ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
『ホテル・カリフォルニアの殺人』(宝島社文庫)発売中です!

Chuck Berry, Roll Over Beethoven

2020-05-12 21:02:13 | 音楽批評


先日、リトル・リチャードの訃報についての記事を書きました。

そのなかで、リトル・リチャードと同世代のアーティストとして、チャック・ベリーの名が出てきました。
ということで、今回はこのレジェンドについて書こうと思います。

チャック・ベリーといえば、誰しも名前を聞いたことがあるであろうロックジャイアントの一人。ロックンロール創始者の一人とも目される伝説のミュージシャンです。
この世代の人には長生きが多いと前回書きましたが、チャック・ベリーも、死去したのは2017年と、世代を考えればかなり最近です。享年90歳ということで、じゅうぶん長生きしたといえるでしょう。
そのキャリアのなかで、彼はいくつもの名曲を生み出してきました。
なんといっても有名なのはJohnny B Goodeでしょうが、ほかにもロックの名曲を数多く残していて、多くのアーティストにカバーされています。
たとえば、Rock and Roll Musicというそのものズバリなタイトルの曲がありますが、これはビーチボーイズやビートルズによってカバーされています。
ビートルズのバージョンは、日本ではシングルでも発売されていたようです。日本では、ビートルズのアルバムから独自にシングルカットした日本盤のみのシングルがたくさんあったみたいですが、そのなかで売り上げトップだったのがこのRock and Roll Musicだったといいます。
そして、ビートルズとの関係では、ちょっとした因縁も。
ビートルズにCome Togetherという曲がありますが、これはチャック・ベリーのYou Can't Catch Meのパクリといわれています。そのパクリを指摘されたジョン・レノンが和解の条件として同曲をカバーし、それが、ロックスタンダードをカバーしたソロアルバム『ロックンロール』につながっているのです。

そしてもう一つ、パクリではなくれっきとしたカバー曲として、Roll Over Beethovenがあります。
ビートルズバージョンにつけられた邦題は、「ベートーヴェンをぶっ飛ばせ」。
1956年発表のこの曲は、チャック・ベリーのキャリアにおけるごく初期のヒット作です。その挑戦的なタイトルは、ロックという音楽が、高級で高尚な音楽に対するアンチテーゼであったことを思いださせます。

歌詞の一部を抜粋すると、こんな感じです。

  熱はどんどんあがっていって
  ジュークボックスのヒューズも吹っ飛ぶ
  俺のハートはリズムを刻み
  俺のソウルはブルースを歌い続ける
  ベートーヴェンをぶっ飛ばせ
  そしてチャイコフスキーに教えてやれよ

チャック・ベリーといえばギターの名手として知られていますが、作詞家としても一流でした。それがよく発揮された軽快な歌詞といえるでしょう。日本語訳では表せませんが、偶数行末では韻を踏んだりもしていて、なかなか芸が細かいです。対句や押韻といった伝統的な修辞を使いつつ、しっかりロックしています。
あの、音楽室の壁にかかってふんぞり返ってる高尚な連中に教えてやれよ、これからは俺たちの時代だってな――これこそ、まさにロックでしょう。

  ロッキン肺炎にかかって
  リズム&ブルースが一発必要なんだ

なんていう歌詞もあって、タイムリーでもあります。
一応解説をくわえておくと、ここでいう「リズム&ブルース」とは、いまR&Bと呼ばれているジャンルのことではなく、その当時ロックンロールを指して使われていた言葉。つまり、肺炎にかかったから、一発ロックでぶっ飛ばしてくれといっているわけです。
巷に新型肺炎が流行するいま、この精神でいたいものです。






最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。