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『新聞記者』

2019-07-18 16:26:01 | 映画
映画『新聞記者』を観てきました。

このブログでは、映画記事として最近ゴジラシリーズの作品について書いていますが、今回はいったん中断して、この『新聞記者』について書こうと思います。

地味に話題になっている映画ですね。

タイトル通り、新聞記者を主人公に据え、権力者からの圧力と戦いながら真実を追う――という作品です。
現実にあったものをもとにした事件や疑惑が作中に登場し、いまどき珍しいかなり硬派な社会派サスペンスという感じがします。

全編を通して息苦しい圧迫感があり、最後まで見ると、だいぶ気が滅入ってきます。
こういうテーマで映画を作るにしても、以前このブログで紹介した『エネミー・オブ・アメリカ』みたいにエンタメ仕立てにしたほうが、普通の人にもとっつきやすかったんじゃないか……という気がしなくもないです。
ただ、こういう作品を今つくって発表したというところに、制作陣の強い意志があったということなんでしょう。その点は評価したいと思います。この映画の窒息しそうな圧迫感は、つまりは今という時代の空気を映しているのではないでしょうか。


この映画に描かれている内容がどの程度に事実に基づいているのかは議論の余地があるでしょうが……メディアに圧力がかかっているというのは間違いないところでしょう。

なにも、そんなことありえないと否定してかかるような話ではまったくありません。

歴史上メディアを抑圧した政権などいくらでも例があり、現在でもそういう国はたくさんあります。
アメリカなんかも、結構ひどいといいます。『新聞記者』のラストは、アメリカのジャーナリストたちの間で「電気ノコギリ」と呼ばれているものでしょう。ネタバレになるので詳細は書きませんが……そういう呼称があるぐらい、アメリカでは広く起きていることで、ジャーナリストたちはそれを恐れているといいます。
そういったことを考えれば、日本でメディアに対する圧力があったところで、なんら不思議ではありません。いわんや、国外からそういう指摘がなされている現実があってみればなおさらです。

無論そういう圧力はなくなってほしいですが……報道という行為が報道される側にとってしばしば不都合なものである以上、どんなに民主的な社会であっても、おそらく報道機関に対する圧力はゼロにはならないでしょう。そこは受け手の側にも一定のリテラシーが求められるところだと思います。ある種フィルターがかけられている状態で、いかにきちんとした情報を得ていくかという……

映画『新聞記者』は新聞を舞台にしていますが、現実には、おそらくメディアに対する圧力はテレビの方が大きいと思われます。ある程度新聞そのものの販売で利益を出せる新聞社に比べれば、視聴率やスポンサーの意向を気にするテレビ局のほうが、圧力に対する耐性は弱いといえるでしょう。
前回の記事で、きちんとしたところから出た情報に基づいて行動しようと書きましたが……そういう意味では、新聞は比較的信用できる情報源といえます。

先進国といわれるような国であれば、メディアに対する抑圧があるにしても、完全に情報が抑えられるわけではなく、単にアクセスしにくくなっているだけというのが一般的でしょう。
受け手の側がその気になれば、そういう情報も得られるんです。
映画『新聞記者』では新聞社側のある種の“忖度”が描かれる場面がありますが、そこにおいても、問題の記事はつぶされたわけではなく、小さな扱いにされただけで紙面には載りました。
実際にも、おそらくそういう感じです。重大な問題を扱った記事は、意外とすみっこのほうに小さく載っていたりするんです。そういう情報を拾い上げる能力も、求められいてるんじゃないか。そんなことを思いました。まあ、この映画の感想としてはちょっと的外れな気もしますが……


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