6月22日 おはよう日本
スーパーコンピューター京が並ぶ神戸市の理化学研究所。
三好建正研究員は雲の予測などを専門にしている。
「まだ大きな雲になっていない状態からとらえ
急な豪雨を予測することを目指している。」
最新鋭のレーダーでとらえた雲の中にある雨粒の様子。
雲を平面ではなく立体的にとらえたもので
雨粒の多いことが赤い部分で表される。
こうした画像データによって豪雨の予測が進化するのではないかと考えている。
(理化学研究所 三好建正研究員)
「頭の中で想像してこういうふうになっていると気象学者が思っていたものが本当に見えた。
これは画期的なこと。」
局地的な豪雨をもたらす積乱雲。
上空に向かって発達するため
立体的にとらえる必要がある。
観測を可能にしたレーダーなどは大阪大学が開発した。
(大阪大学大学院 工学研究科 牛尾知雄准教授)
フェーズドアレイ気象レーダー。
128本のアンテナが取り付けられていてより多くの電波を送受信出来る。
一般的に気象予報に使われているレーダーは
雲の観測を平面的に行う。
一方 フェーズドアレイ気象レーダーは
縦の方向にも観測出来て
積乱雲を立体的にとらえることが可能になった。
さらに現在のレーダーでは1回の観測に5分ほどかかるが
フェーズドアレイ気象レーダーでは30秒に短縮された。
このレーダーを使ってとらえようとしているのが“豪雨の卵”。
「非常に赤い領域が示されている。
非常に降雨量の強い領域が高度5キロのところに形成され始めている。」
レーダーがとらえた雲の断面図。
上空5,000メートルのところにある雨粒の塊が赤く示されている。
つまり地上に落ちてくるまでの雨の動きを詳細に観測できるのである。
(大阪大学大学院 工学研究科 牛尾知雄准教授)
「こちらのレーダーは観測の感覚が30秒と短時間なので
豪雨の兆候・豪雨の卵といった予兆現象がいち早くとらえられる。」
理化学研究所の三好さんは
このデータから
スーパーコンピューター京に局地的な豪雨を予測させようとしている。
まず京は
上空にある豪雨の卵のデータから
起こりうる雨のシミュレーションを100通り作る。
その30秒後
送られてくる雨粒の最新のデータと照らし合わせ
最も確率の高いシミュレーションを選ぶ。
さらにここから新たに100通りの雨のシミュレーションを作る。
これを繰り返すことで
難しいとされてきた局地的で短時間に降る豪雨の予測につながると言うのである。
三好さんは今後 シミュレーションの精度を高め
豪雨が降る30分前の予測を目標としている。
(理化学研究所 三好建正さん)
「人の命を救うというところで
一刻も早く正確に予測し
避難までつなげられる技術開発をしたい。」
一方 大量に降った雨は下水の処理能力を超えてしまう。
どうやって対応するのかも被害を防ぐカギになる。
その最前線が雨水を貯める貯留施設。
東京都杉並区と中野区にまたがる地下に造られた。
通常の雨水は下水管を通して排水される。
東京都は下水管で対応しきれない1時間当たり50ミリの雨の場合は
一時的に貯める貯留施設を作って水があふれないようにしている。
しかし施設の能力を超える雨が近年増えている。
東京都は
時間雨量75ミリの雨に対応できる貯留施設を新たに作る計画を立てているが
完成の見通しは約30年後である。
そこで注目しているのが民間の施設。
東京渋谷で進められている再開発の現場。
開発を担当しているのは民間企業を中心とした事業体である。
建設中のビルの地下に雨水の貯留施設がつくられている。
地下5階から地下3階までの深さがあり
1時間当たり50ミリを超える雨が降った時に水をためることにしている。
東京都はこうした貯留施設を作った民間企業に
建物の容積率や建蔽率を緩和するなどして優遇措置をとっている。
こうした民間施設の活用を国も進めようとしている。
国土交通省は民間のビルなどが貯留施設を設けた場合
補助金や優遇措置を受けられるよう法律を改正し
来月 施行する。
現在 横浜駅の再開発計画の中に貯留施設の設置が検討されている。
(国土交通省 下水道企画課 橘有加里課長補佐)
「今できる手立てを法改正で盛り込んだ。
浸水しないことが一番重要だと思うので対策を進めていくことを後押ししていく。」