ブラックホール同士が合体すると激しい重力波が発生し、時に合体後のブラックホールを“蹴りだし”ます。
ブラックホールの運動速度が速ければ速いほど、ブラックホール同士が衝突する可能性は高まり、宇宙に存在する重いブラックホールの起源になるとも考えられています。
今回の研究では、2つのブラックホールが衝突した場合、合体後のブラックホールが最速で約2万9000km/sで運動することをシミュレーションによって明らかにしています。
この速度は、以前のシミュレーションで示されたものより5.7倍も速く、光の速度の約10分の1に相当するそうです。
さらに、重力を介した相互作用は、天体の運動速度を極端に増加させる場合があります。
このような過程で極端な速度を得た星は“超高速度星(HVS : Hypervelocity star)”と呼ばれています。
これまでに知られている最速の超高速度星は“S5-HVS1”で、天の川銀河の中心部に対して約1755km/sで運動しています。
太陽は天の川銀河の中心部に対して約240km/sで公転運動をしていると推定されているので、それの7.3倍も高速にもなります。
“S5-HVS1”は、あまりにも速く運動しているので、重力を振り切って天の川銀河を脱出していると推定されています。
このような超高速度星が生じたのは、天の川銀河中心部の超大質量ブラックホール“いて座A*(エースター)”に極めて接近した結果のようです。
ブラックホール同士の場合、単なる接近遭遇だけでなく、衝突でも莫大な速度が生じることが分かっています。
ブラックホール同士が接近すると莫大なエネルギーの重力波が放出されます。
ただ、その重力波の発生には偏りが生じることもあるんですねー
このため、衝突後に誕生した合体ブラックホールは、特定の角度に集中した重力波によって“蹴り飛ばされる”可能性があります。
そのようなブラックホールの実例としては活動銀河“CID-42”に存在するとされる超大質量ブラックホールがあり、2つのブラックホールが衝突した結果、銀河に対して約2000km/sの速度で飛び出しているようです。
このように、ブラックホール同士の衝突は極めて大きな運動速度を生じる可能性があり、その限界速度はこれまで5000km/sだと推定されていました。
これは、光の速度の約60分の1に相当します。
ブラックホール同士の接近で生じる激しい重力波の変化を正確に計算するには、計算強度の高いスーパーコンピュータを必要とします。
また、限界速度を知るには様々な角度からの衝突を仮定する必要があるので、パターンが増えるに従って計算量も莫大なものになってしまいます。
研究では、ブラックホール同士の衝突パターンを1381通り想定して計算を実行。
これは、5000km/sという上限値を推定した研究で計算された42通りを大きく上回るものでした。
その結果分かったのは、かすめるような角度で衝突するときに最大の速度が生じ、最高で2万8562(±342)km/sに達すること。
これは、以前の数値計算で示された値の5.7倍で、光の速度の約10分の1に相当するものでした。
この速度では地球を1周するのに1.4秒、地球から月まで移動するのに13.5秒しかかかりません。
もちろん、この最大速度が得られるのは極めて限られた条件を満たした時のみ。
大半のブラックホールは、ここまで高速に運動することはありません。
でも、平均的に速度の速いブラックホールが生じることは、ブラックホールの進化を考える上で重要なことになります。
ブラックホールは、主に重い恒星の中心部で中心核(コア)が崩壊した結果生じると考えられています。
でも、宇宙にはこの方法で生じるよりも重いブラックホールが無数に存在しているんですねー
重いブラックホールは、軽いブラックホール同士の衝突・合体で生じると考えられていて、ブラックホールの運動速度が速いほど衝突頻度も増加する傾向にあります。
このように、ブラックホール同士の接近がどのような結果をもたらすのかを知ることは、ブラックホールの性質や成長を知る上でもとても重要なことといえます。
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ブラックホールの運動速度が速ければ速いほど、ブラックホール同士が衝突する可能性は高まり、宇宙に存在する重いブラックホールの起源になるとも考えられています。
今回の研究では、2つのブラックホールが衝突した場合、合体後のブラックホールが最速で約2万9000km/sで運動することをシミュレーションによって明らかにしています。
この速度は、以前のシミュレーションで示されたものより5.7倍も速く、光の速度の約10分の1に相当するそうです。
この研究は、ロチェスター工科大学のJames HealyさんとCarlos O. Loustoさんが進めています。
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お互いの周りを公転している2個のブラックホールのイメージ図。(Credit: SXS) |
天体同士の接近によって発生する“制限速度違反”
複数の天体が極めて近くに接近した場合、お互いが重力で引かれ合うことで運動エネルギーのやり取りが行われます。さらに、重力を介した相互作用は、天体の運動速度を極端に増加させる場合があります。
このような過程で極端な速度を得た星は“超高速度星(HVS : Hypervelocity star)”と呼ばれています。
これまでに知られている最速の超高速度星は“S5-HVS1”で、天の川銀河の中心部に対して約1755km/sで運動しています。
太陽は天の川銀河の中心部に対して約240km/sで公転運動をしていると推定されているので、それの7.3倍も高速にもなります。
“S5-HVS1”は、あまりにも速く運動しているので、重力を振り切って天の川銀河を脱出していると推定されています。
このような超高速度星が生じたのは、天の川銀河中心部の超大質量ブラックホール“いて座A*(エースター)”に極めて接近した結果のようです。
“S5-HVS1”は超高速度星としては最高速だが、さらに高速の天体として“S4716”の8000km/sが知られている。ただ、“S4716”は超高速度星とは異なり天の川銀河中心部のブラックホールの重力に捕らわれていて、4.02年周期で公転している。その軌道は真円からかなり離れた楕円形で、ブラックホールに最も接近するときの公転速度が8000km/sに達すると推定されている。
では、ブラックホール同士が接近した時には、どのような結果が生じるのでしょうか?ブラックホール同士の場合、単なる接近遭遇だけでなく、衝突でも莫大な速度が生じることが分かっています。
ブラックホール同士が接近すると莫大なエネルギーの重力波が放出されます。
ただ、その重力波の発生には偏りが生じることもあるんですねー
このため、衝突後に誕生した合体ブラックホールは、特定の角度に集中した重力波によって“蹴り飛ばされる”可能性があります。
そのようなブラックホールの実例としては活動銀河“CID-42”に存在するとされる超大質量ブラックホールがあり、2つのブラックホールが衝突した結果、銀河に対して約2000km/sの速度で飛び出しているようです。
このように、ブラックホール同士の衝突は極めて大きな運動速度を生じる可能性があり、その限界速度はこれまで5000km/sだと推定されていました。
これは、光の速度の約60分の1に相当します。
最速のブラックホールは光速の10%で運動することが判明
今回の研究では、ブラックホール同士の合体で生じる限界速度についての数値計算を実施しています。ブラックホール同士の接近で生じる激しい重力波の変化を正確に計算するには、計算強度の高いスーパーコンピュータを必要とします。
また、限界速度を知るには様々な角度からの衝突を仮定する必要があるので、パターンが増えるに従って計算量も莫大なものになってしまいます。
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2つのブラックホールが接近する角度によって、合体により生じるブラックホールの運動速度が変わってくることが考えられる。今回の研究では全部で1381パターンを想定して計算を行っている。(Credit: James Healy and Carlos O. Lousto) |
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ブラックホールの衝突後の速度の計算結果。最も理想的な角度での衝突では、最大で28562km/sの速度が生じると計算された(図の数値が本文と異なるものの、本文の記載を優先)。(Credit: James Healy and Carlos O. Lousto) |
これは、5000km/sという上限値を推定した研究で計算された42通りを大きく上回るものでした。
その結果分かったのは、かすめるような角度で衝突するときに最大の速度が生じ、最高で2万8562(±342)km/sに達すること。
これは、以前の数値計算で示された値の5.7倍で、光の速度の約10分の1に相当するものでした。
この速度では地球を1周するのに1.4秒、地球から月まで移動するのに13.5秒しかかかりません。
もちろん、この最大速度が得られるのは極めて限られた条件を満たした時のみ。
大半のブラックホールは、ここまで高速に運動することはありません。
でも、平均的に速度の速いブラックホールが生じることは、ブラックホールの進化を考える上で重要なことになります。
ブラックホールは、主に重い恒星の中心部で中心核(コア)が崩壊した結果生じると考えられています。
でも、宇宙にはこの方法で生じるよりも重いブラックホールが無数に存在しているんですねー
重いブラックホールは、軽いブラックホール同士の衝突・合体で生じると考えられていて、ブラックホールの運動速度が速いほど衝突頻度も増加する傾向にあります。
このように、ブラックホール同士の接近がどのような結果をもたらすのかを知ることは、ブラックホールの性質や成長を知る上でもとても重要なことといえます。
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