「一番上の段で観られるのなら行ってもいいよ、開門から行かないと席はとれないわ」 「ええよ」
ちょっと暑さ負けしているかも知れない私には、普通の席では甲子園での観戦は無理、気力がない。
時間を調べて7時の開門と同時に最上段をゲットする事になった。
日々ロンドン五輪のTV観戦で寝不足気味、目が覚めたらTVをつける、出来ればリアルタイムで見たいとそんなことをしているから。
だから高校野球は、出来ればエアコンの効いた部屋でゆっくりと観戦したいのである。
しかし・・必ず春夏と甲子園に行きたい、行っている高校野球大ファンの夫の心情を思うと無気には断れない。 お盆休みに入っているし。
到着したのが7時5分前。 夫は友人の家に車を止めに行った。 自転車を積んでいるのでそこから自転車で甲子園へ。
各ゲート10数人くらいが並んでいた。 開門・・ダッシュ! するほどでもなかった。 7時5分画像。
常連さんは良く知っていてここは風が吹いて来て、一番涼しいのを良く知っているから大抵は、最上段を目指す。 ハアハア・・・言う。
8時試合は始まった。
一塁側龍谷大平安高校のアルプス席が、空いている。 きっと渋滞に巻き込まれているのだろう。 近いのに・・ちょっとかっこ悪い。
万が一負けたら縁起悪い多少の悔いも残るだろうし、ブーイングだろう。 これだけの数が遅れたのは見た事が無かった。
埋まったのが試合開始後30分くらい経ってから。 平安のHもマークが浮き上がった。
安心したかのように、曇っていた空が明るく青空に変わった。
応援の熱気はやはり、球場がいい。 旭川工(北北海道)の応援席には、前日敗退した帽子にDのマーク、南北海道の札幌第一高校の
野球部の人たちが応援に駆けつけていた。 高校生らしく清々しい。
点を取るとまた取りかえされを繰り返しいい試合だった。 それでも夫も私も途中睡魔が襲ってきた。
ライトの陰にもなっているし、最上段は背中から吹いてくる風が気持ち良く、最高。
8対6で迎えた9回の裏・・
2点入って同点、試合は延長戦になった。
11回の裏、1アウト満塁、フライでサヨナラとなった。 いい試合だった。
勝者と敗者。 TVならそれぞれの悲喜こもごも日焼けした選手たちの顔が見られるのだが。
いい試合も見させてもらったが、ここへきて応援席でいいシーンにお目にかかる事が出来た。
10時半くらいだったろうか、第一試合の最中に5歳くらいの男の子と、3歳くらいの女の子を連れてお父さんが観戦に来た。
私たちの前の方の席は陰でいくつも空いているのに、陽のあたっている席へ子供を座らせた。 座ると言っても席が熱い・・と女の子が言って
いるのが見える。 タオルを敷いてやり、カバンからお弁当を次々と出していた。 小さな子が座席へ座って膝で上手に食べるのはちょっと
難しいかも知れない。 それに暑い。 父親も汗が噴き出ている。 冷却パットをあてながら子供たちの世話をしている。
「ここへ来たらいいのにね、言ってあげようか」 「わかっとるわ、言わんでもええ」 「でも暑いよ、日陰があるのに」
子供たちは座席から降りて、通路にしゃがんで食べている。 3歳くらいの女の子はフランクフルトを食べていたが落ちそうになっても
ちゃんと自分でしている。 2人とも何ひとつ愚痴もこぼさず泣き言も言わない。 孫たちと同じような年齢なので見ていて健気で・・
野球よりもそっちの方が気になった。 孫たちなら「暑い・・」そんな言葉、きっと言っていだろうし、じっとしゃがんで食べるとも思わない。
暑いだの窮屈だの言うかも知れない。
お父さんはサンドイッチや飲み物・・と次々。 いいカメラを持っていて、子供さんたちを何度も撮っていた。 お父さんの大サービス。
お母さんは今日は? と思うけれど、「俺が連れて行ってくるわ」と言ったものか、どうか、でも上手に子供さん育てているなぁと感心した。
お父さんも子供たちの世話をして、奥さんへの日頃の有難味も感じるだろうし・・お利口な子供さんたちにも感心するであろう。
私たちもおなかすいた。 夫は第2試合2回くらいまで見て帰りに、映画でも見ようかと言う事になった。
陰のある上の段を求めて来る人いくらでもいて結構埋まった。 最上段の席を、若い人に譲るのなら、おじいちゃんか子供連れにと決めている。
下に駆け下りてお父さんに「まだ見ますか? 2回まで見たら帰りますので席が3つ座れます。 よろしかったら食事が終わったら移動の用意
して下さいね、風が通るし子供さんたち涼しいからいいですよ」
「有難うございます!」汗いっぱいのお父さんが嬉しそうに言われた。 子供たちはお父さんに言われて、自分たちで上がって来た。 女の子小さいのに。
夫の隣の席ひとつは夫と隣の人が半分づつ座っていたから、席は3つ空く。 席を代わって、お父さんも子供たちも嬉しそうだった。
「有難うございました!」 「私たちにも、孫がいますから・・」 5歳くらいの男の子のとても嬉しそうな顔が忘れられない。
親子3人穏やかなとてもいい顔をしていた。 爽やかな親子の姿を見せてもらった。
夫は先に車を取りに。 関西ペイントの前に座っていて見えなかったスコアボードを振り返ってカシャ!
静かで涼しい部屋で、細やかに試合の内容を見るのもいいが、夫と携帯ラジオを2つのイヤフォン片方づつで聞きながら、球場の全体の
様子を見ながら、変化する空を見たり、応援席の野球部らしい監督に引率された中学生や高校生の姿や様子を見ているのも楽しいし、
家族連れは微笑ましいし、美人のお姉さんが1人で来て、ビール3杯目・・手を赤くしながら観戦している姿に夫は「いい、いい」と笑っていた。
TVでは見えないそうした様々なドラマを見ながら、感じられる事が色々あるのも観戦の味であろう。
そして何よりも、試合運びの上での人々のどよめきや表情、応援団のこだまするあの胸をつく演奏の臨場感はやはりここへ来ないと。