うつ病や不安症の予防に有効な飲み物を年齢別に分析した論文をケアネットさんでアップしていました。
60才未満では人工甘味料を用いた飲料の方が普通に砂糖などを使う飲料よりうつ病のリスク上昇と関連していて、純粋な果物/野菜ジュースまたはコーヒーに変更するとリスクが軽減するという結果。
60歳以上では、純粋な果物/野菜ジュースまたはコーヒーの摂取が多いほどうつ病および不安症のリスクの低下が認められたというもの。この研究では人工的なものより自然に近い方が体にはいいようだと言うことになるかなと思いました。
以下ケアネットさんから
https://www.carenet.com/news/general/carenet/59904?utm_source=m1&utm_medium=email&utm_campaign=2025010200
うつ病や不安症の予防に有効な飲み物を年齢別に分析
提供元:ケアネット 公開日:2025/01/09
メンタルヘルスには食習慣が関連しており、独立したリスク因子であることが示唆されている。しかし、飲料摂取とメンタルヘルスとの関連を年齢別に評価したエビデンスは限られている。中国・温州医科大学のJiali Xie氏らは、6種類の飲料とうつ病および不安症との関連を推定するため、UKバイオバンクのデータを用いて検討を行った。Journal of Affective Disorders誌2025年2月15日号の報告。
食事に関するアンケートを1回以上回答したベースライン時にうつ病および不安症でなかった参加者18万8,355人をUKバイオバンクデータより抽出した。分析には、Cox比例ハザードモデルおよび置換分析を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・平均フォローアップ期間11.15年の間にうつ病を発症した参加者は5,884例(3.12%)、不安症を発症した参加者は6,445例(3.42%)であった。
・60歳未満では、1日1杯以上の砂糖入り飲料(ハザード比[HR]:1.14、95%信頼区間[CI]:1.02〜1.28)および人工甘味料入り飲料(HR:1.23、95%CI:1.09〜1.38)の摂取は、うつ病リスク上昇と関連していた。
・一方、純粋な果物/野菜ジュース(HR:0.81、95%CI:0.72〜0.92)およびコーヒー(HR:0.88、95%CI:0.81〜0.96)の摂取は、うつ病リスク低下と関連していた。
・60歳以上では、純粋な果物/野菜ジュースおよびコーヒーの摂取量が多いほど、うつ病および不安症リスクの低下が認められた。
・60歳未満では、砂糖入り飲料を純粋な果物/野菜ジュースまたはコーヒーに変更すると、うつ病および不安症リスクが軽減し、60歳以上では、ミルクを純粋な果物/野菜ジュースまたはコーヒーに変更すると、うつ病および不安症リスクが軽減した。
著者らは「飲料とうつ病および不安症との関係は、年齢により異なることが示唆された、メンタルヘルスのリスク軽減において、慎重な飲料選択が重要であろう」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)
原著論文はこちら
Xie J, et al. J Affect Disord. 2025;371:224-233.
冬場に気を付けたい食中毒 -ノロウイルスによる感染性胃腸炎ー 健康ぷらざNo.584
日本医師会から健康ぷらざが来たので読んでいたら、下痢してるとき,ペットボトルのキャップくらいの量をちょこちょこ飲むのがいいって書いてありました。これはわかりやすい説明ですねえ。水分は少しずつ何度も飲んでくださいねって話してたのですが、今度からはこの説明も使いたいと思います。虫垂炎については、右下腹部痛以外にも痛むことがありますので、おなかが痛いときは無理せず相談してください。
以下記事のコピペです
ノロウイルスによる食中毒
国立感染研究所の統計では、ノロウイルスによる食中毒は11月から増加し、1〜2月に多くなると報告されています。ノロウイルスは加熱により死滅します。汚染された食材を、生あるいは十分に加熱しないで食べると感染するおそれがあります。牡蠣などの二枚貝は、感染源の一つです。人の腸で増えたノロウイルスが下水から海へと流れ、二枚貝の中で濃縮されます。その時期が牡蠣を食べるシーズンと重なっているのです。
受診が必要なタイミング
主な症状は、嘔吐、みぞおちの痛みなど胃の症状と、水のような下痢、腹痛など腸の症状です。このような症状があれば、かかりつけ医を受診しましょう。感染性胃腸炎の大半はウイルス性ですが、血便が出る場合は、細菌性の可能性があります。また、右下腹部痛がある際には虫垂炎が疑われます。
ノロウイルスの増殖を抑える治療薬はなく、感染性の胃腸炎の治療は対症療法です。水分摂取は、「ペットボトルのキャップ程度の少量の水分を何度も何度も摂る」ことを勧めています。少量・頻回に水分を摂取しても、何度も吐いたり、歩くことも難しいなら、制吐剤を処方してもらう必要や、点滴が必要な場合もあります。
感染を広げないために
家庭内で感染を広げないことが大事です。①胃腸炎の方を介抱したらその都度手を洗う、②食事や水分を摂取する前に手を洗うーを励行してください。ノロウイルスはアルコールでは対応できないので、嘔吐物・糞便の処理や、前座などの消毒には、次亜塩素酸ナトリウムを主成分とした塩素系漂白剤を用いる必要があります。
〈ノロウイルスに対する塩素系漂白剤を用いた消毒液〉
1.嘔吐物・糞便の処理には、約0.1%濃度の希釈液を使用する。
【作り方】500mLのペットボトル1本の水に、市販の塩素系漂白剤(塩素濃度5〜6%)10mL(ペットボトルのキャップ2杯)を入れる。
2.調理器具、トイレのドアノブ、便座、衣類などの消毒には、約0.02%濃度の希釈液を使用する。
3.使用時の注意:手指の消毒には使用しない。酸性のものと混ぜない。
寒くなってくると夜間おしっこに行くのがおっくうになる時期でも有ります。また、夜間におしっこで目が覚めるのも回数が増えると苦痛になりますよね。今回、健康さっぽろで夜間頻尿の特集がありました。夜間のおしっこに行く回数を増やさない工夫など紹介されています。日常的に取り入れると体にも良さそうなコツが紹介されていますので、是非読んでみてください。
以下の文章中の表や図は上の画像の方に載っていますので、そちらを見ていただければ早いかな。
泌尿器科の先生から、就寝3時間前半身浴が理想的とアドバイスもありました。ありがとうございます。
以下札幌医師会市民広報 健康さっぽろ第52号からの引用となります。柿崎先生からも掲載許可いただきありがとうございます。
夜間頻尿 について
生活習慣の見直しが大切です
◎はじめに夜間就眠後に排尿のために1回以上起きなけれ ばならない症状を夜間頻尿といいます。特に夜間の排尿回数が2回以上になると生活の質(QOL)にも大きな影響を与えます。夜間頻尿の主な原因は、夜間多尿(夜間の尿量が多いこと)と膀胱蓄尿障 害(膀胱に十分な量の尿を溜めることができない状 態)です。さらに睡眠障害という要因が加わります 【 図 1 】。夜 間頻尿の頻度と原因、家庭での対処法 、 病院での診療について解説したいと思います。
夜間頻尿の頻度
排尿のために夜間に起きる人の割合は年齢とともに増加します。国内で行われた調査の結果をみますと、60歳以上では 80%以上の人が夜間1回は排尿に起きることが示されています【図2】。男女を問わず排尿に関係する症状のうち、もっとも困るのが夜間頻尿です。夜間2回ある いは3回以上排尿に起きる人は、転倒や骨折のリスクが高くなり、また死亡率も増加することが知られています。このように、夜間2回以上排尿に起きる人は要 注意ですので、家庭での対処や病院の受診を考慮して下さい。
夜間頻尿の主な原因
夜間頻尿には多くの原因があります。糖尿病、高血圧、脳卒中、心臓病、肥満などの生活習慣病が夜間頻尿に関係します。このような内科的な病気がある場合 は、しばしば夜間多尿となります。また、腎臓病で腎機能が低下してくると、夜間多尿になることがあります。一般的には、就眠後から朝の起床時までの夜間尿 量(夜間の排尿量の総量)が1日尿量の33%を超える場合に夜間多尿ありと判断しますが、簡便な方法として夜間尿量が10mℓ/kg体重を超える場合に夜間多尿ありと判断することもできます。 一方、前立腺肥大症や過活動膀胱などの泌尿器疾患が夜間頻尿の原因となることも少なくありません。前立腺肥大症や過活動膀胱では、膀胱蓄尿障害のために昼夜とも排尿回数が多くなります。高齢者では内科的な疾患に関連する夜間多尿と膀胱蓄尿障害の両方を合併することが多く、これが夜間頻尿につながります。
もともとぐっすり眠れない人は、わずかな尿意で目を覚ましやすいため、夜間頻尿となることがあります。睡眠時無呼 吸症候群のある人は、しばしば夜間頻尿となります。家庭での対処法
(行動療法)
内科的な病気がある場合は、主治医の指示に従ってその治療をきちんと継続することが重要です。夜間頻尿があると排尿に起きた後になかなか眠れず、睡 眠障害につながることも少なくありません。夜間頻尿と睡眠障害をよくするための生活上のアドバイスを【表1】に示します。1日に必要な飲水量は、体重の2~ 2.5%とされています。体重60kgの人で は 、1 日 の 飲 水 量 は 1,200~ 1500mℓで十分ということになります。 必要な水分を日中の時間帯で摂取し、夕方以降は飲水を控えることが大切です。夕方以降はカフェインやアルコールを制限することも大切です。晩酌をされる方 は、晩酌をした日は夜間頻尿になっても仕方がないと思って下さい。塩分の取りすぎは夜間多尿につながりますので、減塩を心掛けて下さい。良好な睡眠を得る ためには、短時間の昼寝、日光浴、夕方の軽い運動 、入床 1 ~ 2 時間前の入浴・足浴が有効とされています。
夜間頻尿のある患者さんを診療してい ますと、夕方以降もかなり水分を摂取している方が少なくありません。繰り返しになりますが、必要な水分は日中の時間帯に摂取し、夕方以降は水分制限すること が夜間頻尿に対する行動療法の最重要ポイントです。なお、北海道では少ないですが、熱帯夜の場合には、必要に応じて夜間の水分補給を忘れないで下さい。
【表1】夜間頻尿―睡眠障害を 良くするための10か条
1.夕方以降の水分、カフェイン、アルコール制限
2.塩分は控える
3.昼寝は昼食後に30分程度 (午後3時以降は昼寝しない)
4.昼間に光を浴びる
5.夕方の軽い運動
6.入床1~2時間前の入浴または足浴
7.就寝1時間前から部屋の明かりを暗くする
8.就眠前1時間、中途覚醒時の喫煙は避ける
9.眠くなるまで床につかない (7時間前後の睡眠時間で十分)
10.朝一定の時刻に起床し、 きちんと朝食をとる
病院での診療
夜間頻尿を訴えて病院を受診される患さんに対しては、問診 、尿検査 、腹部超音波検査(エコー)などを行い、前立腺肥大症や過活動膀胱などの膀胱蓄尿障害をきたす病気がないかどうかを確認します。前立腺肥大症や過活動膀胱と診断される場合は、それぞれに対する薬物治療を行います。薬物治療を行っても、夜間頻尿が十分に改善しない場合は、患者さんに排尿記録を付けてもらい、夜間多尿の有無を調べます。前立腺肥大症や過活動膀胱に対する薬物により膀胱蓄尿障害が良くなっているにもかかわらず、夜間多尿のために夜間頻尿が良くならない場合は、男性では夜間の尿量を減少させる薬物を使用することが できます。
おわりに
夜間頻尿はとてもよくみられる症状で、生活の質にも多大な影響を及ぼします。夜間頻尿の原因は、夜間多尿、膀胱蓄尿障害、睡眠障害です。夜間頻尿の ある方は、まず日々の生活習慣を見直すことが大切です。家庭での行動療法をしっ かりと行ってみて下さい。それでも夜間頻尿が良くならない場合は、内科の主治医 に相談し、泌尿器科の専門病院を受診して下さい。夜間頻尿.comというインター ネット上のサイトは、夜間頻尿に関するさまざまな情報を提供していますので、夜間 頻尿でお困りの方は是非一度このサイトにアクセスしてみて下さい。
(北海道泌尿器科記念病院 東区 柿崎 秀宏)
文献 札幌医師会市民広報 健康さっぽろ第52号(令和6年9月25日発行)から
日本門脈圧亢進症学会の総会が9月26日(木)、27日(金)と行われます。
https://jsph2024-medusae.jp/
私が肝臓をする中で得意分野はとなると、静脈瘤や脳症の治療が他の肝臓の先生よりも濃く関わってきたと言えます。もちろん肝がんの治療や慢性肝炎の治療もかなりの数担当することができたので、全国的にも勉強になった医療機関で勤めてくることができたことは幸運だったと思います。肝がん検診を継続する気持ちも、肝がんや肝不全で亡くなる方をたくさん診てきたからと言えます。患者さんや家族が悲しむ姿を見てきて、これは何とかしないとならない。他の病気を見ている先生たちも同じような思いで研鑽を積んでいることが多いと思います。そんな中で肝がんに関わったことから肝がんに絡む病態をなんとか予防したい、脂肪肝の食事療法をここまで熱心にするようなってきたのは、脂肪肝がこれからの肝がんの原因となっていくということがはっきりしてきたからです。軽いうちに生活習慣を肝臓に良さそうな形にその人にあった方法にできるようこれからも模索していきたいと思います。
医師会の健康ぷらざにて新しい記事が出ていました No.582 歯周病と全身疾患
歯周病はいろんな病気とつながっていることがわかっています。是非注意しながら予防していってください。
以下健康ぷらざ記事になります。
歯周病と全身疾患
ー全身への細菌感染を起こす歯周病=
医療費人木村歯科(福岡)院長/日本臨床歯周病学会 理事長 木村 英隆
歯周病は全身の病気につながる
歯周病は歯周病菌による感染症です。歯周病が進行すると、深い歯周ポケットが形成されます。その中で炎症を強めるたんぱく質(サイトカイン*)などがどんどん増えて、歯肉の血管から血液中へと流れ出していきます。血管に載って臓器や血管壁にたどり着いた歯周病菌やサイトカインが毒性を発揮し、糖尿病や心臓病を悪化させるなど、全身に様々な悪影響を及ぼします。また、気道も、歯周病菌が体内に入り込む経路の一つです。口の中にいる歯周病菌が食べ物や唾液に混ざり、謝って気道から肺に流れ込むと,誤嚥性肺炎などを引き起します。
*:細胞から分泌されるたんぱく質で、細胞同士の情報伝達を行う物質の総称。進入した病原体に応答して産生され、炎症症状を引き起こしたり抑制したりする。
歯周病かな?と思ったら
歯肉が腫れたり、歯磨きで出血したり、口がくさいと言われたら、歯周病かも知れません。まずは歯科医院を受診しましょう。口の中がどのような状態なのか、歯周病が度くらい進行しているのかを検査します。主な治療は、はに付着しているプラーク(歯垢(しこう))と歯石(しせき)の除去です。これを、歯周基本治療といいます。プラークの除去は歯ブラシでします。毎日のブラッシングでプラークを除去する「セルフケア」が大切です。歯石は、磨き残しのプラークに唾液中のカルシウムが取り込まれて石灰化したものです。歯石は歯ブラシでは取れませんので、歯科医院で器具を使って機械的に取り除いてもらう必要があります。
歯周病は予防できる
歯周病は生活習慣によって起こります。大切なことは、歯周病は予防できる病気ということです。毎日しっかりとブラッシングをして、生活習慣を見直すことから始めましょう。もし歯周病が発症しても、早期に発見して治療を始めれば治ります。歯科医院で定期的に口の中を掃除することを心がけましょう。
英語をそのまま日本語にした感じで、いままでよりちょっとイメージしずらいかも知れないのですが、これで行くって事ですねえ。
・Steatotic Liver Disease(SLD):脂肪性肝疾患
・Metabolic Dysfunction Associated SteatoticLiver Disease(MASLD):代謝機能障害関連脂肪性肝疾患
・Metabolic Dysfunction Associated Steatotohepatitis(MASH):代謝機能障害関連脂肪肝炎
・Alcohol Associated (Related) Liver Disease(ALD):アルコール関連肝疾患
・MetALD :代謝機能障害アルコール関連肝疾患・CryptogenicSteatotic Liver Disease:成因不明脂肪性肝疾患
・Specific AetiologySteatotic Liver Disease:特定成因脂肪性肝疾患
以下学会の発表文章脂肪性肝疾患の日本語病名に関して
欧州肝臓学会(EASL)は米国肝臓病学会(AASLD),ラテンアメリカ肝疾患研究協会(ALEH)と合 同で,脂肪性肝疾患の病名と分類法を変更することを,2023 年 6 月 24 日に発表しました [1]。日本肝臓 学会,日本消化器病学会もこの変更に賛同し,その旨を同年 9 月 29 日に両学会のホームページに発表 しました。
日本語での新たな病名に関しては,日本肝臓学会の企画広報委員会と日本消化器病学会の NAFLD/NASH 診療ガイドライン作成委員会が合同で検討を続けてきましたが,以下のように決定して, これを両学会の理事会も承認しました。これらの日本語病名は,両学会の案として日本医学会に提出し, 医学用語管理委員会でも承認されました。
なお,MASLD,MetALD,ALD の診断に際して利用する心血管イベントのリスク因子基準およびアル コール摂取量に関しては,わが国におけるメタボリック症候群ないしアルコール性肝障害の基準とは異 なる部分があります。その整合性をどうするかに関しては,日本肝臓学会の企画広報委員会と日本消化 器病学会の NAFLD/NASH 診療ガイドライン作成委員会が合同で検討を続けていますので,結果がまと まり次第,会員の皆さんにはご報告いたします。
1.Rinella ME, et al. A multi-society Delphi consensus statement on new fatty liver disease nomenclature. J Hepatol 2023; 79 (6): 1542-1556.
<日本語病名>
・Steatotic Liver Disease(SLD):脂肪性肝疾患
・Metabolic Dysfunction Associated SteatoticLiver Disease(MASLD):代謝機能障害関連脂肪性肝疾患 ・Metabolic Dysfunction Associated Steatotohepatitis(MASH):代謝機能障害関連脂肪肝炎
・Alcohol Associated (Related) Liver Disease(ALD):アルコール関連肝疾患
・MetALD :代謝機能障害アルコール関連肝疾患
・Cryptogenic SteatoticLiver Disease:成因不明脂肪性肝疾患
・Specific AetiologySteatotic Liver Disease:特定成因脂肪性肝疾患
2024年8月22日
一般社団法人日本肝臓学会 理事長 竹原 徹郎
便秘はいろんな疾患の背景になっていることが有ると言うことが言われているので、その理由がなんであるのか、若年、女性、BMIが低い人は便秘傾向に有ることや、腸内細菌によっては便秘では腎臓や下痢では肝臓への影響が出てくることがあり得ることなどが書かれていました。1日1回程度のいい便がでる快便生活は是非目指したいところですね。レジスタントスターチを上手く活用するといいのかも知れません。
以下ケアネットさんから
排便回数は健康状態に関連
提供元:HealthDay News
公開日:2024/08/07
健康な人において、1日の排便回数(bowel movement frequency;BMF)は、健康に大きな影響を及ぼしていることが、米シアトルにあるシステム生物学研究所のJohannes Johnson-Martinez氏らの研究で明らかになった。BMFにより、腸内細菌叢の属、血中代謝物、および生活習慣因子に違いが認められ、便秘と下痢は、それぞれ腎臓や肝臓の機能に悪影響を及ぼし得る可能性が示唆されたという。この研究の詳細は、「Cell Reports Medicine」に7月16日掲載された。
Johnson-Martinez氏らはこの研究で、1,425人の健康な成人の医療と生活習慣に関するデータを収集して分析した。対象者はBMFに基づき、1)便秘群(週1~2回)、2)低頻度群(週3~6回)、3)高頻度群(1日1~3回)、4)下痢群の4群に分けられた。その上で、BMFと人口統計学的属性、遺伝、腸内細菌、血中代謝物、血漿中の化学物質などの因子との関連を検討した。
その結果、年齢、性別、およびBMIはBMFと有意に関連し、特に、若者、女性、BMIが低い人ではBMFが低い傾向にあることが示された。Johnson-Martinez氏は、BMFが腸のエコシステムの機能に大きな影響を与えることが過去の研究でも示唆されていると指摘。「便が腸内に長くとどまると、腸内細菌が食物繊維を使い尽くして有益な短鎖脂肪酸を作れなくなる。そうなると、腸内細菌はタンパク質の発酵を開始し、それに伴いいくつかの毒素が生成され、それが血流に入り込む可能性がある」と説明する。
実際に、本研究では腸内細菌叢の組成がBMFの特徴を示しており、1日のBMFが1~2回の人では健康と関連付けられることの多い食物繊維を発酵させる腸内細菌が豊富であったのに対し、便秘を報告する人ではタンパク質の発酵に関連する細菌、下痢を報告する人では上部消化管に関連する細菌が豊富に存在する傾向が認められた。また、予想されていたことではあるが、食物繊維の多い食事を摂取し、水をたくさん飲み、定期的に運動している人は、BMFが1〜2回である傾向が強いことも示された。
同様に、いくつかの血液代謝物や血漿中の化学物質はBMFと有意な関連を示した。このことは、腸の健康と慢性疾患リスクの潜在的な関連を示唆している。具体的には、便秘を報告する人の血液中には腎臓にダメージを与えることが知られている、p-クレゾール硫酸やインドキシル硫酸などの腸内細菌由来のタンパク質発酵の副産物が豊富な一方で、下痢を報告した人の血液中では肝臓のダメージと関連する化学物質が増加していることが確認された。さらに精神的な健康状態もBMFに影響を及ぼし得ることも示された。
共同研究者でシステム生物学研究所の准教授であるSean Gibbons氏は、「活動期の疾患がある患者では、慢性的な便秘が神経変性疾患や慢性腎臓病の進行と関連していることは以前から指摘されていた。しかし、排便の異常が慢性疾患や臓器障害の早期段階からの促進因子であるかどうか、あるいはこうした疾患のある患者において後ろ向きに確認された関連が単なる偶然によるものなのかについては、これまで明確になっていなかった」と説明。その上で「今回われわれは、全般的に健康な集団において、とりわけ便秘は、何らかの疾患が診断される前の段階で、臓器障害を引き起こすことが知られている腸内細菌由来の毒素の血中濃度に関連していることを明らかにした」としている。
Gibbons氏は、「全体として、今回の研究ではBMFがいかに全ての身体システムに影響を及ぼし得るか、またBMFの異常がいかに慢性疾患発症の重要なリスク因子となり得るかが示された」と説明。さらに同氏は「これらの知見は心身の健康を最も良い状態に保つためのBMFの管理に向けた戦略に役立つとともに、健康な人の集団における戦略にも有用だと考えられる」と述べている。
[2024年7月16日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら
原著論文はこちら
Johnson-Martinez JP, et al. Cell Rep Med. 2024;5:101646.
#第49回超音波検査学会 #タスクシフト #シンポジウム #脂肪肝 #エコー検査 #ATI #むくみ
この日は、タスクシフトについて、肝臓クリニック札幌の田村検査技師も発表してくれていて、セッションでは業務を分担していくときの課題や理想的な形など今議論されている、実際にやりながら理想的な方法を模索していることが語られていました。
ランチョンではエコーの進歩画像処理の進歩は本当に見やすくなっていること、膵臓もどんどん医師が指示を出してチェックするようになると早期の膵がんを見つけるきっかけになることなどが紹介されていました。
お弁当は宮城の特産の食べ物がそろっていて美味しかったです。
脂肪肝のエコーでの計測にATIというのがあるのですが、この制度をあげる方法、従来法でも充分精度が上がるが、Rejection機能を用いるとより安心感が出ることや、太い脈管が入ってくると信頼性があるように機械上は提示されるがデータ的にはばらつきのものがあったりすることなど、実際の経験を元に発表していました。
むくみのセミナーではリンパ浮腫において、リンパ管と静脈の吻合術が効果があることや、エコーで拡張したリンパ管が意外と見えていることがよくわかりました。むくみの患者さんにはエコー検査実に有用と思いました。
#むくみゼミナール というYouTubeのサイトがあるので是非見ていただけたらと思います。
#第49回超音波検査学会 #教育講演 #シンポジウム #ランチョンセミナー #脂肪肝 #エコー検査
教育講演2では、小川先生の以下の講演を聞いてきました、実際に健診をしながら検診を受ける人たちとどう話していくか、エコーをするものとしてどんな心構えで臨むか、実際にエコーをしてる人達に納得の内容で、本当に面白くためになる話しがたくさんでした。実際に体験した症例についても、症状があっても我慢してたり治ったりしたあとで検診に来る方、あるあるの話しが、会場もうなずきながらの熱心な聴講者が、いい話でした。
腹部超音波検診対象臓器以外で拾いたい所見、拾うべき所見
小川眞広先生
講演の中の最後のまとめではこんなことを話していました。
走査の際 ひとまわり大きく振り切ることが大事 気づきの
1気づき 自身の感度
2やるき 一手間かける余裕 心 時間
3基本と応用力 技術知識と装置機能の選択枝の広さ 保存方法
気づいた所見は記録するこれの徹底が大切
シンポジウムでは脂肪肝を語り尽くすってことで、今の時点での脂肪肝の話し、疫学的なことから、エコーでどう診ていくかなど、NAFLDからMASLDになってきてどうなっていくか。エコーでの脂肪化の検査の普及も進んできているのでこれから更に脂肪肝からの肝がんを無くす方向にきっと行くだろうと思えました。
シンポジウム3(Chance)
脂肪肝を語り尽くす〜拾い上げからその後まで、超音波検査の役割とは?〜
ランチョンセミナーでは、牛タン弁当がでました。美味しかったです。
[LOS01] ランチョンセミナー1
エキスパートに学ぶ ―肝胆膵超音波検査のUp-to-date ―
エコーの機器の進歩、画像処理の進歩、毎回診やすくなって、診断もしやすくなって、できるだけたくさんの患者さんに受ける機会が増えてくれたらいいなあと思いました。
当院のスタッフの発表も、エコーでの画像と病理組織との比較など難しい部分にチャレンジしていてよかったです。これからまた次の検討へ進んでいくんだろうなあ。すごいです。
#第49回超音波検査学会 に行ってきました
2024年7月19日(金)から7月21日(日)まで仙台で行われる学会。肝臓クリニック札幌のスタッフが3人発表してくれます。みんな頑張っております。超音波の学会には超音波医学会というのが医師向け、検査学会は検査技師さん向けの学会になります。スタッフが発表するって事で2023年参加して見て、すっかりこれは面白いと参加したくなった学会でした。医者が聞いても面白い、おーこうやってやるといいんだとかこういう風にみんなやってるんだと言った実臨床のノウハウが話されていて、参加してる医師も検査技師さんと患者さんのためにどんな風に臨床を作り上げていこうっていうそんな共同作業を常に目の前で見ることができるそんな学会ですっかりファンになってしまいました。で、昨年学会に入りました。医師が勘違いして入る方がいるのですが本当にこちらの学会でOKですかと念を押されて、応援したいので入りますと会員証を発行していただきました。
今年もためになる発表がいっぱい、是非、医療で超音波に携わる方は顔を出してみることをお勧めします。
写真はスタンプラリーでもらった #ずんだシェイク 、美味しかったです。
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この本是非読んで欲しいです。肝移植をする際に提供する肝臓の持ち主が脂肪肝であれば移植ができない。そのために必死に脂肪肝を改善しようと頑張ってきたときの経験や研究から導き出してきた話し。わたしのにこたまダイエットの本ももちろんこの先生の理論の中で実践する1つの方法になると思います。
肝臓が果たすべき役割を果たしてくれている役割をしることで肝臓をいたわってあげたくなる、いたわってあげなきゃって思いが強くなるそんな本でもあります。自分を大事にすることにもつながるそんな、肝臓からの視点ではなしがすすんでいく。とても読みやすくてわかりやすかったです。
運動もやりやすいものが紹介されてるので是非。
ダイエットも健康も 肝臓こそすべて 単行本(ソフトカバー) – 2022/8/8
尾形 哲 (著)
脂肪肝は、お酒をたくさん飲む人の病気だと思っていませんか。
お酒を一滴も飲まなくても脂肪肝になってしまう人が増えており、現在、日本人成人の「3人に1人」が脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患〈NAFLD〉)であるといわれています。
脂肪肝を放置すると、脂肪肝炎から肝硬変、肝臓癌といった深刻な肝臓の病気になることもあります。また、糖尿病をはじめとした多くの生活習慣病は、肥満や脂肪肝を起点としてドミノ倒しのように生じてきます。
脂肪肝は「死」に直結する怖い病気なのです。
この脂肪肝を改善するにはどうしたらよいでしょう。
著者は、肝臓から脂肪を落とすには、「肝臓をいたわることが大切」だといいます。
本書で紹介する肥満、脂肪肝を改善するメソッドの極意はたった7つです。
病院に行かなくても、だれでも自宅で、今日から実践できる食べ方や運動の方法を「肝臓をいたわる7つの習慣」としてまとめました。
この「7つの習慣」には、著者が生体肝移植のドナー指導で培った脂肪肝改善法のノウハウと、佐久市立国保浅間総合病院の肥満・脂肪肝改善専門外来「スマート外来」で、著者が糖尿病専門医とともに食事や生活習慣を研究したエッセンスがすべてつまっています。
ダイエット、健康の要(かなめ)は肝臓です。
なぜ肝臓をいたわると健康になるのか。確実にやせることができるのか。
本書では、代謝や解毒、免疫という3つの重要な働きを解説し、「肝臓こそ健康の肝(きも)」である理由についても、深掘りして解説します。
「肥満・脂肪肝改善バイブル」の誕生です。
本書の構成
巻頭カラー
プロローグ やめませんか? やせる目的だけの「食事制限」
第1章 実践スマートメソッド 脂肪肝改善プログラム
第2章 肝臓をいたわるとカラダが蘇る
第3章 糖・酒・薬を減らして肝臓をいたわる
第4章 腸をきれいにして肝臓をいたわる
第5章 筋肉を増やして肝臓をいたわる
エピローグ 肝臓をいたわる生き方
にこたま肝臓ダイエットの本はこちら
←写真をクリックしてもにこたま肝臓ダイエットのAmazonサイトにつながります。
糖尿病のある方に増える可能性のあるがん 2024年 第67回日本糖尿尿病学会より
糖尿病を持っている患者さんたちでどのようながんが増えやすいかという分析をしたところ、肝臓がん、膵がんがやはり高い数値となっていました。
以下ケアネットさんの記事がまとまっていたので見ていただければ幸いです。
糖尿病とがんの相互関連性、最新の知見は?/日本糖尿病学会
公開日:2024/06/17
近年、糖尿病とがんの相互関連性が着目されており、国内外で研究が進められている。日本では、2013年に日本糖尿病学会と日本癌学会による糖尿病とがんに関する委員会から、医師・医療者・国民へ最初の提言がなされた。糖尿病は全がん、大腸がん、肝がん、膵がんの発症リスク増加と関連するとされている。5月17~19日に開催された第67回日本糖尿病学会年次学術集会で、シンポジウム11「糖尿病とがんをつなぐ『腫瘍糖尿病学』の新展開」において、能登 洋氏(聖路加国際病院内分泌代謝科)が「糖尿病とがんの関係 2024 update」をテーマに講演を行った。講演の主な内容は以下のとおり。
糖尿病患者はがん死リスクが高い
日本での2011~20年における糖尿病患者の死因は、多い順に、がん(38.9%)、感染症(17.0%)、血管障害(10.9%)となっている1)。糖尿病患者のがん死リスクは一般人よりも高く、糖尿病により発がん・がん死リスクが増加する可能性が注目されている。糖尿病を有するがん患者は生命予後・術後予後が不良であることがメタ解析で示されている。能登氏によると、糖尿病とがんはさまざまな要因を介して相互関連しているという。
糖尿病に伴うがんリスクの倍増率に関する研究によると、糖尿病がある人では、ない人と比べて、がん死リスクは1.3倍、がん発症リスクは1.2倍増加していることが示されており2)、能登氏は、がんは糖尿病の「合併症」とまでは位置付けられないが、関連疾患、併発疾患としては無視できないと述べた。糖尿病に伴う発がんリスクのがん種別では、海外のデータによると、リスクが高い順に、肝がん(糖尿病がない人と比べて2.2倍)、膵がん(2.1倍)、子宮がん(1.6倍)、胆嚢がん(1.6倍)、腎がん(1.3倍)、大腸がん(1.3倍)などが並んでいる2)。国内のデータによると、肝がん(2.0倍)、膵がん(1.9倍)、大腸がん(1.4倍)となっており3)、主に消化器系の発がんリスクが有意に高いことが判明した。
また能登氏は、上記の海外のデータにおいて、糖尿病を有する男性の前立腺がんの発症率は通常の0.8倍となっており、前立腺がんにはなりにくいことを興味深い点として挙げた。これは、糖尿病の場合はテストステロンが低くなることと関連しているという。
糖尿病患者のがん発症メカニズム
現在想定されている糖尿病により発がんリスクが高まる機序について、能登氏は解説した。高血糖と高インスリン血症という主な2つの因子が、正常細胞をがん化し、がん細胞を増殖させていくと考えられている。また、高血糖により血中酸化ストレスが増加すると、染色体にダメージを与え、正常細胞ががん化する。さらに、高血糖自体が細胞増殖のエネルギーとなり、がん化した細胞の増殖が促進される。また、インスリンは直接的に発がんプロモーションに関与する。IGF-1という成長因子を介して間接的にも発がんを促進すると考えられている。さらに最近の研究によると、mTOR経路ががんに関わってくる遺伝子を促進したり、あるいは、正常細胞は発がん細胞を抑制しようとする細胞競合という機能を持っているが、インスリンによって細胞競合機能が抑制されてしまうことで、がん細胞が増殖しやすくなったりすることが判明した。また、糖尿病や肥満は全身的な炎症が慢性的に存在する。この炎症が、発がん・がんの増殖により拍車をかけることが考えられるという。最近では、さまざまな糖尿病治療薬が、発がん・がんの増殖に対して関連しているという仮説もあり、研究が進められている。
能登氏は、高血糖と高インスリン血症はどちらが発がんに影響しているかについて、以下の研究を取り上げて解説した。米国の研究によると、糖尿病患者は、糖尿病の発症から5~10年後に発がん倍率が1.3倍のピークを迎え、その後は低下するという。インスリン分泌能をC-ペプチドに置き替えてみると、発がん倍率とほぼパラレルな推移が認められる。一方、HbA1cで示される高血糖は、10~15年後にピークに達する。そのため、発がんへの影響は、高インスリン血症のほうが主体であることが推測されている4)。
一般的に欧米人よりもアジア人のほうがやせ型の人が多く、肥満度が低い。肥満は高インスリン血症を引き起こすため、肥満のほうが、発がんリスクが高くなると考えられている。しかし、能登氏らが実施したアジア人を対象とした調査によると、アジア人糖尿病患者の発がんリスクは低いだろうという予想に反して、男女共に、欧米人よりもアジア人のほうが発がんとがん死リスクが高いという結果になった5)。高血糖と高インスリン血症のがんへの影響は人種によっても変化する可能性がリアルワールドデータにより示唆された。
能登氏はここで、データ解釈上の注意点があることを指摘した。糖尿病患者は高齢・肥満によりがん発症リスクが高まるという交絡因子があるが、これは解析時に調整することができる。一方、糖尿病患者は日頃から検査を受けることが多いため、がん発見率も高まる。この「発見バイアス」は考慮しなければならない。実際のがん発症リスクは、前述の数値よりも低いであろうという。また、がん患者は糖尿病になりやすく、実は膵がんを先に発症し、それが糖尿病を引き起こしていたが先に糖尿病が診断されたという因果の逆転も考えられる。その点に気を付けて解釈をしなければならない。
血糖変動幅を小さくすれば、がんリスクは低下するか?
高血糖ががんのリスク因子であるならば、血糖コントロールをよくすれば、がんのリスクは低くなるのかということについて、海外での心血管疾患に関するメタ解析の副次結果が提示された。発がんリスク、がん死リスクのいずれも、厳格な血糖管理をしても、がんのリスクは下がらないということが示唆された6)。また、能登氏らが実施した日本人を対象としたHbA1cと発がんリスクに関する研究によると、HbA1cが5.5~6.4%を基準値として、それよりも血糖コントロールが悪くても、発がんリスクはほとんど変わらなかった7)。
さらに踏み込んで、HbA1c変動と発がんリスクに関するデータでは、HbA1cの変動幅が大きい人ほどがんリスクが高まることが判明した8)。また、アジア人を対象とした海外のデータでも、発がんリスク・がん死リスクともに、HbA1c変動幅が大きいほうが、リスクが高くなることが明らかとなった9)。
ただし、観察研究で関連性が示されても、バイアス残存などのため因果関係にあるとは限らない。また、因果関係にあっても、是正・予防によりリスクが低下するとは限らないという。現時点では、HbA1cの変動幅はがんリスク評価マーカーとして活用するのが妥当で、Time in Range(TIR)もリスク評価マーカーとして有用かもしれない。
がんと糖尿病に共通するリスク因子:食事と運動
能登氏は、がんと糖尿病に共通してリスクを上昇させる食事例として、赤肉・加工肉の過剰摂取、高Glycemic index(GI)食摂取を挙げ、逆にリスクを下げる食事例として、野菜、果物、食物繊維、全粒(未精白)穀物、魚をカロリーやバランスの管理をしたうえで摂取することを挙げた。
糖質制限・低炭水化物食には、以下のような功罪があるため慎重に行う必要がある。
・血糖コントロール・減量に有効だが、1~2年で効果消失する。
・糖尿病発症リスクは変わらない(J-カーブ示唆)。
・さらに、極端な食事制限を長期間続けると、総死亡・がん罹患/死亡・心血管死亡が増加することも報告されている。
ある日本の観察研究によると、運動量とがんに関しては、運動量が多いグループほどがんリスクが低下することがわかっているため10)、運動ががんの予防につながる可能性があると能登氏は述べた。ただし、ベースラインにおいて、元々身体的な制限があるため運動できない人や、逆に元から健康志向が強い人が含まれるといった交絡因子が含まれることも考慮しなければならないという。
最近では、国内でも保険適用による減量手術がある。食事・運動を介さずに手術で劇的に短期間で減量した場合も、糖尿病とがんのリスクを劇的に減少させることが報告されている11)。体重を減らすことが非常に重要であることを示すデータとなっている。
糖尿病治療薬はがんリスクに影響するか?
高インスリン血症はがんのリスク因子となるが、インスリンを治療薬として使用する場合は、がん死リスク・発がんリスク共に変化がないことがわかっているという12)。インスリンにより血糖値が劇的に下がるため、リスクが相殺されて、リスクがプラスにもマイナスにもならないのではないかと推察されている。そのほかの糖尿病治療薬とがんリスクについては、エビデンスは限定的だが、メトホルミンはがんリスクを低下させる可能性がある。ピオグリタゾンは、投与された患者で膀胱がんの発生リスクが増加する可能性が完全には否定できないので、膀胱がん治療中の患者には投与を避けることと添付文書に明記されている。
日常診療では、糖尿病とがんに関する日本糖尿病学会と日本癌学会による医師・医療者への提言を参照のうえ、性別・年齢に応じて適切に科学的に根拠のあるがんのスクリーニングを患者に受診するよう促す必要がある。
がん患者における糖尿病
能登氏は最後に、日本での糖尿病を有するがん患者の割合を述べた。糖尿病を有するのは、全がん患者の20.7%、男性では21.8%、女性では19.4%。肝がん患者の32.1%、膵がん患者の31.7%が、糖尿病を合併している13)。なお、日本の一般成人の糖尿病有病率は15%程度である。
また、韓国で実施されたコホート研究によると、がんの既往がない人と比べて、がんの既往のある人・現在がんに罹患している人は、がん全般で糖尿病発症リスクが35%高まることが示された14)。とりわけ膵がんでは5.15倍に跳ね上がる。デンマークで実施されたコホート研究も韓国のデータと同様に、膵がんの糖尿病リスクが5倍となっている15)。
能登氏は今後の課題として、がんに伴う糖尿病リスク増加機序と経過の究明や、最適な治療法・コントロール目標値・医療者連携の確立を挙げ、研究を進めていきたいとまとめた16)。
■参考
1)中村二郎ほか. 糖尿病. 2024;67:106-128.
2)Ling S, et al. Diabetes Care. 2020;43:2313-2322.
3)春日雅人ほか. 糖尿病. 2013;56:374-390.
4)Hu Y, et al. J Natl Cancer Inst. 2021;113:381-389.
5)Noto H, et al. J Diabetes Investig. 2012;3:24-33.
6)Johnson JA, et al. Diabetologia. 2011;54:25-31.
7)Kobayashi D, Endocr Connect. 2018;7:1457-1463.
8)Saito Y, et al. Cancer J. 2019;25:237-240.
9)Mao D, et al. Lancet Reg Health West Pac. 2021;18:100315.
10)Inoue M, et al. Am J Epidemiol. 2008;168:391-403.
11)Adams TD, et al. N Engl J Med. 2007;357:753-761.
12)ORIGIN Trial Investigators. N Engl J Med. 2012;367:319-328.
13)Saito E, et al. J Diabetes Investig . 2020;11:1159-1162.
14)Hwangbo Y, et al. JAMA Oncol. 2018;4:1099-1105.
15)Sylow L, et al. Diabetes Care. 2022;45:e105-e106.
16)後藤温ほか. 糖尿病. 2023;66: 705-714.
(ケアネット 古賀 公子)
道新の記事のリンク先は以下、イラストが見れますので是非
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1016511/
「お酒を減らしたい」と感じたら
□あらかじめ1日に飲む量を決めて、自分でコントロールできるか?
□1週間のうち、飲酒しない日を作れるか?
□飲酒によって家族や周囲に迷惑をかけていないか?
□飲酒によって体や心に不調が出ていないか?
→一つでもチェックできなければ、気軽に精神科に相談を
(白坂知彦への取材を基に作成)有田麻子さん記事
北海道新聞2024年5月26日の記事から引用
北海道新聞で上記のチェックリストがありました。肝臓外来をしてると4つ目の項目が不調がでていることになる方が多いので、相談した方がいいパターンになってきます。精神科にはなかなかか相談しずらいと思っている方は、内科でもまずは相談しつつ、なかなか無理そうだってことで受診を決心される方もいます。肝臓外来でも、多くの方がアルコールで悩んでいらっしゃいます。まずは出来ることからでも少しずつしてみましょう。生活習慣病にもリスクがあることが厚労省からも指針が出ていることにも触れていたので是非読んで欲しい記事ですねえ。
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参考までにこちらのスライド載せておきます。
MASLD(metaborlic dysfunction-associated steatotic liver disease)の診療アルゴリズムがわかりやすくなってきた気がします。
学会誌の図をスライドに起こしてみました。
脂肪肝からさらにNASHという病態が脂肪肝炎を起こしている状態として注目されて、この言葉が代謝的な性質を加えた名称になって、MASHとなってきました。具体的にどのような患者さんを消化器内科に紹介するといいかというアルゴリズムの検討がされてきていて、肝臓学会雑誌の肝臓に川中美和先生たちの論文があって、これだとわかりやすいかもと思えました。
ALT>30という条件とFib4>1.3と血小板数20万未満を組み合わせて絞り込むとより精度が上がるという考える方法なら浸透しやすい気がしました。
←この図を上の写真のように作ってみました。
川中美和,藤井英機,岩城慶大,他.奈良宣言(ALT over 30)のMASLD(metaborlic dysfunction-associated steatotic liver disease)における臨床的意義の検証. 肝臓 2024;65(4):186-191
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「生きる」しくみ コレステロール 食べ物から直接吸収せず 道新2024.4.17 より