2月3日 経済フロントライン
スウェーデン ストックホルム。
「現金は持っていません。
現金はなし。
カードだけです。」
「カードやスマホ決済ができない店はあまりないので
支払いに困ることはないです。」
2016年 GDPに対する現金流通量 1,4%。
流通する現金の割合は先進国の中で最も少ないスウェーデン。
街中では“現金お断り”を掲げる店があちこちで見られるようになった。
(パン屋の店員)
「支払いはスウィッシュとカードだけ。
現金は使えません。
安全のためです。
強盗が入っても大丈夫ですし
現金は数えるのが手間なんで。」
スウィッシュ(SWISH)とは銀行が開発した現金を使わない決済システムである。
スマホに電話番号など支払先の情報や金額を入力すると送金ができる。
スウィッシュは個人間のお金のやり取りにも使われている。
買ってきてもらったランチの支払いもスウィッシュで送金。
相手の口座に直ちに入金された。
(エドヴァルド・フリートウッドさん)
「この支払ボタンを押して暗証番号を入れれば1秒以内で彼女の口座に入金されます。
とても便利です。」
スウィッシュは6年前に複数の銀行が共同で開発しサービスを始めた。
その理由は現金を扱うコストを削減するためだった。
(スウェーデンの銀行 SEB キャサリン・ウーベルさん)
「現金の取引には厳重な警備が必要だしリスクにもなります。
輸送にもお金がかかるので
現金を取り扱うとコストがかさみます。」
この銀行では国内120店舗のうち3分の2で入金や引き出しなど現金の扱いをやめた。
現在の主な業務は貯蓄や資産運用の相談である。
銀行が現金を扱わないことには高齢者を中心に不満の声もあるが
銀行側はさらにキャッシュレス化を進めていきたいとしている。
(スウェーデンの銀行 SEB キャサリン・ウーベルさん)
「高齢の方々にも定期的に最新のサービスの説明をしています。
スウィッシュはどこの銀行でも誰に対しても使うことができます。
これは誰にとってもメリットがあると思います。」
キャッシュレス化の広がりはスウェーデンの産業に大きな広がりをもたらしている。
スウェーデンはかつて自動車などの製造業が盛んだった。
しかしリーマンショックのあおりを受け衰退。
そんな中で始まったキャッシュレスの動き。
新たなイノベーションを生み出そうという機運が国全体で高まっている。
その1つがベンチャー企業が開発した長さ1cmほどのチップ。
親指と人差し指の間に埋め込む。
手をかざすだけで認証され
スマホがなくても支払いができる仕組みである。
すでに鉄道の運賃の支払いなどで3千人以上が利用している。
(バイオハックス CEO ヨワン・オスタールンドさん)
「キャッシュレス化が進むいいタイミングだったから
私たちもこの大きな時流に乗ることができたのだと思います。」
合理化に成功した銀行では新サービスの開発に人材や資金を振り向けている。
バーチャルリアリティーで住宅の内覧ができるシステムは銀行員が自ら開発した。
住宅ローンを借りる顧客からは好評だという。
(SEBイノベーションラボ マート・マージックさん)
「銀行にはすばらしい才能の持ち主がいます。
アイデアを試すチャンスを与えれば
より良いサービスを提供できる銀行になります。」
スウェーデン王立工科大学 ニクラス・アービットソン准教授は
キャッシュレス化はスウェーデン経済を成長させる役割を果たしていると指摘する。
(スウェーデン王立工科大学 ニクラス・アービットソン准教授)
「キャッシュレス化でサービスを開発する新たな会社も出てきて
ベンチャー企業が誕生し
経済にポジティブな影響を与えます。
社会にとっても産業にとっても
現金をなくすことは大きな変化なのです。」