに春雨のふる>
赤い色の二尺ほど伸びた薔薇の芽は、
まだそのトゲがやわらかく、
そこに春雨がしっとりと降りかかる…
この意訳を読んでピンとこない方がおいでだろう。
<二尺>である。
メートル法に改めると約60センチ。
最近<社会的距離>という“新語”を聞くたび、
子規の歌を思い浮かべている。
子供たちが学校で使う机の幅も60センチほどである。
社会的距離に従って2メートルあいだを空けるとすれば、
教室の面積が足りなくなるだろうと。
感染症の拡大に伴う臨時休校の長期化から、
「入学・新学期の開始時期を9月へ変更すべきだ」との声が聞かれるようになった。
杞憂(きゆう)
近々教室に元通りに机を並べられる状況ではないことを考えると、
真剣に議論を始めることが必要だろう。
教育のみならず、
社会全体への影響は計り知れない。
このところ、
カレンダーに目をやるのがいささか怖い。
気がつけば、
子供たちに勢いよく芽を吹いてもらうはずの4月があすで終わる。
4月28日 読売新聞「編集手帳」
保健の「保」という漢字の成り立ちについては、
先月も書いた。
「呆」はおむつをした赤ちゃん。
それを「人」が抱きあげる姿を示すものだと。
(白川静『常用字解(2版)』平凡社)
さらに「保」から「褒」が生まれている。
「衣」を上下に分け、
挟み込むと「褒」になる。
子を懐に抱いて衣服がふくらんだ様子を表し、
そんな愛情あふれる大人の姿が「褒める」の原点だという。
頑張りが褒められる日はいつ頃だろうか。
新型コロナウイルスの惨禍から自分自身はもとより、
周囲の大切な人を守ろうとする努力が続いている。
東京では発表される感染者数が、
2日続けて2桁にとどまった。
日曜、
月曜は低めに出る傾向があるとしても、
少し明るい気持ちになれる。
よし、
もうしばらく頑張ってみようと励みにする方は少なくないだろう。
緊急事態宣言は5月6日まで。
すでに解除は困難との見通しがささやかれているものの、
子供たちをいつ学校に送り出せるか、
閉めた店をいつ再開できるか、
一日も早い日常への復帰が国民一人一人の行動にかかることに変わりはない。
くじけないで、
褒められる日を待とう。
4月27日 NHK「おはよう日本」
ネット上で「コロナで沖縄に逃げようとしている人へ」という漫画が反響を呼んでいる。
作品を描いたのは
去年まで沖縄で暮らしていた東京在住のイラストレーターである。
東京に住むイラストレーター オムラ・オムさん(29)。
去年まで沖縄に住み
イラストや漫画を手掛けてきた。
オムラさんは新型コロナウィルスの感染が拡大するなか
人々に息抜きを届けたいと
ツイッターに漫画を載せ始めた。
毎日配信しているほのぼのとした漫画。
飼い犬や恋人と過ごす日常をエッセイ風に描いている。
(イラストレーター オムラ・オムさん)
「毎日ちょっとした
クスっと笑えるような暇つぶしを
皆さんに提供できたらなと思って始めました。」
4月13日
オムラさんはいつもとは違う
メッセージを込めたひとつの作品を投稿した。
【コロナで沖縄へ逃げようとしている人へ】である。
次々と“いいね”が集まり
リツイート回数も増加。
いま反響が広がっている。
沖縄と言えば最高の観光スポット
青い海と広い空は島の宝です
でも県民にとっての宝はそれだけじゃありません
それは
島に住む
おじいおばあです
年配の方は大切な存在です
親戚を大事に
助け合って生活しています
沖縄の人にとって
こんな心細い時に家族や親せきに会えない寂しさは
一際強いと思います
それでも大切な家族を失いたくないから
帰省を我慢している県民が沢山います
だから多くの県外の皆さん
コロナから逃げて
沖縄に行くのをやめてください
沖縄の文化は沢山の高齢者によって支えられています
医療体制も充実していません
コロナが流行したら
多くの「島の宝」が失われてしまいます
作品を描いたきっかけは
感染が拡大しているにもかかわらず
沖縄観光に行く人たちをテレビで見たことだった。
「見た時は本当にただ涙が止まらないみたいな感じで
いてもたってもいられないような気持でした。」
オムラさんは毎日“沖縄に帰りたい”と訴えるうちなーんちゅの友人や
沖縄にいる慕っているお年寄りの姿が目に浮かび
こうした人たちの力になりたいとペンをとった。
「ずっと自分が沖縄のためにできることはないかなと思っていたので
今やらなくて
いつやるんだろうと思いました。」
メッセージが正しく伝わるか不安だったというオムラさん。
しかしいざ投稿すると
返信欄には
思いもしなかった感謝のメッセージが集まってきた。
“大切なことを伝えてくれてありがとう”
“石垣島より・・・
マンガにしてくださりありがとうございます”
“沖縄県内でも離党にいる家族に会いたいのをすごく我慢してるので
その気持ちが救われたような気がしました”
(イラストレーター オムラ・オムさん)
「特に沖縄県の皆さんから“ありがとう“と声をいただけたのが
本当にうれしかったです。
沖縄以外の地方や地域に観光に行こうと思っている人たちにも
見てもらいたい。」
4月26日 読売新聞「編集手帳」
真昼、
ビルが林立する街をドローンが飛ぶ。
人や車、
上空から撮影された映像はまるきり動くものが確認できない。
異様で不気味、
映画の一場面にしか見えない。
けれど、
実際の台湾の様子だと聞いて、
初めて見た際にはひどく驚かされた。
アーティスト袁(ユェン)廣鳴(グァンミン)さんの映像作品で、
昨年のあいちトリエンナーレで上映された。
動画投稿サイトでも閲覧できる。
台湾では万安演習という名の防空演習が毎年実施されているそうだ。
日中の30分間、
全ての人々が屋内に退避し、
車両の通行も制限される。
違反には罰金が科せられるらしい。
人けが消えた繁華街、
その異常な現実に慣れつつある昨今である。
30分どころではない。
もう何日も続く静寂の裏に、
どれほど大勢の努力があるのか。
罰則を要とせず、
一人ひとりが自発的に発揮している忍耐力を改めて思う。
人の減り具合を示す数値が成績表のようで、
つい一喜一憂してしまう。
郊外の商店街とかスーパーとか別の場所に流れただけとの見方もある。
ただ、
今は素直に互いの労をいたわり合いたい。
山場という言葉を幾度となく聞かされ、
心が折れそうな今だけは。
4月24日 NHKBS1「国際報道2020」
中国は経済活動の再開に乗り出したが
新型コロナウィルスへの強い警戒感は残っている。
そうしたなか
中国で暮らすアフリカの人たちが不当に隔離されるなど差別を受けたと相次いで訴えていて
中国とアフリカ諸国との間で外交問題に発展している。
中国南部の広州。
アフリカ出身者が多く住む“リトルアフリカ”と呼ばれる地域。
4月中旬 多くの店のシャッターは閉まり閑散としていた。
卸売市場が集まっていることから
中国製品を買い付けるアフリカのバイヤーが多く暮らし
かつてはにぎわっていた。
人影が消えた理由の1つに
ウィルス検査が実施され多くの人が隔離されたことがあると指摘されている。
新華社通信(4月14日)は
広州のアフリカ出身者すべてにあたる4,553人を対象に検査が行われ
そのうち111人から陽性反応が出たと伝えている。
地元では外国人の立ち入りを禁止する張り紙も。
ウィルスに感染したアフリカの人が出入りした飲食店で感染者が出たことなどから
“アフリカの人が感染を広めている”という噂が広まっているのである。
香港メディア(4月13日)は
アフリカの人がホテルに宿泊を断られ野宿しているとされる様子や
警察に拘束されている様子を伝えている。
アフリカの人からは“差別的な扱いを受けている”と訴えが相次いでいる。
長年 事業を営んできたマリ人の男性は
「アフリカの人々は全員検査を受けろと言われ
隔離されている。
私たちは中国の友人。
こんなの間違っている。」
“陰性”の結果を受け隔離から解放されたというナイジェリア人は
「陰性だったのに借りていた家に入れてくれない。
いま路上暮らしさ。
食堂へ行っても追い払われ
差別されてつらい。」
こうした事態にアフリカの国々は反発を強めている。
(ナイジェリア外相)
「中国に住むナイジェリア人と
アフリカの人々の権利と尊厳が侵害された。」
ガーナ政府は
“アフリカ各国の大使が中国外務省に対して対応を求めた”と発表した。
中国政府は火消しに追われた。
(中国外務省 趙報道官 4月13日)
「中国は感染防止の家庭において
いかなる差別的な行為にも反対する。
中国とアフリカは良き友人で
パートナーで
兄弟である。」
そのうえで
“地元政府はアフリカ側の意見を聞き入れ外国人への健康管理措置を改善させている”としている。
ただアフリカの人からは
“隔離から解放されてもなお飲食店の出入りを拒否された”という声が聴かれる。
ウィルスの広まりを抑え込んだとされる中国で
感染は今も暗い影を落としている。
4月24日 NHKBS1「国際報道2020」
人口13億のインドも新型コロナウィルスとの厳しい戦いに直面している。
インドでは3月25日から
生活必需品などの買い物を除いて全土で外出が禁止されていて
“世界最大のロックダウン”とも呼ばれている。
公共交通機関や企業活動もほぼ全面的に停止されている。
こうしたインドの措置は世界で最も厳しい内容の1つとされている。
ロックダウンから1か月。
インド社会でさまざまな影響が広がっている。
インドの首都ニューデリー。
多くの人でにぎわっていた街は今は閑散としている。
外出は厳しく制限され
許可がない車は取り締まりの対象である。
こうした封鎖で思わぬ影響も出ている。
大気汚染が改善し
連日澄んだ青空が広がるようになった。
インドでは世界最悪レベルの大気汚染が深刻な問題で
日中でも少し先が見えない日があるほどだった。
それが交通量の激減や工場などの操業停止などによって
ニューデリーの大気汚染物質は7割も減ったという。
青空の一方
インドの社会には混乱が広がっている。
4月22日までの1か月で感染者数は30倍以上に増加。
封鎖が続くなかでも感染を広げるウィルスへの人々の不安が高まっている。
(住民)
「いつ感染するかわからず不安です。」
「何もできない状態が続いて
とても苦しいです。」
ウィルスへの恐怖から
最前線に立つ医療従事者を攻撃する人たちまで出ている。
ウィルス検査のため住宅街を訪れた医師が
住民たちに石などを投げられケガをした。
自宅に住民が押しかけ集合住宅から出ていくよう迫られた医師もいる。
(近所の住民)
「医者だからって何様のつもりだ。
このろくでなし!」
一部の人々の間に
医療従事者がウィルスを広めていると
誤った考えが広がったことが原因だった。
政府は
医療従事者に危害を加えた場合
最大7年の禁錮刑や70万円余の罰金を科す法律の改正を決めた。
(医師)
「対策をとても歓迎しています。
これで安全に医療活動に専念できます。」
長期化する封鎖で不満を募らせているのが
都市部で仕事を失った出稼ぎ労働者たちである。
最大の商業都市ムンバイでは
失業した労働者たちが故郷に帰ろうとバスターミナルに集結。
集まった人たちを排除しようとした警察と衝突する事態になった。
失業した出稼ぎ労働者は全土で1億人を超えると言われ
政府は
行き場を失った人たちを受け入れる臨時の避難所を各地に設置している。
900人余が生活している避難所。
北部の農村から出稼ぎに来ているデブシンさん(50)。
食堂で働いていたが封鎖によって解雇され
交通機関が停止するなか故郷に帰ることもできない。
地元に残した妻と2人の子どもに全く仕送りができない状況に焦りを感じている。
(失業した出稼ぎ労働者 デブシンさん)
「子どものそばにいられないので何もしてあげられません。
封鎖が終わっても
今年は仕事が見つからないでしょう。」
政府は貧困層を中心とした8億人に食料を支給するなど対策を取っているが
抜本的な解決策は打ち出せていない。
専門家は今後半年程度は厳しい雇用情勢が続くとして
出稼ぎ労働者に対するさらなる支援が必要だと指摘している。
(軽罪コンサルタント ハリシュ氏)
「6~12週間の封鎖で最も傷つくのは
現代インドを築いた出稼ぎ労働者たちだ。
政府は彼らの月給の半額を保証すべきだ。」