映画『戦争と平和』を観ました。
今日7月14日はフランス革命勃発の日……ということでフランス革命に関連する映画でも観てみようかと。
まあ、よくよく考えてみれば、ナポレオンが侵攻してくるのをロシア側から見た話なので、フランス革命自体はあまり関係ないんですが……
公開は1956年。
オードリー・ヘプバーンも出ています。
原作は、いうまでもなくロシア文学の巨星トルストイ……なんですが、恥ずかしながら原作を私は読んだことがありません。
トルストイの大作ということでいうと、『アンナ・カレーニナ』を読んだことがありますが、あれでもうおなか一杯になって、さらに長大な『戦争と平和』には手が出せずにいたというところです。
映画を観てみると、人間ドラマとしては『アンナ・カレーニナ』の主題と重なるところも多々あるように思われますが……ただここでは、そこに戦争というものがからんできます。
戦争が遠くのできごとだったときのモスクワの生活……そこでは、戦争は楽しいこととさえとらえられていました。しかし終盤では、モスクワにまでフランス軍が侵攻し、平和な生活を送っていた人々も否応なしに戦争に巻き込まれていくのです。
きらびやかだった街や邸宅が廃墟と化していくさまは、いまのウクライナ戦争を重ね合わせずにはいられません。
もっともウクライナにおいては、ロシアが攻めていく側。
この映画に登場するナポレオンは――少なくとも、この映画のストーリーに関する限りは――プーチンの役回りということになります。
「ナポレオンのような男は自らの野心で自滅するまで止められない」と、ロシア側の総司令官クトゥーゾフ将軍はいいます。
モスクワ遠征の失敗がその自滅ということになるわけですが、さてプーチンさんはどうなるでしょうか。
ナポレオンといえば、ドストエフスキーの『罪と罰』について書いたときにもその名が出てきましたが……やはり侵略され撃退した側のロシアからすると、傑物というような評価にはあまりならないのかもしれません。
戦争を回避すべく親書を送ったロシア皇帝に対し、「陰謀を企てている」として侵攻に踏み切るナポレオン……その戦争が、生活を破壊していくのです。
戦争をゲームと考えているお偉方にはわからないだろうが、戦争は人生でもっともおそろしいものだ
とロシア軍のアンドレイ大佐はいいます。
一般論ではありますが、ナポレオンに投げかられた言葉のようであり、またプーチンさんにとっても耳が痛い言葉なのではないでしょうか。
最後に、映画のラストシーンで引用される原作の一文を紹介しましょう。
命はすべてであり、命は神である。そして、命を愛するということは神を愛するということなのだ。
いかにもトルストイらしい説教臭い言葉ですが、はたしてプーチン大統領やロシア正教の司祭たちは、祖国の偉大な文豪の言葉をどう受けとめているのでしょうか……