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“フェルミ・バブル”や“マゼラニック・ストリーム”にも影響を与えていた? 350万年前に起こった銀河中心ブラックホールによる爆発

2020年06月23日 | ブラックホール
天の川銀河周辺のガスの研究から、中心にある超大質量ブラックホールがかつて爆発的現象を引き起こしていた可能性が示されました。
これまで無関係だと考えられていた“フェルミ・バブル”と“マゼラニック・ストリーム”。
実は銀河中心のブラックホールによる強烈な輝きが、“フェルミ・バブル”と“マゼラニック・ストリーム”にとって大きな役割を果たしていたようです。


高温の巨大なプラズマの泡構造“フェルミ・バブル”

アメリカ・宇宙望遠鏡科学研究所の研究チームが、ハッブル宇宙望遠鏡を使った観測から見つけたもの。
それは、天の川銀河の中心に存在する超大質量ブラックホールが、過去に爆発的現象を起こして莫大なエネルギーを放出した証拠でした。

天の川銀河の中心核が、かつて激しい活動を起こしていたという仮説は、既に“フェルミ・バブル”の研究から提唱されていました。

2010年にNASAのガンマ線天文衛星“フェルミ”が、銀河面から上下約3万光年の距離にそびえる高温の巨大なプラズマの泡構造“フェルミ・バブル”を発見します。
この“フェルミ・バブル”は、200万年以上前に銀河中心部で起こった爆発的なガス放出で作られたと考えられているんですねー

“フェルミ・バブル”に基づいた推測では、爆発が起こったのは約350万年前、人類がまだアフリカ大陸で進化の途上にあった頃。
そのころ夜空を見上げれば、天の川銀河の中心部分が不気味に光っているのが見えたはずです。

そのような爆発現象を引き起こした原因として考えられているのは、超大質量ブラックホールを取り巻くガスの円盤に、太陽10万個に相当するほどの巨大な水素の雲が落ち込んだことでした。
地上から見た約350万年前の大爆発(イメージ図)。(Credit: NASA, ESA, G. Cecil (UNC, Chapel Hill) and J. DePasquale (STScI))
地上から見た約350万年前の大爆発(イメージ図)。(Credit: NASA, ESA, G. Cecil (UNC, Chapel Hill) and J. DePasquale (STScI))


“マゼラニック・ストリーム”と呼ばれるガスの流れ

今回の研究では“フェルミ・バブル”とは別に、天の川銀河中心核における爆発現象の証拠もとらえています。

研究では、ハッブル宇宙望遠鏡に搭載されている宇宙起源分光器“COS”を使って、天の川銀河のはるか遠方に位置するクエーサーからの紫外線スペクトルを観測。

この紫外線の光が天の川銀河周囲のガスを通過すると、ガスの状態に応じて特定の波長の光が吸収されるんですねー
この吸収された光の波長からガスの性質を調べることができます。

天の川銀河の周囲には、衛星銀河の大マゼラン雲と小マゼラン雲が通った跡“マゼラニック・ストリーム”と呼ばれる、太陽1億個分もの水素を含むガスの流れがあります。
衛星銀河(伴銀河ともいう)とは重力の相互作用により、より大きな銀河の周囲を公転する銀河。

また、両マゼラン雲の前方には“リーディング・アーム(先行腕)”という、ちぎれた雲のようなガスも伸びています。

研究チームでは、“マゼラニック・ストリーム”の背景に存在するクエーサー21個と、“リーディング・アーム”を通して見えるクエーサー10個のスペクトルを調査。

その結果、“マゼラニック・ストリーム”で見つかったのは、水素が強力なエネルギーを受けてイオン化している証拠。
一方、“リーディング・アーム”の水素には、そのような形跡は見られませんでした。

“マゼラニック・ストリーム”は天の川銀河の南極方向を通っています。

中心の超大質量ブラックホールが爆発的な増光を引き起こした場合、サーチライトのように強力な紫外線が円盤の上下(北極と南極)に向かって放たれたと考えることができます。
これによって“マゼラニック・ストリーム”の水素がエネルギーを受けてイオン化したと説明できます。

これまで考えられていたのは、“フェルミ・バブル”と“マゼラニック・ストリーム”は、お互い隔たっていて無関係だということ。
天の川銀河のハロー(周縁の構造)の中で別の場所に位置しているので、他人のように振る舞っているように見えていました。

今回の研究で分かってきたのは、“フェルミ・バブル”と“マゼラニック・ストリーム”が同じ1つの現象から影響を受けていたこと。
銀河中心のブラックホールによる強烈な輝きが、両者にとって大きな役割を果たしていたんですね。
天の川銀河の中心に存在する超大質量ブラックホールが放った紫外線が円盤の上下に広がる様子を表したイラスト。下(南)に広がる紫外線が“マゼラニック・ストリーム”を照らしている。(Credit: NASA, ESA and L. Hustak (STScI))
天の川銀河の中心に存在する超大質量ブラックホールが放った紫外線が円盤の上下に広がる様子を表したイラスト。下(南)に広がる紫外線が“マゼラニック・ストリーム”を照らしている。(Credit: NASA, ESA and L. Hustak (STScI))


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