2014年5月16日の札幌地裁での意見陳述です。B型肝炎の原告さんから届きました。1人でも多くの方が救われるようみんな辛い思いを伝えながら頑張ってくれています。
以下届いた文章を添付します。
最後に、裁判長がこの日の個別和解者の原告番号を読み上げる段になり、思わず声を詰まらせた為、左隣りの裁判官がとっさに代読するハプニングが起きました。
私は、これまでに何度も傍聴してきましたが初めて見た光景に驚きと感動でとても胸が熱くなりました。
公平な立場であるべき裁判長としては、ふさわしくない行為でしょうが、きわめて人間味の溢れた反応でした。
被告席を埋め尽くした15名の国側の人間達にも、我々原告(肝炎患者)の切なさや口惜しさが多少は伝わったことでしょう。
当日の意見陳述書を読み返しても、涙がでます。傍聴出来なかった人は読んでみてください。
意見陳述書 平成26年5月16日
札幌地方裁判所民事第5部合議係 御中 原告番号○○○○
1 私は、現在69歳であり、平成16年12月、B型肝炎ウイルスの感染を原因とする慢性肝炎を発症し、治療を続けていましたが、その後、B型肝炎訴訟ことを知り、平成23年9月30日、原告番号203番として提訴しました。
私は、平成24年11月、予防接種によるB型肝炎ウイルスへの感染と認定され、国と和解をしました。
私は、現在2ヶ月に1回の割合で通院をし、検査や投薬治療を受けていますが、歳を重ねるごとに、定期的な通院も身体的に大変だと感じるようになっています。幸い、今のところ慢性肝炎自体の症状は落ち着いているものの、投薬を受けている核酸アナログ製剤による副作用のためか、腎機能の数値が少しずつ悪くなっています。
私としては、「このままの状態が何とか保てたら。」とは思っていますが、「
肝硬変や肝ガンへ進行するのではないか。」という懸念が頭を離れることはありません。
私には2人の息子がおりますが、本日は、長男の遺族原告(夫、長男の妻、私の3名)を代表して、この法廷で意見陳述を行うものです。
2 長男は、昨年(平成25年)9月2日、肝細胞ガンのため、入院後わずか1週間にして、43歳の若さで亡くなりました。
長男は、会社員であり、毎年、社内での健康診断は受診していたようですが、肝機能の数値には異常がなく、B型肝炎ウイルスの検査自体も一度も行っていませんでした。
私は、平成16年12月にB型肝炎を発症したこともあり、2人の息子には一度検査を受けるようにと何度か話をしていました。
もっとも、私自身、B型肝炎発症後も比較的普通の生活を送っていましたので、長男としては、B型肝炎はそれほど深刻な病気であるとの認識がなく、検査を受けるまでのことはないと思っていたかもしれませんが、今となっては、長男がどのように考えていたか知るすべはありません。
長男は、東京において、妻と2人で生活をしており、年に2回ほど妻と共に帰省をしては、私達夫婦と一緒に旅行をしたり、北海道のグルメを楽しんでいました。
また、長男は、日頃から絵ハガキやメール等で生活の様子を伝えてきていました。
長男夫婦とは昨年の2月に紋別市へ流氷を見に行きましたが、今思うとこれが長男との最後の旅行となってしまいました。
3 長男は、昨年6月27日、腰に痛みが出るようになったことから、自宅近くの整形外科病院に受診をしました。
この整形外科病院では、「腰椎椎間板ヘルニア」との診断を受けたものの、症状が改善しないことから、7月6日、別の整形外科病院を受診したところ、「腰椎椎間板ヘルニア、左坐骨神経痛」と診断されました。そのため、長男は、この整形外科病院に定期的に通院をし、神経ブロック注射や投薬などの治療を受けていました。
しかしながら、長男は、この整形外科病院での治療によっても腰の痛みが良くならず、むしろ、会社に出勤することもできないほどの強い痛みが出るようになったことから、整形外科が充実している東京都内の総合病院を紹介されました。そこで、長男は、8月27日、この総合病院に受診したところ、腰椎MRI検査で悪性腫瘍の骨移転が疑われ、即日入院となりました。
4 私は、昨年7月中旬ころ、長男の腰の痛みのあることを聞いてはいましたが、整形外科に通院をしているということでしたので、まさか肝細胞ガンであるなどとは思いもしていませんでした。
長男と妻とは、8月28日午後8時ころ、担当の医師から、B型肝炎ウイルスを原因とする肝細胞ガンであることや、病状としてもかなり厳しい状態にあることなどの説明を受けました。この際、長男は、はじめて自分がB型肝炎ウイルスに感染していることを知りました。長男の妻から、私に対し、長男の病状を知らせる連絡があったものの、私としては、あまりにも突然のことであり、ただただ驚くばかりであり、頭の中は真白となってしまい、いずれにしても長男の元に行かねばならないということで、翌8月29日、長男が入院をする東京都内の総合病院へ夫と共に駆けつけました。長男の元に駆けつけたところ、長男は、病室で点滴を受けており、目や手足に黄疸が出ていましたが、私達に対して、「遠いところどうもありがとう。すみませんね。」、「こんな病気になってしまったけど、心配しないでね。」などと、苦しそうな様子はなく普通に話かけてきました。
もっとも、今考えると、長男は、私達に心配を掛けまいと、できる限り元気な姿を装っていたのだとろうと思います。
また、長男は、私に対して、「黄疸はひどいかな。」と尋ねてきたので、私は、「大丈夫だよ。たいしたことないよ。」と答えると、安心した様子でした。
この会話の最中、長男は、妻に対し、何度も「ごめんね。ごめんね。」と言っていましたが、これは、自分がこのような重い病気にかかってしまったことを気にして詫びていたのだと思います。
この日の夜、私と夫とは、担当の医師から、長男の病状について直接説明を受けましたが、この説明によると、長男には肝細胞ガンのほか、肺や差仙骨にもガンが転移している状態であり、ガンに対する根本的な治療はできず、余命についても「何ヶ月という段階ではなく、Ⅰ日Ⅰ日のレベルである。」とのことでした。
また、医師からは、本人には余命のことは説明はしていないと言われました。この日以降、私と夫は東京にとどまり、毎日、長男の病室を訪れ、夜まで一緒にいるようにし、長男の妻も病院の許可を得て病院に泊まり込むようになりました。
翌8月30日、長男は、前日に私達とおしゃべりをしすぎたせいか、疲れている様子が見受けられ、また、腰の痛みも相当つらい様子でした。
黄疸については、私の目には前日とほとんど変わらないように見えましたが、看護師の方によると、前日より黄疸が強く出ているとのことでした。
その翌日である8月31日には次男夫婦も上京し、長男の病室を訪問しました。長男は、痛みを和らげるため、モルヒネの量を増量してもらっており、Ⅰ日の大半を寝て過ごしている状態でした。
この日、長男は、食事をとることができないことから、カテーテルを静脈に入れており、また、尿意はもよおしているものの現実には尿が出ないという状態でした。
9月Ⅰ日、これまで長男の左足のみにあったむくみが右足にも見られるようになり、長男は、前日と同様、ほとんど眠っているという状態でした。
この日は病院の設立記念日とのことから、入院患者にお昼に紅白のまんじゅうが配られたのですが、長男は甘い物が大好物であったことから、まんじゅうを半分にして口にしていました。
この日の昼間付き添っていた私と次男の妻は、長男が「足がだるい。」と言うので、交代で足をさすってあげたところ、気持ちよさそうな様子をしていました。この日の夜、私、夫、次男、次男の妻が病室を出る際に、私は、長男に対し、「明日またね。元気でね。」と声を掛けたところ、長男は、私に対し「うん。ありがとう。」と答えていました。
この際、私の夫と次男と握手をしていましたが、私は、たまたま長男と握手をしそびれてしまいました。
9月2日、この日は、長男が入院中である総合病院の手配により、肝臓ガンの治療例が豊富な別の病院で診察を受けるための予約をしていました。
しかしながら、長男は、午前5時30分に突然ショック状態となりました。すぐに長男の妻から私の元に電話があり、私や夫のほか次男夫婦も長男の元に駆けつけましたが、午前7時に呼吸停止となり、気管挿管が行われましたが、午前9時50分には呼吸が止まり、そのまま長男は亡くなりました。
長男は、平成25年8月27日にB型肝炎ウイルスに感染していることや肝細胞ガンであることを初めて知り、そのわずか6日後にこの世を去ることになってしまいました。
5 長男は、小学校から高校までⅠ日も休むことなく通学しており、健康には自信を持っていました。
また、長男は、結婚生活9年目で仕事も順調であり、まだまだ沢山やり残した事があったと思うと、本人自身が無念でならなかったと思います。
私がB型肝炎ウイルスに感染していたことが原因であると思うと、長男や長男の妻には本当に申し訳なく、未だに長男の死を受け入れることはできません。
次男も、最近、献血を行ったところ、B型肝炎ウイルスのキャリアであることが分かったそうです。私は次男からこの話を電話で伝えられたのですが、その際、私は電話口で貧血を起こし、倒れ込んでしまいました。次男は、自責の念にかられている私に対して、「お母さん、自分を責めないでね。」と言ってくれましたが、これが私のせめてもの救いとなっています。我が子を先に看取らねばならないということは、自分の命を取られるより遥かに辛い経験でした。
先日、原告団長の高橋朋己代表がお亡くなりになられ、私も葬儀に参列してまいりましたが、ご両親が健在であられ、さぞかしお辛かったのではとご推察いたしました。
6 最後に、国は、国民の健康と命を守るのがその責務と思います。
そのため、国は、これ以上、私のような思いをする者が出ないよう、
① 肝炎ウイルス検査の更なる普及
② ワクチン、検査の無料化
③ 医療助成の拡大(患者は一生薬を飲み続けなけばなりません)
④ 除斥期間をなくす(20年以上も苦しんできた方を是非救って下さい)
⑤ 被害者が安心して治療に専念できる環境を整える
などの対策を一刻も早くとることを強く希望して、私の意見陳述を終わります。
以上
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