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流野精四郎&東澤昭が綴る読書と散歩、演劇、映画、アートに関する日々の雑記帳

ポニョと黄金比

2009-01-02 | 映画
 年末の歌番組で大橋のぞみちゃんの歌声を聞いたせいだろうか、今になってポニョのことを書いておきたくなった。
 すでに2ヶ月ほども前のことになるが、昨年、仕事がらみで三鷹市のジブリ美術館に行く機会を得たのは幸運だった。あえて言えば、私はポニョが大好きなのである。
 都合で美術館には1時間足らずしかいられなかったのだが、中でもジブリのスタジオや宮崎駿の仕事場を再現した(実際そのとおりかどうかは知らないのだが)コーナーは、手作り、ものづくりのスピリットにあふれた場所で、一日中でもそこに佇んでいたかった。
 そこにはポニョの手描きのコンテや下書きも多く無造作に壁に貼り出されていたが、このポニョの顔や姿のバランスは本当にかわいらしさの黄金比であると思う。
 当然映画は観ているのだが、そのほかにも私はポニョ関係の本を書店で眺めては思わず買い込んでいる。あの黄金比を見ているだけで私は幸福になり、涙が自然に流れてくる。まったくおかしな話なのであるが・・・。
 ところで、すでによく知られている話だけれど、今回ポニョの製作にあたって、宮崎監督は徹底的に手描きにこだわっている。
 その理由を宮崎監督自身が「文藝春秋」1月号で次のように語っている。
 「・・・CGをつかわず手書きに戻ったのは、そのほうが自由に描けて楽だからなんです。たとえば子どもが歩くところをよく観察すると、足を一定に交互に出したりしない。トテテ、トテ、トテ、とふらふらします。走ってスカートが翻っている様子なんて、もっと複雑です。これまでは時間的、経済的な理由から、同じ画を繰り返して動かしてきたけれど、もう、全部描いちゃえーと。」
 つまり、よりリアルな絵を描きたいという欲求にしたがったということだが、これまでのジブリ作品の成功が、そうした経済的・時間的環境を彼にもたらした、ということなのだろう。

 ちなみにその作画枚数を作品ごとに比較すると次のようになる。
   ・風の谷のナウシカ   56,078枚
   ・となりのトトロ      48,743枚
   ・もののけ姫      144,043枚
   ・千と千尋の神隠し  112,367枚
   ・崖の上のポニョ    170,653枚
 
 思わず息を呑んでしまうが、ものを手でつくるということの素晴らしさと幸福感がそれだけポニョには籠められているのだろう。


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