【Live Information】
今でこそ「ヘヴィ・メタル」というと、ロック・ミュージックの中の独立したひとつのカテゴリーとして認知された感がありますが、もともとはハード・ロックを細分化した中のいちサブ・ジャンルに過ぎませんでした。
ぼくが中学~高校生だった1970年代中頃に、「より重厚感の増したハード・ロック」、みたいな意味合いで使われ始めた記憶があります。
当時のバンドで言えば、ブルー・オイスター・カルトとか、ブラックサバス、それにヘヴィ・メタル・キッズなんていうバンドもありました。
スウィートは、1968年にデビューした、イギリスのロック・バンドです。
1971年に、スージー・クアトロなどに曲を提供したことで知られるヒット・メーカーのマイク・チャップマンとニッキー・チンのコンビが作詞作曲した「ファニー・ファニー」がヒット、イギリスにおける人気バンドの仲間入りをしました。
当時の曲を聴いてみると、ポップで親しみやすいものが多く、ロー・ティーン向けのアイドル・バンドのような存在でもあったようです。
その後も「リトル・ウィリー」「ウィグ・ワム・バム」「ブロック・バスター」「ヘル・レイザー」「ボールルーム・ブリッツ」「ティーンエイジ・ラムペイジ」「初恋の16才」など、イギリスのチャートでベスト10に入るヒット曲を連発していますが、次第にバンドと、チャップマン&チンのソング・ライティング・チームの間には溝が広がっていったようです。
バンドからしてみると、自分たちのやりたいスタイル、あるいは音楽で活動してゆきたいと思うようになったのでしょう。技術も音楽性もない、操られるだけのダミーのようなバンドなら、言われたまま活動して人気が出ればそれにこしたことはないのでしょうが、それなりの実力のあるスウィートのメンバーは、チャップマン&チンから離れて自分たちの音楽を創りたいと思ったようです。
それでも、チャップマン&チン時代の後半には、すでにハード・ロック色が強まっていました。
当時のスウィートのメンバーは、
ブライアン・コノリー(vocal)
アンディ・スコット(guitar)
スティーヴ・プリースト(bass)
ミック・タッカー(drums) の4人です。
バンドが主導権を握った1974年には、音楽性が完全にロック・ミュージック志向にシフトされた感がありますが、音楽的には驚くような急激な変化があったわけではないので、爽快なロック・サウンドとアイドルぽいビジュアルで、相変わらずティーン・エイジャーの間では高い人気を得ていました。
そして当時のイギリスでは、スレイドなどと「ヘヴィ・メタル・ロック」の旗手と見なされるようになったわけです。
そのほか、日本では当時人気急上昇中だったクイーンのライバルとされてもいましたね。
この頃の音楽雑誌(「ミュージック・ライフ」とか「ガッツ」とか)には、かなりの頻度でスウィートをはじめとする若手ロック・バンドの記事が掲載されていたような気がします。
「フォックス・オン・ザ・ラン」が発表されたのは1975年。これは母国イギリスで2位、米ビルボードで5位になったのをはじめ、オーストラリア、デンマーク、ドイツ、南アフリカで1位、カナダ、アイルランド、オランダ、ノルウェーで2位となり、ミリオン・セラーを記録する大ヒットになりました。
■フォックス・オン・ザ・ラン/Fox on the Run
■歌・演奏
スウィート/Sweet
■シングル・リリース
1975年3月
■収録アルバム
荒廃の街角/Desolation Boulevard (1974年)
■作詞・作曲
ブライアン・コノリー、アンディ・スコット、スティーヴ・プリースト & ミック・タッカー/Brian Connolly, Andy Scott, Steve Priest & Mick Tucker
■プロデュース
スウィート/Sweet
■録音メンバー
ブライアン・コノリー/Brian Connolly (lead-vocal)
アンディ・スコット/Andy Scott (guitar)
スティーヴ・プリースト/Steve Priest (bass)
ミック・タッカー/Mick Tucker (drums)
■チャート最高位
アメリカ(ビルボード)5位、イギリス2位
♪歌 詞
♪You Tube
イントロで使われているシンセサイザーが新境地を開拓しようとしたバンドの心意気を物語っているようです。
ミディアム・テンポの8ビートですが、「ヘヴィ・メタル」という言葉がぴったりな、重厚なグルーブはまさにハード・ロックの醍醐味ですね。
シンプルなコード進行ですが、メロディは分かりやすく、とてもノリやすいです。
当時のぼくらにとって、シングル・レコード1枚に500円遣うのはかなり度胸が必要でしたが、逆に限られた小遣いで買うレコードはどうしても欲しいものばかりでした。
ロック好きの友だちはけっこう「フォックス・オン・ザ・ラン」のレコードを持っていて、それは当時のスウィートの躍進ぶりを示してもいたということですね。
「フォックス・オン・ザ・ラン」でスウィートの名はぼくらの間に一気に広まりましたが、勢いに乗って引き続きリリースされたのが「アクション」です。
■アクション/Action
■歌・演奏
スウィート/Sweet
■シングル・リリース
イギリス1975年7月、アメリカ1976年
■収録アルバム
ライヴ・アンド・ベスト/Strung Up (1975年) 甘い誘惑/Give Us a Wink (1976年)
■作詞・作曲
ブライアン・コノリー、アンディ・スコット、スティーヴ・プリースト & ミック・タッカー/Brian Connolly, Andy Scott, Steve Priest & Mick Tucker
■プロデュース
スウィート/Sweet
■録音メンバー
ブライアン・コノリー/Brian Connolly (lead-vocal)
アンディ・スコット/Andy Scott (guitar)
スティーヴ・プリースト/Steve Priest (bass)
ミック・タッカー/Mick Tucker (drums)
■チャート最高位
アメリカ(ビルボード)20位、イギリス15位
♪歌 詞
♪You Tube
チャート的には、「フォックス~」に届きませんでしたが、ヨーロッパ各国では大ヒット(ドイツ2位、スウェーデン2位、ノルウェー2位、オーストリア3位、スイス4位、オランダ5位 etc)しています。
だからというわけではありませんが、ぼくにとっては「アクション」も「フォックス~」になんら遜色のないロックの名曲なのです。
劇的で音楽性の幅広さを感じさせてくれる曲作り、重厚なコーラス、野性味のあるボーカル、多彩なギターのフレーズ、スピード感あふれるテンポをキープする安定したベース、適度にヘヴィで小気味のよいドラム、どれをとっても言うことなし、です。
1994年にはデフ・レパードがカヴァーし、全英チャートの14位に送り込むヒットを記録しています。
1976年に発表したアルバム「甘い誘惑(Give Us A Wink)」は、メンバー4人が共作したオリジナル曲が大半を占めています。
大きな飛躍を期待されたバンドでしたが、これ以降不思議なことに伸び悩みが続きます。
スウィートは1981年に解散、のち再結成して1985年~1991年に活動しましたが、ブライアン・コノリーが1997年に、ミック・タッカーが2002年に亡くなっています。
現在はアンディ・スコットが「Andy Scott's Sweet」、スティーヴ・プリーストが「The Sweet」として活動を続けています。
全盛期は短く、大成したとは言い難いスウィートですが、ぼくにとっては忘れることのないロック・バンドです。