太陽の200倍もある超大質量星の超新星爆発が観測されました。
見つかった場所は母銀河から遠く離れた場所… これまでの理論では説明できないことだらけの不思議な超新星なんですねー
風変わりな特徴を持つ超新星
2016年11月14日のこと、ヨーロッパ宇宙機関の位置天文衛星“ガイア”によって、かみのけ座の方向に超新星が発見され“SN 2016iet”と命名されます。
アメリカ・ハーバード大学の研究チームは、ハワイにあるジェミニ北望遠鏡やアリゾナ州のMMT、チリのマゼラン望遠鏡などを使って、約3年にわたって“SN 2016iet”の追観測を実施。
その結果、この超新星の位置や化学組成について重要な事実が判明することになります。
様々な点で風変わりな特徴を持つ“SN 2016iet”。
爆発後に暗くなるペースが非常にゆっくりしていて、爆発のエネルギーも大きく、化学組成も普通の超新星とは違っていました。
また、超新星爆発が起こった場所では水素の輝線が非常に弱く、重元素もほとんど存在しないことも分かります。
このことが示しているのは、星形成がほとんど行われていない孤立した場所に“SN 2016iet”の親星があったということ…
今回の親星のような大質量星が存在する場所としては珍しい環境なんですねー
このような特徴を示す超新星は、これまで全く知られていませんでした。
親星は太陽の200倍も質量がある超大質量星
観測で得られた特徴から分かってきたのが、“SN 2016iet”の親星は太陽の200倍もの質量を持って誕生した超大質量星であることです。
もしそうなら、過去に観測された中で質量・爆発エネルギーとも最大級の単独星の爆発になるんですねー
近年得られている証拠から、宇宙で最初に誕生した恒星(第一世代星)は、ちょうどこれと同じくらいの大質量星だった考えられています。
こうしたモンスター級の星は、数百万年という非常に短い一生を過ごした後、“電子対生成型超新星(対不安定型超新星)”というタイプの超新星爆発を起こすと考えられています。
電子対生成型超新星
太陽の約8倍よりも重い星の超新星爆発では、重元素をたくさん含んだ物質が宇宙空間に撒き散らされると同時に、星の中心核は自らの重力でつぶれて中性子星かブラックホールになります。
でも、太陽の100倍以上の質量を持つ超大質量星の最期の場合、中心核の温度が非常に高くなるので、重元素の核融合反応で莫大な熱が発生すると同時に、高エネルギーのガンマ線が大量に発生するんですねー
中心核の重力収縮が進むほど温度は上がり、よりエネルギーの高いガンマ線が生じることになります。
さらに、発生するガンマ線のエネルギーが、電子と陽電子の静止質量エネルギーの和を上回るようになると、ガンマ線光子から電子と陽電子のペアが作られるようになります。
こうなるとガンマ線光子が減って重力収縮を支えられなくなり、中心核は急速につぶれ、核融合反応が暴走…
星全体を吹き飛ばす超新星爆発“電子対生成型超新星”が起きるというわけです。
このタイプの超新星爆発では中性子星やブラックホールは残らない。
超新星爆発は重元素の乏しい環境で起こっている?
現在提案されているモデルでは、“電子対生成型超新星”は重元素の乏しい環境で起こるとされています。
例えば、矮小銀河の内部や初期宇宙などです。
そう、今回の超新星が見つかった場所も、こうした環境に当てはまっているんですねー
地球から10億光年の距離にある重元素の乏しい矮小銀河。それが、“SN 2016iet”の母銀河と見られています。
“SN 2016iet”は、親星の質量も重元素の量も、“電子対生成型超新星”のモデルが予測する範囲に納まっている初めての観測例になります。
孤立した場所で生まれた重い星
“SN 2016iet”の驚くべき特徴はこれだけではありません。
普通、大質量星の多くは密集した星団の中で生まれます。
でも、“SN 2016iet”が観測されたのは、この星が属すると思われる矮小銀河の中心から5万4000光年も離れた場所…
太陽系の近傍でも、“SN 2016iet”の親星ほど重い星は数個しか知られておらず、それらは全て大規模な星団の中にあります。
こんなに孤立した場所で、どうやってこれほど重い星が生まれたのでしょうか?
長期間にわたって明るく輝く理由
たいていの超新星は時間がたつと減光し、爆発から数か月以内に母銀河の明るさに埋もれてしまいます。
でも、今回の超新星は、爆発から600日以上たっても明るさが100分の1ほどしか減光せず、光度変化が非常にゆっくりとしていました。
この理由として研究チームが考えているのが、超新星爆発前の10年ほどの間に、1年に太陽3個分ほどの量の物質を親星が周囲に放出してしまったということ。
過去に放出していた物質と超新星爆発で新たに放出された物質とが衝突することで、“SN 2016ie”は長期間にわたって明るく輝いているようです。
ただ、“SN 2016iet”は非常に明るく、銀河から孤立しているので、今後数年にわたって変化を観測することができそうです。
こうした極めて質量の大きな恒星が実際に存在することは、つい最近まで知られていませんでした。
“SN 2016iet”の発見と追観測の成果は、こうした大質量星が存在する確かな証拠になり、さらに今後の初期宇宙の探索にも影響を及ぼすことになりそうです。
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初代星による超新星爆発が予想以上に大きく球形でなかったから、たくさんの重元素が宇宙に放出された。
見つかった場所は母銀河から遠く離れた場所… これまでの理論では説明できないことだらけの不思議な超新星なんですねー
風変わりな特徴を持つ超新星
2016年11月14日のこと、ヨーロッパ宇宙機関の位置天文衛星“ガイア”によって、かみのけ座の方向に超新星が発見され“SN 2016iet”と命名されます。
アメリカ・ハーバード大学の研究チームは、ハワイにあるジェミニ北望遠鏡やアリゾナ州のMMT、チリのマゼラン望遠鏡などを使って、約3年にわたって“SN 2016iet”の追観測を実施。
その結果、この超新星の位置や化学組成について重要な事実が判明することになります。
“SN 2016iet”のイメージ図 |
爆発後に暗くなるペースが非常にゆっくりしていて、爆発のエネルギーも大きく、化学組成も普通の超新星とは違っていました。
また、超新星爆発が起こった場所では水素の輝線が非常に弱く、重元素もほとんど存在しないことも分かります。
このことが示しているのは、星形成がほとんど行われていない孤立した場所に“SN 2016iet”の親星があったということ…
今回の親星のような大質量星が存在する場所としては珍しい環境なんですねー
このような特徴を示す超新星は、これまで全く知られていませんでした。
親星は太陽の200倍も質量がある超大質量星
観測で得られた特徴から分かってきたのが、“SN 2016iet”の親星は太陽の200倍もの質量を持って誕生した超大質量星であることです。
もしそうなら、過去に観測された中で質量・爆発エネルギーとも最大級の単独星の爆発になるんですねー
近年得られている証拠から、宇宙で最初に誕生した恒星(第一世代星)は、ちょうどこれと同じくらいの大質量星だった考えられています。
こうしたモンスター級の星は、数百万年という非常に短い一生を過ごした後、“電子対生成型超新星(対不安定型超新星)”というタイプの超新星爆発を起こすと考えられています。
電子対生成型超新星
太陽の約8倍よりも重い星の超新星爆発では、重元素をたくさん含んだ物質が宇宙空間に撒き散らされると同時に、星の中心核は自らの重力でつぶれて中性子星かブラックホールになります。
でも、太陽の100倍以上の質量を持つ超大質量星の最期の場合、中心核の温度が非常に高くなるので、重元素の核融合反応で莫大な熱が発生すると同時に、高エネルギーのガンマ線が大量に発生するんですねー
中心核の重力収縮が進むほど温度は上がり、よりエネルギーの高いガンマ線が生じることになります。
さらに、発生するガンマ線のエネルギーが、電子と陽電子の静止質量エネルギーの和を上回るようになると、ガンマ線光子から電子と陽電子のペアが作られるようになります。
こうなるとガンマ線光子が減って重力収縮を支えられなくなり、中心核は急速につぶれ、核融合反応が暴走…
星全体を吹き飛ばす超新星爆発“電子対生成型超新星”が起きるというわけです。
このタイプの超新星爆発では中性子星やブラックホールは残らない。
超新星爆発は重元素の乏しい環境で起こっている?
現在提案されているモデルでは、“電子対生成型超新星”は重元素の乏しい環境で起こるとされています。
例えば、矮小銀河の内部や初期宇宙などです。
そう、今回の超新星が見つかった場所も、こうした環境に当てはまっているんですねー
地球から10億光年の距離にある重元素の乏しい矮小銀河。それが、“SN 2016iet”の母銀河と見られています。
“SN 2016iet”は、親星の質量も重元素の量も、“電子対生成型超新星”のモデルが予測する範囲に納まっている初めての観測例になります。
孤立した場所で生まれた重い星
“SN 2016iet”の驚くべき特徴はこれだけではありません。
普通、大質量星の多くは密集した星団の中で生まれます。
でも、“SN 2016iet”が観測されたのは、この星が属すると思われる矮小銀河の中心から5万4000光年も離れた場所…
太陽系の近傍でも、“SN 2016iet”の親星ほど重い星は数個しか知られておらず、それらは全て大規模な星団の中にあります。
こんなに孤立した場所で、どうやってこれほど重い星が生まれたのでしょうか?
(左)爆発前の2014年9月に撮影された“SN 2016iet”の親星(丸印)。 (右)爆発後の2018年7月に撮影された“SN 2016iet”と、その母銀河と思われる矮小銀河(チリ・ラスカンパナス天文台のマゼラン望遠鏡で撮影)。両者は5万4000光年も離れている。 |
長期間にわたって明るく輝く理由
たいていの超新星は時間がたつと減光し、爆発から数か月以内に母銀河の明るさに埋もれてしまいます。
でも、今回の超新星は、爆発から600日以上たっても明るさが100分の1ほどしか減光せず、光度変化が非常にゆっくりとしていました。
この理由として研究チームが考えているのが、超新星爆発前の10年ほどの間に、1年に太陽3個分ほどの量の物質を親星が周囲に放出してしまったということ。
過去に放出していた物質と超新星爆発で新たに放出された物質とが衝突することで、“SN 2016ie”は長期間にわたって明るく輝いているようです。
ただ、“SN 2016iet”は非常に明るく、銀河から孤立しているので、今後数年にわたって変化を観測することができそうです。
こうした極めて質量の大きな恒星が実際に存在することは、つい最近まで知られていませんでした。
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