ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
『ホテル・カリフォルニアの殺人』(宝島社文庫)発売中です!

神に会いに行く日 ~手塚治虫展~

2017-12-20 22:16:12 | 日記
田川市で行われている手塚治虫展に行ってきました。

田川市は、福岡県の北の方にある町です。
かつて炭鉱で栄えた都市で、炭坑節の発祥の地でもあるそうです。筑豊と呼ばれる地域に属し、私の住んでいる場所からはだいぶ遠いところになります。

そんな田川市の美術館で、手塚治虫展が行われていました。


拙著『ホテル・カリフォルニアの殺人』の解説にもあるように、私は子供時代多くの漫画に囲まれて育ち、そのなかでも手塚治虫は神のような存在でした。
その神についての展示です。
だいぶ遠方ではありますが、これは行かねばなるまいということで、行ってきた次第です。


この美術館の雰囲気もいいですね。


やや古風で、70年代ぐらいの漫画に出てきそう……と思うのは私だけでしょうか。


手塚漫画の原画や、虫プロが制作したアニメのセル画などが展示されていて、非常に興味深い内容でした。

なかには、途中までペン入れした段階でボツとなった原稿も展示されていました。
本で見たことはありましたが、実物を見たのははじめてです。下書きとペン入れした絵が混在しているため、制作の途中段階を垣間見ることができます。下書き段階では、登場人物の顔は描きこまれておらず、ペン入れするときに、そのときのフィーリングで表情を描き入れていくんですね。それが、異常に速い制作スピードにもつながっています。手塚治虫だからこそできる技でしょう。


撮影可能となっているコーナーもあり、こちらはそのなかの一つです。


グッズも買ってきました。

『ブラックジャック』のコースターです。


素焼きのコースター。これで、夏場も安心です。

そして、『火の鳥』のしおり。


しおりは、この他にも二つ買いました。よくしおりをなくす私ですが、これでもう大丈夫でしょう。ブラックジャックのしおりは、今日から早速稼働しています。

以前、藤子F不二雄展にいったときも感じましたが、やはり原画は原画のオーラをまとっています。
まして、神の原画ですから、相当な霊験があります。
大いにインスピレーションを刺激され、この刺激を創作に活かしていきたいなと思いました。

沖縄の米軍機落下物問題について

2017-12-17 18:47:30 | 時事
沖縄で、米軍機からの落下物が問題になっています。

小学校という大勢の子どもがいる場所で、けが人も出ています。
しかしそれでも政府は、沖縄が求めている米軍の全機の飛行停止を日本政府としては求めないという姿勢です。

一般的な米軍基地では許されないような危険な飛行がなぜか沖縄では容認され、たとえ事故が起きてもすぐに運用が再開される……これは、あまりにも酷い扱いでしょう。差別的な待遇と批判されてもやむをえません。

沖縄という土地は、日本の歴史上において、もう何百年も前からこういう差別的な扱いを受けてきました。

今回の事故でも、被害者の側に対して「そんなところに住んでいるのが悪い」という無茶苦茶な批判が出ているようですが、これも、本土の側に根深く残る差別意識のなせるわざでしょう。

困った立場にいるものを踏みにじるようなことをこれからもずっと続けていくのか。
そんな日本で本当にいいのか。
いやダメでしょ、普通に考えておかしいでしょ、といっておきたいと思います。この異常さに慣らされてしまわないために。

the pillows「確かめに行こう」

2017-12-15 15:54:57 | 音楽批評
 

先日、ジュンスカについての記事を書きました。

ジュンスカは、インディーズ時代にアルバムを一枚出しています。それは、キャプテン・レコードというところからでした。
このキャプテン・レコードというのは宝島という雑誌が主宰していたものです。
宝島……
拙著『ホテル・カリフォルニアの殺人』も、宝島社からの刊行。
私も宝島社に拾い上げられた身であり、ということは、キャプテン・レコードと従兄弟の孫ぐらいの縁はあるといえます。


やや強引ですが……今回は、その強引なつながりをさらに拡張し、「キャプテン・レコードからインディーズ時代にアルバムを出していたバンド」つながりで、the pillows について書きます。

ピロウズ。
ご存知でしょうか。

同じくキャプテン・レコードからアルバムを出していることからもわかるとおり、ジュンスカとは同世代で、30年近く前から活動しています。チャートで1位になったりすることはありませんが、強く支持するファンがいて、長きにわたって消滅することなく活動を続けています。

ピロウズの名曲は数あります。ストレンジ・カメレオン、ハイブリッド・レインボウ、スケアクロウ……と、ちょっと考えただけでも次々に浮かんできます。そのなかで、今回は「確かめに行こう」という曲について書きたいと思います。

ピロウズといえば、切ないメロディに切ない歌詞というのが一つの特徴だと思いますが、それがぎゅっとつまった曲が、この「確かめに行こう」だと思うんです。

冒頭のギターから、もうそうですね。
あれを聴くと私は、雨があがったあとに、曇り空から淡く日が差してくるような情景が思い浮かびます。
どこかもの悲しく、世界に弾かれているような感じが、歌詞にも描かれます。

  ゆずったぶんだけ歪んだのさ
  ひび割れたとこ 手をあててみた
  なんだか毒が抜けて真っ白
  僕が鏡で笑ってる
この曲では、G→Em→Bm7→Cというコード進行がひたすら繰り返されます。途中の一部分を除いて、すべてそれです。
名曲というのは、えてしてそんなものです。
レディオヘッドのCREEPなんかも、4つのコードの繰り返しですからね。

  どんな期待をしていたんだろう
  種も仕掛けもないマジックに
  騙されたいと願ってみても
  目と耳は飾りじゃないから
  それもできない
ピロウズは、オルタナ系であることを自任していますが、このあたりの歌詞にはオルタナっぽさが濃厚に表れています。こういう感じは、ピロウズの歌で繰り返し出てきます。

歌詞の最後は、「いつわりのない世界まで確かめに行こう」というフレーズでしめくくられます。
ピロウズはまさに、「いつわりのない世界」を目指しているんだと思います。
プロダクションで作り出された虚構の人気なんかいらない。彼らの音楽を聴いていると、そういう感じが伝わってきます。作り物だらけの世界に弾き出されたとしても、時代に流されて歌ったりしない。だからピロウズは、リアルなんです。

母校に挨拶にいってきました。

2017-12-13 18:21:22 | 日記
本日、母校に挨拶にいってきました。

鉄パイプをもってお礼参り……とか、そういう話ではありません。

今さらですが、拙著『ホテル・カリフォルニアの殺人』刊行のことで、挨拶にうかがった次第です。

卒業してから、もう20年近く。
校舎が新しくなっている部分もありましたが、昔のままのところもあり、懐かしく感じました。



私立の中高一貫校なんですが、私立ということで、私が在学していた頃の先生もまだたくさん残っておられました。


図書館では、私をかなりプッシュしてくれていました。



先日、西日本新聞に掲載された記事で、パネルが作られていて、図書館にも何冊か置いていただいているようです。
ありがたいかぎりです。

暖かい言葉をいただきましたが、そのぶん、今後に関して身の引き締まる思いです。
これはちょっと死ぬ気でやっていかにゃならんな、と……そう思わされた母校訪問でした。

スティーヴ・アール「エルサレム」(Steve Earle, Jerusalem)

2017-12-11 16:17:34 | 音楽批評
 

今回は、音楽評論記事として、スティーヴ・アールのエルサレムという歌をとりあげます。

今この歌をとりあげる理由は、おわかりでしょう。
昨日も書いた、エルサレムの問題と関連してです。

以下、歌詞を抜粋して紹介します。


 今朝起きてみたら いいニュースなんてありはしなかった
 死の機械が イエス・キリストの立った土地を荒らしまわり
 テレビの男はこういった これまでずっとこうだったし
 何をいうことも 何をすることもできはしないんだと

 ほとんど僕は 彼に聞き入っていた
 おかしくなってしまいそうだった
 それから 正気を取り戻して
 自分の心をのぞきこみ 気づいたんだ

 僕は信じる ある晴れた日にすべてのアブラハムの息子たちが
 エルサレムで 永遠に剣を捨て去ることを

 僕は信じる いつの日か エルサレムで
 獅子と子羊が穏やかに身を横たえる日がくることを

 バリケードはどこにもなく
 鉄条網も壁もなく
 手から血を洗い流し
 魂から憎しみを洗い流す

 僕は信じる その日 すべてのアブラハムの子どもたちが
 エルサレムで永遠に剣を捨て去ることを  
 

この歌が発表されたのは、今から15年前の2002年のことです。
なのに、まるで今起きていることを歌っているかのように聞こえます。
それだけ、パレスチナを取り巻く状況は変わっていないということです。
「ある晴れた日」は、やってきていません。
それどころか、はるか遠くへ遠ざかっていっているようでさえあります。
そんな状況に、この歌は悲しく響いてくるのです。