『甘噛み^^ 天才バカ板!』 byミッドナイト・蘭

ジュリアナから墓場まで・・・。森羅万象を語るブログです。
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[映画『抱擁のかけら』を観た]

2010-02-11 18:53:38 | 物語の感想
☆やや長さを感じるが、よくよく考えるとどこのシーンも省けない、そんな傑作であった。

 ペドロ・アルモドバル監督は、私の認識では「映画文法に忠実なデビッド・リンチ」で、

 多くの斬新な構図や、一風変わった登場人物、暗喩に充ちた物語を展開させつつも、多くの人に共感を得られる着地点に至れる作家だと思う。

 フランス映画的なストレスを感じる点が心地良い作品だった。

   ◇

 かつての新進映画監督ハリー(ルイス・オマール)が、今は視力を失い脚本家となっている。

 そこに、いかにも挙動不審な若者が現われる。

 ハリーと若者には、浅からぬ因縁がある。

 そんな現在の物語と平行して、ハリーが、かつて、マテオと言う名で監督をしていた頃、ある美しい女優レナと出合ったストーリーも語られる。

 だが、レナは、映画のプロデューサーとなった実業家の愛人であった。

 レナは、その会社社長の秘書をやっていた時に、家庭の苦境の中、会社社長に身を委ねるしかなかった。

 しかし、映画の撮影を通し、ハリーとレナは、どうしようもなく惹かれあっていく。

 そして悲劇のときが近づいていく。

 ・・・割とよくあるタイプの話であるが、人間っちゅうのは、ある一定のモラトリアム内において、このような作品を強く求めるときもあり、私はその物語のストレスを楽しんだ。

 アルモドバルの視点は客観的で、誰を正しくも描くことをせず、淡々と、個々の登場人物を語っていく。

 カタログ的に、個々の登場人物を描かず、観終えると、それぞれの少なくない人数の登場人物の人生・・・、その苦しさが深く読み取れるようになっている。

 私なんて、恋の邪魔者である実業家エルネストに感情移入しまくりであったよ^^;

 ・・・やはり、レナを演じた「美しき女」ペネロペ・クルスに、どうしても注目してしまう。

 女ってのは、金と権力に翻弄されて、途中で愛に気づくも、どうしても、悲劇が待っている。

 ・・・と言いましょうか、男ってのは、美人が幸せであってはならない! と、考える傾向があって、その創作は、必ずアンハッピーにしちゃうのである。

 世の中の多くの作品を考えて欲しい。

 美人には悲劇が、可愛い女には幸せが訪れるものなのだ。

 いやはや、白人女性の産毛のキラメキは、美しいね~!!

   ◇

 物語の後半には、別のヒロイン的女性が現われる。

 その女性が、酒場で飲みながら、過去を告白する。

 この女性(ブランカ・ポルティージョ)、レナを嫌っていて、その視線のやり場が実にうまい演技だったし、このシーンも素晴らしかった。

 私は『北の国から』の有名なシーン(『北の国から'84夏』)、・・・閉店間際のラーメン屋で、自分の偽りを父親や妹の前で告白する純・・・ を、思い出しちゃったよ。

   ◇

 では、今日公開の『交渉人』を観に行くので、短いけど、『抱擁のかけら』の感想はこれまで、でも、素晴らしい作品でした。

                                         (2010/02/11)