宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

宇宙のほとんどが太陽系周辺と似たような元素組成をしている

2015年11月08日 | 宇宙 space
X線天文衛星“すざく”による“おとめ座銀河団”の広域観測から、
銀河団の内側から外縁部にわたって元素組成が一定であり、
さらにその組成は太陽系周辺と、ほぼ同じであることが明らかになりました。


元素は星の中で作られている

現在、宇宙に存在する炭素よりも重い元素は、
すべて星の内部で起こる核融合反応によって作られたものになります。

そして星が死を迎えるときに起こす超新星爆発で、
宇宙空間にばらまかれるんですねー

超新星爆破には、
非常に重い星の死であるII型超新星爆発と、比較的軽い星の死になるIa型超新星の、
大きく分けて2つのタイプがあります。

太陽の10倍以上の質量を持つ星はII型超新星爆発を起こし、
酸素やマグネシウムといった軽い方の元素を多く生成します。

一方、Ia型超新星爆発では、
鉄やニッケルのように重い元素が多く生成されることになります。


宇宙の平均的な元素組成

宇宙の元素組成を測ることは、生命を育み維持するために必要な元素が、
どこでどのように作られたのかを解き明かすことにつながります。

今回の研究では、現在の宇宙の平均的な元素組成を明らかにするために、
銀河団の高温ガスの元素組成を調べています。

宇宙に存在する「普通の」物質のほとんど(つまり、ほとんどの元素)は、
非常に熱くX線で明るく輝くガス状態にあり、
それは数百以上の銀河が集まった銀河団に付随しています。

つまり、宇宙の平均的な元素組成を知るためには、
X線で銀河団のガスを観測すればいいんですねー

研究チームはX線観測衛星“すざく”を用いた観測から、
まず“ペルセウス座銀河団”のガスの元素組成を測定。

広い領域にわたって、銀河団ガスに含まれる鉄の量の測定に成功しています。

でも、鉄の組成量だけでは、どのタイプの超新星爆発が、
どのくらい現在の宇宙の元素組成に寄与したのかを知ることができません。

そう、II型超新星から多く放出される比較的軽い元素の量と、
Ia型超新星から多く放出される重い元素の量のように、
複数の元素の量を測定して比較する必要があるんですねー

そして、複数の元素の測定を行うため研究チームが行ったのが、
“すざく”による“おとめ座銀河団”の観測でした。

データ解析の結果、鉄だけでなくマグネシウムやケイ素、硫黄の量を、
“おとめ座銀河団”の外縁まで測定することに成功しています。
“すざく”が観測した“おとめ座銀河団”。
小さい四角それぞれが“すざく”の観測を表している。

鉄とケイ素、硫黄の元素組成は、
太陽や天の川銀河内にある、ほとんどの星の組成比とほぼ同じで、
この傾向は“おとめ座銀河団”全体に当てはまることが分かります。

“ペルセウス座銀河団”でも“おとめ座銀河団”でも、
鉄の元素量は銀河団の内側から外側までほぼ一定で、
“おとめ座銀河団”では、マグネシウムやケイ素、硫黄も銀河団の外側まで、
ほぼ同じであることが明らかになりました。

このことが示しているのは、
銀河団内で元素がよく混ざっていて一様だということ。

つまり、太陽半径(約70万キロ)程度の小さなスケールから、
銀河団サイズ(数百万光年以上)の大きなスケールまで、
ほぼ同じ元素組成だと言えることになります。

もちろん、宇宙には元素組成が異なる領域もあるのでしょうが、
今回の研究は、現在の宇宙のほとんどが太陽系周辺と似たような元素組成を、
持っていることを示す結果になったんですねー
“おとめ座銀河団”の一部。左下のM87が1枚目画像の中心。



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