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地震や磁場など… 火星の内部構造を調べる探査機“インサイト”の初期成果が発表されましたよ。

2020年03月21日 | 火星の探査
NASAにとって火星への着陸に成功した8機目の探査機が“インサイト”です。
今回、“インサイト”の探査による初期成果が発表されたんですねー
地上を走り、丘を登ることで火星の地表を調べてきたこれまでの探査機と違い、“インサイト”の役割は火星の内部を奥深くまで調べ、地球などの岩石天体がどのように形成されたかを明らかにすること。
なので、同じ場所にとどまり火星内部の動きを正確に検知する必要があるようです。
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火星の地質調査を行う探査機

NASAの低予算プログラム“ディスカバリー”の候補に挙がっていた、3つの計画から選ばれたのがインサイト計画でした。

選ばれた理由は、スケジュールがずれ込む可能性や、予算の上限を超える可能性が低かったこと。
ただ、搭載機器の“地震計”に問題が発生し打ち上げは延期…
“地震計”の改良や、完成している探査機本体や機器の保管などに更に予算が必要になってしまいます。

それでも2018年5月に火星探査機“インサイト”は打ち上げに成功。
2018年11月には火星の赤道付近にあるエリシウム平原地域の“ホームステッド”と呼ばれる浅いクレーターに着陸しています。

これまでの約1年の探査によって次々と新たな知見が得られていて、火星の地震“火震”、チリ、奇妙な電磁パルスなどについての研究が論文として発表されてきました。
火星を探査する“インサイト”(イメージ図)。
火星を探査する“インサイト”(イメージ図)。(Credit:IPGP/Nicolas Sarter)


“火震”を測定し内部構造の組成を調べる

史上初めての、火星の内部構造を調べることを目的とした探査機が“インサイト”です。

メインの測定機になる高精度の火星地震計“SEIS”では、2019年4月に初めて“火震”が検出されています。

“火震”を測定することによって、火星の内部構造の組成について知ることができます。
このことは地球を含む岩石惑星が、どのように形成されたかを明らかにすることにもつながります。

火震は予想よりも頻繁に起こっていて、2019年末までに1日当たりおよそ2回の“火震”を検出。
  これまでに“SEIS”で検出された震動は450回以上にのぼっている。
ただ、“インサイト”が最初の“火震”を検知するまでに要したのは数か月… 着陸した時期は、たまたま“火震”が起こらなない穏やかな時期だったようです。

火星には地球のように地震活動を起こすプレートはありません。
でも、“火震”を引き起こす可能性のある火山活動領域が存在しているんですねー

この火山活動領域の1つ“ケルベロス地溝帯”は、崖の側面から振り落とされたらしい岩塊が見られる場所で、これまでに検出されていたペアの“火震”と強い関係がある領域だと考えられています。

“ケルベロス地溝帯”では大昔の洪水によって長さ約1300キロにわたる溝が作られ、そこに溶岩流が流れ込んだと見られています。
その溶岩流には200万年以内に“火震”によって破壊された証拠が示されていました。
NASAの火星探査機“マーズ・リコナサンス・オービター”に搭載されたカメラ“HiRISE”で撮影されたケルベロス地溝帯。
NASAの火星探査機“マーズ・リコナサンス・オービター”に搭載されたカメラ“HiRISE”で撮影されたケルベロス地溝帯。(Credit:NASA/JPL-Caltech/University of Arizona)


磁力計により示されたこと

“インサイト”に搭載された磁力計により示されたことがあります。

それは、着陸地点での局地的な磁場が、これまでの予測よりおよそ10倍も強いこと。
確かに数十億年前の火星には磁場がありました。でも、現在は存在していないんですねー

“インサイト”周辺の地表の岩のほとんどは、年代が若く磁化されていないと考えられます。
なので、“インサイト”が検出した局所磁場は、地下に埋もれた古い岩に残されたものとみられます。

“インサイト”の下にある磁気層がどのくらい強く、深いのかは、探査データを地震学や地質学から得た情報と組みわせることで、明らかにできるようです。

さらに明らかになったのは、“インサイト”が検出する磁気シグナルの強さが昼と夜とで異なっていて、真夜中頃に脈動すること。
原因はまだ分かっていませんが、可能性の1つとして、火星の大気と相互作用する太陽風に関連していることが考えられています。


カメラではとらえられない旋風

“インサイト”は火星の風速、風向き、気圧をほぼ連続的に測定し、地表付近の大気が渦巻状に立ち上る突風の一種である“チリ旋風”と呼ばれる数千もの旋風を検出しています。

このことから、“インサイト”の着陸地点では、他の探査機がこれまでに着陸した場所よりも多くの旋風が起こっていることになります。

ただ、旋風は頻繁に起こっているにもかかわらず、“インサイト”のカメラではとらえられず…
火星地震計だけは、この旋風が巨大な掃除機のように、火星の表面を引っ張っていることを検知していました。

この他に“インサイト”には、火星の自転に伴うふらつきを電波で調べて、火星の核が固体か液体かを調べる装置や、熱流量測定装置などが備えられています。

これらの装置を使った今後の探査によって新発見がもたらされれば、火星や地球を含む岩石惑星が、どのように形成されたのか明らかになるかもしれません。

“インサイト”による探査が順調に進み、研究が進展することが期待されますね。
火星の地下構造と探査を示したイラスト。
火星の地下構造と探査を示したイラスト。(Credit:J.T. Keane/Nature Geoscience)


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