ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

第100回全国高校野球選手権記念大会

2018年09月09日 | 随想録

【Live Information】


自分が野球に興味を覚えたのは、幼稚園の頃だと思います。
小学校に上がった年から阪神タイガースのファンになり、それ以来タテジマ一筋です。
高校野球で、一番古い記憶は、昭和44年の、あの松山商高-三沢高戦です。夏の大会決勝戦で延長18回を戦い、0対0で引き分け、再試合は松山商が制した、球史に残る熱戦です。その再試合、1回表に松山商が2点を先取しましたが、テレビに映ったそのスコアボードを鮮明に覚えています。


夏の甲子園が第70回、第80回と回を重ねるごとに、「そうか、あと〇〇年後は記念の100回大会なのか。それをこの目で見られる可能性があるんだな~」と思っていたこともありました。「その頃の自分はどういうふうになっているんだろう」とも。
そして迎えた平成30年(2018年)、第100回全国高校野球選手権記念大会。
自分は人生の後半に差し掛かり、子どもも大きくなり、ずっと音楽を続け、いまでも野球が好きなままです。
「平成」という年号の最後の夏の甲子園、いろんなドラマが生まれました。
そのドラマの、自分なりの15撰を書き留めておこうと思います。


                                             


①大優勝旗新調

 100回大会を記念して深紅の大優勝旗が新調されました。新しい旗は三代目で、京都市の平岡旗製造が制作しました。制作費1200万円、制作に要した時間は1年2ヵ月。先代と同じく西陣織のつづれ織りで織られました。縦120cm、横150cm、重さ4.5kg(ポール部分を含めると約10kg)。ハトの絵柄、「優勝」「VICTORIBUS PALMAE(ラテン語で『勝者に栄光あれ』の意)」の文字が金色で織り込まれています。2018年6月27日、甲子園球場でお披露目されました。ちなみに二代目は1958年の第40回大会から60年にわたって使われました。



②甲子園レジェンド始球式
  写真左…松井秀喜 写真右…井上明、太田幸司(左端井上、右から2人目が太田)
 
 この大会では、開幕日から決勝戦まで、夏の甲子園を沸かせたかつての球児たちが日替わりで「甲子園レジェンド始球式」を務めました。
 開幕日の8月5日、第1試合の始球式には、日米通算2643安打・507本塁打を記録した球史に残るスラッガー松井秀喜が登場。高校時代から強打を恐れられていた松井は、第74回大会(1992年)2回戦の明徳義塾戦で5打席すべて敬遠され、世論を巻き込む大論争が起きたのはあまりにも有名です。
 その開幕試合には、松井の出身校星稜高が登場するという偶然のおまけ付きでした。(試合は星稜が9対4で藤蔭高を破る)
 8月21日の決勝戦では、1969年の第51回大会で歴史に残る延長18回引き分け再試合の死闘を繰り広げた三沢高(青森)の太田幸司氏と松山商高(愛媛)の井上明氏が始球式を行いました。
 大会各日の始球式に登場した元球児は以下のとおり。
 8/5 松井秀喜(星稜)、8/6 石井毅(現姓名・木村竹志、箕島)、8/7 定岡正二(鹿児島実)、8/8 牛島和彦(浪商)、8/9 平松政次(岡山東商)8/10 谷繁元信(江の川)、8/11 水野雄仁(池田)、8/12 本間篤史(駒大苫小牧)、8/13 坂本佳一(東邦)、8/14 中西清起(高知商)、8/15 安仁屋宗八(沖縄)、8/16 板東英二(徳島商)、8/17 金村義明(報徳学園)、8/18 中西太(高松一)、8/20 桑田真澄(第1試合 PL学園)、佐々木主浩(第2試合 東北)、8/21太田幸司(三沢)・井上明(松山商) (校名は甲子園出場時のもの)



③史上最多の56校出場

 100回大会を記念して、出場校は史上最多の56となりました。1県2代表だったのは、北海道、東京、千葉、神奈川、埼玉、愛知、大阪、兵庫、福岡の9都道府県。恒例の甲子園練習は日程の都合でとりやめとなり、各校15分ずつの甲子園見学が行われました。



④白山高校初出場

 記念すべき100回大会の三重県代表となったのは白山高校。夏の大会100回目にして春夏を通じて初めて甲子園切符を手にしました。
 白山は、夏の三重県大会で2007年から10年連続初戦敗退。川本牧子部長と東拓司監督が就任した2013年の部員はわずか4名で、東監督が就任後に「甲子園へ行くぞ」と話した時には部員から野次とブーイングが飛んだといいます。
 2017年夏、秋、2018年春の各県大会ははいずれも3回戦に進出しましたが、夏はノーシード。しかしそこから見事代表の座を掴みました。
 8月11日の1回戦第4試合で愛工大名電高と対戦、試合は0対10で完敗しましたが、「ヤンキー高校」とも言われる白山高の応援に人口1万1千の白山町から2千人が駆け付けました。白山高の活躍は「リアル・ルーキーズ」とも言われ、大きな話題となりました。



⑤大会2日目(8月6日) 1回戦 高知商(高知)14-12山梨学院(山梨) 
  形勢6転試合


  山 梨100 081 200|12
  高 知012 404 30X|14

 先取点を「1転」と数えると、6度形勢が逆転したスリリングな試合でした。両軍合計4本塁打、30安打が飛びかう乱打戦。山梨学院高の4番中尾が5回に放った満塁本塁打は大会通算1600号本塁打。高知商は創部100周年の今年、100回大会に出場し、12年ぶりに勝利するという、記念すべき年になりました。形勢6転試合は、夏の甲子園史上2度目でした。



⑥大会2日目(8月6日) 1回戦 佐久長聖(長野)5-4旭川大(北北海道) 
  史上初のタイブレーク適用


  佐 久200 000 020 000 01|5
  旭 川012 000 001 000 00|4

 試合は4-4で延長戦へもつれ込み、その後は12回終了まで両軍無得点。そのため13回から史上初のタイブレークが適用されました。
 タイブレークとは、延長12回までに決着がつかない場合、13回から無死一、二塁の状態で攻撃を始める制度です。
 14回表、佐久は無死満塁から二ゴロで1点を勝ち越し、そのまま逃げ切りました。



⑦大会5日目(8月9日 1回戦) 創志学園(岡山)7-0創成館(長崎) 
  西、毎回の16奪三振で完封


  創  志000 400 300|7
  創成館000 000 000|0

 創志学園の2年生エース西は、この試合最速149kmの速球とスライダーを武器に、選抜ベスト8の創成館を被安打4、無四球に抑え、三塁を踏ませない快投で完封しました。奪った三振は6連続を含む16個で、併せて大会91度目の毎回奪三振を達成しました。帽子を飛ばしながらの力投ぶり、闘志むき出しのガッツポーズは話題になりました。



⑧大会7日目(8月11日 1回戦) 龍谷大平安(京都)3-2鳥取城北(鳥取) 
  龍谷大平安、100回大会で春夏通算100勝を達成


  鳥 取000 000 020|2
  平 安100 100 001|3

 2-2で迎えた9回裏、2死から平安の1番水谷が四球で出塁し、立て続けに二盗・三盗を決めた後、次打者安井が左翼線にサヨナラ打を放ちました。試合後、感涙をぬぐう原田英彦監督の姿が印象的でした。春夏通算100勝は中京大中京に次いで史上2校目。平安は春40回夏34回の甲子園出場で100勝に到達しました。



⑨大会8日目(8月12日 2回戦) 済美(愛媛)13-11星稜(石川) 
  矢野が春夏を通じ史上初の逆転満塁サヨナラ本塁打


  星 稜501 010 002 000 2|11 
  済 美001 000 080 000 4|13

 済美は1-7の劣勢だった8回裏に一挙8点を挙げて試合をひっくり返しました。史上2度目のタイブレークにもつれ込んだ13回表、星稜は2点を入れて勝ち越しましたが、その裏済美は無死満塁から1番矢野が右翼ポールを直撃する劇的な逆転満塁サヨナラ本塁打を放ちました。矢野の本塁打は高校通算2本目でした。サヨナラ満塁本塁打は夏の大会史上2本目。



⑩大会14日目(8月18日 準々決勝) 金足農(秋田)3-2近江(滋賀) 
  金足農高、9回裏に逆転サヨナラ2ランスクイズ


  近 江000 101 000|2
  金 足000 010 002|3

 金足農は、1点ビハインドの9回裏無死満塁から9番斎藤がスクイズを決めると、三塁走者高橋に続き一気に二塁走者菊地彪も生還。劇的なサヨナラ勝ちを収めました。金足農高のベスト4入りは初出場だった1984年の第66回大会以来、34年ぶり2度目。



⑪大会15日目(8月18日 準決勝) 金足農(秋田)2-1日大三(西東京) 
  金足農高旋風やまず。秋田県勢、103年ぶり2度目の決勝進出


  金足農高の快進撃を伝える地元紙。
 

  写真左…準々決勝の近江戦、秋田市中心部のショッピングモールでは230インチの大画面に600人以上が釘付け。初戦時は50人ほどだったという。 
  写真右…秋田駅に設置されたボード。金足農高へのメッセージでいっぱい。
 
 金  足100 010 000|2
 日大三000 000 010|1

 100回目の夏の大会で金足農高が決勝進出を決めましたが、秋田県勢が決勝へ進むのは、なんと1915年の第1回大会の秋田中学以来実に103年ぶり2度目のことです。これもまたひとつの奇跡ではないでしょうか。
 


⑫大阪桐蔭、歴代最多の夏通算48本塁打。決勝で2本追加、通算50本塁打とする。
  大阪桐蔭打線の中核、根尾(左)と藤原(右)

 大阪桐蔭高は、準々決勝で浦和学院高戦を11-2で破りましたが、この試合で4本塁打を記録して夏の大会通算本塁打を歴代最多の48としました。決勝でも2本塁打を放ち、記録を通算50本に伸ばしました。
 この大会、大阪桐蔭高は藤原と根尾のふたりの強打者を擁していましたが、ふたりとも3本塁打を放ったほか、石川と宮崎が1本塁打ずつ記録しています。
 ☆藤原 7試合 26打数 12安打 3本塁打 11打点 打率.462
 ☆根尾 7試合 21打数  9安打 3本塁打  5打点 打率.429
 なお、従来の記録はPL学園高の45本塁打でした。



⑬金足農吉田、6試合で62奪三振 侍ポーズも話題に

 金足農高のエース吉田は、最速150kmの速球とスライダーを武器に、秋田県予選から甲子園大会準決勝までの10試合すべてを完投しましたが、その疲労からか、決勝では5回を投げたあと降板しました。この夏の吉田は、予選636球、甲子園881球、計1517球を投げ抜き、高校野球ファンを虜にしました。
 中堅手大友との必勝ルーティンで、リラックスするために行っている「侍ポーズ」も話題になりました。
 ☆秋田県予選の記録 5登板 5完投 3完封 5勝 0敗 43回 26被安打 57奪三振 16与四死球 7失点 5自責点 防御率1.05
 ☆甲子園大会の記録 6登板 5完投 0完封 5勝 1敗 50回 55被安打 62奪三振 14与四死球 23失点 21自責点 防御率3.78(準決勝までの防御率2.00)



⑭大会16日目(8月21日 決勝) 
  大阪桐蔭、史上初の2度目の春夏連覇

 
  金 足001 000 100|2
  桐 蔭300 360 10X|13

 大阪桐蔭は好投手吉田を打ち崩して序盤で大差をつけました。予選からひとりで投げ抜いてきた金足農の吉田は5回を投げ終えてついに力尽き、マウンドを打川に譲りました。
 大阪桐蔭は、2012年に次いで史上初の2度目の春夏連覇を達成。今春には2017年に引き続いて2年連続で選抜に優勝しています。
 甲子園の春夏連覇は、作新学院(栃木, 1962)、中京商(愛知, 1966)、箕島(和歌山, 1979)、PL学園(大阪, 1987)、横浜(神奈川, 1998)、興南(沖縄, 2010)、大阪桐蔭(大阪, 2012)に次ぎ史上8度目。



⑮史上初の観客100万人突破

 大会16日間の総入場者数は史上初めて100万人を超え、101万5千人を記録しました。皇太子ご夫妻が出席し、松井秀喜氏が始球式を務めた開幕日に6万4千人が入場したほか、近畿勢が4試合中3試合に登場した第7日(8月11日)には8万人の入場を記録。
 これまでの記録は72回大会(1990)の92万9千人でした。



番外編 決勝戦後の甲子園の空に虹

 決勝戦終了後、甲子園球場の空に虹がかかりました。同じ頃、決勝で敗れた金足農高の地元・秋田市でも虹が見えました。
 この虹は、もしかすると次の100年への架け橋なのかもしれません。多くの名場面を生んだ今大会の終わりを告げているかのようなミラクルでした。
 


 100回目の夏の大会、「史上初」の出来事や名場面がいつにも増して多かったように思います。
 200回大会はこの目で見ることはできませんが、高校野球はこのまま健全に発展して欲しいと思います。
 球児の皆さんには感謝、感謝です!





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コメント (2)
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