小町の大悟の境地を一句で
令和3年6月16日(水)
貴さや
雪降ぬ日も
蓑と笠
尊いことだ。
雪の降らぬ日にも、蓑と笠を
身に着けた小町の画像は、
一つの悟境を示したいる、
の意。
元禄三年以前作。
小町画賛『奉納集』は、
右手に杖、左手に笠の小野小町を描き、
「此賛三井の寺院ニアリ」と記す。
真蹟懐紙に、
「あなたふと あなたふと
笠もたふと 蓑もたふを」
の前書きがあり、
三井寺の定光阿闍梨の求めに応じた
旨が記される。
謡曲「卒塔婆小町」に
「破れ蓑、破れ笠・・・、今は路頭に
さそらひ、往来の人は駒を乞ふ」
とある。
晩年の小町が描かれていたに
相違なく、一切を放下した境涯を尊し
とする芭蕉の目に、それは大悟の姿にも
感じられたわけである。
◎ 芭蕉は、一切を放下し、
蓑と笠を身にまとった小町の心を
短い一句に掬い取り、
何気ないように見せて、
能から真言宗の深部への信仰まで
詠み込んでいる。
と、師匠は語る。