徒然地獄編集日記OVER DRIVE

起こることはすべて起こる。/ただし、かならずしも発生順に起こるとは限らない。(ダグラス・アダムス『ほとんど無害』)

IOWA STYLE/スポーツ・ドキュメントO.E.Z.

2008-03-23 06:17:00 | Documentary
Jスポーツの「スポーツ・ドキュメントO.E.Z.」。
アイオワ大学レスリング部の2001年から2002年シーズンを描くドキュメントを観る。アイオワ大学は過去27年間で20回全米大学王者になったという、カレッジスポーツの強豪校で、登場する若者たちもクラブの中での競争に勝ち抜いてきたエリート選手たち。コーチは言う。
<選手が勝つにはどうしたらいいのか。×××になって、○○○で自己中心的で、意地悪になるべきなんだ。別人になることだ。生き残るためにはね。>
そして選手も言う。
<レスリングはいい。誰かの肉体と精神をたたきのめし別人に変えられる>
自身も全米王者だった実績を持つヘッドコーチを始め、選手の口から出る言葉は凶暴そのものの、剥き出しのアメリカンスピリッツ。そもそもアメリカンスポーツというものはそういうものなのだろうが、特に田舎者のタフな人たちが嫌というほど登場する。
<単純明快で正当な教えを学ぶのだ。英雄〈Hero)か悲嘆(Heartbreak)か、中間は何もない。〈中略)これがレスリング。アイオワだ。>

しかしディレクターの当初の意図だったのかどうかはわからないけれども、物語は時間が進むうちに、どんどん過去の栄光を引っ剥がしていくような沢木耕太郎風の<敗れざる者たち>になっていく。誇り高く、アメリカン・スピリットの塊だった彼らも徹底的に挫折を味わう。そして、それでも彼らはそれぞれの道に向かって再び立ち上がっていく(らしい)。名門も、強豪も、伝統も(そして例えば“サッカーどころ”も)、同じような悩みやプレッシャーを抱えながら、それでも前に進んでいかなければならない。
<恐怖があるなら、皆を失望させることへの恐れだ。それが時には自分を抑えるんだよ。>

調べてみたらジョン・アーヴィングもアイオワ大学出身だった(現役時代はピッツバーグ大学)。「ガープの世界」でレスリングがフィーチャーされているのも、やはりレスリングが“そういうもの”の象徴なのだからだろう。

戦いに敗れクラブを去ったものの、それなりの幸せを見つけたジョシュ・バドキ君はともかく、再び立ち上がるマイク・ザディック君とスティーブ・モッコ君は、その後どうなったんでしょうか。ほろ苦い感じが、なかなか味わい深いスポーツドキュメントでした。

それにしても、レスリングの全米大学選手権もいいのだけれども、Jスポもどうせなら実在が噂されている全米川下り選手権を早く中継してくれないか思ったりして。