ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
『ホテル・カリフォルニアの殺人』(宝島社文庫)発売中です!

U2 - Pride (In The Name Of Love)

2019-04-04 16:53:02 | 音楽批評
今日は4月4日。
キング牧師が凶弾に倒れた日です。
キング牧師とは、いうまでもなく、あの公民権運動で知られるマーティン・ルーサー・キングJrです。

そこで今回は、U2の、Pride(In the Name of Love)という歌を紹介したいと思います。
U2といえば、政治的、社会的なメッセージを込めた歌をよく歌うことで知られていますが、この曲もまさにそうで、キング牧師のことを歌った歌なのです。



U2 - Pride (In The Name Of Love)



U2の代表曲の一つといっていいでしょう。
歌詞の内容ばかりでなく、U2の代名詞ともいえるディレイを効かせたギターリフと、ボノが聞かせるB4の熱唱……まさにU2という一曲です。
歌の中にキング牧師の名前は出てきませんが、3コーラス目で次のような歌詞が出てくるところから、キング牧師についての歌だということがはっきりします。


  4月4日の早朝
  メンフィスの空に銃声が響く
  彼らはあなたの命を奪った
  だが あなたの魂を奪うことはできなかった
  

その前には「口づけとともに裏切られた」という一節もありますが、これは、聖書に出てくるイエス・キリストのエピソードに基づくもの。キング牧師の暗殺を、イエス・キリストの刑死になぞらえているわけです。

まあ、キリストになぞらえるとなるとちょっと行き過ぎで、その方面の人からはお叱りを受けるんじゃないかとも思えますが……

実際問題として、キング牧師を過度に美化するという態度には、一定の問題もあるかもしれません。

キング牧師といったらもう聖人のような扱いで描かれたりしますが、批判も結構あります。
私生活では下ネタ大好きだったとか、演説にパクリの部分が多いとか……
しかし、キング牧師とて人間です。そんな美しい人でなかったところで、それは彼の功績を打ち消すものでもないでしょう。

暗殺という形でこの世を去ったこともあって、キング牧師はかなり伝説化してます。
まさに聖人のような扱いになってます。その状態で、彼に対する批判的な意見を耳にした人が「なんだ、あいつ偽善者じゃないか」みたいに思ってしまうのはよくないと思います。

そういうのは、ジョン・レノンについてもいえますね。
ジョン・レノンも、日本ではなんだか聖人みたいな扱いになってることがあると思うんですが、私生活とか日頃の発言とかをみると、まったくそんな人ではないんです。
かなり毒のあるブラックジョークを口にしたり、ドラッグにも手を出し、ヨーコ愛してるみたいなことを散々いいながら不倫もしてます。

なんだか何をいいたいのかよくわからなくなってきましたが……

要は、キング牧師もジョン・レノンも、人間です。
そこを踏まえて、“聖人”としてではなく、一人の人間がそういうことを言い、そういう活動をしていたというところを見るべきなんじゃないか。

裏返していうと、不正義を告発したりするのに、きれいな人間である必要なんてないんです。
以前どこかで、政治に関する話になった時に、「自分はそんなにきれいな人間じゃないから」みたいな言い方で、だからそういう話題について語る資格がない……といったことをいわれたという話を聞いたことがあります。
そうじゃないと思うんですね。
社会の問題について語るのに、別にきれいな人間である必要はないんです。そもそも資格なんていらないんです。

話をU2に戻すと、ボノは徹頭徹尾行動の人です。
かのライブエイドにも参加していましたが、「偽善者といいたいやつはいえ、とにかく大事なのは結果だ」というボブ・ゲルドフ的リアリズムを体現しているのがボノでしょう。まあ、その行動の中には、本当にそれ意味があるのかと思うものもたしかにあるんですが……
とにかく、大切なのは行動とその結果です。
自分はキング牧師のような立派な人間じゃないから……なんて思う必要はないんです。キング牧師だって、“立派”じゃない部分はいっぱいあったわけですから。