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公転1周分の観測データが無いのに長楕円軌道の系外惑星を発見できた理由

2019年09月14日 | 宇宙 space
アメリカの研究チームの観測から、主星から遠く離れる長楕円軌道を持つ巨大惑星が見つかったんですねー

通常、長い公転周期を持つ系外惑星を“ドップラーシフト法”により見つけるには、惑星の公転1周分の観測データが必要になります。
でも、この惑星は公転1周分のデータを待たずして発見にいたったようですよ。


約45年から100年の公転周期を持つ惑星

カリフォルニア工科大学の研究チームは、長い公転周期を持つ系外惑星を探す数少ないグループです。
  長い公転周期を持つ系外惑星を見つけるには、数十年という長期にわたる観測が必要になる。

この研究チームが1997年から進めてきたのが、おとめ座の方向にある恒星“HR 5183”を公転する惑星を探すこと。
観測にはハワイのケック天文台の高分散分光器“HIRES”が使われています。

そして、見つけたのが、公転周期が約45年から100年の範囲にある“HR 5183 b”と呼ばれる特異な軌道の惑星。

“HR 5183 b”は木星の3倍の質量を持つ巨大惑星で、その公転軌道は太陽系でいうと近日点が小惑星帯より内側、遠日点が海王星の外側にまで到達する長い楕円を描いていたんですねー

長楕円軌道を持つ巨大惑星は、これまで他の恒星の周りにも見つかっていました。
でも、これほど恒星から遠い場所を通るものは初めてでした。

他の多くの惑星同様、主星が誕生した後に残った原始惑星系円盤の物質から生まれた“HR 5183 b”。
当初は円軌道を描いていたと考えられています。

ほぼ同サイズの惑星の重力により惑星系の外側へと押し出されて、現在のような長楕円の軌道になったようです。
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“HR 5183 b”の軌道を太陽系惑星の軌道に重ねた図。



主星の光の波長の“ゆらぎ”を観測する

“HR 5183 b”の発見に用いられたのは“ドップラーシフト”という方法でした。

主星の周りを公転している惑星の重力で、主星が引っ張られると地球からわずかに遠ざかったり近づいたりします。

研究チームは、この動きによる光の波長の変化“ゆらぎ”を読み取る“ドップラーシフト法”で惑星の存在を検出しています。

ただ、この方法だと惑星の公転1周分の観測データが必要になることに…
このため、惑星の軌道が主星から遠く、数十年から数百年もの公転周期を持つ惑星の発見は難しくなります。

でも、“HR 5183 b”の場合は事情が違っていました。

なんと、公転1周分のデータを待たずして発見されたんですねー

決め手になったのは“HR 5183 b”が持つ特異な軌道。
長楕円軌道ゆえに主星に近づいた際に加速する特徴的な運動により発見が早くなったそうです。

主星から遠く離れた惑星を“ドップラーシフト法”で検出するのに、公転1周分の観測データが無くても良いケースもあるんですね。

太陽系と“HR 5183 b”の軌道を重ねた動画。
近日点(木星軌道の内側)で急加速しているのが分かる。
from Keck Observatory on Vimeo.



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