ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

天国の罠

2009年03月29日 | 名盤

 
 レコードやCDを借りたまま返しそびれたってこと、ありませんか?
 それが未だに我が家に眠っている場合、そのレコードやCDを見るたびに貸してくれた人のことを思い出してしまいますよね。「なぜ買った覚えのないこれがここにあるのだろう」という場合も往々にしてありますが・・・(汗)
 ともかく、借りたままになっているレコードが以前付き合っていた女性のものだったりすると、しばしその当時を思い出して感慨にふけったりしてしまいます。


 「トモコちゃん」というコがおりました。
 トモちゃんとは20歳前後くらいから3年間ほど付き合ったかな。今までで一番思い入れの強い、最も好きになった女性と言って差し支えないでしょう。


 その頃のぼくは、「HANK」というライヴ・ハウスに足しげく通っていました。同じ頃、地元駅地下にある多目的広場で毎週日曜日にコミュニティ公開放送が行われることになったんですが、そのプロデュースを「ハンク」のスタッフが行うことになったんです。常連のひとりだったぼくもその公開放送の手伝いに毎週参加することになりました。機材の搬入・搬出のほか、時には番組の構成や選曲に意見を出したり。DJは地元各大学の放送研究部に所属するアマチュア・アナウンサーです。その中でS女子大の放送研究部からDJとして来ていたのがトモちゃんだったわけです。


 丸顔で、愛嬌のある目で、ちょっとフックラしていた可愛いトモちゃんを見て、なぜかぼくは「あ、このコと付き合うようになるな」と思ったんです。根拠? いやいや、そんなものはありません。いわゆる直感、ってやつです。
 ではそこから猛烈にアタックしたのでしょうか。いやいやいや、なぜかぼくはヨソヨソしい態度をとり続けたんですよ。照れもあったんでしょうけど、ちょっと人見知りなところがあったぼくは、その頃は(特に女子には)あまり最初からは気さくに話しかけることなんてできなかったんです。


 トモちゃんに出会ってから2、3ヶ月経った頃でしょうか。ある日曜日、いつもの本番が終わると、スタッフの提案で、「みんなでたまにはお茶でもしようか」ということになったんですね。その週の担当がS女子大だったので、当然トモコちゃんも来ていました。そして入った喫茶店でぼくの隣に座ったのがトモちゃんだったんです。
 その時はじめて話らしい話をしたのですが、びっくりしたことに年も誕生日も同じだったんです。もう、改めて「運命」みたいなものを感じましたよ。


 トモちゃんとはその年夏の花火大会に一緒に行く約束をし、それがきっかけで付き合うようになりました(^^)
 メデタシメデタシ (終)   ・・・じゃなくて~
 そのトモちゃんに借りたのが、このチープ・トリックの「天国の罠」だったんです。


          


 チープ・トリックは1970年代後半に現れたロック・バンドです。今や結成以来30年以上のキャリアを誇るベテランです。
 デビューしたての頃は、当時隆盛を誇っていたニュー・ウェイヴ・ブームの一員のように伝わっていたこともありましたが、いわゆるパンクなどとは一線を画したロック・バンドです。クイーンなどと同じく、日本から火がついたバンドのひとつです。ハード・ロックにカテゴライズされることもままあるようですが、とても聴きやすいメロディ・ラインを持った、パワー・ポップ・バンドと見ることもできると思います。とにかく、メロディー・センスが良いんですよ。
 そのチープ・トリックの初期の代表作が「天国の罠」です。


 このアルバムからは「サレンダー」、「カリフォルニア・マン」のふたつのヒットが飛び出しました。どちらもノリノリのハードなロック・ナンバーです。そのほか、「サヨナラ・グッバイ」は彼らのライヴのエンディングを飾る曲としてファンの間ではお馴染みです。「これぞハード・ロック」なナンバーで、ロビンの野性味あふれるボーカルが魅力です。「ハラキリ」「カミカゼ」などの日本語が飛び出してくるユニークな曲としても知られていますね。
 ロビンのヴォーカルは、時には甘く、時には男っぽく、時にはワイルドに、といろんな面を持っています。リックのギターはロックンロールを基盤としているんでしょうか、シンプルで分かりやすいですね。重く安定感のあるトムとバーニーのリズム陣の重要性も特筆されていいと思います。とくにベースを弾くぼくには、トムが使っている「12弦ベース」のユニークさに目を見張らされた覚えがあります。


          


 この「天国の罠」が気に入ったことと、トモちゃんとは深く長い付き合いになったことで、ずっとレコードを手元においておいたわけです。
 でも時が経って、ふたりが別々の道を進む日がやってきます。レコードだけはそれっきりぼくの手元に未だに残っているんです。
 そして、チープ・トリックの曲(特に「天国の罠」に入っている曲)を聴くと、「トモちゃんどうしてるかな~」と思ってしまうのです(^^;)


 風の便りでは、トモちゃんは夢だった学校の先生になり、幸せな結婚生活を送っている、ということです。



◆天国の罠/Heaven Tonight
  ■歌・演奏
    チープ・トリック/Cheap Trick
  ■リリース
    1978年4月
  ■プロデュース
    トム・ワーマン/Tom Werman
  ■録音メンバー
   [Cheap Trick]
    ロビン・ザンダー/Robin Zander (lead-vocals, rhythm-guitar)
    リック・ニールセン/Rick Nielsen (lead-guitar, backing-vocals)
    トム・ピーターソン/Tom Petersson (bass, 12st-bass, backing-vocals)
    バン・E・カルロス/Bun E. Carlos(drums)
   [guest]
    ジェイ・ワインディング/Jai Winding (keyboards)
  ■収録曲
   [side-A]
    ① サレンダー/Surrender (R. Nielsen)  ☆全米62位
    ② オン・トップ・オブ・ザ・ワールド/On Top of the World (R. Nielsen)
    ③ カリフォルニア・マン/California Man (Roy Wood)  ☆
    ④ ハイ・ローラー/ (R. Nielsen, T. Petersson, R. Zander)
    ⑤ サヨナラ・グッバイ/Auf Wiedersehen (R. Nielsen, T. Petersson)
   [side-B]
    ⑥ テイキン・ミー・バック/Takin' Me Back (R. Nielsen)
    ⑦ オン・ザ・レイディオ/On the Radio (R. Nielsen)
    ⑧ ヘヴン・トゥナイト/Heaven Tonight (R. Nielsen, T. Petersson)
    ⑨ スティッフ・コンペティション/Stiff Competition (R. Nielsen)
    ⑩ ハウ・アー・ユー?/How Are You? (R. Nielsen, T. Petersson)
    ⑪ オー・クレア/Oh Claire (R. Nielsen, T. Petersson, R. Zander, Bun E. Carlos)
    ☆=シングル・カット
  ■チャート最高位
    1978年週間チャート  アメリカ(ビルボード)48位、日本(オリコン)11位




 

コメント (18)
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