今日は10月7日。
「ミステリー記念日」です。
ということで、今回は映画記事として、ミステリーの名画について書こうと思います。
紹介するのは、『病院坂の首縊りの家』
原作は、いわずと知れた横溝正史。
市川崑監督による横溝作品シリーズの一作で、横溝自身もゲスト出演しています。横溝は今年が没後40周年にあたるということをちょっと前に書きましたが、この映画の公開は1979年。すなわち、横溝最晩年の姿が映し出されているわけで、そういう意味でも貴重な作品といえるでしょう。
下はそのプレビュー動画。
短い動画ですが、このなかでも横溝先生の勇姿を拝むことができます。
病院坂の首縊りの家
そのタイトルから、もうおどろおどろしい横溝ワールドの空気がたちこめてきますが……中身はそれを裏切りません。
生首を天井からつるすというショッキングな殺人にはじまり、次々と起こる連続殺人。その謎に、金田一耕助が挑むのです。原作シリーズにおいては、これが金田一最後の事件。映画のほうでは、そのあたり微妙ですが……
怪奇趣味と、どろどろした旧家の因縁……横溝作品ではおなじみのモチーフですが、もう一つ特筆すべきは、ジャズバンドが出てくるところでしょうか。
横溝正史という人は、どうやら音楽に潜む魔性というものに着目し、自身の作風を構成する要素の一つとしているらしいのです。
たとえば『悪魔の手毬唄』、あるいは『悪魔が来りて笛を吹く』という作品があり、後者では、笛の奇妙なメロディが謎解きの伏線になっていたりもします。そういえば、あの「本陣殺人事件」でも、狂ったようにかき鳴らされる琴の音色が、単に伏線というにとどまらない重要な役割を果たしていました。そして、『病院坂』においては、ギターでぶんなぐったうえに、その弦で首をしめて殺すという殺人が描かれます。
このブログでは、音楽と悪魔的なものとの関係について何度か書いてきました。横溝正史は、その音楽に潜む魔性を、媒介に利用しているように私には思われるのです。いわば、異界への入り口として……
そのあたりが、まさに私自身の作風とも重なってくるわけで、やはり自分は横溝に相当大きな影響を受けているのだなあ、と感じさせられる一作でもありました。
でも私の一番は「犬神家の一族」です、余計なことかもしれませんが。
返信がだいぶ遅くなってしまいましたが……
たしかに、このシリーズにおける最高傑作が『犬神家の一族』であるというのは衆目の一致するところでしょう。私もそう思います。
ただ、犬神家に関しては過去に3DCG記事で一度取り上げたことがあったので、今回は『病院坂』にしました。
市川崑自身も、「よく分らなかった」とどこかで書いていたと思います。
多数の登場人物が複雑にからみあうというのは横溝ミステリーの常道なので、それでわかりにくくなるという部分はあるかもしれないですね。監督がわからないというのはちょっと問題だとも思いますが……(笑)