ヤマアカガエルの産卵に春を知る日

山里の日々の生活と自然、そして稼業の木工の話

古材のベンチ

2017年06月23日 | 木工
催事の写真を少々。





テーブルのセット。

われながら、椅子・テーブルのセットを作って催事に持って行ったのは初めてかも。







綺麗な会場で飾ると家具もよく写ります。







古材でベンチを作りました。


古材とは、私がお世話になった母校の寮の階段板です。

老朽化で建て替え・解体になったところを無理にお願いして預かったものです。


その寮は木造で、私が住んだ時でもすでに築35年ほどで、ずいぶんくたびれた雰囲気でした。

男子寮生はラグビーやサッカーなどして砂が付いた服のまま中に入るので部屋が傷みます。

私が出てから約20年。とうとう建て替えとなったのです。




新しい寮が建ち、かつてあった寮を偲ぶ記念品として、旧寮に使われていた板で作った物を収めることになりました。




預かった材を見ると、フローリング材はナラ、階段の板は一枚板のタモでした。

もちろん当時の私には何の材かなんてわかりませんでしたが、階段の板などは印象に残るような良い板でした。

木工屋になった私が解体の話を聞いてまず、「あの板は救わねば!」と思ったのでした。









これがその階段の板。樹種はタモ。

幅は約30cm、長さは120cmほど。






裏には反り止めのために蟻桟の溝があります。

この溝は鑿を使って大工が手作業で刻んでいます。




お預かりしてからもずいぶん経ち、はっきり言ってかなりばっちい。

しかしこれをきれいに削ってしまったのでは意味がありません。

多くの人たちが住み、踏みしめ、使ってきた痕跡を残したこの板の味を生かさなくてはなりません。

しかし塗料が剥げ、ささくれ、ネジや釘の入ったままで作っては使用に支障があります。

その辺をどのくらい手を入れるかが悩みどころです。

また、使い込んだ材には砂が入っているので、刃物を当てたくないというのも正直なとこです。








裁断し、仕口を作り、古い塗料を剥がし、ペーパーで磨きます。







組み立て。






こんなベンチになりました。






誰がやったか、ずいぶんへこみがあります。

人がよく踏む真ん中あたりの傷みが激しいですね。






蟻棧の溝なども残してあります。






階段の作るための溝などがありますがそのままです。





最近建てられる家ではこんな板を階段に使うのは稀になりました。

やはり材木は枯渇しつつあるのでしょうか。