第23回北海道門脈圧亢進症研究会 がありました。
写真は右から今回の研究会の当番世話人の北大の中西先生、代表世話人の小林病院矢崎先生、と川西です。
例年だと三月の初めなのですが会場の関係でことしは3月の中すぎになりました。相変わらず誤字脱字あり得る状態での感想文的な報告ではありますが、参考になれば幸いです。
世話人会では、世話人代表の矢崎先生のスライドを使った門亢症の現状と今後の課題ってことで語っていただき、外科からIVRや内視鏡屋になってきたこの会も内科的な治療、肝不全の治療や他疾患で起こる門亢症を勉強するような会に変わってきていることを実感しました。
最後に今後の会の役割としてエビデンスを示していくような役割、まとめなどを検討してはどうかと旭川医大の大竹先生から提案あり、門脈血栓の治療についてアンケートなどをとってみてはどうかと会場内の先生方からも意見があり、検討していくこととしました。
研究会では12の演題が発表され、とても刺激的でした。
1で小林病院の矢崎先生から孤立性胃静脈瘤のヒストアクリルとEVLを用いる治療の報告がされました。EVLをかけるときに浅めにかけるのがポイントということでした。食道よりも吸引した歳に引き込まれる感じが早くて多い感じがあるので気を付けてくださいとのこと。
2では、孤立性胃静脈瘤の携帯と治療法の選択ということでこの間矢崎先生が経験してきたことを中心に、ヒストアクリルだけでは再発が多かったこと、B-RTOが可能な症例については検討していくそれができない場合はヒストアクリルという方針
が妥当だろうとのことでした。
矢崎先生の孤立性胃静脈瘤の自然経過観察症例では2年で10%くらい出血があったそうです。
3では、胃静脈瘤の破裂をきっかけに診断がついたBudd-Chiari症候群の1例ってことで、久しぶりに発表に触れました。出血してなかったら静脈の狭窄部を広げるだけでも改善するかも知れないけど、B-RTO試みるも瘤が描出されにくくできず、再出血の危険がありハッサブ手術を行ったと言うことでした。今後肝移植などの必要性も出てくるかも知れないと言うことでフォローの結果が聞けるとさらに勉強になるなあと思いました。
4では、門亢症を呈した原発性骨髄線維症の4例のまとめってことで、札幌厚生病院の木村先生から、今後とも経過を残していくことが必要な病態で、厚生病院ならではの門亢症の治療による患者さんQOLの改善が期待して行きたいところだなあと思いました。
5では市立札幌病院の梅村先生から特発性SMV血栓症の1例が報告されました。患者さんが入院治療を拒否したため外来でのワーファリン治療を行ったと言うことでしたが、経過がよく今後どのくらいの継続が必要か検討していきたいとのこと、うまく維持できるといいと思いました。
6では膵動静脈奇形が十二指腸からの繰り返し出血に関係が有るのではという報告でした。何度もショック状態になるくらいの出血があり、患者さんが何とかして欲しいって気持ちでこられているのがよく伝わってきました。動静脈奇形の関与の仕方がどうなのか、十二指腸にある静脈の状態などが把握されて手術の可能性が有れば手術治療が優先なのかなと思いました。
7では大腸癌の脾転移に併発した胃静脈瘤へのヒストアクリル注入とPSEを行ったという左側門脈圧亢進症例で貴重な経験が発表されていて勉強になりました。IVRも含めいろんな効果が蓄積されて次の病態への治療がなされていく過程に本研究会の意義もあるなあと感じた発表でした。
8では札幌厚生病院の北川先生から、GAVEやPHGで厚生病院で行ってきているEVL治療の最中に結紮部からの噴出性の出血があった症例が報告され、再度EVLで止血できるので大丈夫ということでしたが、慣れない先生にはまだ難しいかもと思えました。でも、GAVEへのEVLの治療効果はとてもいいので難治性の繰り返す出血症例では出血を念頭に置いてでも検討すべき主義なんだろうなあと思いました。今後この治療の普及すると驚かれる先生が多いんじゃないかなあと思います。特別講演に来ていた日高先生もびっくりしていました。北海道での新しい治療の発信があることは本当に私もうれしいです。
9では、札幌緑愛病院の川西から昨年報告した、直腸静脈瘤破裂例のその後再出血ありバルーンを装着して直腸のEISをしたところ、足側への排血がなくなり副作用が軽減しとてもよかったと報告してきました。バルーン圧迫はちょっと押すくらいでも十分組織が圧迫されて血流が制御されている印象があり肛門外から内へ手で圧迫するだけでも同じような効果がありそうでした。
10では、川西から肝性脳症に対してPSE先行B-RTOを施行した2症例の報告をしてきました。PSEのみで脳症が改善した症例を経験していたので、PSEのみで改善したらいいのになあと思っていたのですが、アミノレバンの点滴が週2回から週1回にはできたものの点滴からの解放はされなかったためB-RTOを追加し、経過がいいという報告でした。B-RTOのみでは門脈圧が上がるので静脈瘤の再発などが問題視されてきたのですがPSEを組み合わせることで門脈圧をあげすぎず肝機能の改善が得られなるのではないかと期待して経過を見ていいきたいと思っています。
11では札幌共立五輪橋病院消化器科の大井先生からの報告で脾動脈瘤術後の再発で胃動静脈瘤に対してIVRが有効であったとの報告、非常に貴重な症例でコイル塞栓を施行して止血状態が維持できているとのことでした。
12では、北海道消化器科病院の町田先生からの報告、多発脾動脈瘤、脾動静脈シャント、傍臍静脈シャントにIVRを施行して胃静脈瘤の止血がえられ腹水や脳症のコントロールが得られた非常に苦労して治療がなされており、患者さんと頑張って治療されてきた先生の熱意が伝わってきて感動しました。あきらめないでいい結果が得られたことよかったです。
その後北里大学東病院消化器内科の日高央先生に門脈圧亢進症に対する新しい薬物療法と題して講演をしていただきました。
この間検討してきた、ARBについてはベータ-blockerには及ばないなあという印象でしたが、PPIの再出血予防効果は十分あるなあと思いました。
あと、ネクサバールに門脈圧を下げる効果があることも確認されていて、今後の使い方の工夫ができそうな気がしました。臨床にそった研究でとてもわかりやすかったのでよかったです。
今後とも北海道門脈圧亢進症研究会に注目していただけたら幸いです。