12月21日 NHK海外ネットワーク
原油価格の下落を背景に主な資源国の通貨が軒並み売られる展開となっていて
中でもロシアは事態が深刻である。
原油価格はこの半年間で50%近く値下がりしたが
同じ期間にルーブルも売られていてドルに対して約50%も急落している。
ウクライナをめぐる欧米の制裁でただでさえ打撃を受けていたロシア経済は一段と苦境に追い込まれている。
(ロシア プーチン大統領)
「誰にもわからないが最悪の状況は2年続くかもしれない。」
急激に下落した通貨ルーブル。
ルーブルをドルやユーロに帰る動きが加速し
銀行は両替の一時停止に追い込まれた。
国民は生活を守るための自衛策に乗り出している。
商店には連日 長蛇の列。
食料品から家電製品まで多くを輸入に頼っているだけに
物価の高騰を心配する人たちが買いだめをしようと駆け込んでいる。
(訪れた客)
「欲しかったもの
必要なもの
買うなら今のうちだ。」
ルーブルを物に変えておこうという動きは高価な商品にも広がっている。
日本車を扱う販売店には大勢の客が訪れている。
販売価格が据え置かれている車種を中心に売れ行きは好調。
ロシアでは自動車は中古でも高値で売ることができ資産価値が落ちにくいからである。
(自動車販売店の販売部長)
「みんな車に変えて資産を守ろうとしているのです。
今後はどうなるのか全く先は見えません。」
いま特に不安を抱いているのは高齢者たちである。
モスクワ郊外のアパートで独り暮らしをしているアントニナ・カルガシナさん。
生活は月に3万円の年金で賄っている。
何件も店を回ってはマカロニやソバの実など安くて保存のきく食料を買い求めなんとかやりくりしてきた。
「薬を買いたくて薬局に行ったけど値段が高くて我慢したの。」
カルガシナさんは高血圧や関節の持病を抱えている。
薬代に年金の3分の1を当てているがこのままでは必要な薬が買えなくなってしまうと心配している。
「弱者を切り捨てることはしない。」
12月18日の記者会見でプーチン大統領は高齢者を守ることが最優先だと重ねて強調した。
(ロシア プーチン大統領)
「最も重要なのは社会保障だ。
物価に合わせて年金も上げる。
社会保障に特別の関心をはらっていく。」
かつて深刻な金融危機を乗り越えたロシア。
今の生活への不安もいずれは解消されるとカルガシナさんは信じている。
(アントニナ・カルガシナさん)
「あまりにも物価が急激に上がったら薬も買わなくてはならないし大変です。
でもすべては一時的なものでうまくいくようになりますよ。」
1998年の通貨危機を知るロシアの人たちは比較的冷静に受け止めている。
当時ロシアは対外的な債務を返済することが難しくなり国債の償還を繰り延べる事態となった。
世界経済にも大きな影響が出た。
今回状況が異なっているのは
ロシアの外貨準備高が当時の30倍以上と格段に増えているということである。
現時点では対外的な債務を返すだけの資金はある。
しかし必ずしも楽観はできない。
原油価格は底値が見えない状況で当面は安値圏で推移しそうである。
ロシアを含めた資源国や新興国から大量に資金が流出して世界経済の足を引っ張るのではないか
という懸念はぬぐえない。
そしてウクライナ情勢がどういう方向に向かっていくか。
オバマ大統領は
ロシアが緊張緩和に動くのであれば経済制裁を緩める用意がある
という趣旨のことを言ったがロシアに譲歩の兆しはみられない。
原油安の欧米の制裁の二重苦を抱えた状況でプーチン大統領がどこまで強気の姿勢を貫いていくのか
来年も国際情勢を左右する大きな要素になりそうである。