不如帰は冥途の鳥?
令和3年6月4日(金)
今朝から小雨が降り注ぐ。
時折突風がきしんだ音を響かせる。
さあ、芭蕉に、死の影がはっきり
出ている句だ。
杜鵑
鳴く音や古き
硯ばこ
前書きは、
「不卜(ふぼく)一周忌琴(きん)風(ぷう)興行」
故人愛用の古い硯箱を前に、
杜鵑の鳴く音を聞くにつけ、
懐かしさでいっぱいになる、
の意。
元禄五年(1692)の作。
冥途の鳥ともいわれ、和歌ではその音が、
昔を偲ばせると詠まれる。
時鳥のイメージを活用したもの。
「杜鵑」の固い表記が、追悼興行の場に
相応しく、「古き」が上下に掛かる語法も
技巧臭を感じさせない。
◎ 古くから友人が遺品として、
残した硯箱を懐かしんで眺めている。
すると、亡き友の姿を思い出させる
ように、ほととぎすが血を吐く声で
鳴きながら去って行ったか。
そのため、一層故人のことが思い出され、
古い硯箱を見つめて故人の摺った
墨のあとを眺めている。