2021年3月9日 NHKBS1「国際報道2021」
10年前の東日本大震災では発生直後からアメリカ軍の兵士たちが大規模な支援を展開した。
“トモダチ作戦”と名付けられ
2万人以上の兵士が約1か月半にわたって活動し
アメリカ軍による災害支援としては過去最大規模となった。
10年を経た今
その作戦の舞台裏が関係者らによって明かされた。
日本に拠点を置くアメリカ海軍第七艦隊に所属していたデイビス元大佐。
地震発生当時 乗っていた艦船はシンガポールに寄港中で兵士はすでに下船していたが
津波のニュースを受けてすぐに動き出したという。
(デイビス元大佐)
「津波のニュースを見た兵士が呼び出しを受けることなく
すぐに船に戻ってきたのです。」
“トモダチ作戦で”アメリカ軍は物資の輸送やがれきの撤去など多岐にわたる活動を行なった。
象徴的だったのが津波で冠水した仙台空港の復旧である。
海兵隊の部隊が自衛隊とともに活動し
5日間で輸送機が着陸できるようになった。
急ピッチで作戦が進む中
アメリカ政府は福島第一原発の事故への対応で判断を迫られていた。
政府中枢の会議で
東京在住のアメリカ人9万人を非難させるべきか
議論が行われていたのである。
その場に参加していた元外交官 メアさん。
外交官として日本で通算19年間を過ごした日本通である。
会議では“自国民の安全と日米同盟が天秤に“かけられたと証言した。
(元外交官 メアさん)
「本当に米軍が危険であれば私も賛成しますよ。
“非難すべき“だと。
結果として必要ではなかった状態の中で
米軍が避難したら大変だ。
信頼を失い日米同盟の基盤が崩れてしまう。」
その後 放射性物質による影響は問題ないことが確認され避難は見送られた。
日米同盟が試されたともいわれる東日本大震災。
ワシントン近郊の国防総省には
両国のきずなを示す象徴として“トモダチ作戦“のパネルが飾られている。
“トモダチ作戦”を指揮したウォルシュ元司令官。
作戦によって日米同盟の強固さが示され
それが地域の他の国々にも影響を与えたと指摘する。
(“トモダチ作戦”を指揮 ウォルシュ元司令官)
「東日本大震災で日米同盟は試され
私たちは一致団結して結果を出して見せた。
第二次世界大戦による日米関係を引きずっていると考えている国々は
日本がアメリカにとっていかに重要な位置を占めているかを理解しただろう。」
作戦にあたったアメリカ兵の多くは日本に駐留していたことから
東日本大震災が外国で起きた災害ではなく
自分や家族が住む国で起きた災害と受け止めて
支援にも力が入ったと話している。
一方 作戦をめぐっては
福島県沖を通過した空母の乗組員などが
その後 放射線による健康被害を訴えて訴訟を起こしている。
作戦に参加したことによって健康を害し
その後の人生に影響を与えたと考えている兵士も中にはいる。
バイデン政権は
駐留経費の日本側の負担 思いやり予算をめぐる日米の交渉で
暫定的ながら
早いタイミングで日本側と合意した。
増額を求めていたトランプ政権と違いを見せた形である。
一方でバイデン政権は中国を最大の競合国として
同盟国などと連携して中国に向き合う姿勢を鮮明にしている。
このため日米同盟のもと日本に様々な負担を求めてくることも考えられる。
さらに在日アメリカ軍をめぐっては
基地問題や兵士らが起こす事件もたびたび起きている。
“トモダチ作戦”では日米同盟の意義がいかんなく発揮された形だが
メリットと裏表の関係にある負担の部分にも目を向けていく必要がある。
2021年3月9日 NHKBS1「国際報道2021」
(韓国 KBS 2021年1月6日放送)
「KOSPI(総合株価指数)が初めて3,000を超えました。」
今年 一時最高値を記録するなど堅調な韓国の株式市場。
株価を押し上げたとされるのが20代や30代の若者による投資である。
背景には将来への不安があるという。
去年の夏から新たな収入源を求めて投資を始めたイさん(31)。
塾で講師をしているが
不動産価格が高騰するなか
今の収入ではマイホームを手に入れることは難しいと感じ
将来への希望を失いつつある。
(イさん)
「今は自分がいくら頑張っても家を買えないのではないかと感じています。
革新系(与党)が政権を握ったら若者の生活が改善されると思ったが
何も変わらなかった。」
パク・クネ前大統領を罷免に追いやり
ムン・ジェイン政権の誕生を後押ししたのが若者たちだった。
就任当時 若者の雇用の確保を掲げたムン大統領。
執務室には大型モニターを設置し
状況の改善をアピールする計画だった。
(2017年5月 韓国 ムン・ジェイン大統領)
「雇用率がOECDの平均値より10%近く低いため
若者の失業がとても深刻な状況だ。」
しかしムン政権下の4年間で失業率はほとんど改善していない。
安定した収入が見込めないなか
結婚や出産
マイホームなどをあきらめる若者も増えている。
(淑明女子大学 ユン教授)
「若者層の支持率低下は
経済的な危機による就職への不安や
格差による不平等への反発が反映されたものだとみています。」
不満を募らせる若者たちが次期大統領として期待を寄せるのは誰なのか。
世論調査で高い支持を得ているのが
ソウル近郊のキョンギ道の知事を務める 与党のイ・ジェミョン氏(56)である。
格差の解消など左派的な姿勢を打ち出し
韓国の“サンダース”とも評されている。
一定額を無条件で支給し最低限の所得を補償するベーシック・インカムの導入を掲げ
すでに2年前からキョンギ道内で24歳の若者に給付金を支給している。
(韓国 キョンギ道 イ・ジェミョン知事)
「ベーシック・インカムは最も深刻な社会問題である経済的格差を緩和できるだろう。
財源を国民に支給し
消費を促せば
経済が潤うはずだ。」
イ・ジェミョン知事を支持するウさん(20)。
3月に大学生活をスタートさせたが
厳しい競争の中で将来の不安は尽きない。
若者のための政策を実現してくれるのではないかと期待を寄せている。
(ウさん)
「若者の不満に耳を傾け
解決法を見出してくれるのが他の政治家との大きな違いです。」
SNSを積極的に活用するイ・ジェミョン知事は若者にとってアクセスしやすい存在だという。
(ウさん)
「イ・ジェミョン知事が今後も若者の苦しみを少しでも減らす政策を打ち出してくれれば
私たちも将来に向けて頑張れる気がします。」
一方の野党側は現段階では有力な候補を見い出せていない。
パク・クネ前大統領の逮捕などについて謝罪し
過去の失敗と向き合う姿勢を強調することで有権者の理解を得ようとしている。
その野党内で期待が高まっているのが
辞任したユン・ソギョル前検事総長である。
ムン大統領の祖金だったチョ・グク元法相の親族をめぐる疑惑を追及し辞任に追い込むなど
政権側と対峙してきた。
ユン・ソギョル氏が立候補すれば
社会の公正さを求める若者たちの不満をすくい取ることが出来るのではないかとみられている。
(韓国 ユン・ソギョル前検事総長)
「今後どんな立場にあっても
自由民主主義と国民を守るために全力を尽くす。」
専門家は
今後 若者などの支持を得るためには
格差の拡大や不平等をいかに解消するかがカギになると分析している。
(淑明女子大学 ユン教授)
「いまの若者たちは公正さに敏感だ。
誰が最も平等な社旗を実現するのか
それができる候補に支持が集まるだろう。」
3月9日の韓国の新聞では
1年後に迫った大統領選挙について3人を大きく伝えている。
3月初めに発表された世論調査機関リアルメーターの調査によると
イ・ジェミョン知事に期待する人が最も多く23,6%となっている。
大統領選挙への立候補に向けて野党の代表を辞任したイ・ナギョン氏が15,5%
ムン政権下で約2年7か月にわたって首相を務めた。
また同じ15,5%となっているのがユン・ソギョル氏前検事総長である。
まだ立候補するかどうか明らかにしていないが
保守・中道層の支持が伸びていて
世論調査によっては最も多く支持を集めているものもある。
イ・ジェミョン知事は一般の有権者からは支持を集めているが
与党内でムン・ジェイン大統領に近いとは言えず
今後 与党の公認候補に選ばれるかもまだ見通せない。
4月7日には大統領選挙の前哨戦と位置づけられている
首都ソウルと第二の都市プサンの市長選挙が控えており
大統領選挙を目指す人たちがどのような存在感を示すかも今後に影響を及ぼしそうである。
最悪と言われる日韓関係については
今の与党が勝利すれば大きな方向性ではムン政権を引き継ぐ形になるとみられ
逆に野党が勝てばより大きな変化が生じることが予想される。
ただひと言 与党と言っても
イ・ジェミョン知事は日本への厳しい発言が目立つ一方
イ・ナギョン氏はかつて日本に駐在した経験もある知日派とされるなど幅がある。
今後それぞれがどのような外交面でのビジョンを打ち出すのかが注目される。
大統領の交代で日韓の間の懸案が直ちに解消されるわけではないが
日韓関係が変わるひとつのきっかけとはなり得る。
隣国 韓国の人たちがどのようなリーダーを選ぶことになるのか
注視していきたい。
2021年3月9日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」
中国 今年の全人代の注目は経済と香港。
経済をめぐっては
今年の経済成長率の目標を6%以上と設定。
成長のスピードではなく安定的で質の高い成長を目指す長期的な目標を強調した。
香港をめぐっては
民主派の排除につながる選挙制度変更の方針が示された。
中国経済の回復をアピールしつつ目標設定は慎重である。
李克強首相は初日の活動報告で中国の感染対策と経済の力強さを誇示した。
(中国 李克強首相)
「感染拡大の抑え込みで重要な成果をあげ
世界の主要国で唯一プラス成長を実現した。」
一方で今年の経済成長率の目標は6%以上と設定。
去年の成長率が低かった反動もあり
IMF(国際通貨基金)などは今年の中国の経済成長率を8%程度と予測しているが
今回6%以上と設定したのは
世界的に新型コロナの影響が続くなかでも達成しやすい水準を示したものとみられる。
新型コロナの影響と並んで
中国の経済目標を慎重にしているとみられるもう1つの要因がアメリカとの対立である。
アメリカはバイデン政権になっても厳しい姿勢を崩していない。
それもあり習近平指導部は新たな5か年計画の中で
海外への輸出頼みから脱却し
国内で経済を回そうという新たな発展モデルを打ち出した。
海外からの投資を呼び込んで内需を拡大させた上で
国内の産業を強くしようというのである。
そこでラブコールを送るのが日本企業である。
中国内陸部
人口1,600万余の中心都市 成都。
企業が集まる地域にある敷地はすべて日本企業のためのものである。
成都市では市内数か所にこうした敷地を設け
医療やエネルギー関連の企業
それにアニメやゲームなどのコンテンツ産業などを誘致。
中国企業に無い技術やソフトパワーを取り入れ
さらなる経済の発展につなげようとしている。
(成都市の誘致担当者)
「日本企業にぜひ来てもらって
一緒に仕事がしたいです。」
さらに進出を支援する部署も新設。
日本語のできる専属スタッフも配置している。
急速に進む都市開発でも日本の経験が期待されている。
去年11月には日本の企業との間で30近いプロジェクトを検討することで一致した。
日本側の要望に応じた規制緩和も進めたいとしている。
(成都市 日中協力プロジェクト室 主任)
「国家プロジェクトとして
日本企業に特別な優遇措置を提供します。
将来的には成都が中国で最も投資しやすい都市になると確信しています。」
中国政府は
成都のほか東部の蘇州や青島など
全国6か所に日本企業を誘致するためのモデル地区を設置している。
それぞれの地区で日本企業向けの優遇措置やインフラ開発を進めていて
中国市場に期待する日本企業にとっては大きなチャンスと言える。
中国はいまハイテク産業に欠かせない半導体など電子部品の国産化を進めていて
その点でも日本企業に期待している。
しかし日本企業側には技術流出などの警戒もあり
中国の思惑どうり進出が進むかどうかは不透明である。
去年の全人代で
反政府的な動きを取り締まる香港国家安全維持法の導入が決められたのに続いて
習近平指導部は今回さらに選挙制度を変更することで
反対勢力の政治参加を封じ込めようとしている。
変更のポイントは
市民の直接投票で選ぶ議員の枠を極力減らすことになる見通しである。
欧米からは避難や懸念の声があるが
王毅外相は7日の記者会見で
“選挙制度を変更して香港を安定させることが住民の利益につながる“として正当化した。
(中国 王毅外相)
「愛国者による香港統治は一国二制度を推進し
香港の長期的な安定に必要だ。」
2019年の香港の区議会議員選挙前は
全ての議席の約7割を親中派が占め
民主派は約3割だった。
しかし一連の抗議活動を通じて広がった中国や香港政府への反発を背景に
民主派が8割以上を獲得して圧勝し中国政府に衝撃を与えた。
香港政府のトップの行政長官を選ぶ選挙は選挙委員が選ぶ間接選挙である。
選挙委員の一部は区議会議員や議会にあたる立法会の議員から選ばれる。
その数は少ないとはいえ民主派の影響力が一定程度反映されることになる。
このため直接選挙で選ばれる議席を極力減らすことで
民主派の勢力を弱め親中派の優勢が崩れることがないよう
制度を変えようとしていると思われる。
選挙制度変更の方針は全人代最終日に決定される予定で
その後具体的な法整備が行われるとみられる。
2021年3月8日 NHKBS1「国際報道2021」
中国から軍事や経済 外交面などさまざまな分野で圧力を受けている台湾だが
最新の標的は台湾産のパイナップルである。
輸出の97%が中国向けだが
中国は害虫が検出されたとして3月から輸入を停止すると通知。
台湾側は反発している。
台湾と外交関係を持つ国は2013年には23か国あったが
その後 台湾と外交を断絶し
中国と国交を結ぶ国が増え
2019年には15か国にまで減少した。
こうしたなかで台湾当局がいま積極的に推し進めているのが民間レベルでの人的交流。
なかでも世界中からの留学生の受け入れである。
台湾で学ぶ留学生の数は2013年度には7万8,000人ほどだったが
2019年度には13万人を超えて2倍近くに増加している。
こうしたコロナ禍でも積極的に留学生を受け入れる台湾の戦略はー。
150を超える大学がある台湾。
留学生の数は年々増加し全ての大学生の約1割を占めている。
台湾のどこに魅力を感じたのか。
(タイからの留学生)
「中国よりも台湾の方が安全で
生活費も台湾は安いです。」
(カナダからの留学生)
「新型コロナへの政策は世界で最高でした。」
日本からの留学生も増え
去年初めて1万人を超えた。
(日本からの留学生)
「中国は環境面でも政治面でもいろいろ不安な部分が多いので
親とも相談して中国より台湾の方がいいということで台湾に決めました。」
日本の文部科学省にあたる台湾教育部の担当者は
台湾が中国語を学びたい世界中の若者たちの受け皿になっているとみている。
(台湾教育部 李司長)
「台湾は自由度が高い。
これは欧米諸国と交流し互恵関係を結ぶ土台になっています。
安全で友好的なことも学生が台湾を選ぶ理由になっています。」
教育部は留学生をさらに増やそうとさまざまな支援を行なっている。
その1つが奨学金の充実である。
留学生の小泉さん。
成績が優秀だとして去年学費が免除された。
奨学金の一部は台湾当局から出ている。
(小泉さん)
「学費免除が決まってすごいうれしかったです。
すごいうれしかったです。」
さらに当局は返済不要の奨学金も約450人の留学生に給付している。
大学には留学生にきめ細やかな進路支援を行なうよう求めている。
この日行われたのは2年に進級する留学生の授業選択の支援。
大学職員が要望を詳しく聞き取りながらアドバイスする。
「これは2年生で選び直せないのですか?」
(大学 担当者)
「留学生たちは今後どの学科に進んでいくべきかわかっていない状況です。
何を学ぶことが出来るのか
興味と合っているかどうか
説明していきます。」
企業に対しても留学生の採用を働きかけている。
日本からの留学生は大手IT企業にインターンとして参加。
その経験を生かして企業から内定を得ることが出来た。
(台湾教育部 李司長)
「我々は学校に指導しています。
積極的に就職説明会を主催している学校もあり
我々も彼らに協力しています。」
いま台湾が呼び込みに力を入れているのは東南アジアからの留学生である。
この日はオンラインの説明会でインドネシアの学生たちに台湾の魅力をPRした。
(台湾に留学中の学生)
「アカデミックな経験だけでなく
外国文化のさまざまな特色も学べます。
大学にはロシアの人もトルコの人もインドネシアの人もいます。」
台湾当局は留学生を通じて民間レベルの人的ネットワークを広げたい考えである。
(台湾教育部 李司長)
「将来東南アジアの国々は
台湾とのつながりも強まり友好関係を構築する欠かせない場所です。
経済や外交などの発展も期待できます。
積極的に推進していきたいと思います。」
2021年3月8日 NHK「おはよう日本」
昭和53年8月 巨人の王選手が前人未到の800号ホームランを打った試合。
名前を呼び上げたのが
当時アナウンスの仕事に就いて間もない山中美和子さんである。
応援するファンの気持ちに寄り添うことを心がけ
44年にわたって選手の名前を呼び上げてきた。
(場内アナウンス44年 山中美和子さん)
「場内放送を合図にファンの人たちは『ワー』とやりたい。
ワクワクしている時間を楽しむ。」
王さんは呼び上げかたに最も苦労した選手で
何度も練習したという。
(場内アナウンス44年 山中美和子さん)
「盛り上げようと思えば『おう!』となってしまう。
それだとおかしいので
次の打席は『おぅ』みたいな感じになってしまって。
本当に王さんは難しかった。
その山中さん
今シーズンで引退する。
そして今年42年ぶりに3人の新人が誕生した。
研修では熱の入った指導が行われる。
「1番 セカンド 吉川
1番 セカンド 吉川」
(山中さん)
「同じ調子で言わないほうがいい。
1回目と2回目の調子を変える。」
2月27日の2軍戦。
この日デビューする新人たちは緊張している様子だった。
「6番 ショート 呉(ウー)]
「ファーストですよ。」
「間違えました?」
「呉(ウー)ショートと。
正しくはファースト。」
「私が間違えたんだ。
気をつけよう!」
(42年ぶりの新人 小倉星羅さん)
「すごく緊張した。
伝統を引き継ぐ思いがとてもある。
1軍の舞台を目指し
山中さんを良い形で安心して送り出せればと思う。」
(今シーズンで引退 山中美和子さん)
「ファンの人と一緒に盛り上がってほしい。
いちばん大事なのはジャイアンツファンでいることだ。
自分がいちばん好きだと3人で競争してほしい。」
山中さんの指導を受けた新人の3人は今後も2軍の試合を中心に実戦を重ね
今シーズンの1軍デビューを目指す。
2021年3月6日 読売新聞「編集手帳」
赤ちゃんはお母さんでなくとも、
誰が近づいてもかわいらしく笑う。
いわゆる「3か月微笑」は、
動けない乳児が大人に世話をしてもらうための本能だという。
気象エッセイストの倉嶋厚さんは赤ちゃんと花は似ていると書いていた。
動かずとも色、
匂いで虫や鳥を引きつけ、
花粉を運んでもらって命をつなげていくからだ。
きのう東京・神保町の古書店街に出かけたとき、
歩道のプランターにパンジーらしき花が“微笑”しているのに気づいた。
昆虫よろしく顔を近づけると、
くしゃみが出た。
はて「虫媒花(ちゅうばいか)」でも花粉を飛ばすのかと疑ったものの
スギ花粉がマスクの内に入ったせいだろうと思い直した。
スギに代表される「風媒花(ふうばいか)」は、
風まかせで首尾よく同族の花に行き着くのが難しいため、
大量の花粉をまく必要があるらしい。
植物学者の稲垣栄洋さんの例えが分かりやすい。
<顧客がどこにいるかわからず、
駅前で手当たりしだいに配るポケットティッシュと同じ>
(『植物の不思議な生き方』朝日文庫)
ふむそうか。
スギ花粉はティッシュなのかと感じ入りつつ、
きょうもティッシュが手放せない。
2021年3月8日 読売新聞「編集手帳」
小学校の卒業式。
恩師を前に、
涙ながらに「仰げば尊し」を歌う子どもたち。
瀬戸内海の小豆島を舞台に、
教師と教え子の師弟愛を描いた1954年の映画「二十四の瞳」のワンシーンだ。
合唱する歌は違っても、
時代を超えて変わらない情景が今年も見られないことがあるという。
「密」を避けるために卒業式への保護者や在校生の出席を制限し、
校歌や卒業ソングの合唱を見送る学校が少なくないと聞く。
この春、
学びやを巣立つ児童・生徒らは最終学年の1年間をコロナ禍の中で過ごした。
文化祭や運動会などが縮小・中止され、学習や部活動の成果を披露できず涙した子もいるだろう。
つらい中でも頑張ってきた子どもたちの門出を祝ってあげたい。
そんな動きが広がっている。
東京音楽大の教員らは11日、
「仰げば尊し」「旅立ちの日に」など卒業ソングのコンサートをオンラインで配信する準備を進めている。
岩手県の小学校教師が寄せた応援メッセージが、
心にしみる。
<知らない人から何かしてもらった子どもたちは、
やがてきっと知らない誰かに対しても、
何かしてあげられる大人に育つはずです>
2021年3月5日 NHKBS1「国際報道2021」
3月5日に開幕した全人代。
李克強首相は今後 中国は“科学技術強国“を目指すと強調した。
(中国 李克強首相)
「国家戦略として科学技術のイノベーションを加速させその強化を推し進める。」
中国はいま5Gや人工知能などのハイテク分野に経済のけん引役を期待している。
ところがこうした分野に欠かせない半導体をめぐって課題に直面している。
アメリカ政府は一昨年以降
中国の通信機器大手ファーウェイに対して
半導体などの輸出を禁じるなど締め付けを強めてきた。
半導体の多くを輸入に頼ってきた中国は自国での産業の育成を急いでいる。
2020年10月 上海で開かれた展示会。
政府系のメーカーなどが開発した半導体の技術力をアピールした。
(紫光集団 申副総裁)
「製品を着実に発展させ
全世界に届けます。
私たちの製品の技術力の高さを信じています。」
産業育成のため国を挙げた支援が行われ
政府系ファンドが3兆円余の資金を調達して積極的に投資を行なっているほか
高性能の半導体を製造する企業には最長10年間法人税を免除している。
政府の大号令に応じ地方では半導体への巨額の投資が次々に行われてきた。
しかし行き詰まるプロジェクトも相次いでいる。
半導体の国内生産を目指して作られている巨大な工場。
資金繰りがつかなくなり工事がストップしたと伝えられている。
内陸部湖北省では“1兆円以上投資してスマートフォン用の半導体の製造工場を作る“と大々的に宣伝されていた。
しかし去年工事が突然停止した。
「1年間 作業員の給料は支払われず
みんなここに残っています。」
東部江蘇省でも5年前から着工していた半導体工場の建設が停止。
イスラエルの企業と提携し
電気自動車の充電スタンドなどに使用される半導体を生産する計画だった。
プロジェクトを進めていた企業の会長 李さん。
地元政府からも経済開発区の土地の取得や資金面での支援を受けていた。
(李さん)
「南京の経済開発区のトップや関係者が来賓し工場建設の式典を開きました。」
成功は間違いないと考えていたが
短期的な利益を求める投資家などがから十分な資金を集めることが出来ず
破産寸前まで追い込まれたという。
(李さん)
「まさか資金繰りがつかず立ち行かなくなるとは
当時深く考えておらず
反省しなければならない点だと思います。」
いま中国では
投資総額が1,000億円以上になると宣伝された半導体関連の大型プロジェクトのうち
少なくとも6件が破綻しかかっていると指摘されている。
専門家は
半導体産業は長期的には有望だとする一方で
高い技術力が必要で
育成のあり方を見直す必要があると指摘する。
(芯謀研究 顧主席アナリスト)
「地方政府はあまりにも焦って半導体産業を発展させようとするため問題が起きています。
専門性がなく無計画な政策を取り続ければ
国際競争で差が縮まるどころか広がってしまいます。」
2021年3月5日 NHKBS1「国際報道2021」
世界各国の経済はコロナ禍で打撃を受けているが
そんななかでも中国 李克強首相は全人代で
「中国は着実に経済回復を進めている」と強調した。
中国南部広東省。
製造業が盛んなこの地域は“世界の工場”とも呼ばれ
中国経済をけん引してきた。
しかし長引くアメリカとの貿易摩擦に加え
新型コロナの影響で世界的な需要が落ち込んだことで
特に中小企業は深刻な打撃を受けている。
職業紹介所には失業したという人が相次いで訪れている。
「去年コロナの影響で会社がつぶれ実家に帰りました。
今年の雇用状況も同じです。」
「本当に労働者を募集する企業が少ないです。
あっても40歳を超えると雇ってくれず
もっと厳しい条件を緩くしてほしいです。」
労働争議の仲介など行なう会社の代表 顔さん。
対応にあたっていた製造機器メーカーを訪ねると
「この張り紙は?」
「賃金の未払いで裁判が起こされていると。」
賃金が未払いのまま経営者が行方不明になっていた。
別の会社を訪ねると
もぬけの殻になっていた。
(顔さん)
「この企業も倒産して経営者は行方不明になっています。」
経済的に行き詰まる企業はいま中国全土で急増している。
中国の最高裁判所が公開している
去年1年間の企業の破産などに関する文書は約4万円。
前の年に比べて6割以上も増えている。
顔さんのもとには労働者からの相談も急増している。
この日は勤め先の工場で突然解雇されたという男性が訪れた。
(相談者)
「雇用契約が切れたと言われ解雇されました。」
(顔さん)
「失業補償は?」
(相談者)
「いま話し合っています。」
失業して出稼ぎ先から実家に戻った労働者も厳しい状況に置かれている。
(顔さん)
「実家で仕事を探せていますか?」
(相談者)
「月4万円程度の仕事しかなく生活できません。」
(顔さん)
「失業は特に労働集約型の企業
技術水準が低い企業に発生しています。
技術がなければ不安定な職しか見つけられず失業のリスクにさらされます。」
2021年3月4日 NHKBS1「国際報道2021」
今アメリカでアジア系の住民に対する暴行事件が相次いでいる。
新型コロナウィルスを持ち込んだのは中国人だという見方が広まり
アジア系の住民が狙われるようになったのである。
地下鉄で突然切り付けられ顔に傷を負った男性もいる。
日本人が巻き込まれるケースも急増。
偏見に基づいた犯罪
「ヘイトクライム」がアメリカに住んでいるアジア系住民に対して増えている。
ニューヨーク市によると
アジア系へのヘイトクライムの件数は
2019年にはわずか1件だったが
2020年には確認されているだけでも30件と急増している。
ジャズピアニストの海野雅威さん。
去年9月ニューヨークで暴行を受け大けがをした。
年末に日本に戻りリハビリを続けている。
事件から半年
骨折した右肩は今も自由に動かすことが出来ない。
海野さんが被害にあったニューヨークの地下鉄の駅。
夜7時半ごろ改札口付近で8人の少年たちに呼び止められた。
危険を感じ地上へと向かった海野さん。
しかし近くの公園で捕まり
全身を殴られたり体を地面にたたきつけられするなど15分にわたって激しい暴行を受けた。
当時公園には多くの人がいたが誰も止めに入らなかったという。
(ジャズピアニスト 海野雅威さん)
「なぜそんな理不尽に通りがかりの人を襲うんだということは
自分の身に起きて痛みを伴っていますから
どういうショックか言いようがない。」
13年前ジャズの本場ニューヨークに渡った海野さん。
次第に演奏が認められるようになり
グラミー賞を受賞したトップミュージシャンと共演するまでになった。
しかし新型コロナの影響で広がった差別や偏見は海野さんの人生を大きく変えた。
(ジャズピアニスト 海野雅威さん)
「チャイニーズだと言って“やってしまえ”というような声を聞きました。
私が暴行を受けてチャイニーズとか言われたときに
“ああ これなんだ”と思って。
金目当てとかじゃなくてストレス発散で
見かけたアジア人に殴りかかるとか
そういう怖さになっています。」
新型コロナウィルスを持ち込んだのは中国だという見方が広がるアメリカ。
トランプ前大統領の度重なる発言が憎しみを増幅させた。
(アメリカ トランプ前大統領)
「チャイナウィルス。」
「チャイナウィルス。」
「チャイナウィルス。」
深刻な被害が出始めたのはチャイナタウン。
そしてアジア系の住民へと被害が広がっていった。
タイから移住してきた84歳の男性は
突き飛ばされて大けがをし2日後に亡くなった。
事態を重く見たバイデン大統領。
アジア系の住民に対する差別をなくしたいと大統領令に署名した。
(アメリカ バイデン大統領)
「私たちはもうひとつの悲劇に直面している。
アジア系住民などに対するヘイトクライムだ。
これらは間違っている。
私たちの国の品性を損なう。」
差別に立ち向かおうと
アジア系の住民が団結する動きも出てきている。
2月末ニューヨークで開かれた集会には約350人が集まり
アジア系住民に対する暴力を非難した。
「私たちは無視される存在であってはならない。
声を上げるべきだ。」
(アジア系人権団体 代表)
「私たちが怒り おびえていることを広く知ってもらい助けてほしいと思います。」
警察でも異例の取り組みが始まっている。
去年8月ニューヨーク市警では
アジア系住民を狙った犯罪を専門に扱うチームが結成された。
中国や韓国などから移住してきた警察官が声を上げたのがきっかけだった。
(ニューヨーク市警 アジア系特別捜査班 隊長)
「目的は全てのアジア系住民の被害者の役に立つことです。
わざわざ“アジア人も同じ仲間だ”というメッセージを出さなければけないのは
悲しいことです。」
人種の壁を越えて連帯しようという動きは海野さんの周辺でも起きている。
ジャズドラマーのジェローム・ジェニングスさん。
2人は何度も演奏を重ねてきた間柄。
見事な音色を響かせる海野さんのことを親友だと思っていたと言う。
(ジャズドラマー ジェローム・ジェニングスさん)
「海野さんは多くのものを費やして居場所を勝ち取った。
彼は外から来て僕たちの文化に溶け込んだ。
だから尊敬しているんだ。」
ジェニングスさんは事件後
海野さんのけがの治療や今後の生活を支えるためにネットで寄付を募った。
海野さんの長年のファンや差別に反対する人たちなどから予想をはるかに上回る寄付が集まった。
(ジャズピアニスト 海野雅威さん)
「被害を受けて誰とも交流したくない心境だったのです。
そっとしておいてくれと。
だけどそれじゃいけないって声を上げてくれたのです。
私の代わりに。
私のことを愛してくれる人がこんなにいるんだと 分かったので
受けた傷は大きいですけど
それよりも大きい愛も感じているというのが心境です。」
(ジャズドラマー ジェローム・ジェニングスさん)
「アフリカ系やアジア系に憎しみが向けられたら
僕らは結束しないといけない。
何かを変えることが出来るからね。」
海野さんは医師から
ピアノを元のように弾ける保証はないと言われている。
それでも再び演奏できるようになることが差別を乗り越えることだと信じている。
(ジャズピアニスト 海野雅威さん)
「音楽で人がつながれるという
言葉関係なくつながることが出来るという実感があります。
差別をなくすためにも
私はジャズミュージシャンとして演奏活動を続けていきたい
それだけです。」
2021年3月4日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」
ワクチンの公平な分配を目指し
WHO(世界保健機)やユニセフ(国連児童基金)などが主導する国際的な枠組み
COVAXファシリティ。
現在190の国と地域が参加している。
先進国など98か国が資金を拠出しワクチンの開発などを支援。
途上国など92か国を含むすべての参加国が
自国民の人口20%を上限にワクチンを受け取ることが出来る仕組みである。
2月アフリカでCOVAXによる供給が始まった一方
公平な分配への課題は山積している。
2月24日西アフリカガーナに届けられた新型コロナワクチン。
COVAXによって供給される世界初めてのワクチンである。
(ユニセフ ガーナ事務所代表)
「COVAXのワクチンが供給された歴史的な瞬間です。」
2日後には同じ西アフリカのコートジボワールにもワクチンが到着。
3月1日にはそれぞれの国で医療従事者への接種が始まった。
COVAXで途上国への供給を担当するユニセフ シュライバー氏。
COVAXでの供給が始まったものの課題は山積しているという。
(ユニセフ シュライバー氏)
「ワクチンの供給は先進国でも遅れています。
とても複雑なことなんです。
医療体制がぜい弱な国であればその難しさは増します。」
最大の課題は
低温での保存が必要なワクチンをどう運び届けるか。
途上国では多くの医療施設で電気がなく電化製品が使えない。
そこで活用が期待されているのが太陽光などで動く冷蔵庫である。
ユニセフがこれまで途上国で肺炎などのワクチンを配るため設置してきたものである。
(ユニセフ シュライバー氏)
「太陽光で動く冷蔵庫を使えばワクチンを保存することが出来ます。
すでに4万台が設置されています。
多くのワクチンが供給されるようになるので
受け入れ準備が必要です。
今年の夏までに低温輸送体制を強化しなければなりません。」
途上国で始まったばかりのワクチン接種。
一方世界ではすでに医療従事者や高齢者などへの接種をほぼ終え
リスクの低い若者への接種が始まっている国もある。
(WHO テドロス事務局長)
「一部の国では
他国の医療従事者や高齢者よりも先に自国の健康な若者に接種をしていて遺憾だ。」
シュライバー氏も
まずは世界各地の医療従事者や高齢者への接種を優先すべきだと指摘している。
(ユニセフ シュライバー氏)
「裕福な国だけがワクチンを得るなんて倫理的に受け入れられません。
すべての人が守られなければならず
リスクの高い人から接種すべきです。」
ワクチンの分配が始まったことは評価できる。
新しいワクチンの開発は通常であれば何年もかかるものだが
COVAXに参加する先進国などが
世界各地の10のワクチン候補に一斉に投資したことが開発の大きな後押しになった。
アストラゼネカやモデルナのワクチンも
COVAXから提供された資金を受けて開発されたものである。
また開発と並行してワクチンの製造にも資金を投入し
大量生産体制を後押ししてきた。
このためワクチンの安全性が確認された後直ちに分配されることが可能だった。
課題となっているのは
先進国と途上国の接種のスピードに大きな格差があることである。
たとえばイスラエルはCOVAXとは別に
少なくとも800万回分のワクチンをファイザーから購入することで合意していて
ネタニヤフ首相は
ファイザーのCEOとの個人的な関係を生かして早い段階で調達できたとアピールしている。
実際 2月の時点で人口の半数余が少なくとも1回ワクチンを接種していて
これは世界でも極めて速いスピードである。
しかしアフリカなどの途上国では資金不足などから
自国で独自に製薬会社などと契約が結べず
ワクチンの供給を完全にCOVAXに頼っている国も少なくない。
先進国ではどんどん接種が進んで経済活動も再開していくのに
途上国では医療従事者ですら接種がなかなか進まない状況が続けば
格差がますます広がってしまうことが懸念される。
COVAXでは
医療従事者やリスクの高い人に必要な20億回分近くのワクチンを確保できているとしているが
これらが供給されるのは年末までの予定である。
COVAXでは
途上国だけでなく
日本などの先進国も含めて希望するすべての国に供給を行なう予定で
各国が独自契約した製薬会社などからワクチンを入手するスピードに比べて
供給には時間がかかる。
WHOのテドロス事務局長は
自国で確保したワクチンで医療従事者や高齢者などへの接種を終えた国に対しては
若い人たちへの接種を始める前に
途上国の医療従事者にワクチンを回してほしいと呼び掛けている。
しかし世界中で感染が続くなか
各国の政府はまずは自国民への接種を急いでいて
ワクチンを途上国へ回す動きは今のところ見られない。
COVAXの分配は始まったものの
世界全体にワクチンが行き届くにはまだまだ時間がかかるなか
COVACX人ワクチンの供給を頼る国が取り残されていないか
引き続き注視していきたい。
2021年3月4日 NHK「おはよう日本」
経済や文化の中心地として人々を魅了してきたニューヨーク。
コロナ禍でその姿が大きく変わりつつある。
5年前中心部近くの集合住宅で暮らし始めた男性。
2LDKで家賃は約30万円。
自宅に近いIT系の企業で働いているが
ほぼ毎日在宅でのテレワーク。
好きなミュージカルも休演で見られない。
憧れの町だったニューヨークを離れ郊外に家を買おうと考えている。
(クリストフさん)
「楽しめることが何もないのに
高い家賃払ってニューヨークに住む理由はありません。」
いま人気が高まっているのが郊外の一戸建て住宅である。
中心部から車で25分ほどの場所にある物件。
この日は20組以上が内覧に訪れた。
(内覧に訪れた人)
「公園が近くにあり
ニューヨークに行くのに便利なところを探しています。」
庭に面したリビングルーム。
3つのベッドルームや地下室など全部で8部屋ある。
これまでの相場より2割ほど高い5,800万円余と強気だが
自然に囲まれた環境が好まれ
すぐに買い手が決まったという。
(不動産業者 マネージャー)
「郊外の住宅任期は今後も続き
多くの人がニューヨークから移住するでしょう。」
都心離れが進むニューヨーク市。
去年人口は7万人減少した。
不動産会社の調査では1月時点で
中心部マンハッタンの物件は1万2,000室余が空室となり
1年前の倍以上に増えている。
このため不動産会社は破格ともいえる条件で借り手を見つけようとしている。
約90㎡の集合住宅。
去年出来たばかりだが
月々の家賃を約25%値下げ。
さらに入居から3か月間 家賃は無料にした。
それでも100部屋余のうち8割以上で借り手が見つかっていない。
(不動産会社)
「供給が上回っていて
歴史的な空室率の高さになっています。」
(財政政策研究所 シャインデさん)
「今の状況が続けば数十億ドル規模の財源不足になる恐れもある。」
2021年3月3日 読売新聞「編集手帳」
絵本の魅力を文章にするのはむずかしい。
ただしタイトルをここに示すだけで、
みなさんを深呼吸に誘えそうな荒井良二さんの作品がある。
『あさになったので まどをあけますよ』(偕成社)
1、2ページ目に山々の稜線の連なる風景が描かれ、
窓からの視線の持ち主である男の子のつぶやきが添えられている。
<やまは
やっぱり
そこにいて
きは
やっぱり
ここにいる
だから
ぼくは
ここがすき>
次ページからは街に住む子、
川や海の見える場所に住む子に視点を変えるが、
どの風景も「だから…ここがすき」と子供たちのことばで結ばれる。
荒井さんは東日本大震災を意識して描いたそうだが、
日常を突如奪われたいまの子供たちにも通じる視点だろう。
去年のいまごろは学校の一斉休校が始まったばかりで、
混乱の極みにいた。
かれこれ1年を経て日常をどれほど取り戻せたかと考えると、
忸怩(じくじ)たる思いがふくらむ。
朝が訪れて、
何を心配することなく窓を開けられる状態にはまだないだろう。
きょうはコロナ禍に迎える2回目の桃の節句。
地球が太陽を1周したかと思うと、
大人として胸が痛い。
2021年3月2日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」
毒殺未遂から奇跡的に回復し今年1月に帰国した野党勢力指導者 ナワリヌイ氏。
2月の裁判で
過去の経済事件を理由に2年6か月服役することになり身柄は刑務所に移された。
ナワリヌイ氏の釈放を求めて大規模な抗議活動が起きたが
その中でロシアが抱える深刻な世代間の対立が浮かび上がってきた。
ナワリヌイ氏の逮捕が呼び水となり
ロシア全土に広がった抗議の声。
デモが起きた都市の数は120を超えた。
抗議拡大の原動力となったのがネットのSNSである。
ナワリヌイ氏の陣営は様々なSNSを使って全国の支持者にデモを呼びかけた。
SNS上では各地でデモ隊と治安部隊が衝突する動画が拡散。
スマートフォンに慣れ親しんだ多くの若者たちの目にとまった。
治安部隊の乱暴な取り締まりの様子に強まる若者たちの反発。
SNSにアップされた動画には
高校の教室に掛けられたプーチン大統領の肖像画を持ち去る女子生徒。
ナワリヌイ氏の写真に掛け替える生徒も現れた。
(大学生)
「これがロシアの刑事訴訟法です。
こんなもの忘れてください。
ナワリヌイ氏の逮捕は刑訴法に違反しています。
こんなもの なぜ必要なの?」
プーチン政権は抗議活動は違法だとして
これまでに1万人以上の参加者を拘束。
“欧米諸国が背後で画策している”として
厳しく取り締まる姿勢を崩していない。
(プーチン大統領)
「ロシアは封じ込められようとしている。
我々を弱体化し支配下に置くことが目的だ。」
政権側も
動画の影響力の大きさに気づき
若者向けの宣伝動画を拡散させている。
登場するのはインターネット通販で売り上げを伸ばしている会社の社員たちである。
♪誇りを持って頭を上げよう
母なる祖国のために
われわれは最後まで立ち上がる
母なる祖国のために
プーチンこそ大統領!
♪ロシア ロシア
その名が示す炎と力
その名が示す勝利の炎
国旗を高く掲げよう
プーチン大統領!
支持します!
21年にわたりロシアを率いてきたプーチン大統領への支持を呼びかける。
政府系機関や民間の世論調査ではいずれも
プーチン大統領の支持率はナワリヌイ氏の解放後も横ばいで
今のところ政権批判は抑え込まれている。
プーチン大統領を支持しているモスクワ在住の テリャトニコフさん(53)。
ナワリヌイ氏がプーチン大統領の退陣を求める一方
自らの政策は示さないことに共感できず
抗議活動を冷めた目で見ていた。
(テリャトニコフさん)
「ナワリヌイ氏には理念が欠けています。
将来性のあることは語れません。
いまはプーチン大統領でいいです。
事態は極端に悪くなりません。」
テリャトニコフさんは
30年前ソビエトが崩壊後の混乱を鮮明に覚えている世代。
経済や治安が極度に悪化するぐらいなら体制に従う方がましだと考えている。
(テリャトニコフさん)
「ロシア皇帝もソビエトの書記長も死ぬまで続けました。
頻繁に政権が変わった経験はありません。
民主的な政権交代は気質に合わないのです。」
民主主義なロシア人に合わないというのはロシア人の本音か。
政権の宣伝工作
いわゆるプロパガンダがそう思わせている側面が大きい。
プーチン大統領は
“過去の混乱を収拾したのは自分だ
自分がいなくなればロシアは再び混乱する”
というプロパガンダを就任以来21年間続けてきた。
そして7年前の2014年にウクライナのクリミアを併合したことをきっかけに
欧米の経済制裁が始まってからは
欧米を敵視する傾向が強まった。
つまり
外に敵を作り国民に団結を訴えることで
プーチン政権を批判するべきではないという世論を
特に中高年の間で作ることに成功したと言える。
一方 若者にはそのようなプロパガンダが浸透しないのはどうしてか。
実感がわかないからである。
ソビエト崩壊から今年で30年が経ち
当時生まれてもいない若者にとって90年代の混乱はもはや遠い昔の話である。
実感がわかない昔ばなしよりも
リアルタイムで入ってくる動画の方がはるかに説得力がある。
そして興味がわいたらスマートフォンでさっと情報を仕入れ
SNSやチャットで共有するため
政権のプロパガンダが浸透する隙がないというのが現状である。
若者たちの“プーチン離れ”を表す興味深い世論調査が2月末に公表された。
プーチン大統領が2024年以降も続投を望むかを世代ごとに尋ねた。
18~24歳の回答者は57%が“望まない”
31%が“望む”と答えた。
55歳以上の回答者は59%が“望む”
31%が“望まない”と答えた。
若者と中高年で真逆の意見が示されたのである。
全ての世代を合計すると
プーチン大統領の続投を望む人の方がまだ7%ほど多いが
あきらかに政権にとって逆風が吹いている。
政権側が抗議活動を厳しく取り締まる背景には
こうした統制できない若者たちが増えることへの危機感がある。
世代の溝が深まることは避けられない。
プーチン政権はここ数年
インターネットの規制強化を進めてきた。
具体的には
ロシアで活動するインターネット事業者に対して
ユーザーのデータを一定期間保管することを義務付けたり
当局がメッセージや動画の削除を要請できるようにした。
さらに2021年からはフェイスブックなどに対しても
当局が必要と判断すればサービスの遮断をできるようにした。
今のところ大規模な遮断が行われたケースはないが
こうした締め付けの目的がインターネット検閲の強化であることは明らかで
若者たちは反発を強めている。
ロシアの若者はインターネットの自由を
言論の自由や表現の自由と同じ
基本的・普遍的な価値観のひとつと受け止めている。
政権側がナワリヌイ氏を収監し
その主張を社会から排除できたとしても
今の路線を続けていけば若者たちのプーチン離れはますます加速する。
2021年2月25日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」
アメリカ バイデン政権が重視する多様性の象徴ともいえるのが
カマラ・ハリス副大統領である。
その姿は
多くの女性
そして黒人をはじめとしたマイノリティーの人たちに勇気を希望を与えている。
女性・黒人そしてアジア系として初めてアメリカの副大統領に就任したカマラ・ハリス氏。
就任から1か月
その存在はアメリカ社会に変化をもたらしている。
ハリス氏はどのような人物なのか。
カナダ モントリオールで暮らす ケーガンさん。
ハリスの高校時代からの友人である。
(ケーガンさん)
「彼女は当時から意志が強い人でした。」
政治家になる前は検察官としてキャリアを重ねたハリス氏。
ケーガンさんの存在が検察官の道に進むきっかけだったと自身で振り返っている。
(カマラ・ハリス氏 公式Youtubeより)」
(カマラ・ハリス副大統領)
「高校の時
親友が父親から性的虐待を受けていたんです。
検察官を志した大きな理由は
彼女のような人を守りたいという思いでした。」
当時 義理の父親から性的虐待を受けていたと友人のハリス氏に相談したケーガンさん。
ハリス氏はすぐに救いの手を差し伸べたという。
(ケーガンさん)
「彼女に打ち明けたら
すぐに『一緒に暮らそう』と言ってくれました。
残りの高校生活を彼女の家族と暮らすことになりました。」
ケーガンさんはハリス氏に
副大統領としても思いやりを持って
自分のように苦しい立場にある人の味方であってほしいと語っている。
(ケーガンさん)
「当時 彼女が私のためにしてくれたように
すべてのアメリカ人のために闘ってほしいです。」
アメリカ社会で人種差別が根強く残るなか
ハリス氏が副大統領に就任したことによって
自分たちの未来が開けたと期待を膨らませている人たちもいる。
中西部ミシガン州で9歳の娘と暮らす オーティスさん。
黒人社会やその文化について理解を深めてもらいたいと
黒人に関する書籍などを集めた書店を経営するオーティスさん。
そのオーティスさんのもとを
大統領選挙期間中の2020年
ハリス氏が訪ねた。
(娘 エバさん)
「会って話が出来て本当に最高!!」
(オーティスさん)
「娘はハリス氏に自分自身を投影しています。
それが娘に希望を当てているのです。
有色人種の女性に不可能だったことが
出来る可能性があるという希望です。」
オーティスさんはハリス氏が副大統領に就任したことで
自分たち黒人
マイノリティーの未来が大きく開けたと感じている。
(オーティスさん)
「黒人には壊すことが出来ない壁を感じることもありました。
しかしハリス氏の存在で
今は限界などないと感じています。」
長くアメリカ社会を覆ってきたガラスの天井を破ったハリス氏。
女性・黒人・アジア系の先駆者としての歩みを
多くの人たちに希望と勇気を与えている。
(カマラ・ハリス氏)
「私は女性初の副大統領かもしれませんが
最後ではありません。」