☆・・・感服つかまつった^^
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あんまり乗り気じゃなかったのだが、姪が「これが観たい」と言うので、いつものMOVIX昭島に向かった。
ハリウッドが、アメコミヒーローを昨今の特殊撮影の進歩によって重厚に再生させたように、邦画も「怪人二十面相」を復活させようとしたのが透けて見えた。
これまでも、ティム・バートン版の『バットマン』がヒットした頃、邦画でも懐かしのヒーロー物が新たに撮られたが、『8マン・すべての寂しい夜のために』を筆頭に、質的にも興行的にも「すべての寂しい夜のために」てな結果となっていた^^;
今回の『K-20』も、そういった類だと思えた。
そもそも、現代の娯楽のレールに「怪人二十面相」がうまく乗れるとは思えなかった。
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・・・す、素晴らしい大娯楽作じゃあないですか^^
序盤の、パラレルワールド「帝都」のビジュアルに先ず圧倒されつつ、感心した。
そこには、ちゃちな一点豪華主義的な美術はなかった。
「帝都」と言う大舞台を、原始的なものではあるが都市計画さえも感じさせられるほどに構築していた。
あまり例えたくないが、ゴッサムシティ的に、架空の都市を作り上げていた。
そして、プロローグに現われる怪人二十面相のユニフォームだが、これまた、あまり例えたくないが、最近のバットマン的な重厚さがある。
それで圧倒させられていたら、プロローグが終わり、お洒落なタイトルバックが流れる。
そこからは一気呵成、二時間超の作品だが、全く飽きることなく、エンディングタイトルに至る。
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観終えて思ったのが、「ああ、この監督は、『ルパン三世・カリオストロの城』(だけじゃなく、宮崎駿アクション)のスピリッツを現在に甦らせようと思ったのだな」だ。
摩天楼上下移動のワイヤー・・・、お姫様のあり方・・・、長屋の仲間・・・、空間の使い方・・・、etc…。
これは、この作品を見た多くの方が思うことだと思うが、どうあっても、それを「パクり」等とは言えず、演出者が自分のものにしている点があり、それが優れている。
井上ひさしは、『天空の城ラピュタ』の前半のクライマックスを「完璧」と言っていたが、その「完璧」を、この作品では、全編のクライマックスに持ってきている。
・・・そう、一人乗りヘリコプターでの急浮上シーンである。
この一点だけ見ても、作り手が、宮崎駿作品の欠点を見つめ、自作の完成度を高め様としたことが分かる。
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主人公の「泥棒修行」の<一直線疾走>のシーンには、これ、映画本来の面白さを堪能し、胸を躍らされた。
物語最大のお宝としての、ニコラ・テスラの遺物に至る、推理とギミック(絵画→積み木細工→派手な出現シーン)も良かった。
ニコラ・テスラを題材にしたのもいいね。・・・テルミン
現われたマシーンを起動させるための鍵のデザインまでも行き届いている。
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主演の金城武だが、セリフ回しに、たまに「大根」が感じられるけど、その演技と美男ぶりで、物語を押し切る。
・・・『レッド・クリフ』に続いての鳩フェチに笑った。
ヒロインの松たか子だが、私はこの方、130Rの蔵野を思い出してあまり好きな女優ではないのだが、この作品では撮り方を工夫して充分に可愛い。
一人乗りヘリコプターでの活躍もさることながら、お嬢様なりのド下手な<お色気男引き止め>シーンが良かった。
明智小五郎役の仲村トオルだが、この人、歳とともに若返っていくなあ。
小林少年以上に、線が細い・・・。
國村隼も、主人公の相棒として物語に説得力を与えてくれるが、最近の娯楽作は、この方に頼りきりではないかい?
その奥さんの高島礼子だが、お美しい^^
シスターコスプレまで見られて、嬉しかった。
・・・役者達が、しっかりとした人間ドラマを演じており、この作品の娯楽性を裏打ちさせている・・・。
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私は予告編を見て、怪人二十面相の正体が、鹿賀丈史だと見え見えだと思った。
だって、怪人二十面相のお面が、鹿賀丈史の顔なんだもん^^;
それで見る前は満足していたら、ちゃんとどんでん返しがあるので私は嬉しかった。
展開的にも、ちゃんと、こちらの感情に直結するような二転三転の起伏が用意されており、私は、
「ああ、これは世界にも通じる娯楽作だ」
と、<怪人二十面相>に対しての日本人の特別なノスタルジーを除いて、という限定付きで思うのだった。
昨年の邦画で評判が良かった『おくりびと』や『ハッピー・フライト』のような<カタログ映画>とは、根本的に「こころざし」が異なるのだった・・・。
(2009/01/11)