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若い恒星を取り巻く円盤で、謎の高速「さざ波」現象を発見!

2015年10月26日 | 宇宙 space
32光年彼方にある若い恒星“けんびきょう座AU”。

この恒星を取り囲む巨大なチリの円盤に、
高速で移動する「さざ波」のような特徴が発見されたんですねー

どうやら「さざ波」は、恒星の活発なフレアと関係があるようです。


惑星が生まれる円盤

若い恒星を取り囲むような巨大なチリ円盤を“原始惑星系円盤”と言います。

この原始惑星系円盤を研究すると、
どのようにして惑星が形成されるのかについて、
貴重な情報を得ることができるんですねー

なので、これまで円盤内で惑星誕生の証拠をつかむため、
かたまり状の物体や円盤のゆがみを発見しようとする観測が行われてきました。

そして2014年のこと、
ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡“VLT”のハイコントラスト撮像装置“SPHERE”が、
一風変わった円盤のようすをとらえることになります。

これまで観測されたことのないアーチ状または波のような不思議な特徴が、
円盤内に見られたんですねー


円盤にあらわれた「さざ波」

波のようなアーチは全部で5つ。

それぞれ中心星から異なる距離に位置していて、
水面に立つ「さざ波」のようでした。

研究チームでは、2011年と2010年にハッブル宇宙望遠鏡がとらえた画像に、
同様の特徴が見られるかどうかを確認。

そして、時間の経過とともに円盤に見られる特徴が変化してきたこと、
「さざ波」が高速で動いていることが明らかになります。
上から、ハッブル宇宙望遠鏡(2010、2011年)、VLTのSPHERE(2014年)が観測した、
“けんびきょう座AU”を取り巻く原始惑星系円盤。

ハッブルのデータから画像を再加工し、
円盤に見られる不思議な特徴のようすを4年さかのぼり、
アーチが中心星(恒星)から時速4万キロもの速度で離れ去っていることを、
突き止めたんですねー

アーチは中心星から離れているものほど速く動いていることも分かり、
5つのうち少なくとも3つは、中心星の重力を振り切って脱出できるほど速いようです。

では、「さざ波」を高速化させている何らかのメカニズムは、
存在するのでしょうか?。

“けんびきょう座AU”では活発にフレアが発生していて、
巨大で突発的な爆発が星の表面近くで起こっています。

このフレアがアーチに関連しているのかもしれません。

研究チームでは引き続き、
この恒星と原始惑星系円盤を“SPHERE”や“アルマ望遠鏡”などで観測し、
円盤で何が起こっているのかを明らかにしていくそうです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 原始惑星系円盤に2つ目のリングギャップを、すばる望遠鏡が発見

2度目の滑空飛行試験へ! 小型シャトル“ドリーム・チェイサー”

2015年10月25日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
アメリカの民間宇宙企業シエラ・ネバダ社が、
“ドリーム・チェイサー”の開発状況について2つの発表を行いました。

1つは、2016年初頭頃に2度目になる滑空飛行試験を行うこと、
そして2つ目が、宇宙飛行を行う実機の製造が進んでいることでした。

有翼宇宙往還機

“ドリーム・チェイサー”は、
シエラ・ネバダ社が開発を進めている有人宇宙船です。

小さいながらも翼を持っていて、
スペースシャトルのように宇宙から滑走路に着陸し、
何度も再使用できる有翼宇宙往還機になります。

スペースシャトルとは違い、
“アトラスV”ロケットの先端に搭載されて打ち上げられます。

また、他のロケットへの搭載や、
アメリカ以外の滑走路への着陸なども可能なようです。


滑空飛行試験と実機の製造

“ドリーム・チェイサー”の開発が始まったのは2004年ごろからでした。

2013年10月には、無人の“ドリーム・チェイサー”の技術試験機を使い、
滑空飛行試験が行われています。

でも左側の車輪が出ず、着陸には失敗しているんですねー

ただ、試験内容の99%は達成できたようで、
試験全体としては成功と発表されています。

今回の発表では、これに続く2度目の滑空飛行試験を、
2016年の前半に行うことが明らかにされています。

場所はカリファルニア州にある、
NASAアームストロング飛行研究センターが予定されています。

さらに並行して進められているのが、実際に宇宙を飛行する実機の製造です。

製造はロッキード・マーティン社が担当していて、
社内にある特別開発チーム“スカンク・ワークス”が培ってきた技術が、
活用されるそうです。
2度目の滑空飛行試験に向け、検査を受ける“ドリーム・チェイサー”


開発状況を発表した真の意味

シエラ・ネバダ社は、
NASAが計画している商業補給サービス(第2回)の契約獲得を狙っているんですねー

なので、“ドリーム・チェイサー”の無人補給船バージョンを開発していたりします。

NASAは以前より、
国際宇宙ステーションへの物資補給を民間企業にまかせていて、
第1回契約に基づいて、現在はスペースX社の“ドラゴン補給船”と、
オービタルATK社の“シグナス補給船”が運用されています。

この契約は2017年~2018年ごろまでの予定なんですが、
国際宇宙ステーションは2024年ごろまで運用される見通しなので、
新たに2回目の契約が結ばれることになっています。

この2回目の契約には、
スペースX社とオービタルATK社が引き続き名乗りを挙げているほか、
ボーイング社とロッキード・マーティン社、
そしてシエラ・ネバダ社も名乗りを挙げています。

この契約先が発表されるのは今年の11月ごろ。

今回シエラ・ネバダ社が、
“ドリーム・チェイサー”の開発状況を発表したのには、
契約獲得に向けてアピールする狙いがあったということです。


こちらの記事もどうぞ
  有翼宇宙船“ドリーム・チャイサー”の補給船版が発表!
  JAXA 有人宇宙船“ドリーム・チェイサー”の開発で協力へ!

巨大な割れ目と氷火山活動… 衛星カロンには激動の歴史があった。

2015年10月24日 | 冥王星の探査
NASAの探査機“ニューホライズンズ”から、
冥王星の衛星カロンの高解像度カラー画像が届けられました。

この画像には、複雑な地形がとらえられていて、
カロンが激しい歴史を経てきたことが見て取れるんですねー


巨大な割れ目と氷火山活動

探査機“ニューホライズンズ”が訪れるまで、
カロンは単調なクレーターだらけの世界だと考えられてきました。

でも、7月14日に撮影され9月21日に地球へ送られてきた画像は、
研究者たちを驚かせたんですねー

地球の月と同様にカロンは、常に同じ面を冥王星に向けています。

そのカロンの冥王星側の半球をとらえた高解像度画像に写っていたのは、
山々や渓谷、地滑りの跡といった地形、さらに表面の色までも変化に富んだ世界でした。
色を強調したカロンの画像。
赤っぽい北極領域は“モルドール・マキュラ”。
(マキュラは広い斑点状の地形のこと)

とくに目を引くのは、赤道のすぐ北にある帯状に続く割れ目と渓谷。

カロンの表面を横切るように伸びる渓谷の長さは1600キロ以上もあり、
グランドキャニオンと比較すると長さは4倍、深さは場所によって2倍もあるんだとか…

過去にカロンで起こった、
大変動の結果できあがったものとみられています。

一方、渓谷の南の“バルカン平原”は、
北の領域に比べて大きいクレーターが少なく若い地形のようでした。

表面がなだらかなのは氷火山活動が原因なのかもしれません。

この現象の仕組みは、
カロンの内部にあった海が凍ってしまい、体積が膨張して、ひび割れができてしまいます。
その割れ目から氷が噴出するというもの。

今回公開されたものより、
さらに高解像度の画像やカロンの組成に関するデータが、
来年にかけて送信されてくる予定になっています。

それにより、今より驚くべきカロンの歴史に関するストーリーが、
送られてくるかもしれませんね。


こちらの記事もどうぞ
  【冥王星探査】カロンは若く変化に富んだ地形を持つ衛星
  【冥王星探査】フライバイ(接近通過)を振り返ってみると

NASAが選んだ「より速く、より良く、より安く」なミッション

2015年10月23日 | 宇宙 space
NASAが次のディスカバリー計画の実施に向けて第一次選考を行い、
20案の中から、3つの小惑星探査と2つの金星探査ミッションを選定しました。

ディスカバリーと言えば、1992年に当時のNASA長官が提唱した、
「より速く、より良く、より安く」のスローガンを体現する計画。
さて今回は、どんなミッションが選ばれたのでしょうか。


ディスカバリー・ミッション

低コストで効率の良いミッションを目指した、
太陽系内の探査計画がNASAのディスカバリーです。

過去のディスカバリー・ミッションには、
小惑星ベスタと準惑星ケレスを探査する“ドーン”計画、
太陽系外惑星探査を行う“ケプラー”計画や、
彗星を探査する“メッセンジャー”計画などがありました。

そして来年には、
火星の地質調査を行う“インサイト”計画が始動予定なんですねー


5つのミッション

新たな計画については、
今年1年かけてハードウェア設計やコスト分析、
実験計画を進めていきます。

そして遅くとも2021年には、
5つのミッションのうち、おそらく2つが正式採択になる見込み…

今回選ばれたのは、
大きく分けて小惑星探査と金星探査の以下のミッション。

どのミッションが正式採択になるのか? 楽しみですねー


小惑星探査

◎ プシケ(Psyche)ミッション

小惑星帯の外側部分に位置する、
直径213キロの小惑星プシケとランデブーするミッション。

高いレーダー反射率と高い密度から、
小惑星プシケは金属小惑星だと考えられています。

金属でできた表面なのか、
衝突などで地殻を失いマントルが剥き出しになったのか…

前者の場合、太陽系の形成とは全く異なるプロセスを想定する必要があり、
後者の場合は、小惑星のコアを精査する必要あります。

いずれにせよ、新しい試みになります。
小惑星プシケ探査(イメージ図)


◎ ネオカム(NEOCam)ミッション

地球近傍の未発見の小惑星を探す計画。

比較的大きく、潜在的に危険な小惑星の大半は、
地球から発見できています。

でも、太陽に近い方向から飛来する小惑星を調査することは難しく、
数多くの未調査小惑星を探査します。


◎ ルーシー(Lucy)ミッション

木星のトロヤ群小惑星を探査するミッション。

小惑星エウリバテス、1999 VQ10、1997 TS25、
および連星小惑星パトロクロス/メノイティオスが対象となる見込で、
到達の途中で小惑星帯の1981 EQ5も調査予定です。

トロヤ群は木星軌道上、
木星の前方と後方の力学的に安定なところに分布しています。

太陽系形成のモデルによれば、
多くのトロヤ群の起源はカイパーベルトにあるとみられています。

なのでトロヤ群を探ることは、
太陽系をはるかに離れた領域について、得るものがあるかもしれません。


金星探査

◎ ベリタス(VERITAS)ミッション

水平250メートル、垂直5メートルという高い解像度で金星をマッピングし、
金星のデジタル標高モデルを生成するミッション。

金星の3公転にわたって観測を行います。


◎ ダビンチ(DAVINCI)ミッション

金星へ降下し、金星大気の化学組成を調べるミッション。

活火山はあるのか、
金星の地表は大気とどのように相互作用しているのか、
といった長年の疑問に答えるものになる予定です。


こちらの記事もどうぞ
  “メッセンジャー”がとらえた水星の新たな一面
  今度は火星の内部調査へ(NASAのインサイト計画)

オーロラは宇宙の電磁波によって瞬いていた。JAXAと名古屋大が仕組みを解明

2015年10月22日 | 地球の観測
JAXAと名古屋大学などの研究グループが、
“コーラス”と呼ばれる宇宙の電磁波が、オーロラを引き起こす電子を変調させることで、
オーロラの瞬きを作り出していることを解明したそうです。


小型高機能科学衛星

2005年8月に、ドニエブルロケットの相乗り衛星として打ち上げられたのが、
小型高機能科学衛星“れいめい”です。

小型衛星に適した理学観測機器を搭載していて、
世界最高の時間分解能で電子を観測することができるんですねー

さらに世界で唯一、
オーロラの画像とオーロラを光らせる電子の同時観測も行うことができます。
オーロラを観測する“れいめい”(イメージ図)


脈動オーロラ

宇宙から降ってくる電子が、
高度100キロ付近の超高層大気と衝突することによって起こる現象が、
“れいめい”の観測対象になるオーロラです。

オーロラには様々な形態のものがあり、
そのうち“脈動オーロラ”と呼ばれるものは、
ぼんやりとした形状で、数秒間ごとに点滅するという不思議な性質があります(主脈動)。

また“脈動オーロラ”が光っている際、
1秒間に数回の速さで瞬く(明るさが変化する)ことも知られています(内部変調)。

ただ、主脈動の起源については理解が進んでいるのですが、
どのような仕組みで“脈動オーロラ”の明滅や瞬きが起こるのかは、
分かっていませんでした。


宇宙のさえずり

今回の研究では、
“れいめい”のデータ解析とコンピュータシミュレーションによって、
脈動するオーロラの主脈動と内部変調のメカニズムを明らかにしています。

“脈動オーロラ”を光らせている電子に、
これまで知られていない性質があることを発見したことになります。

さらに、“コーラス”と呼ばれる宇宙空間で自然に発生している電磁波と、
電子との相互作用についてコンピュータシミュレーションを行い、
“れいめい”の観測結果を再現することに成功。

その結果から、“コーラス”が電子を変調させることで、
“脈動オーロラ”の明滅や瞬きを作り出しているという、
統一的な仕組みが明らかになったんですねー

“コーラス”は、音声に変換すると小鳥の声のように聞こえることから、
“宇宙のさえずり”とも呼ばれています。

今回の研究は、この“宇宙のさえずり”が、
オーロラの瞬きを引き起こしていることを解明したものになり、
明滅も同じ仕組みで起こっていることを示唆する結果になりました。

2016年に打ち上げ予定の“ジオスペース探査衛星”によって、
さらに、その性質の理解が進むことが予想されています。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 太陽活動とは関係なかった? 地球からのプラズマ大気流出