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連星系誕生の謎に迫れるかも… 双子原始星から噴き出す不揃いな分子流から分かったこと。

2019年09月23日 | 星が生まれる場所 “原始惑星系円盤”
双子の原始星それぞれから噴き出す不揃いな分子流が、アルマ望遠鏡による観測で検出されました。

この分子流から分かってきたのは、それぞれの原始惑星系円盤の回転軸も大きく傾いている可能性でした。
このことは、連星系形成のメカニズムを解明する手掛かりの1つになるようです。


連星はどうやって誕生する?

銀河系の約半数が連星系の恒星と見られているのですが、その連星はどのように誕生するのでしょうか?
実は、連星系が形成されるメカニズムについては、まだよく分かっていないんですねー

例えば“乱流分裂モデル”では、星の材料である分子雲が乱流によって複数の分子雲コア(星のたまご)に分裂して、分子雲コア同士が互いに回りあう中で星が生まれ、最終的に連星系が生まれると考えられています。

また“円盤分裂モデル”では、原始星を取り巻く原始惑星系円盤が分裂して、もう1つの星を生み出していると考えられています。

これらのモデルの複合的な要因で最終的に連星系が生まれるという考え方もあります。


分子流から分かる原始惑星系円盤の傾き

連星形成のメカニズムに迫るために重要なこと。それは、数多くの若い連星系を観測して、特徴を統計的に考察することです。

その際に注目すべき特徴の1つに、原始星の周りにできる原始惑星系円盤の向きがあります。

今回の研究では、へびつかい座の方向に位置する双子原始星“VLA 1623A”をアルマ望遠鏡で観測。
この原始星のペアは非常に若く、間隔が数十天文単位と非常に狭いという特徴がありました。
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アメリカの電波干渉計“JVLA”による観測結果。
左側に見えるのが双子原始星“VLA 1623A”。
右に見える“VLA 1623B”の正体は分かっていない。
観測の結果、双子原始星のそれぞれから噴き出す、これまで知られていなかった不揃いな分子流が検出されます。

間隔の狭い連星系で、不揃いな分子流が見つかった例は初めてのこと。

一般的に分子流は原始惑星系円盤の回転軸方向に飛び出します。
なので、分子流が不揃いということは、それぞれの原始惑星系円盤の回転軸も大きく傾いているのかもしれません。
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アルマ望遠鏡がとらえた“VLA 1623A”から噴き出す分子流の分布。
高速で近づくガス(青)、低速で近づくガス(水色)、低速で遠ざかるガス(橙)、高速で遠ざかるガス(赤)を表している。


円盤の向きが揃わない可能性

さらに、今回の観測では、分子流の中心部を流れるジェットの構造から、双子原始星の軌道運動に起因すると思われるジェットの波打ち現象もとらえられます。

1周期の間隔は約300年で、双子原始星の軌道周期である400~500年とほぼ一致していました。
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“VLA 1623A”からの高速度分子流(赤は遠ざかる成分、青は近づく成分)。
大量に存在する高密度ガス(緑)を分子流がかき分けて外側に広がっている様子が分かる。
遠ざかるジェット状の成分の拡大図(上)では、波打つ構造が3周期分はっきりと確認できる。
これまで、間隔の狭い連星系の多くは原始惑星系円盤の分裂によって形成され、円盤の向きは揃っているはずだと考えられてきました。

でも、磁場や乱流など現実的な様々な効果を取り入れた近年の円盤分裂モデルでは、円盤の向きが揃わない可能性も指摘されています。

今回の“VLA 1623A”の観測結果はこの考え方と一致するのですが、乱流分裂モデルの可能性を否定するものではありません。

今後期待されるのは、このような観測を増やすことで連星系形成のモデルの検証が進むこと。

回転軸が不揃いな原始惑星系円盤からは、不揃いな惑星系が生まれてくる可能性もあります。
なので、連星系形成の研究から多様な系外惑星の誕生の謎にも迫ることができるのかもしれませんね。
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双子原始星からの不揃いな分子流と原始惑星系円盤(イメージ図)。


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