☆よく出来た作品であった。
時代劇の大作として、『BALLAD/名もなき恋のうた』を子供向きだと感じた人は、こちらも見れば、不満が解消されよう。
また、私があれ程感心した『BALLAD』での小国のお城のセットが、こちらの『火天の城』の安土桃山城セットでは更にパワーアップされている。
どちらがセット的に優れているかと言う問題ではなく、城のスケールの違いが段違いで分かる。
繰り返すが、映画作品としての格の違いではなく、登場人物である小国の殿と織田信長の違いである。
どちらも、その作品の設定上においては見事なのである。
そして、この二作は、日本におけるVFX技術が、もう、どのような作品でも遜色なく作り得ることが証明された結果でもある。
◇
安土桃山城はスケールが大きい城であった。
しかし、この作品には、もっとスケールの大きいものがあった。
主人公の娘役の福田沙紀、である。
なんか、デカイぞ!^^;
この子には悪いが、物語の前半、私は作品の質に完璧な思いを感じ続けていたので、この子の存在感が物語の大きなマイナスポイントに感じた。
色んな意味で濃すぎるのである。
いい女になっているのに、無理矢理「少女」っぽく見せようとして、丈の短い着物で登場させられているが、昔のエロ本のモデルが、三十路過ぎているのにセーラー服を着させられているような居心地の悪さがあった。
でも、その福田沙紀の「M1号」っぽい口元が、父親である安土桃山城の築城の責任者・又右衛門役の西田敏行に似ていなくもないので、無理矢理に親子だと思うことにした。
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◇
福田沙紀問題さえクリアーすれば、物語はかなりの緊張感で進んで行く。
これは、宮大工・岡部又右衛門と、築城依頼主・織田信長の勝負の物語である。
下手に文芸大作風にしないで、勝負の構造をスタローン的に直に示してくれたのはエンターテイメント作品として懸命だ。
その勝負の予選として、名立たる番匠(建築家)たちと、指図(設計図)プレゼンテーション対決をさせられるのも、物語の序盤を大いに締める。
その設計図、建設予定デザイン図、立体模型と続く多角的なプレゼン方式には息を巻いた。
面白い^^
◇
岡部又右衛門チームのメンバーも個性的で魅力的だった。
私は、この作品の緊張感の中での戦術性を、潜水艦物の映画と重ね合わせて見ていたのだが、・・・と考えると若頭役の寺島進は副キャプテン役で、いわゆるおいしい役どころを演じていたと思う。
石工のリーダー役の夏八木勲も、眼帯がキワモノ臭いが、あまりある演技で良かった。
圧倒的なプレッシャーは、定説よりもやや人間臭い魔王・信長から受け続けるのだが、
その他にも、檜の大黒柱を得るために、又右衛門は、織田の敵対国である武田の領地に向かわなくてはならなかったりして、展開は矢継ぎ早で飽きさせない。
武田領の木曾義昌の配下に、森の民の首領・甚兵衛を緒形直人が演じていてなかなか良かったのだが、又右衛門の甚兵衛との絡みなども、長大な物語の中でダイジェスト感を与えてくるようなことはなく、じっくりと見せてくれた。
木曾義昌を、笹野高史がいつものとぼけた味で演じるのだが、この演技もやや安っぽくはあるものの、作り手は即座に、画面の陰影を濃くし、格調高く見せてくれる。
又右衛門の奥さんを演じる大竹しのぶもうまい。
苦境の又右衛門との問答の場において、私は、遠い記憶の彼方での『男女七人夏(秋か?)物語』での大竹しのぶの、有名な正面カットでの泣きの演技を思い出すのだった。
◇
で、概ね満足できる作品だったのだが、不満もある。
それは、あの信長暗殺のくだりだ。
その安易なアクション導入に、私はしらけた。
あれで私の鑑賞テンションはかなり下がった。
美しい水野美紀の使い方も宜しくない。
私は、村娘役の水野嬢は、信長に見初められて、又右衛門チームの一人(山本太郎)との間に悲恋を形成するのかと思っていた・・・。
それと、西田敏行の演技だが、いかがだろうか?
いや、うまいよ。
でも、この人、いつも同じ演技だ。
そういった目で見直すと、福田沙紀も、大竹しのぶも、椎名桔平も、寺島進も、
山本太郎も、熊谷真実も、西岡徳馬も、渡辺いっけいも、河本準一も、遠藤章造も、石橋蓮司も、笹野高史も、夏八木勲も、いつもの彼らの芸風と同じだ^^;
それってどうなのだろうか?
緒形直人だけは、ちょっと新鮮な個性を発揮していたが・・・。
◇
終幕のさりげなさは、非常に良かった。
作り手は、丁寧に語るべきところと、蛇足の無駄を良く知っているなあと感心した。
(2009/09/15)
時代劇の大作として、『BALLAD/名もなき恋のうた』を子供向きだと感じた人は、こちらも見れば、不満が解消されよう。
また、私があれ程感心した『BALLAD』での小国のお城のセットが、こちらの『火天の城』の安土桃山城セットでは更にパワーアップされている。
どちらがセット的に優れているかと言う問題ではなく、城のスケールの違いが段違いで分かる。
繰り返すが、映画作品としての格の違いではなく、登場人物である小国の殿と織田信長の違いである。
どちらも、その作品の設定上においては見事なのである。
そして、この二作は、日本におけるVFX技術が、もう、どのような作品でも遜色なく作り得ることが証明された結果でもある。
◇
安土桃山城はスケールが大きい城であった。
しかし、この作品には、もっとスケールの大きいものがあった。
主人公の娘役の福田沙紀、である。
なんか、デカイぞ!^^;
この子には悪いが、物語の前半、私は作品の質に完璧な思いを感じ続けていたので、この子の存在感が物語の大きなマイナスポイントに感じた。
色んな意味で濃すぎるのである。
いい女になっているのに、無理矢理「少女」っぽく見せようとして、丈の短い着物で登場させられているが、昔のエロ本のモデルが、三十路過ぎているのにセーラー服を着させられているような居心地の悪さがあった。
でも、その福田沙紀の「M1号」っぽい口元が、父親である安土桃山城の築城の責任者・又右衛門役の西田敏行に似ていなくもないので、無理矢理に親子だと思うことにした。
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◇
福田沙紀問題さえクリアーすれば、物語はかなりの緊張感で進んで行く。
これは、宮大工・岡部又右衛門と、築城依頼主・織田信長の勝負の物語である。
下手に文芸大作風にしないで、勝負の構造をスタローン的に直に示してくれたのはエンターテイメント作品として懸命だ。
その勝負の予選として、名立たる番匠(建築家)たちと、指図(設計図)プレゼンテーション対決をさせられるのも、物語の序盤を大いに締める。
その設計図、建設予定デザイン図、立体模型と続く多角的なプレゼン方式には息を巻いた。
面白い^^
◇
岡部又右衛門チームのメンバーも個性的で魅力的だった。
私は、この作品の緊張感の中での戦術性を、潜水艦物の映画と重ね合わせて見ていたのだが、・・・と考えると若頭役の寺島進は副キャプテン役で、いわゆるおいしい役どころを演じていたと思う。
石工のリーダー役の夏八木勲も、眼帯がキワモノ臭いが、あまりある演技で良かった。
圧倒的なプレッシャーは、定説よりもやや人間臭い魔王・信長から受け続けるのだが、
その他にも、檜の大黒柱を得るために、又右衛門は、織田の敵対国である武田の領地に向かわなくてはならなかったりして、展開は矢継ぎ早で飽きさせない。
武田領の木曾義昌の配下に、森の民の首領・甚兵衛を緒形直人が演じていてなかなか良かったのだが、又右衛門の甚兵衛との絡みなども、長大な物語の中でダイジェスト感を与えてくるようなことはなく、じっくりと見せてくれた。
木曾義昌を、笹野高史がいつものとぼけた味で演じるのだが、この演技もやや安っぽくはあるものの、作り手は即座に、画面の陰影を濃くし、格調高く見せてくれる。
又右衛門の奥さんを演じる大竹しのぶもうまい。
苦境の又右衛門との問答の場において、私は、遠い記憶の彼方での『男女七人夏(秋か?)物語』での大竹しのぶの、有名な正面カットでの泣きの演技を思い出すのだった。
◇
で、概ね満足できる作品だったのだが、不満もある。
それは、あの信長暗殺のくだりだ。
その安易なアクション導入に、私はしらけた。
あれで私の鑑賞テンションはかなり下がった。
美しい水野美紀の使い方も宜しくない。
私は、村娘役の水野嬢は、信長に見初められて、又右衛門チームの一人(山本太郎)との間に悲恋を形成するのかと思っていた・・・。
それと、西田敏行の演技だが、いかがだろうか?
いや、うまいよ。
でも、この人、いつも同じ演技だ。
そういった目で見直すと、福田沙紀も、大竹しのぶも、椎名桔平も、寺島進も、
山本太郎も、熊谷真実も、西岡徳馬も、渡辺いっけいも、河本準一も、遠藤章造も、石橋蓮司も、笹野高史も、夏八木勲も、いつもの彼らの芸風と同じだ^^;
それってどうなのだろうか?
緒形直人だけは、ちょっと新鮮な個性を発揮していたが・・・。
◇
終幕のさりげなさは、非常に良かった。
作り手は、丁寧に語るべきところと、蛇足の無駄を良く知っているなあと感心した。
(2009/09/15)