http://www.nhk.or.jp/ohayou/marugoto/2015/01/0123.html
NHKのページの抜粋です。
おはよう日本 NHK総合テレビ 2015年1月23日(金) NEW
治療薬 急速に進歩 その一方で…
阿部
「国内に推計150万人の感染者がいるC型肝炎ウイルス。
感染すると、10年以上をかけて少しずつ肝硬変が進行し、肝臓がんを引き起こします。
毎年、推計で2万人以上の患者が、このC型肝炎が原因の肝臓がんで亡くなっています。」
鈴木
「今、このウイルスの治療薬が劇的な進歩を遂げています。
15年ほど前は治療しても20%の人しか治らなかったのが、今では90%の人が早期治療でウイルスを取り除くことが出来るようになり、がんにならなくて済むようになっているのです。」
阿部
「一方で医療現場では、こうした薬による治療を患者が十分に受けられていないという問題が起きています。」
C型肝炎 治療薬はあったのに
日本肝臓学会 理事 泉並木医師
「小さい白いところある。 これも小さいがんだと思う。」
都内に住む65歳の女性です。
C型肝炎ウイルスが原因の肝臓がんを発症しました。
ここ数年、入退院を繰り返す生活が続いています。
感染がわかったのは9年前。
近所の総合病院に通っていましたが、肝機能の検査をするだけで何年たっても治療を勧められることはなかったといいます。
肝臓がんを発症した女性
「(治療について)全く何も言われなかった。」
日本肝臓学会 理事 泉並木医師
「インターフェロン(治療薬)やると言われなかったのか。」
女性は会社の健康診断がきっかけで、たまたま肝臓の専門医がいる別の病院を受診しました。
すると、すでに肝硬変が進行、深刻な状態になっていたのです。
女性はその後、肝臓がんを発症。
手術を受けました。
しかし、再発を繰り返し、今も厳しい治療が続いています。
日本肝臓学会 理事 泉並木医師
「もうちょっと早く治療していれば、もう少し(症状が)進まないうちに治療ができた。」
肝臓がんを発症した女性
「まさかそこまで悪くなっているとは夢にも思っていなかった。
ともかく早く(治療を)受ければよかった。」
C型肝炎の治療薬は、劇的に進歩しています。
15年ほど前までは、薬を使っても治る人は20%ほどでした。
ところが、10年前にはおよそ50%に。
さらに4年前には70%まで増え、今では90%近くの患者が治るようになっています。
しかし、女性のように医師から治療を勧められないケースは後を絶たないといいます。
厚生労働省の研究班が、企業で健康管理を担う全国の医師900人を対象にアンケートした結果です。
感染がわかったら「治療のためすぐに専門医に紹介する」と答えた医師は53%にとどまりました。
中には、「がんが疑われるまで紹介しない」と答えた医師もいました。
日本肝臓学会 理事 泉並木医師
「10年20年以上前の知識を持った医師たちが、まだ肝機能が悪くなってから初めて治療するものという固定観念を持っている。
肝臓がんとわかってから初めて(専門医に)紹介される方は、今もたくさんいる。」
C型肝炎 治療薬はあったのに
阿部
「取材にあたった科学文化部の稲垣記者です。
C型肝炎の治療薬、急速に進歩しているのに、医師の側がそれを知らないという先ほどの専門家の言葉に驚いたんですが、どういうことでしょうか?」
稲垣記者
「肝臓の治療を専門にする医師の間では、新薬の登場というのはよく知られているんですが、C型肝炎の治療薬は進歩が極めて早かったので、専門外の医師には十分知られているとは言い切れない実態があります。
C型肝炎というのは、15年前は治療期間が最大で1年間、さらに副作用も強く、20%ほどの患者しか治りませんでした。
このため医師の側も患者に治療を勧めにくいという事情があり、肝硬変など、症状が悪化してから初めて治療するというケースも多かったんです。
そのイメージが今も残っているということです。
専門の医師らは、薬で助かるはずの患者が肝臓がんになり亡くなっているケースが少なくないと指摘しています。」
鈴木
「信頼すべき医師がこのような状況というのは、患者としては不安になりますよね。」
稲垣記者
「はい、このため患者の多い広島県などの自治体では、一般の医師に最新の治療薬について知ってもらう講演会を行ったり、患者を専門医に紹介してもらえるよう呼びかけたりする啓発活動を行っています。
そして一方で、患者の側にも危機感が薄いという問題もあるんです。
C型肝炎というのは自覚症状が無く、症状の進行も10年単位と比較的緩やかです。
健康診断などで感染がわかっても、その後、放置してしまうという人も少なくありません。
感染が分かった人に適切に受診や治療を促すにはどうすればいいか。
各地の取り組みを取材しました。」
C型肝炎 治療をどう促す
患者に早期の治療を受けてもらうためにはどうすればよいのか。
厚生労働省の研究班で責任者を務める泉医師は、患者が、いつ、どのくらいの確率でがんになるのか予測するシステムを作り、危険性をわかりやすく示そうとしています。
都内に住む58歳の女性です。
C型肝炎ウイルスに感染していることがわかり、治療した方がよいとは思っていましたが、仕事もあり、時間がたってしまったといいます。
日本肝臓学会 理事 泉並木医師
「自覚症状無い?」
C型肝炎ウイルスに感染している女性
「自覚症状、無いです。」
日本肝臓学会 理事 泉並木医師
「食欲も普通?」
C型肝炎ウイルスに感染している女性
「食欲もあるし、働くこともできる。」
泉医師は、およそ1,000人の患者のデータをもとにつくったシステムで、この女性が5年以内にがんになる確率を調べました。
日本肝臓学会 理事 泉並木医師
「5年以内にがんになる確率が6.9%。」
その結果、女性が、がんになる確率は今の段階で6.9%。
今後2年放置すると、その確率は20%にまで上がることがわかりました。
C型肝炎ウイルスに感染している女性
「漠然としていて不安はあったので、データ化されると、頑張ろう、早めに治療しようと考えられる。」
推計150万人とされるC型肝炎ウイルスの感染者。
医療機関に来ないままになっている人も多く、どう働きかけるのかも課題です。
肝臓がんの死亡率が全国ワーストワンの佐賀県。
大学と自治体が協力して、直接、感染者に働きかける新たな取り組みを始めています。
まず市や町がバラバラに実施している健康診断の結果をつなぎあわせ、C型肝炎の検査で陽性だった人の数を確認しました。
その数、1,120人。
さらに、県に対し、治療費の補助を申請した人のデータとつきあわせてみると…。
補助を申請した人は、僅か194人。
感染者の8割以上が、治療を受けないままになっている可能性が初めて浮かび上がったのです。
県内の各自治体では、今後、保健師が直接これらの人を訪問するなどして、早期に治療を受けるよう促すことにしています。
佐賀大学医学部 肝疾患センター 江口有一郎教授
「(治療に)行かなければならない人を市町村が早く認識して、アプローチして頂く。
そして医療にバトンタッチして、ウイルスをやっつける治療を提案する形が理想。」
C型肝炎 治療をどう促す
阿部「そもそもC型肝炎の治療を受けていない人に、どう受けてもらうかも課題なんですね。」
稲垣記者
「感染がわかっているのに医療機関を受診していない人は、全国で推計50万人以上といわれています。
このままでは薬の登場で本来治るはずの患者が、がんで死ぬケースが後を絶たないと、国も治療や検査の費用を補助をするなどの対策を進めているんです。
薬の進歩でC型肝炎は治る病気になったといえますが、医療現場と行政が連携して、感染している人が早期に治療を受けられる仕組み作りが早急に求められます。」