大質量星と小質量星は同じシナリオで星が形成されるのでしょうか?
今回の研究では、太陽よりも8倍以上の質量を持つ星“大質量星”が誕生すると期待される領域をアルマ望遠鏡で観測。
すると、これまでにないほど多くの“星の種”の発見に成功したんですねー
さらに、過去最大のサンプルを注意深く調べることで、雲に埋もれていた星の種の質量や密度、分布なども明らかになることに…
これまでの小質量星形成モデルでは、星の種は形成される星の質量の2~3倍ほど重いことが必要でした。
でも、それとは矛盾して大質量星形成には、星の種がガスをさらに集める必要があるようです。
ただ、大質量星は、小質量星に比べると数がとても少なく、遠方に位置しているんですねー
このため、形成過程が未だ確立しておらず不明な点が多く残っていました。
それでは、大質量星はどのように誕生したのでしょうか? 太陽のような星と同様にできているのでしょうか?
このことを探るため、今回研究の対象として選んだのは、大質量星が誕生すると期待されるけど、まだ星が形成されていない静穏な領域でした。
星形成の初期段階を明らかにし、形成過程を議論するには、小質量星形成領域における先行研究相応の、星の種を識別できるほどの観測性能が求められます。
さらに、典型的な星の性質を知るには、統計的な研究、大きなサンプル数も必要でした。
これらの領域には、星の材料になるガスとチリからなる雲が、高い密度でかつ冷たい状態で存在しています。
この雲は赤外線観測では暗いシルエットとして見えるので、赤外線暗黒星雲として知られていました。
今回対象にした赤外線暗黒星雲は、星形成の兆候がこれまでに見つかっていない領域。
星が誕生する前の状態と考えられるので、研究を進めるには最適な環境といえるんですねー
観測の結果、雲に埋もれている800個以上の“星の種”を検出することに成功。(図2)
これは、赤外線暗黒星雲で特定されたこれまでで最大のサンプルでした。
将来の大質量星形成の最も有望な場所を表しているといえます。
それは、高感度、高空間分解能、そして効率的なマッピング能力を持つ、アルマ望遠鏡による電波観測のおかげでした。
同じ様に大質量星も形成されると仮定するとどうなるのでしょうか?
驚くべきことに、これらの星の種の99%以上は、大質量星を形成するのに必要な質量を持っていないんですねー
このことが示しているのは、大質量星形成領域にある星の種は、周囲のガスを取り込むことで成長する必要があること。
どうやら、大質量星には小質量星とは異なる星の形成メカニズムが存在するようです。
さらに、研究チームが調べたのは星の種の分布、つまり密集の度合いについてですね。
まず、星そのものの集団を見てみると、大質量星はまとまって、小質量星は散らばって存在しています。
このことから、星の種の段階でも、星の種の質量の違いによってその密度の度合いが異なることが期待されました。
でも、今回の観測で得られた統計データを分析して見ると、期待に反して、星の種そのものの質量による密集の度合いに違いは見られませんでした。
代わりに、星の種そのものの物質密集度によっては、密集の度合いが異なる様子が見られました。
これは、大質量の星の種よりも、物質密度の高い星の種が、大質量星に成長する可能性を示唆しています。
今回の研究では、大質量星形成が小質量星とは異なる成長シナリオを持つ可能性を、これまでの研究よりも多くのサンプルからより確実に示すことができました。
また、まとまって存在する密度の高いコアは、周囲の物質を蓄積することで、より効率的に成長する可能性があることが推測できます。
大質量星形成の初期段階では、星の種の初期質量よりも、その密度が重要なようですね。
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今回の研究では、太陽よりも8倍以上の質量を持つ星“大質量星”が誕生すると期待される領域をアルマ望遠鏡で観測。
すると、これまでにないほど多くの“星の種”の発見に成功したんですねー
この研究を進めているのは、東京大学/国立天文台の大学院生 森井義穂さん、国立天文台のパトリシオ・サヌエーサ特任助教、中村文隆准教授らの国際研究チームです。
大質量星がどのようにして誕生するのかは、天文学の未解決問題の一つですが、多くの星の種のサンプルを用いることで、この問題を統計的に議論することが可能になります。さらに、過去最大のサンプルを注意深く調べることで、雲に埋もれていた星の種の質量や密度、分布なども明らかになることに…
これまでの小質量星形成モデルでは、星の種は形成される星の質量の2~3倍ほど重いことが必要でした。
でも、それとは矛盾して大質量星形成には、星の種がガスをさらに集める必要があるようです。
アルマ望遠鏡で明らかになった赤外線暗黒星雲の内部構造(イメージ図)。星の材料であるガスとチリの分布を、密度が高くなるにつれ青から白色で表している。形成されたばかりの赤ちゃん星の中には、ガスを噴出するものがあり、ピンク色で表されている。(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), K. Morii et al.) |
太陽の8倍以上の大質量星はどのようにして生まれるのか
太陽のような小質量星の場合、核融合反応は水素からヘリウムでほぼ終わります。最終盤にヘリウムの暴走的な核融合反応であるヘリウムフラッシュが起きて、炭素までは生成されると考えられている。
それに対して、質量が太陽の8倍以上の大質量星は、その先も核融合反応を続け、宇宙で最も安定した元素である鉄までが生成されます。鉄より重い元素は恒星の中心部では生成されない。鉄の核融合反応ではエネルギーが放出されないので、鉄を生成するようになった恒星は自重を支えきれずに超新星爆発を起こしてしまう。このため、鉄よりも重い元素は超新星爆発などの激しい現象にともなって生成されると考えられている。
そして、最終的に超新星爆発を起こして、惑星や生命を生み出すために必要な重元素の数々を宇宙に拡散させます。ただ、大質量星は、小質量星に比べると数がとても少なく、遠方に位置しているんですねー
このため、形成過程が未だ確立しておらず不明な点が多く残っていました。
それでは、大質量星はどのように誕生したのでしょうか? 太陽のような星と同様にできているのでしょうか?
このことを探るため、今回研究の対象として選んだのは、大質量星が誕生すると期待されるけど、まだ星が形成されていない静穏な領域でした。
星形成の初期段階を明らかにし、形成過程を議論するには、小質量星形成領域における先行研究相応の、星の種を識別できるほどの観測性能が求められます。
さらに、典型的な星の性質を知るには、統計的な研究、大きなサンプル数も必要でした。
ガスとチリからなる雲が高い密度・冷たい状態で存在する場所
今回の研究では、大質量星の形成過程を探るため、その誕生が期待される39の領域をアルマ望遠鏡で観測しています。これらの領域には、星の材料になるガスとチリからなる雲が、高い密度でかつ冷たい状態で存在しています。
この雲は赤外線観測では暗いシルエットとして見えるので、赤外線暗黒星雲として知られていました。
今回対象にした赤外線暗黒星雲は、星形成の兆候がこれまでに見つかっていない領域。
星が誕生する前の状態と考えられるので、研究を進めるには最適な環境といえるんですねー
観測の結果、雲に埋もれている800個以上の“星の種”を検出することに成功。(図2)
これは、赤外線暗黒星雲で特定されたこれまでで最大のサンプルでした。
将来の大質量星形成の最も有望な場所を表しているといえます。
宇宙空間には星の材料になる水素原子や水素分子を主成分としたガスが漂っている。その中でも特に水素分子が豊富に存在する場所が分子雲。さらに濃くなった場所は分子雲コアと呼ばれていて、いわゆる星の卵(種)に相当する。分子雲コアがさらに収縮することによって、太陽のような恒星や、それよりもさらに重い星(大質量星)その連星が誕生する。
どうして、このように冷たいチリやガスが密集した領域で、これほどの数の星の種を見つけることが出来たのでしょうか?それは、高感度、高空間分解能、そして効率的なマッピング能力を持つ、アルマ望遠鏡による電波観測のおかげでした。
アルマ望遠鏡で観測した“雲39”領域のチリの分布。(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), K. Morii et al.) |
大質量星と小質量星では異なる星の形成メカニズム
小質量星の形成シナリオでは、星の種の質量の約30~50%が星の質量に変換され、残りのほとんどは赤ちゃん星“原始星”から噴き出すガス流“アウトフロー(双極分子流)“として放出されます。同じ様に大質量星も形成されると仮定するとどうなるのでしょうか?
驚くべきことに、これらの星の種の99%以上は、大質量星を形成するのに必要な質量を持っていないんですねー
このことが示しているのは、大質量星形成領域にある星の種は、周囲のガスを取り込むことで成長する必要があること。
どうやら、大質量星には小質量星とは異なる星の形成メカニズムが存在するようです。
さらに、研究チームが調べたのは星の種の分布、つまり密集の度合いについてですね。
まず、星そのものの集団を見てみると、大質量星はまとまって、小質量星は散らばって存在しています。
このことから、星の種の段階でも、星の種の質量の違いによってその密度の度合いが異なることが期待されました。
でも、今回の観測で得られた統計データを分析して見ると、期待に反して、星の種そのものの質量による密集の度合いに違いは見られませんでした。
代わりに、星の種そのものの物質密集度によっては、密集の度合いが異なる様子が見られました。
これは、大質量の星の種よりも、物質密度の高い星の種が、大質量星に成長する可能性を示唆しています。
今回の研究では、大質量星形成が小質量星とは異なる成長シナリオを持つ可能性を、これまでの研究よりも多くのサンプルからより確実に示すことができました。
また、まとまって存在する密度の高いコアは、周囲の物質を蓄積することで、より効率的に成長する可能性があることが推測できます。
大質量星形成の初期段階では、星の種の初期質量よりも、その密度が重要なようですね。
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